桜が咲きました。春がきています!コロナウイルスに負けずに物理数学の本を勉強しましょう!

コロナウイルスで大騒ぎですが、皆さんのご健康をお祈りいたします。中国から私のラボにきていた卒業生の皆さんやそのご家族の皆さんのご無事を祈っています。私のほうは、論文の作成や論文レフリーを依頼されていたので査読作業も忙しくてブログの更新が遅れていました。昨日査読レポートのアップロードを終えたので久しぶりに外に散歩に出かけてみました。写真は道端に咲いていたきれいな水仙の花です。

今日は福岡は暖かく、なんと五月中旬並みの気温(23度ちょっと)もあったそうです。
桜はというと、気象台の開花予想はもう少し後のようですが、なんと近所の桜は咲いていました!蕾のかたいソメイヨシノが並んでいる中に一本だけ、きれいな花を数輪つけているものをみつけました。レンゲも田んぼに咲きはじめ、タンポポの花を奥さんがみつけました。写真は庭のサクランボの木の花です。一週間前にとった写真ですが、満開の花に蝶々が蜜を吸いに来ているのが写っています(クリックして拡大してご覧ください)。たくさんのかわいいメジロも蜜を吸いにてきていて、私が数メートル離れて立っていても無視して、一心にサクランボの花の中にくちばしを入れておりました。右の写真はあぜ道に咲いているアザミです。花いっぱいの春がやってきています。皆さんも花を植えたり、散歩にでかけたりすると気が晴れると思います。

卒業式がなくなった大学も多いのですが、自宅にこもることが多い今の時期にはいろいろな勉強ができると思います。ときどき紹介しているようにネットでいろんな勉強ができますので、しっかり時間をとって勉強するチャンスかもしれません。以前紹介した学習院大学の田崎晴明先生の物理数学の優れた教科書ですが、数日前には主成分分析なども加筆された改訂版を公開されました。絶対おすすめの本ですので勉強してみてはどうでしょうか。また英語ですがCambridge University Pressではコロナの感染拡大にともなっていろいろなサービスの無料公開を始めています。ここをご覧ください。教科書のhtml版の無料公開(5月末まで)を始めていたので紹介しようと思ったのですが、アクセス数がものすごくて今は公開を停めたようです。再開すると書いてありますのでちょくちょくみてもらうと良いと思います。

windows7のサポート終了:windowsをやめてlinuxへうつるチャンスです(1)

福岡では2月17日に、ちらちらと初雪を観測しました。今まで一番遅い初雪の記録2月6日を111年ぶりに更新したそうです。

さて今日はこのところいろいろトライしているウインドウズ7のサポート停止に対する対策を書いておきます。そろそろlinuxを中心にパソコン生活を始めようというわけです。
上の写真はLinux  Mintを起動した時のデスクトップです。windowsとよく似ていますね。linuxといえばターミナルでのコマンド操作というのがよく話題になりますが、windowsとそっくりのデスクトップでマウスで操作するだけで使えますので、まずはこうしたwindowsなみのグラフィカルインターフェイスで使うのがおすすめです。

私はwindows7で動くパソコンをもっているのですが、windows7のサポートが今年の1月14日で終了した(windows defenderの更新はつづいているようです)ので、それに対する対策を講じなくてはなりませんでした。九大図書館などに自宅からwindows7を使っているパソコンでアクセスするとき文献をダウンロードしようとすると、画面一杯に警告画面が表示され、windows10への切り替えを促され、文献のダウンロードはできなくなっています。セキュリティを考慮した措置ですが、まだまだ問題なく使えるwindows7なのにうっとうしいサポート切れ対策を余儀なくされるのにはほとほと、うんざりさせられます。以前windowsXPのサポート切れにともなって、XPからwindows7にアップグレードするときも研究室の多数のXPパソコンをいちいちアップグレードするのは大変でした。今回は大学で使っているwindows7のenterpriseエディションからwindows10へのソフトやデータを残したままでのバージョンアップは結構簡単にできるのですが、それも結構時間と手間がかかるわけです。また使っているパソコンによってはスペックが不足してwindows7のように快適には使えないことがわかりました。windows7でインストールしたソフトもあるし、それがwindows10で動くのかも不明です。パソコン自体はwindows7で問題なく動いているので、無駄な追加投資をしたくないと思い、windows7はネットワークから切り離して利用することとし、ネット接続するときはlinuxを使うことにしました。参考になったのは日経からでているムックの「Windows 7パソコンをLinuxで復活させる本」です。日経Linuxの最近の記事をまとめたものですが、丁度windows7のサポート停止でウインドウズを止めようと思っている方には最適の本だと思います。

要は、windows7のパソコンはネット接続をせずに利用し続け、ネット接続には外付けハードディスク(あるいはSSD, USBでもだいじょうぶです)にインストールしたlinuxを使うという方針です。近頃はほとんどの作業はブラウザでやるので、linuxでブラウザを使う、メールをやりとりするなどができればネットでの作業はことたり、ネット接続していないwindows7を起動すれば、今まで使っていたwindows7で動いていたソフトもそのまま利用できます。(linuxにはwineというソフトがあって、幸運ならwindows7で使っていたソフトもlinuxのwineで動くかもしれません。)

ubuntu などの、日本語入力システム付のlinuxのインストールディスクを使って、USBや外付けのSSDや外付けHDDにlinuxをインストールします。こうしておけば、linuxをインストールした外付けのSSD(HDDでもUSBでもいいです)をwindows7で動くパソコンにとりつけてUSB接続したSSD(HDDあるいはUSBメモリ)から起動すればLinuxが使えますし、USB接続を外して(つまりUSBケーブルを外して)起動すればあいかわらず今まで使っていたwindows7が使えます。(他のwindowsとの共存のやり方としてはデュアルブートといって、起動したらlinuxかwindows7かどちらを使うかを選んでから起動すると言う便利な方法もありますが、これはどちらか一方が壊れたときとかにトラブルがおこることが多いそうですのでやめました。またlinuxの中でwindows7の仮想マシーンを起動して利用するというのもありますが、パソコンのスペックがいるし、windows7の仮想ディスクをつくるのにproduct IDがいるとかいろいろめんどうくさいのでやめました。)というわけで以下は外付けSDDにlinuxをインストールする手順です。

