春真っ盛りです。「Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~」

本日づけで九州大学の野村研究室のホームページの更新を停止しました。このページが今後のホームページになります。
外を散歩しているとまだアザミが満開で美しいです。タンポポは種になってとんでいます。今年は桜もとても美しく、また自宅のリンゴの木に沢山花がさきました。八重桜をバックの写真をご覧ください。

NHKのBS1でブレイブという番組シリーズの再放送をしていました。
「Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~」

という番組でした。面白かったです。以前、図書館から『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』佐々木健一著という伝記を借りてきて読みました。藤田哲也は、アメリカにわたり気象学者として世界的業績(気象学のノーベル賞といわれるフランス国立航空宇宙アカデミー賞・金メダルも受賞)をあげました。シカゴ大学教授でノーベル賞をとった自発的対称性の破れで有名な南部陽一郎先生のお友達でもあります。竜巻の規模を表す藤田スケールの導入は有名ですが、最大の業績は飛行機の墜落原因となるダウンバーストの発見と検出方法の確立です。ドップラーレーダーをつかったダウンバーストの存在の証明、そしてドップラーレーダーによるダウンバーストに起因する墜落防止システムの確立によって、それまで頻発していた謎の墜落が皆無となり、世界の空の旅が格段に安全になったのは藤田先生の業績です。世界の空を救った男といわれるゆえんです。

北九州生まれで明治専門学校(現在の九州工業大学)卒業。そのまま同校の物理の助教授となり、長崎や広島の原爆の被害調査にも現地入りしていた人です。彼は気象の研究のため地元福岡県の背振山気象観測所で雷雲を観測、つよい下降気流が雷雲から発生することを発見して英文の論文を書きました。それが彼の気象学デビューです。ある日、背振山の気象庁観測所で気象観察していたとき、アメリカ軍に占領された隣のレーダーサイトのゴミ箱に、アメリカの気象学雑誌がゴミで出されており、読んでみると自分の発見した下降気流の存在をアメリカで巨大プロジェクトでみつけたという論文でした。自分の論文と同じ結果だったので、さっそくアメリカの気象学者に手紙をだしました。なんとそれがアメリカの気象学界の大御所で、返事がきたのです!自分のところに助手としてこないか?という手紙でした。博士号がないんですと返事すると、ではとったらおいでなさい。まっているから…。ということでした。東大で博士号を取得してシカゴ大学へと旅立ったのが始まりでした。

福岡の西のはずれにある背振山から福岡市と三郡山をみつめていた藤田先生のことが思い起こされます。西日本シティ銀行のふるさと歴史シリーズ「北九州に強くなろう」藤田哲也というホームページに面白いエピソードとともに藤田先生のことが紹介されているので是非ご覧ください。

福岡は春爛漫です

新学期もはじまりました。お知らせしておりましたように、九州大学の野村研のホームページの内容をこのサイトに4月はじめにすべて移動させました。移動にあたってリンク切れなどをチェックして内容を最新にしましたので、今後は九州大学のホームページではなく、こちらをご覧ください。移動にともなって九州大学の野村研究室のホームページの更新を停止します(しばらくは九大の野村研究室のホームページはのこしておいてくださるとのことです。)今後とも、どうぞこのホームページをよろしくお願いいたします。

さて、今年はことのほか桜が美しく、3月の末に私達のお世話になっていた九州大学のコラボステーションⅡ周辺の桜を写真にとりに行きました。九大の馬出 病院地区の桜は今年もきれいに咲いていました。桜が散るとアザミがきれいに咲く季節です。今はアザミと八重桜が福岡とその周辺で満開です(下のギャラリーをご覧ください。3月末の馬出病院地区の桜、今日撮影したアザミと八重桜の写真をのせています。卒業生の方々には馬出の桜は特に懐かしいと思います)。

「科学を学ぶ人のために」の、話題としては、今日は最近見つけた数学の教科書を紹介しておきます。学習院大学の田崎晴明先生が公開されている無料の教科書で、「数学:物理を学び楽しむために」というタイトルの、とてもわかりやすい教科書です。是非ダウンロードして読んでみてください。WolframAlphaについても触れられていておすすめです。

