IBMの現役量子コンピュータ研究者がすすめる、量子物理学のおすすめ本

現代の科学は、量子コンピュータや量子生物学など、量子力学をマスターした、生まれつき量子力学と遊んで育った新世代の科学者を必要としているといえるでしょう。こうしたquantum nativeを育てるためには、大学や高校の教育を変えて、新しいカリキュラムを導入していかなくてはりません。今日、Scientific Americanという雑誌のサイトをみていたら、IBMで量子コンピュータを研究している物理学者のOlivia Lanesさんのそうした意見がのっていましたので紹介しておきます。
https://www.scientificamerican.com/article/quantum-computing-is-the-future-and-schools-need-to-catch-up/

Olivia LanesさんはYouTubeでも大活躍している方で、多くの動画がみられます。
以下の動画は、Oliviaさんによる、量子力学、量子コンピュータ、量子科学のおすすめ本の紹介です。https://youtu.be/xpSevVullcQ

コミックや高校生レベルでよめる量子力学の入門書、量子力学を物理学科の学生のように学んでから量子コンピュータを学ぶのではなく、まず線形代数や量子コンピュータから一冊の本で学んでしまおうという新し試みの教科書などの紹介もあります。数学をあまり知らない人向けの本やコミックの紹介もありますが、最後には大学院レベルのおすすめの教科書SakuraiのModern Quantum Mechanicsも紹介されています(Sakuraiの本は新版がたしか去年発行されていたと思います)。紹介されている本の中には邦訳のあるものもありますので探してみてください。
もう一本、ちょっと前のおすすめ本の動画もあります。https://youtu.be/rbcNQB7VMtI
日本語で量子コンピュータを知りたい方にはこんなサイトもあるみたいです。さっき知ったばかりですが、面白そうなので紹介しておきます。
https://dojo.qulacs.org/

分子研の中高生むけ講座、量子生物学入門講座、分子動力学講義などの動画を紹介します。

昨日は円周率の日だったんですね。UCLAの量子生物学入門シリーズは二日目まですすんで、生物学におけるスピンの役割の紹介がありました。有名なコマドリの渡りの研究も詳しく紹介されていたので、本日公開された動画をご覧ください。https://youtu.be/1oGzFZQlAWQ

今日はエキシトンの話、明日はトンネル効果や電荷移動の話です。

また昨日は、 分子科学研究所(分子研)で動画のライブ配信があったようです。現在 YouTubeで録画がみられます。タイトルは以下のとおりです。

分子研の以前紹介した分子動力学シミュレーションの講義は第8回まですすんでいます。こちらも理解できそうな方はチャレンジしてみてください。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLFeFFDIymHoNKMqUYPgIPIOCe3x6faQTs

量子生物学入門講義シリーズ (カリフォルニア大学UCLA) がZoom開催中です!

量子生物学入門講義シリーズ(カリフォルニア大学UCLA)がzoom開催中です

以前お知らせしたようにカリフォルニア大学ロサンジェルス分校の量子生物学入門講義シリーズがZoomで連日開催されています。昨日が初日で、日本時間の夜11時(現地時間朝7時から)開催でした。以前お知らせした時は現地時間7時は夜午前0時の開催だったのですが、3月の第二日曜日(12日)午前2時から夏時間にかわったため、日本時間の夜11時開催になったという次第です。私が気づかなかったのでブログに遅い開始時間を書いてしまって申し訳ありませんでした。

私は昨日は夜11時から参加したのですが、ぶっ続けで3時間の2本の講義なので途中で寝てしまいました。午前2時ぐらいまでおきていたのですが、遺伝子の制御の話など知っている話で油断して、そこで寝てしまい気づいたら午前3時半で、Zoomがきれていました。Zoomにexitしないで最後まで私の名前がでていたようです。

この講義シリーズは、おすすめです。昨日は量子力学入門と生物学入門の2本だてでした。量子力学の発展方程式の話などもふくまれていて、一味かわった講義なので是非ごらんください。なんと、講義終了後すぐに以下のチャンネルに動画がアップロードされていました。
https://www.youtube.com/@quantumbiologytechlabatucl6800