いろいろあるlinuxの配布版(ディストリビューション、ディストロ)のどれを使うか?distributionにはいろいろあってどれを使うか迷うのですが以下のようなdistributionは有名です。

Ubuntu Desktop 日本語 Remix
Linux Mint これには3種類あってCinnamonというのがおすすめです。32bit版と64bit版があります。
・puppy linux日本語版
・Pop!_OS(プライバシーを重んじているlinuxでファイルは自動で全部暗号化され、この配布版を作成している会社にデータを送ることもないそうです。日本語の利用設定も簡単)
・Zorin OS(これはwindowsからの乗換え用をうたっているものです。商用版あり)

これらはwindowsからの乗換えの記事でよくとりあげられています。私は最初 puppy linuxをUSBメモリに入れて使ってみました。linux mintは世界で一番多く利用されているlinuxだそうで、壁紙もきれいなのでこれもおすすめです。私はネットで情報が多い、Ubuntu Desktop 日本語 Remixを採用しました。これも他のdistributionと同じではじめから日本語入力システムMozcがセットでついていて便利ですし、windowsでつかっていたIMEの辞書も簡単に移行できるのでおすすめです。(下はLinux Mintの画面で、windowsのスタートボタンにあたるところをマウスでクリックした様子です)
長くなりましたので、今日はこの程度にして次回からは具体的なインストールの手順を書いていこうと思います。
他のやり方としてはVirtualboxというソフトをウインドウズのパソコンにインストールして、仮想マシーンとしてlinuxを動かすこともできます。これは私が大学の授業でlinuxの導入実習で使っていた方法です。以前のブログの記事にはこのやり方とlinuxの入門書があげてありますのでご覧ください。

高校生に知ってほしい強力ツール:ベンゼンの異性体を描いてみよう!

高校生に知ってほしい強力ツール ベンゼンの異性体を描いてみよう!:化学式から異性体の構造(環や二重結合、三重結合の存在可能性)を推定する方法

今年も残すところあと一日となりました。今年の福岡はことのほか紅葉がきれいで長く続きました。写真は11月に大宰府近くにある竈門神社(かまどじんじゃ)に行った時に境内で撮影した紅葉です。青空に映えてとてもきれいでした。

さて、今日は一足早いお年玉ということで、有機化学を学び始めた高校生や受験生、一般の方々に是非覚えておいてほしい強力なツールを紹介します。試験問題を解くのにも大活躍しますので、活用してみてください。

先日のブログで、三炭糖のdihydroxylacetoneが隕石の中から発見されているというお話をしました。C3H6O3という分子式で示される物質がどのような構造をしているかを推定する簡単な方法を紹介します。これは有機化合物の構造を質量スペクトルやNMRなどで推定する際に常用される方法です。(たとえば「有機化合物のスペクトルによる同定法 (第8版)」(東京化学同人)をご覧ください)

分子式はその物質がどのような元素からなり、それぞれの元素が何個あるかという情報の他に、分子内にある環や不飽和結合(二重結合や三重結合)の数についても教えてくれるのです。不飽和結合の存在や環の存在によって結合している水素の数が、環や不飽和結合がない場合にくらべてどれくらい減っているかを示すhydrogen deficiency indexという数を分子式から計算することができます。このインデックス(数)を計算すると、分子式内の二重結合の数、三重結合の数の二倍の数、および環状構造の個数の合計がわかります。計算の仕方は以下のとおりです。

hydrogen deficiency index=(炭素数+1)ー水素数/2ーハロゲン数/2+三価の窒素数/2です。

たとえばC3H6O3(つまり炭水化物C3(H2O)3の場合)なら、上の式で炭素数3、水素数6、酸素数3なので、(3+1)-6/2ということで1がインデックスとなります。つまりこの分子式で表される分子には二重結合が1個あるか、または環が一個あるだろうと予測できるわけです。ケトースもアルドースもありうることがわかりますね。

C7H7NOの場合だと、炭素原子数が7、水素が7、窒素が一個で酸素が1個ですので、インデックスは(7+1)-7/2+1/2となり、5となります。この分子はたとえばベンズアミドでありうるわけです。ベンゼン環には二重結合3つ、環が一個ありますからそれだけで4となりあとはアミド結合の酸素と炭素の間の二重結合が1となり合計5になります。この分子式でインデックスが5になるような異性体を練習に書いてみてください。

簡単な練習としてはC6H6が面白いです。良く知られているのはベンゼンです。しかしこの化学式で示される分子はもっといろんなものがあり得ます。

C6H6という分子のインデックスは炭素6個に水素6個ですから、(6+1)-6/2で4です。ベンゼンなら環が1個で二重結合3個ですのでたしかに4となってあっています。しかし環が1個で三重結合が1個(1x 2=2)、二重結合が1個でも4ですよね。大学生のときこのインデクスを使ってものすごい数の構造異性体を書いて遊んでいたのを思い出します。うちの奥さんが地味な遊びや、といっている声が聞こえますが‥‥。
解答例をはりつけておきます。もっといろいろ(合計30種類以上)書けますので試してみてください。(図は、ChemSpider(無料の化学構造のデータベースで、テキスト検索や構造検索ができます)という便利な化学のサイトで分子式C6H6の異性体を検索した結果から、一部を抜き出して、図を改変したものです。もとのページを見たい方はこちらです。)

