量子コンピュータの基礎についての講義ノートがでています

「デモクリトスと量子計算」(森弘之訳、Scott Aaronson著)という本がでています。https://www.morikita.co.jp/books/mid/087201
訳者の森先生は東京都立大学の教授でブルーバックスの「二つの粒子で世界がわかる」https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000322626
を書かれた先生です。この本「デモクリトスと量子計算」の著者Scott Aaronsonさんは、現在テキサス大学(Austin)のコンピューター科学部の教授で、量子情報センターの所長をしておられる先生です。以前はMIT(マサチューセッツ工科大学)のElectrical Engineering and Computer Scienceで9年ほど教えておられたそうです。量子コンピュータに何ができて何が限界かを研究しておられる専門家だそうです。

https://www.scottaaronson.com/
上のホームページにリンクが載っていますが、最近、先生の学部向け講義のノートが公開されました。最近公開されたのはIntroduction to Quantum Information Science II (undergraduate, 2022)という講義の講義ノートのpdfで、以前公開されていた講義Introduction to Quantum Information Science (undergraduate, 2016)の講義ノートの続きになっています。まず2016年の講義ノートから勉強してくださいとのことです。
https://scottaaronson.blog/?p=6685
2016年の講義ノートのほう(2018年発行)を読み始めてみると、大変わかりやすい講義ノートのようです。Church-Turing Thesisとは何か、という解説から始まっていますが、わかった気にさせてくれる説明でした。二重スリットの実験の話が次に続いていて、読みやすい講義ノードです。興味のあるかたは一度ダウンロードして読んでみてください。
写真は今朝いっぱい咲いたソライロアサガオの花です。西洋アサガオのなかまですので、夏の終わりから元気がでる花だそうです。

今日は美しい中秋の名月(満月)が見られました!

今日は中秋の名月です。ここ数年 福岡では、中秋の名月は雲に隠れてちらっとしかみえなかったり、雨だったりしたのですが、今日は快晴で丸い美しい満月を堪能できました。(15夜の月は必ずしも毎年満月とはかぎらないのです)
東の山から高く上った月の左下には、木星がでていました。

今日は数学関係の本を二冊紹介して寝ることにします。
一冊目は、今日AmazonのKindle unlimitedで偶然見つけた本です。「世にも美しき数学者たちの日常」(二宮敦人著、幻冬舎2019年)という本で、日本の数学者の方々(黒川信重、加藤文元、千葉逸人、高瀬正仁など著名な数学者や数学教室講師、芸人などへのインタビューが集められている本です。
https://www.gentosha.co.jp/book/b13642.html
最初に九州大学におられた高瀬正仁先生(九大名誉教授)のインタビューを読みました。先生とは残念ながらお話したことがないのですが、岡潔やガウス、リーマンなど数学史に名を刻んでいる数学者の原著の解説本や数学史の本、岡潔の伝記など様々な興味深い本を書かれている先生です。現代数学は間違った方向にいってしまっていて、しょうむない問題を設定してそれを高度な数学を構築して解いているというような現代数学批判の発言が収録されています。鶴亀算の解き方を例にとって、亀がぱっと二本足で立ったとしたらというアイデアで問題を解くのが岡潔やオイラー、リーマンの情緒の数学、鶴亀算から連立方程式を考案して、一般化して様々な問題が解けるようにするのがカルタンなどが創始した現代数学だという話をされています。高瀬先生がなぜ数学史や偉大な数学者の原典解説本を著されているかがよくわかりました。他の先生がたへのインタビューもとても面白そうでこれから読んでみようと思います。

もう一冊は、「ガロアの夢―群論と微分方程式」(久賀道郎 著 日本評論社)という本です。東京大学教養学部のゼミナールで行われた講義の記録という本で、名著という評判の高い本です。これは購入しなくても国立国会図書館の個人送信資料で読めます。(2023・12・04追記:出版社が復刊するというアナウンスがあったのでチェックしたら、個人送信資料では読めなくなっていて、館内限定に変更されていました。残念なことです。)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1383206
こちらでパラパラ眺めてみて読めそうだったら読んでみてください。私は昔 紙の本を購入して読み出しましたが、挫折中です。

サイト 科学図書館の再紹介です

今日は以前紹介したことがあるサイト 科学図書館
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/munehiro/science/scilib.html#top
にある本をいくつか再紹介しておきます。是非サイトを訪れてダウンロードして読んでみてください。私は、パスツールの「自然発生説の検討」を高校の時によんで感動しました。このサイトには国立国会図書館の個人送信資料でよめる本もはいっていますが、その場合でもTexでくみなおされたpdfは、個人送信資料のみにくいスキャン画像を凌駕しています。

