深層学習を使った生体高分子モデリングの原理や、フラグメント分子軌道法についての最新の総説を紹介します。

今日は日本結晶学会誌の記事の紹介です。
AlphaFold2で深層学習を用いた構造モデリングの有効性が広く知られるようになりました。この最新号の次の総説は、そうした発展を学ぶのによい記事だと思います。AlphaFold2の原理と限界についてもわかりやすく解説してあっておすすめの総説です。是非ご覧ください。
深層学習を用いた構造モデリングと評価,その最近の展開
寺師 玄記, 木原 大亮
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/65/1/65_3/_article/-char/ja
この記事目当てにJ-STAGEの日本結晶学会誌の目次をみていたら次の記事も役立つと思いました。
フラグメント分子軌道計算による構造解析
福澤 薫, 渡邉 千鶴, 加藤 幸一郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/65/1/65_17/_article/-char/ja
Fragment Molecular Orbital Methodは、日本初の生体高分子に適用可能な量子化学的計算手法であり、さまざまな分子の量子化学計算に活用されている手法です。この総説では、生体高分子へのFMO法の適用例がわかりやすく説明されていてFMO法について知りたい人には最適の総説だと思います。九州大学の先生も共著者になっておられます。

他にもこの雑誌にはいろいろな面白そうな記事が満載ですので是非一度目次を眺めてみてください。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcrsj/65/1/_contents/-char/ja

女性科学者による動画2本を紹介します。

女性科学者のによる動画二本を紹介します。

Julie Ahringer – Ahead of the Curve: Women Scientists at the LMB
https://youtu.be/J_mToLrLkTY

この動画は、線虫C. elegansのfeeding RNAiライブラリで皆さんおなじみのJulie AhringerさんがMRC分子生物学研究所(MRC LMB)で開催された講演会 Ahead of the Curve: Women Scientists at the LMB (Thursday 10th November 2022)で行った講演の記録です。
MRC LMBで働いていた輝かしい成果をあげた女性研究者を扱った本
Ahead of the Curveにちなんで開催された講演会だと思われます。https://aheadofthecurve.org.uk/#book
この本はKindle版が1138円で買えるので読んでみてください。MRC LMBで活躍した女性と男性科学者の話がいろいろのっていて安くて面白い本です。

Ahringerさんは私がMRC LMBで研究していた時に、同じJohn Whiteラボでポスドクをされていました。この動画では、線虫研究の歴史にはじまって、AhringerさんのRNAiライブラリの話、その後の線虫ゲノム研究の話などがやさしく紹介されていて面白いです。

また、もう一本の短い動画はノーベル化学賞を2022年に受賞されたBertozziさんの動画です。
女性だけでなく、困難にめげずに生きているすべての人に贈る言葉だと思います。是非こちらもご覧ください。
https://my.linkedin.com/posts/nobelprize_carolyn-bertozzi-on-finding-your-role-models-activity-7039245908202422272-ZOap