もっと一般化したインデックスの計算式は以下のようになります。
hydrogen deficiency index =(Ⅳ)+1-(/2)+(Ⅲ/2)
ここでⅣというのは4価の元素(炭素Cとかケイ素Siの原子の数)
Ⅰは一価の元素の数、つまり水素Hやハロゲン(ClとかFとか)の原子数の合計
Ⅲは三価の元素の原子の数、つまり窒素Nとかリン原子Pなどの数です。

下の写真は竈門神社本殿そばの池に浮かんでいた もみじの落ち葉です。ゆっくりと風にふかれて水面をただよっていました。

単一細胞のRNA-Seq(scRNA-Seq)の入門動画とBrenner先生の新技術についての金言の紹介です。

科学の発展には新技術の開発が決定的な役割を果たします。このブログでも次世代シークエンサーの威力と題して、DNase-Seq (ディーエヌエース シークと読みます)などを紹介したことがあります。最近のNIH Videocastの番組で、新技術を紹介している優れた講演がありました。大変勉強になる講演で、スマートフォンからハイビジョンテレビ向けまでの様々な解像度で動画をダウンロードできますので、是非 通勤時間などを利用して動画をご覧ください。

これは、今年の7月24日に行われた講演です。Biowulf Seminar: Single Cell Sequencing: Powerful Applications and Practical Considerations(クリックすると動画サイトにとびます)という題で、一細胞のRNA-Seq (single cell RNA-SeqですのでscRNA-Seqと略します)のいろいろな方法と応用およびバイオインフォマティクスによる解析ツールについてやさしく紹介する優れた入門用の講演です。RNA-Seqというのは、細胞や組織の中にどんなRNAがどれほど存在しているかを、次世代シークエンサーを用いて、網羅的に同定する技術です。演者のMichael Kelly博士はsingle cell biologyの有名な実験研究者で、NIHのLinuxクラスター(9万5000個以上のprocesserと30ぺタバイト以上の容量(1ぺタバイは1000テラバイトです)をもつLinux cluster) Biowulfのユーザーでもあります。それでBiowulfセミナーで講演しているようです。内容は2012/2013年頃及したFluidigm C1 platformとSMARTer chemistryによる一個の細胞のRNA-Seqの方法、スループットが飛躍的に向上した2015年のDrop-Seq/InDropsの方法、そして2017/2018年頃から普及してよりハイスループット、低コストとなったsciRNA-Seq/SPLiT-Seq/Seq-Wellの方法などの紹介からはじまって、単一細胞レベルのRNA-Seqを鳥瞰していて、最適の入門講演と思います。 なおsci-RNA-seq (single-cell combinatorial indexing RNA sequencing)というのは、線虫C. elegansの各細胞のRNA-Seqを行った2017年の論文で使われた方法です。オープンアクセスになっていますので興味のある方は是非読んでみてください。新技術の開発がどれほど科学をすすめるかに感動します。

昔 Current Protocols in Molecular Biologyというプロトコル集を買っていました。その綴じ込みにSydney Brenner先生の言葉:
Progress in science depends on new techniques, new discoveries and new ideas, probably in that order. (科学の進歩は、新しい技術の出現、新しい発見、そして新しいアイデアの誕生によってもたらされる―おそらくこの順番で)
が載っていて感銘をうけました。

たしかに、放射性同位元素の生物学研究への応用、蛍光抗体法、モノクローナル抗体、レーザー共焦点顕微鏡、GFPなどの発明、PCR、DNAシークエンサー、遺伝子クローニングやゲノム編集技術、原子間力顕微鏡、タンパク質や糖鎖、脂質などの質量分析装置による解析技術、核磁気共鳴や電子スピン共鳴、X線結晶回折による生体分子の立体構造の解明、電子顕微鏡、クライオ電子顕微鏡、超高解像度の光学顕微鏡などなど、さまざまな新技術が生命科学の大発展を引き起こしてきています。Brenner先生が言うように、技術ができたらそれで何を研究できるかと考え、それが新発見を生み出し、新発見が新しいアイデアを生み出し、次の技術も開発される‥といった順に科学は発展しているようにみえます。

Current Protocolsの本は寄贈したので手元になく、 Brenner先生の言葉もうろ覚えではっきりしなかったので、ちょっと出典を探してみました。 Google 検索でSydney Brenner  quotesといれて探すとすぐにみつかって、多くの方がこの言葉をなるほどと思ったことがうかがえます。次にGoogle検索でこの言葉を二重引用符に囲んで”Progress in science depends on new techniques, new discoveries and new ideas, probably in that order.”を検索窓にいれて検索しました。するとなんとBrennerさん自身がこの言葉をどこ喋ったかを思い出せず、自分で探しただした、という記事がヒットしました。その記事によると、Brennerさんにこの言葉を引用したいがどこが出典かという問い合わせがあったのですが、自分でもいつどこで言った言葉か思い出せなかったそうです。そこで Alan Mackayという人のA Dictionary of Scientific Quotationsという本を探すと、この言葉がのっていて、 雑誌Natureの1980年5月5日号より、とあったそうです。さっそくNatureを見たのですが、なんとこの日には雑誌が発行されていないことがわかりました。それで結局わからずじまいだったとのことです。ところが数週間後、積み上げられた論文をいろいろみているとき、手書きの講演原稿が見つかったそうです。それはスイスのバーゼルにある Friedrich Miescher Instituteの10周年記念シンポジュウム(1980年開催)でのBrenner先生の講演の手書き原稿でした。ここでしゃべったんだというのがわかったので、このシンポジュウムについて報道していたNatureの記事を探したところ、1980年6月5日に掲載された記事が見つかって、その中にこの言葉がのっていたそうです。Biology in the 1980s, plus or minus a decadeというタイトルの記事です。ここからpdfがダウンロードできます。

先ほどの本は一か月だけ日にちを間違えていたということでした。講演会でのBrenner先生の手書き原稿にはこの文は以下のように書いてあるそうです。“ I will ask you to mark again that rather typical feature of the development of our subject; how so much progress depends on the interplay of techniques, discoveries and new ideas, probably in that order of decreasing importance.”