今日はSpin in Biologyという回なので、ますます楽しみです。今日は起きているつもりですがまた寝てしまうかもしれません。
2023 Pre-GRC Quantum Biology introductory lectures, Day 1: Bootcamp Quantum Mechanics & Biology
https://youtu.be/ntsCrBZYlAI

以下はこの講義開催を紹介した以前の記事へのリンクです。もう一つ前の記事へのリンクもはってあるので合わせてご覧ください。

カリフォルニア大学の世界初(?)の量子生物学入門(春の学校のような)講義がZoom開催されます。開始時間が午後11時夏時間になってました。すみません訂正します。

深層学習を使った生体高分子モデリングの原理や、フラグメント分子軌道法についての最新の総説を紹介します。

今日は日本結晶学会誌の記事の紹介です。
AlphaFold2で深層学習を用いた構造モデリングの有効性が広く知られるようになりました。この最新号の次の総説は、そうした発展を学ぶのによい記事だと思います。AlphaFold2の原理と限界についてもわかりやすく解説してあっておすすめの総説です。是非ご覧ください。
深層学習を用いた構造モデリングと評価,その最近の展開
寺師 玄記, 木原 大亮
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/65/1/65_3/_article/-char/ja
この記事目当てにJ-STAGEの日本結晶学会誌の目次をみていたら次の記事も役立つと思いました。
フラグメント分子軌道計算による構造解析
福澤 薫, 渡邉 千鶴, 加藤 幸一郎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcrsj/65/1/65_17/_article/-char/ja
Fragment Molecular Orbital Methodは、日本初の生体高分子に適用可能な量子化学的計算手法であり、さまざまな分子の量子化学計算に活用されている手法です。この総説では、生体高分子へのFMO法の適用例がわかりやすく説明されていてFMO法について知りたい人には最適の総説だと思います。九州大学の先生も共著者になっておられます。

他にもこの雑誌にはいろいろな面白そうな記事が満載ですので是非一度目次を眺めてみてください。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcrsj/65/1/_contents/-char/ja

女性科学者による動画2本を紹介します。

女性科学者のによる動画二本を紹介します。

Julie Ahringer – Ahead of the Curve: Women Scientists at the LMB
https://youtu.be/J_mToLrLkTY

この動画は、線虫C. elegansのfeeding RNAiライブラリで皆さんおなじみのJulie AhringerさんがMRC分子生物学研究所(MRC LMB)で開催された講演会 Ahead of the Curve: Women Scientists at the LMB (Thursday 10th November 2022)で行った講演の記録です。
MRC LMBで働いていた輝かしい成果をあげた女性研究者を扱った本
Ahead of the Curveにちなんで開催された講演会だと思われます。https://aheadofthecurve.org.uk/#book
この本はKindle版が1138円で買えるので読んでみてください。MRC LMBで活躍した女性と男性科学者の話がいろいろのっていて安くて面白い本です。

Ahringerさんは私がMRC LMBで研究していた時に、同じJohn Whiteラボでポスドクをされていました。この動画では、線虫研究の歴史にはじまって、AhringerさんのRNAiライブラリの話、その後の線虫ゲノム研究の話などがやさしく紹介されていて面白いです。

また、もう一本の短い動画はノーベル化学賞を2022年に受賞されたBertozziさんの動画です。
女性だけでなく、困難にめげずに生きているすべての人に贈る言葉だと思います。是非こちらもご覧ください。
https://my.linkedin.com/posts/nobelprize_carolyn-bertozzi-on-finding-your-role-models-activity-7039245908202422272-ZOap

