岡田節人先生の思い出

個人送信資料で昔読んだ本などを眺めていると学生時代のことが思い出されます。今日は私の恩師である岡田節人先生のエピソードを紹介します。丁度今頃の季節だったと思います。大学院入試の前に、岡田節人先生に手紙を書きました。院試を受ける前に一度先生の研究室を訪問させていただきたいという内容の手紙です。お返事を頂いたので指定された日時に京大の生物物理学教室の二階にあった岡田研究室を訪問しました。その時は細胞接着の細胞選別の理論 differential adhesion hypothesisで有名なMalcom Steinberg先生が研究室に滞在されていました(リンクは2012年にSteinberg先生がなくなったときのプリンストン大学の記事です)。それでSteinberg先生や大学院生の方々を交えてお昼休み、お茶のみ場で岡田先生のお話をうかがうことができました。私は京都教育大学の学生だったのでそのことが話題になると、岡田先生がSteinberg先生にこの学生はLiberal Artsにいっているのだと話してくださっていました。そしてLiberal Artsがいかに重要かを院生にも英語で説明しておられました。この訪問の帰り際、岡田先生が「院試に落ちたらどうするんや」といわれたので、「院試に落ちるということは研究者に向いていないということなので、世の中の役に立つ奉仕活動などの仕事につきます」と答えました。すると、岡田先生は、「大学院の試験に落ちても、そう言わずに、また来なさい。いろいろやり方はあるので教えてあげるから」と励まして下さいました。岡田先生はそういう先生でした。大学院時代、学会で岡田先生が講演された後、院生らしい人が先生に質問をして、こういう研究をしたらどうでしょうと言った時の先生の言葉もよく思い出します。先生は、「もし君がそういう方針で研究してみようと真剣に思うなら、言ってきなさい。学会として全力で応援するから」と答えておられました。本当に先生らしい先生、メンターとしての先生の思い出です。
写真は庭に咲いた金柑の花に群がっていたミツバチです。今年は柑橘類が良くできそうです。

個人送信資料いろいろ―ポアロやホームズ、カントラプラスの星雲説、化学史伝などなど

今日も個人送信資料の紹介です。
検索キーワードをいろいろ変えて探すと面白い本がみつかります。たとえばアガサ クリスティで検索するとABC殺人事件とか、スタイルズ荘の怪事件などポアロものの推理小説がみつかります。コナンドイルで検索するとシャーロックホームズの本が読めます。エラリークイーンとか、H.G. ウエルズとかいろいろ探してみてください。あるいは、著作集で検索すると、カント著作集、バートランドラッセル著作集、ヒルティ著作集(幸福論とかも読めます)がみつかります。全集で検索すると、寺田寅彦全集とかが見つかります。また漱石全集で検索すると1937年版の漱石全集が読めます。科学史関係で珍しいところではカントの星雲説の著作も読めることをみつけました。
「カント・宇宙論 : 天界の一般自然史と理論」という本です。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1371098 カントがニュートン力学を元に太陽系と惑星の起源を論じたもので、カント・ラプラスの星雲説という名前で有名な説を世界ではじめて提唱した本です。多分 カント31歳の時の出版だったと思います。カントが物理学を駆使できるほどの実力を備えていたのが驚きですね。この本の解説はこのあたりをご覧ください。https://www.jstage.jst.go.jp/article/philosophy1952/1971/21/1971_21_172/_pdf/-char/ja

あと、化学の歴史の本でおすすめはこちらです。化学史伝という本です。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1382626