以下のサイトにはBrennerさんをはじめ、いろんな科学者の言葉が網羅されていて面白そうです。またそれ以外の面白い記事も多いのでおすすめです。
https://todayinsci.com/B/Brenner_Sydney/BrennerSydney-Quotations.htm
https://todayinsci.com/Quotations/QuotationsIndex.htm

2019年夏休みのおすすめ本―その1 成功の普遍的法則 ザ・フォーミュラ

毎日暑い日がつづきます。先日の台風ではリンゴの実が落ちるかと心配しましたが、一つも実が落ちずに順調に色づいています。さて今日からしばらく夏休みにおすすめの本を紹介します。

  先日、本屋にいったら有名なネットワーク科学者バラバシの書いたザ・フォーミュラ 科学が解き明かした成功の普遍的法則という本がありました。即決で買ってきました。これは良い本です。是非皆さん買って読んでみてください。特に学部の学生さん、大学院生、そして若い研究者の方に熟読してほしい本です。
バラバシさんはかつて出版された本、「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く―」(日本放送出版協会、2002年)(’LINKED:The Science of Networks)日本でもよく読まれた著名なネットワーク科学者です。(こちらの本は品切れのようですが、中古本や図書館で見つけて是非読んでみてください。入門書としてとてもよくできた本でお勧めの本です。)

成功するのには、パフォーマンスだけではだめで、それを社会が評価しなくてはならないことが最初に書いてあります。リーダーとしての成功の秘訣、なぜチームの成果なのにリーダーだけが脚光を浴びるのか‥、などの分析はとても参考になります。筆者らの作成した論文の共著者データからノーベル賞受賞者予測プログラムはほぼ100%過去の受賞者を予測したのに、たった一人だけ、ノーベル化学賞(蛍光蛋白質GFPの研究)を授賞するはずと予測した研究者がどこの大学研究所にもおらず行方不明、もちろんノーベル賞ももらっていませんでした。彼(Douglas C.Prasher)は米国Woods Hole臨海研究所でGFP蛋白質の部分的アミノ酸配列を同定しそれを使って設計したオリゴヌクレオチドプローブで、自らが作成したクラゲのcDNAライブラリをスクリーニングして、GFP遺伝子のクローニングに成功したGFP 研究のパイオニアの研究者です。GFPの研究でノーベル賞を授賞した線虫研究者のチャルフィ(Chalfie)さんにGFP 遺伝子をあげた人です。あちこち探してみるとなんと研究職をやめてしまって、アメリカのトヨタの送迎運転手をしていたのだそうです。GFP遺伝子を同定しクローニングした研究者なのに、なんという不条理。どうしてこんなことになったのでしょうか?

全くアメリカで無名だったアインシュタインが何故か船でアメリカに到着した時、数万人もの群集に歓迎されました。そのせいで、その後、各地で熱狂的に歓迎されました。これはちょっとした間違いに起因するらしい‥などなど面白いトピックも満載で飽きさせません。筆者らの研究(雑誌Scienceにのった論文)をもとに噛み砕いて書かれており、ネットワークサイエンスから導き出された成功の普遍的法則が記載されている必読の本です。ざっと読んだあとは、じっくり参考文献やurlを参照しながら、考えながら読み直すことをすすめます。これから研究者の道を志す人に是非読んでほしい本です。

はやぶさ2 二度目のタッチダウン大成功 おめでとうございます!

はやぶさ2が再びタッチダウンとサンプル採取に成功とのニュース、おめでとうございます。
今日はそのニュースでもちきりでした。ストリーミングで管制室の生中継がみられたり、記者会見がみられたり、とてもよい時代ですね。

前回のはやぶさの大気圏突入の時は、テレビはどこのチャンネルでも中継をやっておらず、なんでウーメラ砂漠から生中継がないのかと残念に思ったものです。今回はマスコミも大幅に報道力の強化済みのようで楽しかったです。今この中継をみている子供たちは本当にいい環境でそだっていますね。将来が楽しみです。写真はCAM-Hで撮影したタッチダウン4秒後の画像(画像のクレジット:JAXA) で、以下のページからダウンロードしたものです。
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20190711_PPTD_ImageBulletin/
舞いあがっている岩石片が印象的ですね。

今回はYouTube中継をテレビ(AmazonのfireTVStick)でみました。以前はYouTubeアプリがfireTVstickにあったので、テレビでYouTubeをよく見ていたのですが、しばらくしてGoogleとAmazonが対立して、アプリがfireTVで無効になり、ブラウザでしかYouTubeがみられなくなっていたのです。ChromecastやAndroid TVでamazonのprime videoが見られなかったり、逆にamazonのfire TVでYouTubeがみられなかったりという状態が続いていました。ところが数日前にGoogleとAmazonのYouTubeをめぐる争いが終わり、fireTVstickのYouTubeアプリが久しぶりに復活して使えるようになっていました。そこで、さっそくダウンロードしてはやぶさ2の生中継をテレビでみることができました。パソコン画面よりやはり格段に見やすいのでこれからYouTubeを見るのに活用できそうです。

お知らせ―サイトを常時SSL化しました!(5/27日追記有)常時SSL化の手順

昨日、WordPressで作っているこのサイトをSSL化しました(SSLはSecure Sockets Layerの略だそうです)。具体的にはサイトにアクセスしてもらったとき、ブラウザのサイトのurl表示のところが鍵マークになり、ブラウザとサイトのサーバー間の接続が暗号化されるようになるということです。最近のブラウザではhttpsでアクセスしないと警告表示がでたりしますので多くのサイトが常時SSL化をしています。昨日やってみましたが以外に簡単にできました。今後はアクセスするときのurlがhttp://glycostationx.orgからhttps://glycostationx.orgにかわるというわけです。