記憶をRNAで移植できるという実験について

記憶がRNAで移植できるという実験がいくつも報告されているので簡単に紹介しておきます。

昔、プラナリアに光をあててその直後に電気ショックを与えるプロセスを繰り返すと、プラナリアが光をあてるだけで体を縮めるようになるという実験をしていた科学者がいました。そのトレーニングをつんだプラナリアを餌にして別のプラナリアに食べさせると、たべたプラナリアが光をあてると体を縮めるようになったそうです。この実験での記憶の伝達はRNAを介して起こっているのだという説が展開されて、皆の興味をかきたてたのです。James V. McConnell(1925-1990)という科学者が、1959年に発表した論文では、プラナリアを頭と胴にきりわけて再生させる実験で記憶の移動が起こることを示していました。プラナリアに光をあてて電気ショックをすぐ与えると、プラナリアは体を縮めます。この光と電気ショックを繰り返し与えるトレーニングをつむと、プラナリアは長期記憶LTSをもつようになり、光をあてるだけで電気ショックなしで体を縮めるようになるそうです。このLTSをもっているプラナリアを頭と、胴にきりわけます。頭だけのプラナリアは、胴も再生して完全な個体にもどります。胴だけのほうからは頭が再生して、こちらも完全な個体にもどります。どちらのプラナリアも、光を当てると体を縮めます。プラナリアの次の世代に記憶が伝わったことを示している実験で世界に衝撃をあたえた実験です。彼は、記憶分子があると考えてそれがRNAだと推定していました。後の1962年の実験では、上の実験で教育されたプラナリアを切り刻んで、未教育のプラナリアの餌にしました。すると餌をたべたプラナリアは、光に対して体を縮めるようになったというわけです。記憶の伝達にRNAがかかわっているという説をMcConnellはたてました。私も高校生のころ本で読んだのですが、RNAは不安定な物質なので食べたRNAが記憶の伝達にかかわっていることは考えにくいという声が大きくて、再現性もないとかでこの説は1970年代になるとやがて注目されなくなりました。
1959年の実験、何年か前に再現実験がおこなわれてなんと見事に再現に成功しています。このブログでもたびたび登場するLevin教授のグループが論文を書いています。さらにカリフォルニア大学のロサンジェルス分校のDavid L. Glanzman教授は、アメフラシでのRNAによる記憶の移植実験に成功してこれも論文になっています。https://www.eneuro.org/content/5/3/ENEURO.0038-18.2018
教授によるとトレーニングしたアメフラシの脳からとったRNAをトレーニングしていないアメフラシに注射すると、記憶が移せるのだそうです。この記憶の移動にはDNAのメチル化がかかわっていることも明らかにしています。さらにプリンストン大学のColeen T. Murphy教授は、線虫C. elegansで病原性バクテリアを忌避する記憶がP11というnoncoding RNAを介して伝えられていることを明らかにしています。この三名の方の講演が以下にありますのでご覧ください。
https://youtu.be/IFRvMvSdYzE

RNAは不安定でというのはよく聴く話ですが、線虫のRNAiでは二重鎖RNAを食べさせると線虫の遺伝子機能が全身で阻害されることが今では知られています。自然は人間の考えているよりもっと深いもののようで、今回紹介したRNAによる記憶移植実験の歴史は、人間の上から目線の断定が医学や生命科学の分野では失敗する(あるいは科学の発展を阻害する)よい例になっていると思います。

癌の早期発見についての動画NIH Videocastを紹介します。circulating tumor DNAの話もあります!

今日は癌検診のNIH videocastの紹介です。
Tests for Early Cancer: Facts vs. Opinions Can We Detect Early Cancer?
という題で、癌の早期発見についての基礎知識と最先端の状況を教えてくれる動画のようです。https://videocast.nih.gov/Summary.asp?file=33008

癌の早期発見について私はほとんど知識がないのでこれはゆっくり勉強してみようと思う動画です。早期発見と検査法にともなうエラーについても解説があるようです。また後半には血漿に含まれる主に死んだ白血球細胞から放出されたDNAの断片であるcell free DNA (cfDNA)と患者の癌細胞から放出されているcirculating tumor DNA (ctDNA)の話があって、ctDNAをつかって癌の診断や治療後に生き残っている癌細胞をみつけるというような話もあるようです。高画質でダウンロードも可能ですし、字幕もダウンロードできますので、是非一度ご覧になることをお勧めします。

