英国医学研究会議MRCの分子生物学研究所LMBの動画視聴のおすすめです。

英国CambridgeにあるMRC LMB (英国医学研究会議  分子生物学研究所)のセミナーがZoomで公開されている場合は、なるたけ視聴するようにしています。
11月20日には、次のようなセミナーがあるそうです。

Zoomでだれでも見ることができるので、生命科学に興味のある方はご覧になることをすすめます。

また、先日開催された科学者でない一般向けのLMBセミナーもYouTubeで公開されています。バクテリアのバイオフィルムについての講演です。面白そうですね。私もこの講演は見逃していました。


YouTubeではこちらから見ることができます。
Bacterial Biofilm: The Death Star of Human Infection by Tanmay Bharat
https://youtu.be/fxC4E6sAGAo?si=X1_G-qMnhO4HNI9b

糖蛋白質や糖脂質についている糖鎖が見えるようになったというすごい論文がでています。

糖鎖はタンパク質や脂質、RNAなどに結合して、糖タンパク質、糖脂質、glycoRNAなどの複合糖質となって生体内で働いています。糖鎖はDNA/RNA、タンパク質にならぶ生命の第三の鎖ともよばれる重要な生体分子です。その糖鎖の配列を決定するのは今まで困難だったのですが、最近は質量分析法と糖鎖を切断する酵素などを組み合わせて、配列決定がしだいにスピードアップするようになってきました。先日有名な科学雑誌のScienceに掲載された次の論文は、Electrospray Ion Beam Deposition Scanning Tunneling Microscopy (ESIBD-STM) という、Electron spray方式の質量分析法とscanning tunneling microscopy(走査型トンネル顕微鏡)を組み合わせた新開発の手法で、糖脂質(ガングリオシドなど)や糖蛋白質(ヒトの腸で微生物と相互作用している重要な糖蛋白質であるムチンなど)に付加されている糖鎖を世界ではじめて脂質部分やタンパク質部分と同時に可視化できたというものです。
Kelvin Anggara et al.,
Direct observation of glycans bonded to proteins and lipids at the single-molecule level.
Science382,219-223(2023).DOI:10.1126/science.adh3856
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adh3856

このScienceの論文はPay Wallの向うにあるので契約している機関やお金を払ってしか読めませんが、PubMed Centralにのっている原稿は誰でも読むことができます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7615228/
また上にリンクをはったScienceのサイトにあるsupplementary materialsのpdfは誰でもダウンロードできますのでご覧ください。

糖鎖はこんな風に見えるそうです。本文の図2を引用しておきます。図はCC BY 4.0のcreative common ライセンスで利用できるとのことです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7615228/figure/F2/
An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is EMS189541-f002.jpg

こちらから図を順に見ることができます。ムチンについている糖鎖の写真に圧倒されます。
こちらは図3でN型糖鎖の可視化です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7615228/figure/F3/
次はO型糖鎖の典型、ムチンの糖鎖の図4です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7615228/figure/F4/

図1は顕微鏡の原理と糖ペプチドやグリコサミノグリカン(GAG)の糖鎖の可視化例です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7615228/figure/F1/

Mac向けに書かれたバイオインフォマティクス本でよく使われるHomeBrewはUbuntuその他のLinuxにもインストールできます。HomebrewはMacユーザーの特権ではなく、今やLinuxやWindows WSLでも使えるというお話です。

バイオインフォマティクスの日本語でかかれたハウツー本の多くは坊農先生のもので代表されるようにMacを使って解析するものです。私はLC520あたりまではマックを使っていたのですが、新しいモデルがでたときにそれまで購入していたソフトが動かないことがわかったのと(そういうことは決してないので安心してくれというふれこみの広告をみて買ったのでしたが、見事に裏切られました)、価格がべらぼうに高くなっていったのでMacは購入しなくなりました。ただiPod系列のiPadとかiPhoneとかは便利に使っています。しかしこのところiPhoneがべらぼうに高額になってきていて、またぞろAppleの悪い癖がでてきたように思います。コストパフォーマンスを考えるともはやiPhoneは選択肢に入らなくなってしまいました。奥さんもアンドロイドに機種変更して使い始めています。