以下は覚書をかねたSSL化したときの手順です。各自ご自分のサイトに合わせて読み替えてみてください。(写真はひと月ほど前に咲いていたリンゴの花です。今年は去年より沢山花が開きました。意外かもしれませんが、九州ではリンゴも栽培されています。)

1.最初にSSL化の失敗に備えて、サイトhttp://glycostationx.orgを丸ごとバックアップしました。サイト自体をAll-in-One WP Migration というWordPressのプラグインでバックアップして保存しておきます。やり方は簡単で、このプラグインをインストールしたあと起動し、エクスポートを選びます。画面がエクスポート用画面に変わるので、エクスポート先をクリックして出てきたメニューから、ファイルを選びます(クラウドを選ぶこともできます)。するとサイト名であるglycostationx.orgをダウンロード、サイズ:何メガバイトなどと表示されるので、拡大収縮表示されている部分をクリックして、保存先をパソコンの適当な場所に指定してダウンロードしたらOKです。この作業は以下を参考にして実施しました。
https://smakoma.com/wordpress-backup-restore.html
(もちろんこのようなプラグインを使わず、ftpなどでサイトのファイルを丸ごとダウンロードすることもできます。こちらのほうがギガバイト以上あるようなサイトの場合は早くて確実だと思います。)

2. サイトのバックアップができたら、次に私の使っているレンタルサーバーで無料のSSL証明書を発行してもらってSSL化を申請して、http://glycostationx.orgをhttps;//glycostationx.orgに変えました。これはレンタルサーバーごとに手順があるのでお使いのサーバーのマニュアルなどで調べるか、Google検索などでレンタルサーバー名とSSL化などのキーワードで探してみてください。エックスサーバーでのやり方を解説している以下のページはとても参考になりました。https://nelog.jp/wordpress-ssl
私の使っているレンタルサーバーでは、SSL化を申請後、1時間もかからずにサイトにhttps://glycostationx.orgでアクセスできるようになりました。

3.次に、WordPressのダッシュボードで、設定―一般とすすみ、WordPressアドレス(URL)とサイトアドレス(URL)の項目(どちらもhttp://glycostationx.orgになっている)をhttps://glycostationx.orgへと変更して変更を保存します。

4.次に、http://glycostationx.orgをブックマークしてある方などをhttps://glycostationx.orgへと自動で誘導するように設定する作業を行います(これはサーバー側での301HTTPリダイレクトというそうです。)。これには.htaccessのファイル(ドットエッチティーアクセスファイル)を編集します。とても簡単な作業で、
サイトの”.htaccess”ファイルの先頭に以下を追加しておくだけでOKです。
RewriteEngine On
RewriteCond %{HTTPS} !on
RewriteRule ^(.*)$ https://%{HTTP_HOST}%{REQUEST_URI} [R=301,L]

.htaccessファイルの編集には、自分のドメインのフォルダの下にあるpublic_htmlの中にある.htaccessファイルを編集します。レンタルサーバーが.htaccessファイルを編集する手段を提供している場合はレンタルサーバーのツールで編集するのもよいですが、安全のため、いちどftpなどで.htaccessファイルをダウンロードして、保存しておき、テキストファイルエディタで開いてみて中身をよくみてから編集するのをすすめます。

今回、サイトでの.htaccessファイルのありかを確認してftpでダウンロードし、編集してアップロードするには、WinSCPというファイル転送ソフトを使いました。
https://winscp.net/eng/docs/lang:jp
このソフトはデフォルトではドットが先頭についている隠しファイルは表示しないので、ソフトを起動して環境設定―パネルを選び、「一般」にある「隠しファイルを表示する」にチェックを入れるのを忘れないようにしてください。こうすると.htaccessファイルが表示され、ダウンロード、アップロードができるようになります。編集が終わったら、編集済みファイルをWinSCPでアップロードしてもとあった.htaccessファイルに上書きしたら完了です。http://のサイトurlでアクセスしてhttps://のサイトへ飛ぶことを確認してください。
WinSCPは九大での旧ホームページ作りにも使っていたとても便利なFTP/SFTP/SCPクライアントソフトです。他にもiPadへのWindowsからの電子ブック転送とかにも使って重宝しています。

5.次に、自分のサイト内での画像やpdfへのリンクなどにhttp://glycostationx.orgではじまるurlを使っているので、これらをすべてhttps://に変える必要があります。1.でバックアップができていることを確認した上で、サイト内のhttp://glycostationx.orgの記述(画像やpdf, サイト内の別のページへのリンクなど)をhttps://glycostationx.orgへ一括で変更します。一括変更には、WordPressのプラグインSearch Regexを使います。このプラグインでブログ内の記述でhttp://glycostationx.orgで始まるものを検索、これをhttps://glycostationx.orgに一括で変更できるので大変便利です。検索にはプラグインのタイトルどおり正規表現も使えますが、単なる文字列でも検索・置換ができます。

注意:このプラグインは更新が3年ほどなされていないため、最新のWordPress(バージョン5.2)で使うと、エラーのメールがとどきます。ブログ名のあとに「サイトで技術的な問題が発生しています」というタイトルのメールがとどいて驚いたのですが、内容は、
”エラータイプ E_ERROR が ブログサイトのwp-content/plugins/search-regex/view/results.php ファイルの 26 行目で発生しました”などというものでした。
Google検索で以下のキーワードで調べてみると、
「”search regex” wordpress 技術的な問題が発生しました」
次のような解決策のページがありました。
https://smakoma.com/search-regex-error.html
このページのとおり、WordPressのダッシュボードからプラグインを選び、プラグインエディターを開いて、該当のエラー行を削除したら完了です。この作業後はもうエラーのメールはこなくなりました。