記憶をRNAで移植できるという実験について

記憶がRNAで移植できるという実験がいくつも報告されているので簡単に紹介しておきます。

昔、プラナリアに光をあててその直後に電気ショックを与えるプロセスを繰り返すと、プラナリアが光をあてるだけで体を縮めるようになるという実験をしていた科学者がいました。そのトレーニングをつんだプラナリアを餌にして別のプラナリアに食べさせると、たべたプラナリアが光をあてると体を縮めるようになったそうです。この実験での記憶の伝達はRNAを介して起こっているのだという説が展開されて、皆の興味をかきたてたのです。James V. McConnell(1925-1990)という科学者が、1959年に発表した論文では、プラナリアを頭と胴にきりわけて再生させる実験で記憶の移動が起こることを示していました。プラナリアに光をあてて電気ショックをすぐ与えると、プラナリアは体を縮めます。この光と電気ショックを繰り返し与えるトレーニングをつむと、プラナリアは長期記憶LTSをもつようになり、光をあてるだけで電気ショックなしで体を縮めるようになるそうです。このLTSをもっているプラナリアを頭と、胴にきりわけます。頭だけのプラナリアは、胴も再生して完全な個体にもどります。胴だけのほうからは頭が再生して、こちらも完全な個体にもどります。どちらのプラナリアも、光を当てると体を縮めます。プラナリアの次の世代に記憶が伝わったことを示している実験で世界に衝撃をあたえた実験です。彼は、記憶分子があると考えてそれがRNAだと推定していました。後の1962年の実験では、上の実験で教育されたプラナリアを切り刻んで、未教育のプラナリアの餌にしました。すると餌をたべたプラナリアは、光に対して体を縮めるようになったというわけです。記憶の伝達にRNAがかかわっているという説をMcConnellはたてました。私も高校生のころ本で読んだのですが、RNAは不安定な物質なので食べたRNAが記憶の伝達にかかわっていることは考えにくいという声が大きくて、再現性もないとかでこの説は1970年代になるとやがて注目されなくなりました。
1959年の実験、何年か前に再現実験がおこなわれてなんと見事に再現に成功しています。このブログでもたびたび登場するLevin教授のグループが論文を書いています。さらにカリフォルニア大学のロサンジェルス分校のDavid L. Glanzman教授は、アメフラシでのRNAによる記憶の移植実験に成功してこれも論文になっています。https://www.eneuro.org/content/5/3/ENEURO.0038-18.2018
教授によるとトレーニングしたアメフラシの脳からとったRNAをトレーニングしていないアメフラシに注射すると、記憶が移せるのだそうです。この記憶の移動にはDNAのメチル化がかかわっていることも明らかにしています。さらにプリンストン大学のColeen T. Murphy教授は、線虫C. elegansで病原性バクテリアを忌避する記憶がP11というnoncoding RNAを介して伝えられていることを明らかにしています。この三名の方の講演が以下にありますのでご覧ください。
https://youtu.be/IFRvMvSdYzE

RNAは不安定でというのはよく聴く話ですが、線虫のRNAiでは二重鎖RNAを食べさせると線虫の遺伝子機能が全身で阻害されることが今では知られています。自然は人間の考えているよりもっと深いもののようで、今回紹介したRNAによる記憶移植実験の歴史は、人間の上から目線の断定が医学や生命科学の分野では失敗する(あるいは科学の発展を阻害する)よい例になっていると思います。

癌の早期発見についての動画NIH Videocastを紹介します。circulating tumor DNAの話もあります!

今日は癌検診のNIH videocastの紹介です。
Tests for Early Cancer: Facts vs. Opinions Can We Detect Early Cancer?
という題で、癌の早期発見についての基礎知識と最先端の状況を教えてくれる動画のようです。https://videocast.nih.gov/Summary.asp?file=33008

癌の早期発見について私はほとんど知識がないのでこれはゆっくり勉強してみようと思う動画です。早期発見と検査法にともなうエラーについても解説があるようです。また後半には血漿に含まれる主に死んだ白血球細胞から放出されたDNAの断片であるcell free DNA (cfDNA)と患者の癌細胞から放出されているcirculating tumor DNA (ctDNA)の話があって、ctDNAをつかって癌の診断や治療後に生き残っている癌細胞をみつけるというような話もあるようです。高画質でダウンロードも可能ですし、字幕もダウンロードできますので、是非一度ご覧になることをお勧めします。

カリフォルニア大学の世界初(?)の量子生物学入門(春の学校のような)講義がZoom開催されます。開始時間が午後11時夏時間になってました。すみません訂正します。

今日はあたたかくて福岡は20℃を越えていました。夜は雨が降ったのですが、春雷で稲妻が何度も光ってゴロゴロと音がしていました。
杏の花も満開でクリスマスローズもきれいに咲いています。

さて、Gordon会議にとうとう量子生物学の会議ができたそうです。それでPre Gordon Conferenceの企画として、多分世界初の量子生物学の学校が開催されるそうです。カリフォルニア大学のQuantum Biology Tech Lab @QuBiT_Lab 主催です。Zoom 開催で、3月13-17日(カリフォルニアの現地時間の朝7時から10時まで毎日3時間の講義があります。量子生物学ってどんなものかという入門に最適ではないでしょうか。こちらのリンクからむ登録できます。
別途 後日動画はアップロードされるとことですが、臨場感もあるので日本の真夜中(訂正です=3月13日午後11時 夏時間??から開始)ですが、視聴されるのも良いと思います。
https://www.pregrcquantumbiology.org/