話がそれましたがMacでバイオインフォマティクスする本をLinuxを使っている私たちが読み進める時の一番の障壁は、ソフトのインストールの時に使うパッケージ管理システムのHomebrewでした。昔はLinuxでHomebrewが使えなかったのでバイオインフォマティクスのソフトウエアを、Macを使う教科書に書いてあるようにはインストールできません。結局、各ソフトのホームページにいってLinux用のソフトのインストール方法を英語で読んで、必要ならmakeしてバイナリをこしらえなくてはならなかったのです。大変不便でした。しかし2019年2月ごろからLinuxでHomebrewが動くようになっているので、自分の使っているLinuxのディストリビューションに応じた方法でHomebrewをインストールしておけば、Macをつかうバイオインフォマティクスの教科書どおりに必要なソフトをインストールして読み進めることができます。Homebrewでインストールできるのは、別にバイオインフォマティクスのソフトウエアだけではないので、Macのように簡単にソフトがインストールできるLinux用のHomebrewは役立ちます。もちろんWindowsのWLSで動くLinuxにもインストールできます。

インストールの仕方はこちらの日本語解説

LinuxにHomebrewを導入

などを参考にするとよいでしょう。
https://scribble.washo3.com/linux-homebrew.html
コマンドラインでインストールをはじめると、いろいろ指示が表示されるのでそれを見ながら、上のサイトの日本語解説と照らし合わせながらインストールするのが簡単です。UbuntuのAPTパッケージマネージャーをつかうより簡単にインストールできることも多いし、インストールできるソフトがより新しいバージョンである場合も多いので使えると思います。是非インストールして使ってみてください。

nitterでtwitter (X)のアカウント主がフォローしているアカウントを表示する方法があります。

今日は快晴でしたが暑かったです。夏日で室内でも27度もありました。外では日差しが刺すようで、もっと温度が上がっていました。さっき38年ぶりに阪神が日本シリーズで優勝したそうで、大阪も一番熱い夜をむかえていますね!

さて、今日はnitterの話です。twitterがXになって、ログインしなくてはツイートが見られなくなりました。お気に入りのアカウントを普通のtwitterのアカウント名で見ようとすると、なにやら古いツイートのオンパレードになっています。
たとえば奥村先生のサイトをみようとするとこんなありさまです。
https://twitter.com/h_okumura

以前twitterがみられなくなったとき、マスクがしばらくしたら見られるようにもどすとかいっていたのですが守られていませんね。それでnitterを使っているのですが、どのサイトでnitterをみるかによってフォローしているアカウントを表示することができるfollowingボタンが動いたり、動かなかったりするということに今日気付きました。

どのnitterの提供サイト(インスタンス instance)が動いているかはこちらで確認できます。
Nitter Instance Uptime & Healthというサイトです。
https://status.d420.de/
表示される画面の上の部分のスクリーンショットを載せておきます。動いている国が国旗で示されていてグリーンの棒がならんでいるのが正常稼働していることを示しています。応答時間なども表示できるので、一番したのチェックボックスを押して表示させてみました。

ではノーベル化学賞を受賞した糖鎖生物学者のベルトジさんのtweetをnitterでみてみましょう。
https://twitter.com/CarolynBertozziが本家ですので、twitter.comの部分を上のサイトにあるnitterアドレスに変更します。
たとえばhttps://twitter.com/CarolynBertozzi
https://nitter.uni-sonia.com/CarolynBertozziとか
https://nitter.d420.de/CarolynBertozzi
https://nitter.privacydev.net/CarolynBertozziとかに変更するわけです。

こうしてアクセスしてみると、followingの部分をクリックしてフォローしているツイッター(X)アカウントが見られるinstanceとみられないインスタンスがあることがわかります。
https://nitter.privacydev.net/CarolynBertozzi/following
ではみられますが、
https://nitter.d420.de/CarolynBertozziではみられません。
サイトの設定に依存しているのだと思いますが、いますこしやってみたところでは、nitter.privacydev.netだけfollowingしているアカウントがみられるようです。なお今試したところ、このインスタンスはアクセスするとルートエラーが出ることがあります。ブラウザの再読み込みボタンを何回か押しているとつながるのがわかりました。followingで表示されるアカウントがフォローしているアカウントをみるといろいろ知らなかったアカウントがわかるので、情報収集に役立ててください。