エラーがでなくなったところで、プラグインをインストールしてあれば、ツールメニューにSearch Regexがありますので、クリックして起動します。SourceにはPost Contentをまず選びます。Limit toとOrder Byはデフォルトのままでよいです。http://glycostationx.orgを検索して、https://glycostationx.orgへと置換したいので、Search patternと書いてある検索窓にhttp://glycostationx.org、Replace patternと書いてある置換窓にhttps://glycostationx.orgといれて、Replaceボタンを押します。するとサイト内のhtml記述中のhttp://glycostationx.orgで始まる部分が全部表示され、https://glycostationx.orgで置換された表現も併せて表示されます。この段階では置換は行われていません。ちゃんと置換すべき部分が表示されているかどうか、全部確認した上でOKならReplace & Saveボタンを押せば全部置換してくれます。このボタンの操作は戻せないので確認は慎重にしてください。終わったら他にhttp://glycostationx.orgの記述がないかを、SourceをPost excerptにして再確認します。あれば確認して置換します。他のSourceについても順次作業を繰り返し、終わったら置換終了です。

6.最終確認です。ChromeとかFirefoxとかでサイトにアクセスしてちゃんと鍵マークが表示されるか試してください。トップページや固定ページごとに試してみて全部鍵マークが表示されればOKです。私の場合は、論文と研究概要の固定ページでエラーになり、鍵マークが表示されませんでした。その部分をクリックすると画像が疑わしいというようなメッセージがでました。そこで、ブラウザのChromeで問題のあるページを表示して、右クリックしメニューの中の検証をクリックします。表示されるページでConsoleをクリックすると、問題のある画像がどれか教えてくれるので修正することになります。私の場合は、画像を九大の旧サイトを参照することで表示しており、このサイトへのリンクがhttpsではなかったからエラーになったのがわかりました。訂正すると無事、全部鍵マークになりました。

7. あとはGoogle Search ConsoleやGoogle Analyticsへの登録が必要になったりするサイトもあるかもしれませんので、その場合は、各自検索して調べてみてください。

私はGoogle Search Consoleを使っていますが、その場合はプロパティの追加で、URLプレフィックスではなくて、ドメインのほうを選びます。ドメイン名を入れて続行ボタンを押すと、「DNSレコードでのドメイン所有権の確認」という画面に変わり、テキストレコードが発行されます。このテキスト(特定のドメインの同定用の文字列です)をコピーして、サイトのサーバーのDNS編集画面から、このテキストを内容とするTXT タイプの新しいDNSレコードを作成します。DNSレコードの追加が終わったら、あとはGoogle Search Consoleの「DNSレコードでのドメイン所有権の確認」画面で確認ボタンをおして所有権を確認します。確認がまだですというような画面がでたら10分ほどおいて再度確認すると確認が終わると思います。この方法を使えば、http://glycostationx.orgの時のデータもそのまま移行されるので便利です。http://glycostationx.org, https://glycostationx.org, http://www.glycostationx.org, https://www.glycostationx.orgそれぞれについてプロパティをGoogle Search Consoleで作成して所有権を確認‥‥という面倒な手順は不要です。

この方法は、「サーバー名 dns レコードでのドメイン所有権の確認」という検索キーワードで見つけました。

Sydney Brenner先生がなくなられました―検索エンジンSemantic Scholarを使ってみよう

分子生物学の開拓者であり、モデル生物C. elegans(線虫シー エレガンス)を世に送Sydeny Brenner先生が先日(4月5日)なくなりました。RIP to a scientific hero.などとtwitterでも惜しむ声が多かったようです。雑誌Natureの追悼記事はこちらにあります。写真はOIST(沖縄科学技術大学院大学)提供のものです。(RIP というのはラテン語のrequiescat in paceの頭文字をとったもので、may he rest in peace, may she rest in peace, may they rest in peaceの意味だそうです。安らかにお眠りくださいという意味ですね。)
Brenner先生は分子生物学の開拓者の一人で、電子顕微鏡のネガティブ染色法の開発者でもあります。突然変異のメカニズムの研究で大きな業績をあげ、それを使ってアミノ酸をコードしている遺伝暗号が3つの塩基の並びからなる(あるいはありそうもないが3の倍数)ことを証明したり、トランスファーRNAの存在を予言、あるいはmRNAの存在をJacobとの共著論文で証明したりしています。これだけでもノーベル賞級の発見ですね。今まで分子生物学で大いに役立ったファージのように使いやすい多細胞生物で、発生や神経の問題を調べるために理想的なモデル生物を探した結果、線虫C. elegansを導入し、プログラムされた細胞死の研究でノーベル賞を授賞されています。私も英国ケンブリッジにいたときに先生のセミナーにでたことがありますが、理論面からの実験への鋭い切り口が印象的なセミナーでした。新しい技術は新しい発見を生むという先生の言葉は特に記憶に残っています。

Brenner先生の自伝的回想のインタビュー(発生生物学者で位置情報の三色旗モデルで有名なLewis Wolpertに語っています)をまとめた、「エレガンスに魅せられて」という本も前に買ってもっていますが、今は中古本でしか入手できないようですね。