ルクレチウスの本の子供向け翻訳などを紹介します

国立国会図書館デジタルコレクションの個人送信資料で読める本を紹介しています。
結構 少年少女向けの科学の本が含まれています。私の子供が小さかった頃、図書館に少年少女科学名著全集というのがあったので借りてきては読ませていたことがありました。その一巻に「宇宙をつくるものアトム」
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1655694
という本があって、それにはルクレチウスの本が子供むけに翻訳されておさめられていました。もう一度読みたいとおもって借りに行ったのですがなんと除籍されていてもう図書館にありませんでした。それが個人送信資料ではよめるのを見つけてうれしかったです。この少年少女科学名著全集の編者は仮説実験授業で有名な板倉聖宣先生たちです。翻訳(抄訳の編集)は綴り方運動で有名な国分一太郎先生です。ルクレチウスの本は詩ですので詩を書ける人にお願いして訳してもらったということです。あとがきには、全訳は岩田義一先生による翻訳を推薦すると書いてありました。岩田義一先生は以前の記事で紹介しましたが、仁科記念賞を1964年に受賞している優秀な物理学者です。ノーベル賞を授賞した南部陽一郎の先生でもあるそうです。ルクレチウスを原語でよむためにラテン語を学ばれたそうです。岩田先生の翻訳書には、岩田先生が訳してギリシャ・ローマの古典が専門の田中美知太郎先生が校訂したと書いてあるそうです。https://clsoc.jp/agora/newbooks/2020/200909.html

この少年少女科学名著全集にはほかにもいろいろ面白い本が訳されています。ロウソクの化学とか、ガリレオの星界の報告、ファーブル昆虫記とかもあります。こちらから探してみてください。

タンパク質の立体構造を原子レベルで明らかにする手法(cryo-EM)の動画があります

タンパク質の立体構造を原子レベルで明らかにするcryo-EMの動画があります

英国ケンブリッジのMRC LMBのグループリーダーの一人Dr Sjors Scheresが英国王立協会のレーウェンフック講演賞 Leeuwenhoek Lecture award (微生物学の顕著な業績に送られる賞)をもらって、受賞講演をした動画がRoyal SocietyのYouTubeチャンネルに公開されています。この方はcryo-EMという電子顕微鏡の手法でタンパク質の立体構造を原子レベルであきらかにする手法やソフトウエア(RELION)を開発して、多くの重要なタンパク質の三次元構造を決定している研究者です。とてもわかりやすくタンパク質の立体構造を電子顕微鏡と画像解析で明らかにする方法を説明しているので、是非時間があるときにご覧ください。以前紹介したChromeの機能拡張Language Reactorでご覧になるのも良いと思います。

https://youtu.be/e-jLTGFkp-o
こちらも参考になります。MRC LMBの技術支援室の講習会動画です。

https://youtu.be/_EtqexCTOcs

ユークリッドの原論についての本や、プトレミーのアルマゲストの邦訳の紹介です

2022/1/24の記事の追加です。今日は初めてヒグラシが鳴いているのを聞きました。夏まっさかりです。
以前九大図書館で
オーケストラの指揮者をめざす女子高生に「論理力」がもたらした奇跡(永野裕之 著、実務教育出版)を読みました。聖書に次ぐベストセラーとして有名なユークリッドの原論へのよい入門書だと思いました。「なぜ、世界のエリートは
古代ギリシャの数学書『ユークリッド原論』を読んでいるのか?」という宣伝文句が目立つ本です。Kindle版もあって安いので、論理に興味がある方におすすめです。あと10日ほどはKindle版は880円のセール(通常の半額)になっています(2022/7/13まで)。ユークリッドの原論 (Euclid’s Elements)を英文で読んでみたい人には、物理学者であるRichard Fitzpatrick教授によるこちらの無料本がおすすめです。ギリシャ語と英文の対訳になっています。教授は流体力学や量子力学、天体物理学などの多くの本を書いておられるようですが、同じく無料本でプトレマイオスのアルマゲストを現代的に書き直した本A Modern Almagestも無料でダウンロード可能です。国立国会図書館に本登録がすんでいて個人送信資料が読める人はアルマゲストの日本語訳も読むことができます。こちらにリンクをペーストしておきますのでご覧ください。
 アルマゲスト上巻(薮内清訳)恒星社厚生閣
 
 アルマゲスト下巻(薮内清訳)恒星社厚生閣

Windows11でLinuxのGUIアプリを動かせるようになったようです!