『数学史散策」(増補版)村田全
『科 学の価値』ポアンカレ・田辺元訳
『科学者と詩人』ポアンカレ
ハーヴェイ 『動物の心臓ならびに血液の運動に関する解剖学的研究』
ルグロ 『科学の詩人――ファーブルの生涯』
ダーウィン 「人 及び動物 の表情について」〔改訂版〕
パストゥール 「自 然発生説の検討/自然発生について」
アーレニウス 「史的に見たる科学的宇宙観の変遷」〔改訂版〕寺田寅彦訳
オストワルド 「エネ ルギー」 全面改訂版。
『量 子力学史」(改訂版) 天 野清の主著。
「熱輻射論と量子論の起源(改訂版)」天野清
「光 と生命」(N・ボーア著)
「物理学序説〔改訂版〕」寺田寅彦 (物理学の哲学的考察を目指しながら、惜しくも 未完に終わった論考。附録として「自然現象の予報」をつけた)

以前の記事はこちらです。
https://glycostationx.org/2018/06/06/%e7%84%a1%e6%96%99%e3%81%ae%e7%84%a1%e6%96%99%e3%81%ae%e7%a7%91%e5%ad%a6%e3%81%ae%e6%9c%ac%e3%82%92%e3%83%80%e3%82%a6%e3%83%b3%e3%83%ad%e3%83%bc%e3%83%89%e3%81%97%e3%81%a6%e8%aa%ad%e3%82%81%e3%82%8b/

英語論文で単位の前に入れるスペースについて

東京大学の進矢 先生の研究室ホームページ
http://enzyme13.bt.a.u-tokyo.ac.jp/fushi/index.htmlと
twitterをときどき拝見して勉強させてもらっています。
https://nitter.net/sugargroove
今日みた先生のtwitterでは論文で%や℃の前にスペースをいれるのかどうかということについて議論されていました。
一般に単位で測る量を論文に書くときは、単位の前にスペースを入れるのが原則です。これは数字のあとのスペースが、掛け算を意味していると考えるとわかりやすいです。プログラミングでスペースは乗算を意味するので、なじみやすい解釈ですね。ということで30 kmとか100 mAのように、測定値のあとにスペースをいれて単位を書き込むわけです。それから唯一の例外は、角度を表す度(°)と分(′)と秒(″)でこれはスペースなしで使いなさいと教えてきました。また単位ではない℃や%を使う時には、数字のあとにスペースを入れてはいけませんと教えてきました。27℃とか100%とか書きなさいということです。

しかしtwitterの議論によると、最近では、この℃と%の前にもスペースをいれなさいという規則ができてきたようです。
国際度量衡局(BIPM)の決めたSI単位系の使い方の基準 国際単位系(SI)という冊子によると、℃もパーセントも共に数字の後にスペースをいれるそうです。こちらからhttps://www.bipm.org/en/publications/si-brochure
冊子をダウンロードして5.4.7節や5.4.3節をごらんなさい。
SI Brochure: The International System of Units (SI)
pdfファイルへのリンクはこちらです。
The International System of Units – 9th edition – Text in English (2019)
https://www.bipm.org/documents/20126/41483022/SI-Brochure-9-EN.pdf
日本語版は計量標準総合センターのサイト
https://unit.aist.go.jp/nmij/
の以下にあります。SI文書第9版(2019)日本語版及び関連資料
https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/SI_9th/index.html
pdfへのリンクはこちらです。

https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/SI_9th/pdf/SI_9th_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88_r.pdf
正誤表もご覧ください。
https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/SI_9th/pdf/20220714_seigohyo.pdf

でもいまのところ、℃と%の前にスペースを入れない流儀が生命科学系では主流みたいです。また、角度の表記についてのスペースをいれないという例外慣習は、国際単位系の冊子でも守るようにと書かれています。

大隅 良典先生の講演動画「半世紀の研究を振り返り、コロナ禍に思う ー基礎科学の大切さと魅力ー」

YouTubeをみていたら、右のほうにでてくる おすすめ動画に大隅 良典先生の講演「半世紀の研究を振り返り、コロナ禍に思う ー基礎科学の大切さと魅力ー」が表示されたので見てしまいました。基礎研究の大切さをうったえる先生のこの講演動画をおすすめします。大隅先生は福岡の高校、福岡高校(通称 福高)の卒業生です。ノーベル賞をもらわれたあと、母校の復興で講演されたと聞いています。
https://youtu.be/8IGJ802yYPI

東京理科大学創立140周年記念講演会・招待講演

「半世紀の研究を振り返り、コロナ禍に思う ー基礎科学の大切さと魅力ー」

東京工業大学 栄誉教授 2016年ノーベル生理学・医学賞受賞 大隅良典氏の動画です。細胞周期研究、液胞研究、オートファジー研究の歴史をふりかえり、基礎研究の軽視に警鐘を鳴らしておられます。