量子力学入門、生物学入門、生物におけるスピン、エキシトンによるエネルギー移動、トンネル効果と電荷移動、未来への展望などの項目についての講義です。

以前のブログ記事もご覧ください。

量子生物学入門コースかZoom開催されています。

国立国会図書館個人送信資料でどんな本が読めるのでしょうか?リストがダウンロードできるので参考にしてみてください。

国立国会図書館の個人送信資料でいろいろ面白い本が読めることはこのブログでしばしば紹介してきました。国会図書館ではどんな本が公開されているかのリストがサイトに掲載されているのでそのアドレスを紹介しておきます。

オープンデータセットと題するページです。
https://www.ndl.go.jp/jp/dlib/standards/opendataset/index.html#opendataset01

このページには、公開範囲が、インターネット公開、図書館・個人送信、館内限定の三つについて、それぞれどんな資料にアクセスできるかのリストファイルへのリンクが掲載されています。xlsx形式とtsv形式の両方のファイルがありますので、便利な形式を選んでダウンロードするとよいでしょう。

図書や古典籍、博士論文、雑誌、歴史的音源などのリストファイルがありますので適宜ダウンロードして、手元で検索してみるのにも使えます。

個人送信資料をみていると、自分が子供の時に読んでいた本などもみつかって懐かしい気がします。前にも書きましたが、文学全集(日本、世界)や世界の名著などの本が図書館にでかけることなく自宅でよめるので便利です。まだ登録していない方は是非登録して利用することをお勧めします。

こんな本も個人送信資料にありました。https://dl.ndl.go.jp/pid/12225856
「自分で考える」ということ 増補版 (角川文庫) 沢瀉久敬 (おもだかひさゆき) [著]1981.10  フランス哲学者でデカルトやベルグソンを研究した大阪大学の先生のロングセラーです。考えるということについてのしっかりした考察がベストセラーになりました。

RのプラグインEZRで多変量解析するための教科書のKindle版が本日限定セール中です。

という本のKindle版が、 Amazonで本日限定セールで499円で売られています。紙の本は、3080円です。
試し読みしてみると目次もみられます。多変量回帰モデルや多変量解析、オッズ比の話などがのっていて、すべて RのブラグインであるEZRで解析するという本です。以前にもEZRを開発された神田 善伸先生の本を紹介して、先生の本があれば生命科学の一般的な統計解析は十分できるという記事をかきました。今回紹介する本は、新谷歩先生の書かれた本で、こちらの本は先生がアメリカの大学で医療従事者のためのコースを教えておられた時のテキストをもとに書かれた教科書で、臨床医学の方に最適の統計本になっているようです。先生の講義は以前もこのブログで紹介していますので検索してみてください。

あと。深層学習 改訂第二版という本も安売りをしています。こちらは3月16日までのセールです。

The Human Genome at 20 ヒトゲノムの完全解読とその成果の難病治療への応用の動画を紹介します。

今日はNIH videocastの動画を紹介します。昨年、ヒトのゲノムの完全解読がなしとげられました。
2003年の解読結果では、タンパク質をコードする遺伝子数は2,0000から2,5000と見積もられていましたが、ヒトゲノムの重複領域やギャップなどを完全に解読した結果、タンパク質をコードする遺伝子数は2,0076と確定しました。(数字のコンマの位置は日本語に合わせてみました)
完全解読結果(テラメアtoテラメア・シークエンス)の生データについてはこちらのGithubをご覧ください。https://github.com/marbl/CHM13

今回の動画 The Human Genome at 20の前半は、その完全解読のリーダーAdam Phillippyさんによる完全解読の全貌とその意義のわかりやすい解説です。動画の後半は、Cynthia Tifftさんによる糖鎖にかかわるリソソーム関連の病気であるTay-Sachs病、Sandhoff病、GM1 gangliosidosisやtype 1 sialidosisの話、難病のゲノム解析による解明などの話です。ヒトゲノムの解読って2003年に終わったのではと思っていた方、2022年の完全解読っていったいどういうことなのか知りたい方、糖鎖生物学関係の病気の治療法に興味のある方、難病に興味のある方など、皆さん必見の動画です。例によって動画は高画質版のダウンロードが可能ですし、字幕のダウンロードや表示もできますので、是非ご覧ください。
https://videocast.nih.gov/watch=48823

