Firefox 52.9.0esr版からFirefox Quantum最新版へのアップグレードおよびScrapBookとSageアドオンの代替品の紹介です

Firefox esrのFirefox Quantum最新版へのアップグレードのやり方およびScrapBookとSageというアドオン(拡張機能、機能拡張)の代替品の紹介をします。

プログラム本体とアドオンの扱いにわけて説明します。まずアップグレードの失敗に備えてprofileフォルダのバックアップをとっておきましょう。profileフォルダの中には、ログインパスワードやブックマーク、機能拡張(アドオン)の情報などなど、重要な情報が集められているので、更新に失敗してもバックアップしておいたprofileフォルダを使って失敗前のFirefoxに戻すことができますので是非ともバックアップをとっておいてから以下の作業をやってください。

profileフォルダの探し方は下の図のとおりです。

Firefoxの右上のバーの中にある、三本線が積み重なったマークをクリックして開くメニューから、矢印で示してある「ヘルプ」をクリックして、「ヘルプ」メニューにある「トラブルシューティング情報」をクリック、「トラブルシューティング情報」メニュー中の「プロファイルフォルダー」の項目にある「フォルダーを開く」のメニューからprofileフォルダの位置がわかります。このprofileフォルダ全体を万一のために別の場所にバックアップしておいてください。
この際、profileフォルダのバックアップ先は、決してFirefoxのインストール先のフォルダにはしないことが大事です。Firefoxをインストールするときに上書きされるようなフォルダはバックアップ先には不適です。不具合が生じた時の以前のFireifoxへの戻し方の概略は、アップグレードに失敗したFirefoxをアンインストールし、インストーラーを使ってもとのFirefoxを再インストールし、インストール後にできたprofileフォルダを、バックアップしてあったprofileフォルダに中身を入れ替えるだけです。

ではいよいよアップグレードにとりかかりましょう。

アドオンの取り扱い。
まずFirefoxのQuantum(Firefox 57以降版)にアップグレードする前にQuantumでは使えなくなるアドオン(機能拡張)を調べて、代替アドオンをGoogle検索などを使って探してインストールする準備をしておきましょう。代替アドオンの名前などをメモしておけばOKです。

私の場合は、Firefoxのアドオンで、昔から使ってたScrapBookとSageの代替アドオンを探しました(どちらもFirefox Quantumでは使えません)。

1)ScrapBookは元のデータを含めてScrapBeeというアドオンで代替利用できます。
https://addons.mozilla.org/ja/firefox/user/13434730/

ScrapBeeというアドオンは、ScrapBookのデータを読み込めますので、Firefoxをアップグレードする前に、Scrapbookの元データの場所を確認しておいてください。普通 元データはFirefoxのprofileフォルダの中のScrapBookフォルダにありますので、profileフォルダ全体ををバックアップしておくとバックアップから復元できます。FirefoxのProfilesフォルダの下に、固有の文字列のあとに”.default”とかいてあるprofileフォルダ(たとえばabcdef7x.defaultというようなフォルダ名になっています)があります。これを開くとFirefoxのいろんなデータフォルダがあって、その中にScrapBookという名前のフォルダでデータが保存されているのがわかります。このフォルダを開くとそこにscrapbook.rdfファイルがありますのでこのありかをScrapbeeのoptionで設定すると、ScrapBookで蓄積したデータを最新版のFirefoxで利用することができます。もちろん新たなweb pageの保存もできます。

Scrapbeeのインストールと使い方についての日本語による解説記事は以下をご覧ください。
http://rainbowvortex.blog.fc2.com/blog-entry-121.html

Scrapbeeに元のScrapBookのデータのありかを教える必要がありますが、上の記事にあるように、Scrapbeeのoptionメニューでscrapbook.rdfファイルのありかを記述してそれを保存すればよいだけです(ScrapBookデータフォルダはFirefoxのprofileフォルダの下にあり、ScrapBookフォルダの直下にこのrdfファイルがあります)。ScrapBook フォルダを開いてscrapbook.rdfというファイルの場所を絶対パス表示で表示してそれをコピーしてScrapbeeのオプション設定に記入します。記入後設定をsaveすると、うまくいけば、昔のScrapBookで保存した記事のリストが一覧表示されます。うまく読み込めない場合は、ScrapBookフォルダの場所をFirefoxのprofileの下の位置から、デスクトップなどFirefoxと関係ない場所へ移してやってみてください。読み込めるはずです。