あと、今試していてわかったのですが、ベルトジさんのhttps://twitter.com/CarolynBertozziが本家Xのurlで、このサイトでは奥村先生のサイトのように過去のツイートが表示されることはないようです。最新のツイートが表示されていました。ただ他のUSAのアカウントをみてみると、最新のツイートが表示されないアカウントもあるので、どういう基準でこんなことになっているのかはわかりません。

材料科学向けの機械学習の入門動画が慶応大学から公開されていました。おすすめの講義です。

慶応大学は「基礎科学チュートリアル」という講義シリーズをはじめているそうです。その一つとして、材料科学の機械学習についての講習会を次のように行っており、第一回が先日実施されたようです。https://www.kll.keio.ac.jp/ktm/pre/500/
リンクをご覧になるとわかるように、機械学習を材料科学に応用する方法を講義と実習をつかって紹介する企画です。最初に講義プラス演習があり、Google Colaboratoryをつかって実習する様子がみられます。YouTube動画では資料のリンクがないようなのでお話になりますが、機械学習をまったく知らないひとでも動画をみたあとは、感じがわかるようになるよい入門動画になっていると思います。一度ご覧ください。中級編は数日後に開催されるようで、無料ですので興味のあるかたは登録されると実習ができると思います。
以下は初級編のYouTubeの動画についていた説明の引用になります。

「Pre- KEIO TECHNO-MALL 2023(第1回)「基礎科学チュートリアル: すぐできるマテリアルズ・インフォマティクス ~材料×機械学習の融合~」Day1
2023年10月24日(火)に開催しました。
KEIO TECHNO-MALL 2023(第24回慶應科学技術展)の開催に先立つプレイベント1回目のアーカイブです。
概要:材料の情報(分子種や合成条件など)を入力することで、材料の性質を出力する「モデル」が出来れば、未実験の材料の性質の予測―つまりコンピュータ内でのハイスループットスクリーニングーが可能になります。このような材料に関する「モデル」を機械学習を用いて作成し、材料の発掘や設計に活かす研究分野をマテリアルズ・インフォマティクス(MI)と言います。本チュートリアルでは、化学系・材料系の研究者を対象に、機械学習の基礎から材料化学への適用法について、講義と演習を通して概説しました。本動画はDay1(初級編)の様子です。実際にMIを活用した材料開発を推進している先生からもご講演をいただきました。」
https://youtu.be/KxnKXBeWSjY?si=JZgmLxTfUK4BPOsh

よい講義というのは、その講義をきいたあと展望がひらけてその講義テーマを独学できるようになるものだと、私は思っています。この動画もそうしたよい講義だと思います。

ジュール・ヴェルヌの代表作『海底二万里』の話

今日は海底二万里の話です。国立国会図書館のツイートにジュール・ヴェルヌの代表作『海底二万里』の挿絵入り英訳本の紹介がありました。


海底二万里は私が小学生のころ夢中になって読んだ本です。多分子供向けに書き直された本を読んだと思いますが、とても面白い本でした。最後の場面で、大渦巻の中にまきこまれたネモ船長の潜水艦ノーチラス号がどうなったのかが知りたかったのを思い出します。ネモ船長はこの後、「神秘の島」にも登場しますので無事にこの大渦巻を切り抜けたのだとわかります。私の子供が、小学生のときに神秘の島の完訳本を読んでいて教えてくれました。上のツイートにある月報は以下からダウンロードできます。記事の中にネモ船長の「神秘の島」での再登場についても書かれているとおりです。