 

ConBio2017 ランチョンセミナーの動画が公開されました

ConBio2017 ランチョンセミナーの動画が公開されました(2018.3.15)

分子生物学会・生化学会合同年会のときの私の講演のムービーが公開されましたのでご覧ください。 講演終了後、springer exemplarのサービス終了などがありましたので、その部分をカットした動画になっています。2部にわかれていますので順にご覧いただければ一番ですが、各部のみをみていただいてもよいと思います。

研究生活における電子学術資料の利活用とメリット – 第1部 情報探索とインプットをより効果的に(Part 1)

研究生活における電子学術資料の利活用とメリット – 第2部 論文執筆やポスター発表に役立てよう(Part 2)

この講演のスライドはここにあります。

退官記念食事会をしてもらいました。ランチョンセミナーの内容変更点について

今日は卒業生のOB,OGの方たちに退官記念食事会をしてもらいました。忙しい時期なので福岡在住の方が主ですが、懐かしい顔ぶれがそろってとても楽しいひと時を過ごさせてもらいました。みなさんありがとうございました。みな元気で学生時代とほとんどかわっていないのは、社会人になってそれぞれ自分が活かせる職場にいるからだろうと思います。学生さんたちのおかげで充実した大学生活をおくらせてもらいました。ほんとうにみなさんありがとうございました。また今後の活躍をお祈りします。

昨年末のConBio2017のランチョンセミナーは、200名を越える方々にきいていただけたようで、ありがとうございました。Springer-Natureによるとあの講演の中で紹介していたSpringer Exemplarが廃止になったそうです。それでスライドの該当部分を削除したものをアップロードしてありますのでご利用ください。講演のビデオも近日中にYouTubeにアップロードされます。公開されしだいこのページで連絡します。

 

 

ホームページを引越します!

YouTubeからお越しの方へ。
九州大学のThe Nomura Labのホームページは、野村の退官にともない2018年4月1日をもって閉鎖される予定です。閉鎖までは九州大学のページ(上のリンク)をご覧いただくと動画で紹介した内容がそのままみられます。九大のホームページの内容は、4月1日以降は、すべてここに移動させますので、4月からはこちらのホームページをよろしくお願いいたします。

 

岡田節人先生が1月17日朝にご逝去されました。(2017.01/19)

岡田節人先生が1月17日朝にご逝去されました。先生には3年ちょっと前、ハリソン賞のメダルの交付セレモニーで岡田研究室メンバーが集まったときお目にかかったのが最後となりました。元旦のブログに書いた氷川丸でWaddingtonのもとに留学された先生は、先取の気風のある彼から多くを学ばれたとのだと思います。Waddingtonは発生学研究にラジオアイソトープをとりいれたり、影響力の大きい発生の教科書を書いてepigenetic landscapeの概念を提唱したりという、いち早く最新のテクノロジーやアイデアをとりこむタイプの研究者だったと思います。後には力学系の理論にも興味をもち、R. Thomのカタストロフィーの理論を応援したりもしています。
岡田先生は細胞接着と分化転換をラボの二つの柱にされており、私が入学したときには竹市先生たちが細胞接着の物理モデルを提唱していたCurtisの本をセミナーで勉強しておられたと聞きました。van der Waals ?London forceとか、岡田先生がつぶやきながら講義されていたのも覚えています。電子スピン共鳴をやっている先輩もおられました。細胞接着のほうは竹市雅俊先生のグループのカドヘリンの発見に結実しましたが、そのブレイクスルーも岡田先生が出張で仕入れてこられたモノクローナル抗体という最新の実験手法をとりいれよう、という提案が実行されたことから生まれたのでした。(第一回の福岡で開催された分子生物学会でモノクローナル抗体の発表を岡田研究室がしたのを覚えています。)また細胞接着分子を欠失したマウスをつくろうという遠大な計画のもとに、F9細胞で細胞接着分子の研究をおこなったのもブレイクスルーのもとだったと思います。とにかく先進先取の先生でかつ、メンターとして後進にいつもやさしい気遣いと応援を(ラボのメンバーであるか否かはかかわりなく)してくださる先生でした。