Windows11でlinuxのGUIアプリを動かせるようになったようです!
これは朗報ですね。今まではWindows10などのwindows subsystem for linux (WSLと略します)でコマンドラインのubuntuなどいろんなLinuxを使えたのですが、とうとうGU I(グラフィカルユーザーインターフェイス)が簡単に使えるようになったようです。Microsoft社による解説は以下にあります。
https://github.com/MicrosoftDocs/wsl/blob/main/WSL/tutorials/gui-apps.md
検索キーワード  ”windows11 linux gui”」でGoogle検索すると以下のページがヒットします。「Linux 用 Windows サブシステムで Linux GUI アプリを実行する
https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/wsl/tutorials/gui-apps
これは日本語の記事ですが、あきらかに英文を機械翻訳しています。いつもながら、マイクロソフトの機械翻訳による意味不明な日本語を読むのはイライラします。元記事がどこにあるのかも日本語記事からはすぐにはわからないのもどうしようもない仕様です。英語の元の記事を読む方がいいと思います。英語の元記事は下の画像の右上にあるシャープ#をまるで囲んだマーク(地球のつもりだと思います)をクリックすると開きます。

ゴッホについての秀作小説とドキュメンタリーを紹介します

去年講談社のKindle本半額セール(定価で買うのですがAmazonのポイントが半額分つくので、実質半額セールになっていました)でKindle本を買ったのを契機にKindle本を読むようになりました。iPadやPCで読むのですが、紙の本と違って紙の本より安く購入できることが多いので重宝しています。今日はそんなKindle本のなかから美術関係の小説でおすすめの一冊を紹介します。原田マハさんがゴッホについて書かれた小説 「たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫) 」Kindle版 です。これは単行本を図書館で借りて読んだのですがゴッホの一生について てっとりばやく理解するには最適の本です。これを読んでからゴッホの作品をみたり、ゴッホについて読むと理解がとても深まると思います。パリで浮世絵を販売している日本の画商とゴッホの交流のストーリーを通してゴッホの作品や弟テオとの兄弟愛、日本によせる思いを知ることができる秀作です。今月の13日までは割引セールの対象品になっていて、393円で購入できます。文庫本は825円ですから半額以下で買えますのでAmazonのサイトでKindle版をチェックしてみてください。

またAmazon prime videoをみていると、ゴッホについてのイギリスBBCのドキュメンタリー「ゴッホ真実の手紙」(2010年)という作品をみつけました。シャーロックを演じた俳優さんベネディクト・カンバーバッチがゴッホを演じており、セリフはすべてゴッホの手紙に書いてある言葉だけを使っているのだそうです。これも面白そうですので紹介しておきます。

発生学ではじめてノーベル賞を授賞したシュペーマンの主著の日本語版を紹介します

発生生物学で初のノーベル賞(1935年)を受賞したHans Spemannの代表的な本、Embryonic Development and Induction (胚発生と誘導 1938年出版)は、私の属していた九州大学生物学教室発生生物学講座におられて西南学院大学の教授になられた佐々木直井先生が12章まで日本語に翻訳されています(全体の70%が翻訳されていることになります)。これは国立国会図書館の個人送信資料で読むことができます。5回にわけて翻訳されています。「胚発生と誘導-1- / Hans Spemann」から「胚発生と誘導-5- / Hans Spemann」までは以下のリンクから探せます。翻訳は西南学院大学児童教育学論集の以下の巻に掲載されていますので目次で探してお読みください。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1799069
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1799070
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1799072
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/4419788
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/4419789
これはSpemannがノーベル賞を授賞後、アメリカのYale大学に招かれて講義した講義を出版したものです。未翻訳の部分を含めたこの本の原書(Book to Borrow)は、Internet Archiveの以下のリンクから貸出処理して読むことができます。発生生物学の古典とよばれる名著です。
https://archive.org/details/embryonicdevelop0000spem/page/n7/mode/2up

