今日は、MITとハーバード大学が提供している連続講義シリーズMedical and Population Genetics Primer(MPG Primer)の最新の動画を紹介します。
MPG Primer: Why Genomics Needs Exposomics to Solve the Puzzle (2026)
https://youtu.be/waH9TBO_2kY?
Medical and Population Genetics Primer
January 22, 2026
Broad Institute of MIT and Harvard
演者はProf. Peng Gaoです。
Assistant Professor, Harvard T.H. Chan School of Public Health
Affiliate Faculty, Broad Institute
ChatGPTとGemini thinkingに動画のスクリプトをアップロードして内容を要約してもらいました。以下にそれらをもとに、私がまとめたメモをペーストしておきます。遺伝子はヒトの病気の原因の30%程度しか説明できないというこの動画はとても面白いと思います。是非、視聴してみてください。
この講義では、よく知られているゲノムgenomeと、聞きなれない言葉であるexposomeの関係、相互作用の重要性について学べます。-omeというのはomeの前についているもの全部の集合(数学的な意味の集合です)という意味です。gene全部の集合がgenome、タンパク質全部の集合がproteome、脂質全部の集合がlipidomeなどと使われます。ではconnectomeってなんだと思いますか?これは神経などでどの細胞と、どの細胞がつながっているconnectとしているかという情報の全部という意味です。今回の動画にでてくるexposomeというのは、生物が外界からさらされる影響の全部のという意味になります。つまり、エクスポソームは遺伝的要因以外のすべての外部因子の総称で動画によると次の4種類に分類されます。
1.化学的因子: 有機・無機汚染物質(農薬、重金属など) 。
2.生物学的因子: 微生物、ウイルス暴露など
3.物理的因子: 温度、湿度、放射線など
4.心理社会的因子: ストレス、感情、人間関係など(これまで見落とされがちだった重要な要素)
ヒトの表現型は非常に複雑で、ゲノム(遺伝子の全体)だけで全てを説明することはできないことがわかっています。560のヒトの表現型と遺伝子の関係を解析した大規模コホートの研究データ(2019年の論文)によれば、 ゲノム要因が表現型(疾患など)に寄与する割合は平均して約30%に過ぎない(“ChatGPTに探してもらった次の論文を多分念頭に置いていると思われますRepurposing large health insurance claims data to estimate genetic and environmental contributions in 560 phenotypes.”
Nature Genetics 2019;51(2):327–334.
DOI: 10.1038/s41588-018-0313-7. PMID: 30643253. 。
残りの約70%は、環境要因(エクスポソーム)または遺伝と環境の相互作用(GxE)によるものであると考えられるそうです。
この外部因子からの影響ですが、調べてみると同じ都市や近隣に住んでいても、個人の暴露プロファイル(Exposome cloud)は劇的に異なることがわかってきたそうです。また移動(旅行など)によって、化学的・生物学的暴露はダイナミックに変化することもわかったそうです。さらに個々の化学物質は基準値以下でも、それらが混合することで毒性が増強される相乗効果(シナジー効果)も確認されています。演者らは、プロテオミクス解析から、エクスポソーム物質の多くが免疫システムに関連する経路やタンパク質と相関していることをあきらかにしています。またメタボロミクス解析してみると、腎機能・肝機能・酸化ストレスに関連する経路とエクスポソームとの強い相関が示されたのだそうです。
エクスポソームを明らかにする作業はまだ始まったばかりです。高分解能で質量を精密に計測できる高分解能質量分析計(HRMS)を用い、どんなエクスポソーム因子が存在しているかを網羅的に解析する研究がはじまっているそうです。エクスポソーム因子のサンプリングには、シリコン製リストバンドを用いた受動的サンプラー(安価で大規模調査向き) やポンプを備えた能動的サンプラー(高価だが、化学物質と微生物の両方を精密に捕集可能)を使うとのこと。今後は、組織内での有害物質の分布を可視化するイメージング質量分析や、単一細胞レベルでの暴露解析(Single-cell exposomics)への展開を計画しているとのことでした。エクスポソーム研究は化学、生物学、環境科学、データ科学が融合した超学際的な分野であり、これらの統合が不可欠です。ただ個人の継続的なモニタリングによる被曝プロフィルの解明には非常に時間とコストがかかり、その上統計的な信頼性を確保するためのサンプルサイズの拡大のためのコストも将来的な課題として挙げられているそうです。