写真は私が修士二年とのときに先生に同行してフランスのLe Douarinのラボに滞在したときのもの、そして九州大学に特別講義に来て頂いたときのものです。当時、講義室はぼろぼろでマイクも無く、教卓が講義中に壊れて先生と近くの学生が手で崩壊をくいとめたというのも思い出です(その後、教室にマイクが備わり、教卓も補修されました)。教室が満員になった特別講義で、学外からも多くの先生がたが聴講にこられていました。写真を撮るときに、3人でうつったら真ん中の人が早死にするとかいうし…などといわれて、学生と一緒に写真におさまられた先生です。そのさりげない気遣いに先生のメンターとしての風格を感じたものでした。

江口吾朗先生が決定的な実験を行われた分化転換transdifferentiationの業績をはじめとして、神経性網膜の分化転換などの研究も展開されました。こうした業績をまとめたTransdifferentiationというモノグラフや「発生における分化」という本にはこうした分化転換の御仕事がまとめられています(私の撮った写真もどちらにも載っています)。いったん分化した細胞が分化転換して配偶子などになるという現象(クラゲなどでみつかった現象)も一般向け解説書で紹介され研究者の卵に多くのインスピレーションを与えました。

分化転換という言葉は、しばらく主要な発生の教科書から消えてしまいましたが、発生で重要な役割を果たしている例がしだいに蓄積し、MyoDなどの転写因子を培養細胞に導入して筋肉をこしらえるというような分化転換の実験が注目され、分化転換という言葉が教科書や論文に頻繁にみられるようになった後、iPS細胞が誕生しました。
岡田先生のことはまた、折にふれてお伝えしていこうと思います。

寒波が到来するようですが、どうぞ皆様、お体を大切になさってください。
先生のご冥福をおいのりいたします。


2017.01.01 元旦

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
左の 写真は氷川。本年の元旦はこの有名な船の写真にしました。昔、たくさんの研究者がこの船にのって外国留学しました。私が学生だったころ、発生生物学会が横浜で開催された時(第25回大会)は、懇親会がこの船で開催されました。先生がたが
「この船でいきましたなぁ」と、感慨深げに語っておられたのを覚えています。今は、多くの留学生を迎える我が国です…。
お休みに読める無料本がありますので紹介しておきます。The Gene Ontology Handbookです。
Open Accessの本ですのでどなたでも無料でダウンロードできます。
GO termをよくつかう私達ですがとても勉強になる本だと思いますので是非ご覧ください。
もう一つ、統計解析に私たちがよく使っているRについてのニュースです。
Multi-threaded math libraries を含んでいて計算がスピードアップされている他、信頼性をあげ、かつ互換性をたもっているというMicrosoft R Openというものがでています。
Microsoft R Openというもので、RStudio も使えるそうです。一度お試しください。

では本年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様にとって今年が素晴らしい一年でありますように。


伊都へ移転してから一年がすぎました(2016.11.17 木曜日)

11月13日の日曜日は福岡市民マラソンで、折り返し点の九大伊都キャンパスが地デジ中継で映っていました。
私達の研究室が馬出のコラボステーションⅡからこの伊都キャンパスへ移転して10月1日で一年になりました。院生や四年生の皆さんの頑張りのおかげで無事移転を完了できて
本当に感謝しています。移転の中で行われた卒論も見事に完成させ、線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBの大改良や、今まで硫酸化されていないとされていた線虫のコンドロイチンに硫酸化されているものがある(ヘパラン硫酸くらいの量がある)という私達のCRESTでの成果の完成と論文発表も終えることができました。
今年の9月19日、Journal of Biological Chemsitryにonline版が掲載され最近印刷版も発表しました。
投稿して2週間かからずに採択されましたので、プレスリリースを薦められたのですが記者会見は見送りました。