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_13046053_po_geppo2311.pdf?contentNo=1#page=3
こちらから国立国会図書館月報2023年11月号がダウンロードできます。
この月報で初めて知ったのですが、ヴェルヌの海底二万里には、ネモ船長のノーチラス号がアトランティスの遺跡を訪れる場面があるんですね。この作品が、プラトンの書き残しているアトランティスの話に人々の興味を惹きつけてその後のアトランティスブームを巻き起こしたのだそうです。英訳本はタイトルが月報にあるので、Internet Archiveで探してみました。
こちらが月報にある本にあたるとおもわれます。ダウンロード可能です。
https://archive.org/details/twenty-thousand-leagues-under-the-seas/page/n3/mode/2up
海底二万里は、映画化もされていてYouTubeで見ることができます。最初のディズニー版と1997年版どちらもYouTubeにありました。興味のある人はTwenty thousand leagues under the seasというphraseで検索してみてください。結末はずいぶん原作とはちがうのがわかると思います。

写真は英訳本の挿絵をスクショしたもの2枚です。

ひさびさにMRC LMBのYouTubeチャンネルにシンポジュウムの動画が公開されています!

生化学会参加3日目でした。ポスター発表は昨日で終わりでマリンメッセにはいかなかったのですが、やはり何かイベントがあるようで人でごった返していました。今日はNEWSのの公演が昼と夕方の二回あったんだそうです。今回の生化学会大会のシンポジュウムはどれも面白く、今回はひさびさの対面の学会参加でしたがなつかしい皆さんと話せたのもよかったです。おそらく生化学会のチャンネル
https://vimeo.com/channels/jbsoc
でいくつかの特別講演の動画が公開されるのではないでしょうか。また公開されたらこのブログでもとりあげます。

さて、さっき家にもどってMRC LMBのYouTubeチャンネルをチェックしてみたら、9月末に私もオンラインで視聴したシンポジュウムの動画がいくつか公開されていました。多分順次全部公開されるのだと思います。このシンポジュウムはThe Next Generation Biophysics Symposiumという名前のシンポジュウムで毎年開催されるシンポジュウムです。今日公開されていたのは以下の動画です。以下の再生リストから動画を見ることができます。
https://youtube.com/playlist?list=PLQbPquAyEw4cumylimfyyRfK6gAWE6JUY&si=X9kbQ_nV_t45aipC

公開された動画のタイトルを並べておきますので参考にしてください。
NGBS2023: Engineering living hydrogels – Lorna Dougan
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Virus traps and other molecular machines of the future – Hendrik Dietz
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Integrated analysis of N-glycoproteomic and global proteomic of glioblastoma – Sonja Hess
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Dynamic imaging of organelle dynamics with optical super resolution – Clemens Kaminski
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Using single-molecule optical tweezers to study transmembrane proteins – Kasia Tych
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Mapping microscopic viscosity and nucleic acid conformation – Marina Kuimova
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Modulating the conformation and function of disease-relevant RNA – Amanda Hargrove
MRC Laboratory of Molecular Biology

NGBS2023: Technological advances in MS-based proteomics for precision medicine – Matthias Mann
MRC Laboratory of Molecular Biology

末尾にこのリストの中から”Integrated analysis of N-glycoproteomic and global proteomic of glioblastoma” という脳腫瘍でのN型糖鎖を持つタンパク質の網羅的解析についての動画をはりつけておきます。
https://youtu.be/yTJ84rw97JY?si=jB-Rjy60Psy7AA4x

日本生化学会大会二日目の参加でした。マリンメッセは別世界のようでした。

日本生化学会大会の二日目の参加です。ポスター会場に行く経路にはものすごい人だかり。帰宅して調べるとNEWSのライブがあったようです。マリンメッセはこういうイベントがよく開催されるようです。生化学会の参加章をぶら下げている私たちとは別世界の方たちでした。写真の手前が私たちが歩く、ポスター会場への道。ガードレールの向う側がNEWSのライブに集まった人たちです。

今日はそのポスター会場で、ノーベル賞をもらわれた大隅先生をみかけました。午後5時からのシンポジュウムで話されるのでその前のひと時をポスター会場ですごされていたようです。私は糖鎖のシンポジュウムのほうをみにいったのでお話はきけませんでしたが、YouTubeにも大隅先生の動画が結構公開されているのでご覧になるといいと思います。先生はポスドクの時は免疫学でノーベル賞を受賞したエーデルマン先生のところで研究されていました。エーデルマンはその後、レクチンの研究をして、その次はカルシュウム依存性細胞接着分子の研究で京大の竹市先生と競争していた時もあります。その後、Neural Darwinismとかを提唱して脳とコンピュータの研究に進んで本もいろいろ書いているのは、このブログでも紹介したことがあります。