YouTubeにはBrenner先生の動画が色々ありますので、適当なのを選んでご覧になるといいと思います。上に載せている動画は2017年に四日間にわたってシンガポールで行われたBrenner先生の講義の動画です。四日分がアップロードされていますのでご覧ください。この講義はIn the Spirit of Science: Lectures by Sydney Brenner on DNA, Worms and Brains という題で、本になっているようです。私はまだ入手していませんが英語が聞き取れない人は買ってみるのも良いと思います。Kindle版は安く入手できるようです。
この動画、まだ最初のあたりしか見ていませんが、 Turingとvon Neumannの話からはじまっています。Brenner先生はSchrodingerのWhat is Life?には全く興味をもてなかったと、上の自叙伝の本で述べていますが、かわりにNeumannの自己増殖オートマトンの理論に深い興味をもたれたようです。このYouTubeの講演でいっている自己増殖オートマトンの本というのは、たぶんノイマンが1948年にHixsonシンポジュウムというシンポジュウムで、THE GENERAL AND LOGICAL THEORY OF AUTOMATAという題で講演した論文で、後に出版されたこの本Theory of Self-Reproducing Automataではないと思います。Hixson symposiumのNeumannの論文は、中央公論社からでた世界の名著66 現代の科学IIに品川嘉也先生の訳で「人工頭脳と自己増殖」という題で邦訳されています。図書館や古本で探して見られると読めると思います。詳しい注釈がついているので翻訳版はおすすめです。英語の論文はここにあります。これはSemantic Scholarという検索エンジンを使って探しました。これは、工学系、生命科学系にかかわらずとても有用な検索エンジンのように思われます。この検索エンジンはマイクロソフトの創設者の一人Paul Allenが設立したAllen Institute for Artificial Intelligenceが作成しているAIベースの検索エンジンです。コンピュータ科学や生命医科学の論文が収録されており、たとえばC. elegans, chondroitin synthaseで検索すると、私達の論文がトップにでてきます。

遺伝暗号の解読をBrenner先生やCrickたちが進めていたとき、モスクワの学会で全く無名の研究者が遺伝暗号の解読の成功を発表しました。その時、彼の発表会場はほとんど空で人がいなかったそうです。遺伝暗号の最初の解読結果が発表されたというのを友人のMatt Meselsonから聞いたCrickは、その無名のアメリカの科学者Marshall Nirenbergにもう一回、1000人以上が集まるシンポジュウムで同じ話をしてくれと依頼したそうです。シンポジュウムのプログラムにNierenbergの名前を手書きで書き加えたものが残っています。その場でNirenbergは二番目の遺伝暗号の解読の成功も発表したそうです。聴衆は電撃を受けたようなショックを感じたそうです。
これは、私がケンブリッジのMRC LMBのWhite先生のラボに入ったその日に、同時にポスドクにやってきたBob Goldsteinさんが書いているBrenner先生から聞いた話のまとめに載っている話です。自分の研究が抜きさられた(scoopedといいます)時のCrickの態度には学ぶべきところが多いです。Brenner先生の話を聞きに行ったときの別れの際にBrenner先生がGoldsteinさんに語った以下の言葉が印象的です。
As Brenner told me by way of parting advice: “Do the best experiments you can, and always tell the truth. That’s all.”

その他、Brenner先生に関する資料のリンクもGoldsteinさんの以下のページにありますのでご覧ください。

https://goldsteinlab.weebly.com/resources.html

 

糖鎖生物学入門―2

糖鎖生物学入門―2

新元号が令和に決まりましたね。漢和辞典でという字を調べてみると、令日は「よき日」の意味ですし、令人は「よき人、美しい人」の意味、令嬢とか令徳など、の次に来る字が「よきものであり、うやまう」という用例が多いようです。平和や なごみがよきものになりますようにという意味になる、よい元号だと思いました。
今これを九大医学部図書館で書いていますが、九大医学部の桜も満開です。写真は今日の医学部キャンパスで撮影した満開の桜と、

3月26日に撮影した医学部キャンパスの桜です。

さて、糖鎖生物学入門の二回目です。九州大学で同名の講義をした時の資料をもとに全く新しく書いていきます。

糖鎖の構成要素(単糖):
糖鎖sugar chainというのは、単糖とよばれる糖がつながってできる鎖(枝分れするものも多い)です。糖鎖というのは例えばこんなものです。

この図には9種類の糖鎖があげてあります。色のついた丸や四角が単糖monosaccharideを表しており、単糖が様々につながって糖鎖ができるのです。枝分れしたりしていますので、糖鎖はとても多彩な分子構造をとることができそうですね。

単糖というのは、グルコース(ブドウ糖です)とかガラクトースとか、フコースとかN-アセチルグルコサミン(エヌアセチルグルコサミン)とかいう糖で、色々な種類があります。糖鎖について学び始めるときに最初に学ぶべき単糖の名前を下の図にのせておきます。こんな単糖があって、糖鎖をつくっているのだというのをみるのに最適な、入門者むけの単糖だけを選んであります(註1参照)。
この図にのっている単糖の名前や、記号を全部覚える必要はありません。その都度、参照することにしたらいいです。図にある単糖の中でN-アセチルグルコサミンGlcNAc(N-アセチルグルコサミンです。糖鎖生物の研究者は普通、グルックナックと読みます)とか、マンノースMan、グルコースGlc、ガラクトースGalなどの名前はサプリメントの広告とか、日常生活でよく耳にするのではないでしょうか?図には15個の単糖が並んでいますが、たいていの糖鎖はこの図の中の数種類だけを使ってつくられています。単糖の具体的な構造は以下で紹介します。

さて単糖の表記には図にみられるような、カラフルな記号表記が良く用いられています。昔はもっとごちゃごちゃした表記しかなかったのですが、パッと見て糖鎖の構造や類似性がみやすいカラフルな表記が普及しつつあります。Symbol Nomenclature for Glycans (SNFG)と呼ばれる記号表記で、以下のページにまとめられているので参照に便利です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/snfg.html

リンクをクリックしてもらって図をご覧になればわかりますが、ものすごい数の単糖がならんでいます。これを全部覚える必要はありません。この図には様々な糖鎖を記述できるようにと、ヒトなどではあまり見かけない単糖も入っているからごちゃごちゃしているのです。そこで次の表には私の独断と偏見で選んだ、入門者に必要な単糖のみを残して後は消したものをあげてあります。(バクテリアにみられる糖とか、希少糖などめずらしい糖―いろんな生理機能も知られて重要性が叫ばれています―を除外しています。)上の図よりちょっと増えて20個ありますが必要に応じて参照していただければと思います。リンク付のpdfファイルもここにありますので参考にしてください。