2)RSSリーダーのSageはSage-likeというアドオンをインストールして代わりにしています。
https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/sage-like/
このアドオンをQuantumにインストールしてから、まだフィードファイルフォルダを設定していないので、オプションの設定メニューを使って、以前Sageで設定していたRSSフィードのデータを一括取り込みします。下図のようにオプションメニューを開きます。

Feeds Bookmark folderというのの設定項目が一番上にあります。select feeds folderというプルダウンメニュー(左図の矢印)をひらくと、Bookmarkの他にSage feedsという項目がいくつかあります。このアドオンにはじめからついてきているfeedsもありますが、たぶん下のほうにあるSage feedsをクリックすると、いままで使っていたSageアドオンのfeedsのリストが見つかると思います(右図矢印)。それを選べば、以前と同様にSageで設定したfeedが使えるようになります。

Firefox のQuantum最新版へのアップグレード

先ずアップグレード前の注意点です。
Firefoxをアップグレードする前に、今使っているFirefoxのprofileフォルダをバックアップしておくのを強く勧めます。プロファイルフォルダの場所の見つけ方は上に説明したとおりです。以前の記事にもありますので参照してください。このprofileフォルダにはパスワードやログイン情報の他、多くのアドオンのデータも保存されています。上に書いてあるScrapBookというアドオンのデータもこのフォルダの中にあります。このprofileフォルダさえあればFirefoxが異常になった時でも再インストールなどして前の状態を復活できますので、Firefoxをいじるまえに是非バックアップしておいてください。

Firefoxの古いバージョン52.9.0 esr版がインストールしてあるパソコンがあったので、Firefoxを起動し、メニューの「ヘルプ」→「Firefoxについて」を選んでFirefox 60.9.0esrへアップグレードします。これはアドオン以外は問題なくアップグレードできるでしょう。(どのアドオンが使えなくなったかがわかるのでそれをみて必要な代替アドオンを探してください。)このFirefox esr 60.9.0がインストールしてあるパソコンを最新のFirefox esr 78.4.1にアップグレードしてみました。

一台目のパソコンでは、Firefoxを起動しておき、「ヘルプ」→「Firefoxについて」を選択して更新のチェックを行い(左図)、更新版としてesr 68.12.0が表示されるので更新ボタンをクリックしてアップグレードしました。その後、もう一回同様にヘルプで更新を確認すると、さらに更新があることがわかったので、クリックしてFirefoxを再起動してesr版の最新版である78.4.1へアップグレードできました。以前使っていたプロファイルもそのまま引き継がれて、なんら問題なくアップグレードできました。

ところが別のパソコンでは、アップグレードに失敗しました。そのPCにはFirefox esr 60.9.0がインストールしてあったのですが、ヘルプをクリックして更新を確認したところ、前と同様にesr版の68.12.0へのアップグレードがあると表示されました。クリックしてFirefoxを再起動して更新をインストールしたところ、起動するときにprofilesがないという英語のメッセージ profiles missingがでて昔のプロファイルを読み込めませんでした。Google検索してみると、profileの扱いがFirefoxの67から変更されたことによるらしく、アドレスバーにabout:profilesといれて表示されるいくつかのプロファイルリストに以前使っていたprofileがあればそれを選択するとよさそうでした。mozillaのサイトの説明は不親切で、それをどうやるのかがわからず困りました。