YouTube動画を見る時にでる広告を除去する機能拡張について

こちらでは台風11号の被害はあまりありませんでした。福岡は暴風域がかすめたので風はすごかったです。でも対策が進んでいるのか、いつも台風が通過したあとにみられる倒れた屋根の上のアンテナとか、カーポートの波板がはがれているというような風景はみかけませんでした。直撃の台風でなくてよかったです。私の家では南風で郵便受けの蓋が外れて飛んで落ちたくらいの被害でした。あとはご近所の庭の木が風で傾いたり、草花が倒れたりしていました。温帯低気圧になったようですが、北日本の皆様も被害がないことを祈っています。さて、今日はYouTubeをみるときの広告を消す機能拡張を紹介しておきます。Braveのブラウザではなにもせずとも広告は自動で除去されます。FirefoxではAdBlocker for YouTube™という機能拡張https://mybrowseraddon.com/adblocker-for-youtube.html
をあらかじめ入れておくと、広告は表示されなくなります。いつもでてくる英文文法チェッカーの広告とかがなくなるので快適です。たとえばこんな動画をみることができます。
https://youtu.be/B8WnCAOcheM

この動画は以下のチャンネルの動画の一つです。人気のチャンネルだそうです。マイクロソフトのエディタのVSCodeの入門動画ですね。
https://www.youtube.com/channel/UC5Kgc_HNzx4GJ-w4QMeeKiQ/playlists
VSCodeのプログラミング用のおすすめ機能拡張については以下のQiitaにでている記事をご覧ください。とても参考になります。

https://qiita.com/KNR109/items/5f933df1292564e6dc70
下の動画はMRC LMBの動画です。これも見る時に広告がでます。私はヘッドホンを使っているので広告がでてもヘッドホンを外すだけですけれど‥‥。
https://youtu.be/D8xv_pJvD1g

今 台風が福岡に接近中です

今日は福岡に台風が接近しています。夕方、玄関でガシャーンとガラスの割れる音がしました。あわてていってみると飾ってあった額が風で落ちてガラスが散乱していました。たいした風も吹いていなかったので玄関を網戸にしていたのが悪かったのでした。突風が突然吹き込んできたようです。
天気予報をみると、台風の風向きをベクトル場のように動画で表現した画面で解説している場面をよくみかけます。それによると今夜は台風の風は南から吹き付けてくるそうです。ニュースでやっているような、ベクトル場表示の風向き地図はこちらで見ることができます。
https://earth.nullschool.net/jp/
NHKもdigital earthというのを作っているはずなんですが、今夜はみつけられませんでした。

このサイトでは風向きの他、海流や波浪も動画表示で見られます。また気温やオーロラとか、湿度、降水量などなどいろんな情報が地球儀上でみられますので面白いです。みたいももは、下の写真の左下にあるearthという部分をクリックすると選択窓が開くのでそこで選べます。

Copyright (c) 2022 Cameron Beccario
詳しくはこちらでどうぞ。
https://earth.nullschool.net/jp/about.html

Mathematicaを使った量子力学の学習について

Mathematicaを使った物理学の学習について

無料で公開されている、量子力学をMathematicaを使って学ぶという教科書については以前紹介しました(この記事の末尾にペーストしておきますのでご覧ください)。別の先生の教科書をみつけたので紹介しておきます。Daniel V. Schroeder先生(アメリカのオレゴンにある大学の先生のようです。Department of Physics and Astronomy,Weber State University のMathematicaを使った量子力学の講義本(ドラフト版でNotes on Quantum Mechanics (unpublished, 2022) という本です。a draft textbook for a one-semester undergraduate course in Quantum Mechanicsと書かれていますが、次のweb pageにあるリンクからダウンロードできるので、ご覧ください。https://physics.weber.edu/schroeder/quantum/QuantumBook.pdf
この先生のページhttps://physics.weber.edu/schroeder/#booksにはMathematicaを使った量子力学の講義がいかに優れているかを紹介している次の動画もありますのでご覧ください。Liberating undergraduate quantum mechanics through computation (21-minute video of talk for AAPT summer meeting, 2021)という動画です。
https://1533221.mediaspace.kaltura.com/media/Liberating+undergraduate+quantum+mechanics+through+computation/1_ta4qsdny

他にもhttps://physics.weber.edu/schroeder/software/には、物理の教育用のソフトがおいてあります。分子動力学のデモソフトとかいろんなソフトもありますので面白いと思います。