Glc  Man  Gal 
グルコース マンノース ガラクトース
GlcNAc  ManNAc  GalNAc 
N-アセチルグルコサミン N-アセチルマンノサミン N-アセチルガラクトサミン
GlcN  ManN  GalN 
グルコサミン マンノサミン ガラクトサミン
GlcA  ManA  GalA  IdoA 
グルクロン酸 マンヌロン酸 ガラクツロン酸 イズロン酸
  Xyl  Fuc 
キシロース フコース
Kdn  Neu5Ac  Neu5Gc  Neu  Sia
ケーディーネヌ N-アセチルノイラミン酸 N-グリコリルノイラミン酸 ノイラミン酸 シアル酸(左の単糖から合成される単糖の分子ファミリー名)

青字の単糖にはリンクがはってありますので、クリックすると単糖の構造式や立体構造が表示されるページにとびます。
こうしたカラフルなSNFG表記の記号は、糖鎖科学の標準的教科書Essentials of Glycobiology 3rd editionでも使われています。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK310274/ 書籍版は有料ですが最新版が無料で上のリンクで公開されています。この本の図を全部パワーポイント形式にまとめたスライドも前の記事に書いたように無料で公開されていいます。糖鎖生物学の入門者には、この教科書の通読は必要ありません。せっかくネットにアップロードされていて、本の中身の検索もオンラインで自由にできます(このリンクのSearch this bookボタンを使います)ので、糖鎖学習のハンドブックとして是非活用してください。第二版の日本語訳も出ています。

単糖の構造を立体表示してみよう:PubChemによる表示
PubChemというのをご存知ですか?PubChemはNIHが公開しているオープンデータベースです(だれでも研究データをアップロードできて、だれもが利用できるというのがオープンの意味です)。PubChemを使うと様々な化学物質の情報、生理機能、特許、文献、構造式、立体構造そのほかが無料で調べられ利用できます。糖鎖を構成している単糖の構造を立体表示するにも最適のサイトですので、使ってみましょう。

SNFGのページを開いて以下のリンクから単糖のリストのパワーポイントファイルをダウンロードすると、

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/glycans/docs/SymbolNomenclatureForGlycans_SNFG_Slides_UpdateJun2017.pptx

全部の単糖が入ったファイルがみられます。上で物凄い数の単糖のリストといったものです。各単糖にはPubChemへのリンクが張られており、スライド表示にして単糖の名前をクリックするとPubCemへのリンクがブラウザで開いて、化学式や立体構造がPubChemで表示されるのでとても便利です。いろいろPubChemで単糖を表示して遊んでみるのが入門にはよい経験になります。グルコースやガラクトースを立体表示してくるくる回して分子模型を手にとってみているように学べます。

注1:図は糖鎖構造を書くソフトGlycoEditorの入力画面をスクリーンショットしたものです。無料の糖鎖構造作図ソフトですので自分で使えそうな人は、ちょっと使ってみるのをお勧めします。詳しい使い方は次回以降に説明します。

 

京都大学の動画サイトの紹介です―福岡では桜が本日開花しました

今朝 散歩しているとき、桜の花が開花しているのを見つけて写真にとりました。福岡市近郊での写真ですが、福岡市でも桜が開花したそうです。つくしもずいぶん大きくなっていて、近所の奥さんから どっさりいただいて先週おいしくいただきました。春のはじまりです。

今日は京都大学の動画サイトを紹介します。
京都大学OCW (Open Course Ware) というサイトです。理学部や医学部、医学研究科など京都大学の様々な講義、講演のビデオやシラバスが集められて公開されています。

上のリンクからいろいろ探してごらんになるといいですが、たとえば
聴講コース 臨床研究者のための生物統計学 (AMED生物統計家育成支援事業
聴講コース 臨床研究者のための生物統計学)という医学研究科のコースには、ここをコピペしただけですが以下のような講義のビデオがならんでいます。
宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ」(岩波科学ライブラリーに二冊あります)の著者の佐藤先生や挿絵を描いておられるという奥様の講義もみられますので是非ご覧ください。

第1回 2017年5月25日 なぜランダム化が必要なのか?
(日本語字幕あり)
田中 司朗 特定教授 Video
第2回 2017年7月20日 リスクの指標と治療効果の指標
(日本語字幕あり)
田中 司朗 特定教授 Video
第3回 2017年10月19日 仮説検定とP値の誤解
(日本語字幕あり)
佐藤 俊哉 教授 Video
第4回 2017年12月21日 生存時間解析の基礎
(日本語字幕あり)
米本 直裕 助教 Video
第5回 2018年2月1日 メタアナリシス
(日本語字幕あり)
田中 司朗 特定教授 Video
第6回 2018年5月17日 統計家の行動基準
この臨床試験できますか?

(日本語字幕あり)
佐藤 恵子 特任准教授 Video
第7回 2018年7月12日 データマネジメントとは
(日本語字幕あり)
多田 春江 特定准教授 Video
第8回 2018年10月25日 ランダム化ができないとき
(日本語字幕あり)
佐藤 俊哉 教授 Video
第9回 2018年12月20日 交絡とその調整
(日本語字幕あり)
佐藤 俊哉 教授 Video
第10回 2019年2月21日 回帰モデルと傾向スコア 佐藤 俊哉 教授 Video

そのほか、理学部をみると、細胞内情報発信学という講義が掲載されおり森 和俊 先生(理学研究科教授)の講義がみられます。3年生向けの講義ですが、面白そうです。

その他いろいろ探して各人の興味にあった講義を聴講してみてください。