ラボの移転一周年を記念して福岡市海づり公園(写真)に皆ででかけました。九大の近くで海づりができるんです!九大伊都キャパスから車でほんの10-15分程度のところにあるのが有名な福岡市海づり公園です。釣り道具は公園で貸してくれる(有料)ので、大きなアイスボックスだけもって出かけました。大きすぎるボックスでは?と思いましたが、すぐにタイがつれました。
タイの他に、スズメダイ、アジがどっさり、イワシ、メジナ、カワハギ、50 cmをこえるボラもつれて鮮魚店でさばいてもらってお刺身にしていただきました。ボラは新鮮なものはとてもおいしいと鮮魚店のご主人。たしかにおいしかったです。九大にお越しの際、時間があれば是非、海釣りも楽しんでみて下さい。

  大隅先生のノーベル賞受賞おめでとうございます(2016.10.04 火曜日)

大隅先生のノーベル賞受賞おめでとうございます(2016.10.04 火曜日)
昨日はノーベル賞の発表第一日めでした。私も18時30分からのノーベル賞カウントダウン実況ページをみておりました。
時間になってキャッシュをクリアしても受賞者が表示されず、だれが受賞したのかわからなかったのですが、ページ内のtwitterに大隅良典先生の名前がまずでてきたので、興奮しました。大隅先生は福岡市出身で地元の福岡高校(福高)の卒業生だとのことで、受賞発表にあ わせて毎年集っておられた大隅先生の福高時代の同級生の方たちが発表と同時に大喜びされる様子がニュースで報じられていました。今朝、福高ではあの福高応援団を先頭に朝礼が行われて高校生のみなさんも大いに盛り上がった様子です。
オートファジーの研究はその重要性がますます注目されており、大隅先生の共同研究者で、世界のオートファジー研究をリードされている水島昇さんに本年の糖質学会でも招待講演をしていただき、そのわかりやすく最先端の成果も含めたお話に皆で感動したものでした。水島さんが書かれた「細胞が自分を食べる オートファジーの謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)」はおすすめの新書ですので是非この機会にご覧ください。

夏真っ盛りです。Pompe病の治療薬開発のドラマ 「小さな命が叫ぶとき」の紹介など

福岡では毎日猛暑日がつづいており、空は雲がない毎日です。
大学院入試やオープンキャンパスも終わり、11日から16日まで一斉休止実施期間も終わりましたが、夏真っ盛りで本日も熱中症警報がでています。
8月6日土曜日のオープンキャンパスでは多数の生徒さんや先生がたに来学いただき、にぎやかな一日を過ごせました。 暑い中、九州大学を訪れてくださってどうもありがとうございました。 研究室を訪問してくれた高校生のみなさんには、糖鎖生物学の話をきいてもらいました。その中で紹介した糖鎖生物学と病気について考えさせてくれる映画 「小さな命が叫ぶとき」(原題:Extraordinary Measures)はレンタルビデオ屋さんなどでよく見かけます。夏休みにおすすめの映画ですので、ぜひご覧ください。

グリコーゲンがうまく分解されないためにおこるPompe(ポンぺ)病という病気の治療についてのDuke大学での実話に基づく映画です。ハリソン・フォードが治療薬を開発する研究者を演じており、病を抱える子供たちを救おうと製薬会社をたちあげる父を ブレンダン・フレイザーが演じています。

リソソームで 糖鎖がうまく分解されないことで起こる病気はリソソーム病(ライソソーム病、ライソゾーム病ともいいます)の一種ですが、不具合のある分解酵素によって様々なものが知られています。日本でも様々な研究室で治療法の開発がつづいています。

今年は冬がとても寒く、夏がとても暑いからでしょうか、自宅の庭には例年になく たくさんユリが花開きました(写真は朝とったユリの影です)。 まだ大学院入試や就職活動が続いている学生さんも多いと思います。夏バテしないように、気をつけて頑張ってください。