結局はスムーズにアップグレードできたのですが、うまくいった理由はよくわかりません。やったことは、上に述べたようにアドレスバーにabout:profilesとうちこんでエンターを押して表示される、プロファイルリストのページを表示した状態で、「ヘルプ」→「Firefoxについて」を選び、更新の確認を行い、68.12.0が表示されるので更新ボタンをクリックして、Firefoxを再起動しました。すると何の問題もなく以前のプロファイルを保ったまま68.12.0にアップグレードできました。この状態ですぐにヘルプから更新の有無をチェックすると、更新があると表示されたので、更新ボタンをおしてFirefoxを再起動しました。すると何の問題もなく元のプロファイルのままで無事、esr版の78.4.1にりました。しかし再起動するとまたprofileがないとかいってきて、Firfox自体が起動しません。そこでウインドウキー+Rをおして、ファイル名を指定して実行のメニューを呼び出し、firefox -Pとタイプしてfirerfoxを起動しました。するとプロファイルメニューの一覧がでるのでこれから古いプロファイルメニューを選び、いつもこれで起動のチェックをいれて起動します。これで無事昔のブックマーク、パスワード、ログイン情報などが残っているfirefoxが起動しました。これでよさそうだったのですが、まだトラブルは続きました。その症状と解決法は明日書くことにします。

ほとんどの方はprofile missingなどの表示もなく私の一台目のパソコンと同様に最新版にアップグレードできるのだと思いますが、もしできない方がおられましたらこの記事を参考にしてみてください。

日本最古の城址のある町を紹介します。

テレビのニュースで今日は福岡市の近郊にある宇美町(うみまち)町制施行100周年の記念日だと報じていました。記念式典など多くの行事は新型コロナウイルス感染防止のため中止や延期になったそうですが、秋の青空に各小中学校からバルーンリリースで放たれたバルーンが浮かんでいたようです。宇美町といってもあまりご存知ないかもしれませんが、
「日本最古の城址があるのは宇美町です!」

https://www.town.umi.lg.jp/soshiki/12/oonojou.html

四王寺山にある大野城址は1350年前の築城で、中国の万里の長城のように高さ約7mの壁でかこまれた(なんと周囲全長8km)日本最古の城址です。大野城市にあると思っている人が多いですが、ほんの一部が大野城市にかさなっているだけでほぼすべて(80%以上)は宇美町にあります。発掘であきらかになった壁は土→粘土→砂を10cm単位でたたき しめることを繰り返して作られており、コンクリート並みの強度をもつ丈夫な壁で、容易にはくずれない強固な壁です。この壁の中には、米が貯蔵されている倉庫などがあったようで、今でも焼米ヶ原(尾花礎石群)の建物周辺からは1350年前のお米を拾うことがでるそうです。マップは以下にあり、pdfもダウンロードできます。

http://www.town.umi.lg.jp/site/kankousab-site/kanko157.html

この頂上にある毘沙門堂では正月3日に四王寺毘沙門詣りという行事(宇美無形文化財)でにぎわいます。これは毘沙門堂にお金が皿にいっぱいおいてあり、参拝者はそこから好きなだけお賽銭を借りて帰ります。翌年借りた額の倍額のお賽銭をかえすというもので、このお参りをすると一年間お金に不自由しないとされているそうです。

宇美は宇美八幡宮(神功皇后が応神天皇を生んだところが宇美神宮と日本書紀、古事記に書いてある)で有名です。安産の神様とされていて、妊娠した方のお参り 産後のお礼参りも盛んです。宇美八幡宮には樹齢推定2000年のクスノキがあります(湯蓋の森)。天然記念物と書いた柱がたっていますが、その周りにおかれている石は実は化石の珪化木です!。宇美は昔 炭鉱があったところで、沢山 珪化木がでてきて、それを木のまわりに置いたらしいです。昔は宇美神宮の前には池があり、ちょうど大宰府とおなじような橋がかかっていたと絵図にのこっています。また今の宇美歴史資料館や相撲場あたりも昔は池で、これは放生池という生き物をいつくしむために飼育していた池らしいです。宇美神宮の入り口に鳥居が二つありますが、一番前の鳥居は昭和42年に今の下宇美橋にあった鳥居を、道路の交通量が増えて事故が多くおこったので移設して今の鳥居にしたそうです。宇美八幡では玉せせりとか、流鏑馬もわりに最近まで行われていたようで(昭和40年代まで)、地名に馬場区というのはこの流鏑馬からとられた名前だそうです。宇美八幡宮につたわる宇美町縁起という古文書によるとこのあたりは昔 蚊田の邑(かたの里)と呼ばれていたらしく、香椎宮にいた神功皇后がここを産所に定めたと書かれています。聖母宮(しょうもぐう)にある秘仏(神功皇后像ともいわれている)は25年に一回公開されている秘仏(2018年に公開されましたので、次の公開はずいぶん先ですね)で、室町時代の作とされ朝鮮からわたってきた女神信仰の仏像らしいです。聖母宮は宇美神宮で一番古い建物(300年前建造。だから他の建物はもっと新しい、一時宇美神宮はすたれていたんですね)。軒下にはキリン(想像上の生物の麒麟)、ゾウ、鳳凰、波に乗るウサギ(因幡の白うさぎ?)、翼のある魚などが書かれているのでご覧ください。