大隅先生の動画のリンクをいくつか貼り付けておきます。
https://youtu.be/z74WgkwyNdA?si=KywCtytjy_ejAORs

https://youtu.be/8IGJ802yYPI?si=KRmAGKiGiYuiM_lL

生化学会年会に参加しています。「生命科学英語論文執筆支援プラットフォームの開発」と題するポスターをみつけました。

今日から福岡市の福岡国際会議場・マリンメッセ福岡ではじまった、第96回日本生化学会大会に参加しています。
ポスター会場で順にポスターをみていたら、「生命科学英語論文執筆支援プラットフォームの開発」というものをみつけました。広島大学の河本健先生を中心にした発表です。ポスターには先生のつくられたサイトのurlがあったので早速アクセスしてみました。

https://home.hiroshima-u.ac.jp/tkawamo/ClinicCorpusV2-1.html
日本語解説はこちら。
https://home.hiroshima-u.ac.jp/tkawamo/ClinicCorpusV2-J.html

先生のブログも参考になりそうです。
https://e-ronbun.net/

先生の書かれた次の本もよさそうです。九大が契約しているMaruzen eBook Libraryで読むことができます。
ライフサイエンストップジャーナル300編の型で書く英語論文 ―言語学的Move分析が明かしたすぐに使える定型表現とストーリー展開のつくり方―
河本, 健/石井, 達也(著)羊土社
https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758108522/

先生のブログでの臨床医学論文執筆支援プラットフォームと上記の本の紹介はこちらにあります。
https://e-ronbun.net/english-paper-platform/

対面の学会参加は福岡で開催された分子生物学会以来です。 九大で助教で活躍している卒業生とも会えて、よい一日でした。
写真はポスター会場へ行く途中からみえる博多港の風景です。秋晴れで空が澄みわたっていました。

分子動力学法のよい教科書が出版されたので紹介します。

「分子動力学法と原子間ポテンシャル」 渡邉孝信 (著) 森北出版 という本を買いました。https://www.morikita.co.jp/books/mid/092251

出版社のサイトによると
「はじめて分子動力学法を学ぶ読者に向けて、初歩的な知識から実践的な計算手法まで解説します。
とくに、分子動力学シミュレーションで重要となる「原子間ポテンシャル」について、さまざまな種類を網羅的に取り上げます。どういった対象に利用できるのか、どういったパラメータがあるのかなど、それぞれの特徴を理解できます。
さらに、汎用性が高いことで注目されている「ReaxFF」や、機械学習ポテンシャルの1種である「ガウス近似ポテンシャル(Gaussian approximation potential)」についても詳しく解説しています。一歩進んだシミュレーションを行うための手がかりを得ることができます。(後略)」という本だそうです。

読み始めていますが、分子動力学法の発展史に続いてMD法でつかわれる運動方程式の解法のわかりやすい説明が書かれています。ベレ法と速度ベレ法、結果の可視化のためのVMD  (Visual Molecular Dynamicsというプログラム)の使い方の説明が続きます。C言語でのプログラム(上の森北出版のサイトからダウンロードできます。また本文に詳しいプログラムの説明が書いてあるのもありがたい配慮です)を実際動かしてアルゴン液滴のMD解析を実際に体験しながら学ぶというスタイルで、最初から手を動かして学べるので大変よい入門になっていると思います。第二章は運動方程式の数値解法から始まる分子動力学法の方法論の解説です。この辺りを読んでいるところですが、大変よくわかる教科書だと思います。研究室配属された学生がまず読むべき本を目指すという著者の意図は大変上手に実現されていると思います。フリーのMD解析ソフトのLAMMPSのチュートリアルもついていますし、原子間ポテンシャルの選択法とかもよくわかると思います。購入をおすすめできる本だと思います。写真は散歩中に撮影したコスモスです。近くにはカラスウリが風に揺れていました。