カリフォルニア大学の世界初(?)の量子生物学入門(春の学校のような)講義がZoom開催されます。開始時間が午後11時夏時間になってました。すみません訂正します。

今日はあたたかくて福岡は20℃を越えていました。夜は雨が降ったのですが、春雷で稲妻が何度も光ってゴロゴロと音がしていました。
杏の花も満開でクリスマスローズもきれいに咲いています。

さて、Gordon会議にとうとう量子生物学の会議ができたそうです。それでPre Gordon Conferenceの企画として、多分世界初の量子生物学の学校が開催されるそうです。カリフォルニア大学のQuantum Biology Tech Lab @QuBiT_Lab 主催です。Zoom 開催で、3月13-17日(カリフォルニアの現地時間の朝7時から10時まで毎日3時間の講義があります。量子生物学ってどんなものかという入門に最適ではないでしょうか。こちらのリンクからむ登録できます。
別途 後日動画はアップロードされるとことですが、臨場感もあるので日本の真夜中(訂正です=3月13日午後11時 夏時間??から開始)ですが、視聴されるのも良いと思います。
https://www.pregrcquantumbiology.org/

量子力学入門、生物学入門、生物におけるスピン、エキシトンによるエネルギー移動、トンネル効果と電荷移動、未来への展望などの項目についての講義です。

以前のブログ記事もご覧ください。

量子生物学入門コースかZoom開催されています。

国立国会図書館個人送信資料でどんな本が読めるのでしょうか?リストがダウンロードできるので参考にしてみてください。

国立国会図書館の個人送信資料でいろいろ面白い本が読めることはこのブログでしばしば紹介してきました。国会図書館ではどんな本が公開されているかのリストがサイトに掲載されているのでそのアドレスを紹介しておきます。

オープンデータセットと題するページです。
https://www.ndl.go.jp/jp/dlib/standards/opendataset/index.html#opendataset01

このページには、公開範囲が、インターネット公開、図書館・個人送信、館内限定の三つについて、それぞれどんな資料にアクセスできるかのリストファイルへのリンクが掲載されています。xlsx形式とtsv形式の両方のファイルがありますので、便利な形式を選んでダウンロードするとよいでしょう。

図書や古典籍、博士論文、雑誌、歴史的音源などのリストファイルがありますので適宜ダウンロードして、手元で検索してみるのにも使えます。

個人送信資料をみていると、自分が子供の時に読んでいた本などもみつかって懐かしい気がします。前にも書きましたが、文学全集(日本、世界)や世界の名著などの本が図書館にでかけることなく自宅でよめるので便利です。まだ登録していない方は是非登録して利用することをお勧めします。

こんな本も個人送信資料にありました。https://dl.ndl.go.jp/pid/12225856
「自分で考える」ということ 増補版 (角川文庫) 沢瀉久敬 (おもだかひさゆき) [著]1981.10  フランス哲学者でデカルトやベルグソンを研究した大阪大学の先生のロングセラーです。考えるということについてのしっかりした考察がベストセラーになりました。

RのプラグインEZRで多変量解析するための教科書のKindle版が本日限定セール中です。

という本のKindle版が、 Amazonで本日限定セールで499円で売られています。紙の本は、3080円です。
試し読みしてみると目次もみられます。多変量回帰モデルや多変量解析、オッズ比の話などがのっていて、すべて RのブラグインであるEZRで解析するという本です。以前にもEZRを開発された神田 善伸先生の本を紹介して、先生の本があれば生命科学の一般的な統計解析は十分できるという記事をかきました。今回紹介する本は、新谷歩先生の書かれた本で、こちらの本は先生がアメリカの大学で医療従事者のためのコースを教えておられた時のテキストをもとに書かれた教科書で、臨床医学の方に最適の統計本になっているようです。先生の講義は以前もこのブログで紹介していますので検索してみてください。

あと。深層学習 改訂第二版という本も安売りをしています。こちらは3月16日までのセールです。