2022/2/18
Mathematicaは物理学を学ぶときにとても役立つソフトウエアだと思います。2022/2/5の記事に書いたように、今やJupyter notebookから無料でWolfram Engineが使えるのですからこれを利用しない手はありません。(Raspberry PiならMathematicaそのものも無料で使えます)。今日はかなり実用的な量子力学の教科書を紹介します。Using Mathematica for Quantum Mechanics: A Student’s Manualという本でスイスのBasel大学のRoman Schmiedさんが書いた本です。この先生は量子力学、量子コンピュータなどの専門家でかなり実用的な内容の量子力学の本になっています。初歩的な入門を終えた人や、Mathematicaを使って手っ取り早く量子力学を使えるようになりたい人に適した本のようです。(私はまだ読んでいません。)プレプリントサーバーのarXivで公開されていてダウンロードできますのでご覧になるといいと思います。そこからMathematicaのnotebookもダウンロードできます。これはzipファイルなので7-zipなどで解凍してください。

ブリコラージュの話

今日はThe 24th Collegium for Comparative Glycomics(毎年開催されている比較グライコーム研究会の国際的な新しい名称です)にオンラインで参加しました。興味深い講演ばかりでしたが、長崎国際大学の藤井 佑樹先生のお話のなかにブリコラージュ bricolageという言葉が紹介されたので、皆さんにも紹介しておこうと思います。これはノーベル賞を授賞したFrançois Jacob( フランソワ ジャコブ)が進化の機構として紹介した概念です。藤井先生によると、Jacobの本  The possible and the actualにのっているとのことで、さっそくInternet archiveで探してみました。貸出可能な本でこちらから借りられます。https://archive.org/details/possibleactual00fran
本の中身を検索するとbricolageではヒットしませんがbricoJageでヒットして以下の記述がでてきました。(OCRしたテキストを検索しているのがわかりますね!)
Page 34
In contrast to the engineer, evolution does not produce innovations from scratch. It works on what already exists, either transforming a system to give it a new function or combining several systems to produce a more complex one. Natural selection has no analogy with any aspect of human behavior. If one wanted to use a comparison, however, one would have to say that this process resembles not engineering but tinkering, bricolage we say in French. While the engineer’s work relies on his having the raw materials and the tools that exactly fit his project, the tinkerer manages with odds and ends. Often without even knowing what he is going to produce, he uses whatever he finds around him, old cardboards, pieces of string, fragments of wood or metal, to make some kind of workable object. As pointed out by Claude Levi-Strauss, none of the materials at the tinkerer’s disposal has a precise and definite function. Each can be used in different ways. What the tinkerer ultimately produces is often related to no special project. It merely results from a series of contingent events, from all the opportunities he has had to enrich his stock with leftovers. In contrast with the engineer’s tools, those of the tinkerer cannot be defined by a project. What can be said about any of these objects is just that “it could be of some use.” For what? That depends on the circumstances.

生物の進化におけるイノベーションは、技術者が一から設計するようなイノベーションではなくて、生物が既にもっているもの=既存のシステムに新しい役割をわりふったり、あるいは既存のシステムをいくつか併せて新しい複雑なシステムに仕上げたりすることで実現するというのです。これはちょっとした手直しをして道具を改良したり修理したりする作業(tinkering)=鋳掛屋仕事といえるものであり、これをフランス語でbricolageというのだというようなことが書いてあります。

Jacobのインタビューでbricolageに触れているYouTube番組はこちらです。英語字幕付きです。https://youtu.be/P5TNjLzy6QI ホメオティック遺伝子とブリコラージュというフランス語のインタビューです。

このサイトWeb of Stories – Life Stories of Remarkable Peopleには有名な科学者のインタビューがいろいろあります。
https://www.youtube.com/c/webofstories/playlists
Brennerさんとか、物理学者のフリーマンダイソン、コンピューター科学者のKnuthとかいろんな方の話が聴けますので一度みてみるとよいでしょう。

京大図書館から「あなたのための推薦図書」vol.1~3が公開されました!

京都大学の京都大学図書館機構から小冊子「あなたのための推薦図書」 vol.1~vol.3が発行されました。学生がこんなことを学ぶのにいい本はないか、こういう目的にかなった本はなにかないかなどを図書館にリクエストして、大学院生のスタッフが答えた内容をまとめたパンフレットだそうです。たとえば圏論の入門書でいいのはありませんかとか、Pythonのいい入門書、テキスト処理のいい入門書なども含まれています。哲学のいい本、生命科学のよい入門書などなどいろいろな本の紹介が読めます。これはよくある、先生が推薦するおかたい名著をあつめたものではないので、ダウンロードしてゆっくり眺めてみると、とても参考になると思います。こちらからダウンロード可能です。
https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1394993