偉大な科学者ポーリングの業績について

国立国会図書館の個人送信資料にはポーリングの本もあります…‥
ポーリング(Linus Pauling)はノーベル化学賞と平和賞をダブル受賞したアメリカの偉大な科学者です。2つのノーベル賞を授賞した科学者は何人かいますが、それぞれの賞を単独で2つ受賞したのはポーリングだけだそうです。彼は量子力学を化学結合の解明に初めて応用した化学者の一人で、化学結合論のパイオニアです。1954年その業績やその他の業績に対してノーベル化学賞を授与されています。その他の業績にはタンパク質の構造の解明(αヘリックスの発見)や抗体と抗原の結合がカギと鍵穴の関係にあるという説の提唱、分子病の概念(鎌形赤血球貧血症がヘモグロビンのアミノ酸配列の突然変異で起こることの発見から、一般化した概念)の提唱なども含まれます。さらに東西の核兵器の軍拡に反対した功績で1962年のノーベル平和賞も受賞しています。以前の記事で彼の実験ノートを紹介したことがあります。奥さんとの愛情を示す奥さんによるほほえましい書き込みI love youが残っている実験ノートです。晩年はビタミンCが風邪や癌の予防や治療に効くという本を書いてひんしゅくをかったり、常温核融合のニュースがでたときはその理論を論文にしたりしていたのも思い出しました。ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を考えていた時、リン酸基に配位するイオンの大きさを知りたくてポーリングの本をもとめて、ケンブリッジ中の本屋を何軒も探し回った話も有名です。探し当てた本はPauling のThe Nature of the Chemical Bond 2nd editionという本です。これは初版が1939年に発行され量子物理学で化学結合を説明して瞬く間に古典となった本で研究者の必携書であるばかりか、多くの大学、大学院で教科書として使われた本です。クリックが買ったこの本をワトソンがいつも読んでいるので、クリスマスプレゼントにクリックがワトソンに一冊あげたという話も「二重らせん」に書いてありました。ワトソンとクリックは、DNAの立体構造もポーリングが先に解いてしまうのではないかとびくびくしていたという話もこの本で読んだことがあります。
PaulingについてはPauling onlineというサイトがあって、http://scarc.library.oregonstate.edu/coll/pauling/index.html
彼の実験ノートや写真、Pauling本人の講演ビデオや関連ビデオや資料が網羅的に集められていますので是非訪れてみてください。面白いことうけあいです。
http://scarc.library.oregonstate.edu/digitalresources/pauling/
http://scarc.library.oregonstate.edu/coll/pauling/bond/index.html
平和運動についてもまとめてあって、現在おきている、第三次世界大戦が勃発するかもしれないような行動をとっている愚かな国々の行動を止めさせるためのヒントにもなると思います。http://scarc.library.oregonstate.edu/coll/pauling/peace/index.html
個人送信資料にはポーリングの翻訳書がいくつもありますのでご覧ください。
私が高校、大学生の時に読んでいたポーリングの化学の教科書や、高校生の時に読んでいた化学の絵本「分子の造型―やさしい化学結合論」もみつけました。
ワトソンとクリックが読んでいた化学結合論第二版はこちら。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2440315
Paulingの大学用教科書College chemistryの翻訳書はこちら。われらが科学 化学Iと化学IIという二分冊で翻訳されたものです。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2421549
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2421550
分子の造型という絵本はこちらです。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1382524

スクリーンショットをpdfにする方法2-画像を右クリックして印刷する

福岡も梅雨明けのようです。6月28日に梅雨があけるのは観測がはじまって以来最も早い梅雨明けだそうです。毎日30度を越えていますが、風が強いので乾燥していてさわやかです。
さて昨日はjpegファイル(他のファイル形式の画像でも同じです)をpdfにする方法を紹介しました。今日は昨日の方法より簡単な方法を紹介します。

1)画像を一つのフォルダに集めて、画像をpdfにする順番にソートしておきます。本のスクリーンショットなら表紙から1ページ目、2ページ目‥‥最終ページの順に画像に番号をつけるなどしてソートしておきます。
2)pdfにしたい画像を全部選択した上で、1ページ目にしたい画像の上で右クリック。下の様なポップアップがでてくるので、その中の印刷(P)をクリックします。
3)印刷ボタンを押して開いた画面(下の写真参照)でパソコンにインストールされているpdfプリンタを選び(プリンター(R)と書かれている部分がプルダウンメニューになっているのでそこから選びます)、解像度や印刷の向きなどを設定します。下の写真ではFoxit Reader  PDF Printerを選んでいます。用紙サイズをA4、品質を1200×1200 dpi、写真をフレームに合わせるなどを選択しています。思ったようにプレビューが表示されていないときは、「フルページ写真」などと表示されている列や、下のほうにあるオプションを開いて思ったように表示されるように設定しなおしてください。後は印刷ボタンをおすだけです。望みの保存先を選んでやるとすぐにpdfが完成します。

この方法は右クリックだけですばやくpdfがつくれます。お試しください。