Don’t ever give up!とDon’t give up!の違いをChatGPTにきいてみました。

ChatGPTは日本語でも使えます。今日はいろいろ使ってみていたのですが、昔私の研究室に張っていたDon’t ever give up!と書かれたポスターについて聞いてみました。このポスターは昔、アメリカでSUNY(ニューヨーク州立大学ストーニーブルック分校: the State University of New York at Stony Brook)のJerry Thomsenさんのところを訪問していた時、Thomsenラボに張られていたもののコピーです。Thomsen さんのお父さんが研究室に張っておいたらいいよと送って下さったのだそうです。有名な図柄で、ネット検索してもいっぱい画像がでています。Don’t ever give up!とDon’t give up!の意味はどう違うのでしょうか。さっそく日本語でChatGPTに聴いてみました。


私)Don’t ever give up!とDon’t give up!のニュアンスと意味の違いを教えてください。


ChatGPT) ”Don’t ever give up!”と”Don’t give up!”のニュアンスと意味の違いは、微妙なものですが存在します。

“Don’t give up!”は、あるタスクや目標を達成するために、途中で諦めないようにするための励ましの言葉です。これは、何かを達成するための過程でモチベーションを保つために使われます。

一方、「Don’t ever give up!」は、より強い表現であり、絶対にあきらめないように言い聞かせる意味があります。これは、非常に困難な目標を達成しようとしている人や、長期的な挑戦に直面している人に向けられることが多いです。

つまり、「Don’t give up!」は、あなたが達成しようとしている目標に対して、しっかりと立ち向かっていることを表しています。「Don’t ever give up!」は、どんなに大変でも、決して諦めずに最後まで頑張り抜くことを表しています。


ということだそうです。困難な研究にうちこんでいる研究室にピッタリの言葉ですね。私やトムゼンさんはアフリカツメガエルを研究していたので、飲み込まれているカエルは特にぴったりする気がしました。研究室の秘書さんは怖い絵だと思ったそうです。Never give up!とどうちがうのかもきいてみましたが、最初は”Don’t ever give up!”とほとんど同じと答えてきました。たしかThomsenさんは意味がだいぶちがうと言っていたので、下の方にあるRegenerate responseボタンを押して再度答えてもらいました。するとこんどはだいぶ違うと言う答えが返ってきました。 Regenerate responseボタンも押してみると新しい発見があるかもしれませんので、試してみてください。

AIと仏教についての講義

佐々木閑(しずか)さんのYouTubeでは仏教の講義を体系的に行っておられることを紹介したことがあります(この記事の末尾をご覧ください)。佐々木さんは京都大学の工学部工業化学科と文学部哲学科仏教学専攻を卒業され、京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学の文学博士です。カリフォルニア大学バークレー分校の仏教学科にも留学されており、現在は花園大学教授です。科学を学ばれた後、仏教の研究にうちこんでおられるので、科学者との対談や仏教と科学との関係の本も多いです。今日、YouTubeのおすすめビデオとして佐々木さんのAIについての講義シリーズがあることを知ったので紹介しておきます。ChatGPTのBingへの組込み版を使っておられるようで、その話からはじまっていろいろAIの話をなさっています。仏教からAIをどのようにとらえるのか、興味深いお話がきけそうです。いちどご覧になってみるとよいと思います。私も最近ChatGPTをつかいはじめていますが、とうとう今日は有料プランPlusにアップグレードしました。
https://youtu.be/TOrJ0632wio

https://youtu.be/zQ2mmNgRQcc

https://youtu.be/_o6yJK6nii8

自然科学者向けの仏教解説サイトを紹介します。


2022/1/19

自然科学に理解の深い仏教の研究者である佐々木閑(しずか)先生(京都大学工学部工業化学科と同文学部哲学科仏教学専攻を卒業されています)はNHKの100分de名著などでもおなじみです。先生と斎藤成也先生との対話をまとめた本(「生物学者と仏教学者 七つの対論」という本は私も読みました。先生のYouTubeチャンネル「般若心経」の解説動画がおいてあったので紹介しておきます。このチャンネルには先生の仏教に関する講義その他の動画が満載されていて仏教や仏教哲学に興味のあるかたには最適のサイトだと思います。