宇美は邪馬台国とも関係がある町です。邪馬台国への道のりは、魏志倭人伝によると、

始めて海を1000余里渡ると、対馬国に至る(対馬)
また南に瀚海と呼ばれる海を1000余里渡ると一大国に至る。(壱岐のこと)
また海を1000余里渡ると、末廬国に至る。(松浦のこと。唐津。)
東南に陸行し、500里で伊都国に到着する。(九大のある伊都です。)
東南に100里進むと奴国(なこく)に至る。(これは博多。福岡市)
東へ100里行くと、不彌国(ふみこく)に至る。(これが宇美の可能性があります。)

ここから先は書いてあるとおりに進むと台湾にいったりして邪馬台国の位置は不明となっています。宇美を不彌国(ふみこく)にあてる説は、宇美町にある光正寺古墳が糟屋郡最大の前方後円墳であり発掘で築年代が邪馬台国の時代であることがわかったことから、卑弥呼の時代の最大有力者(不彌国の王?)の墓と考えられているそうです。この発掘成果によって不彌国が宇美だとする説は、がぜん有力な説となっているのです。宇美から南にいけば大宰府にいくわけで、そこが邪馬台国の入り口あるいは邪馬台国そのものと考えるのも自然ではないでしょうか。

写真は我が家に実ったリンゴです。今年は真っ赤に熟しました。とても甘くておいしかったです。秋も深まってきました。

夏のおすすめ本2020―その2 夏目漱石の「明暗」の完結編など

今日は肩のこらない小説などを紹介したいと思います。夏目漱石の本は青空文庫で簡単にダウンロードして読めるのでおすすめですが、未完に終わった最後の小説「明暗」を完結させた小説があります。「続明暗」というタイトルで、私は去年、漱石の「明暗」に続いて読みましたが、とてもうまく完結させてあってうまいハッピーエンドになっていました。

漱石が胃潰瘍で亡くならなかったら、このような完結の仕方になったかもしれないという終わり方でした。この「続明暗」は有名な小説家水村美苗さんの作品で、芸術選奨文部大臣新人賞を受賞しています。去年NHKでやっていた夏目漱石をあつかった100分de名著の番組の中にも、この本が飾ってありました。とても面白い本ですので、是非読まれるのをおすすめします。

水村さんは、小説家でその他にも多くの賞を授賞されています(野間文芸新人賞や読売文学賞)。12才の時から米国で過ごされた方でイエール大学卒業。プリンストン大学で日本文学を教えておられたこともあり、「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で」という精緻な論説も書かれています。この本は大変評判になり小林秀雄賞を受賞した他、
The Fall of Language in the Age of Englishという題でコロンビア大学出版会から英訳が刊行されています。今は文庫化されているのでこちらも是非お読みください。英語で論文を書くことについて深く考えさせられる本でもあります。松岡正剛さんの千夜千冊にも紹介されています。

以前このブログで紹介したABC予想を解決された望月新一先生のブログでも、日本語と外国語という観点の記事で、水村さんについて触れられておりました。この望月先生のブログの記事は、米軍基地問題や北朝鮮問題、数学の意義についての考察のほか、論文の書き方や英語についての考察が詰まっていて、とても示唆に富む内容ですのでご覧ください。望月先生は古代ギリシャ語、ラテン語、サンスクリットなどを学ばれたそうですが、私達の苦手な定冠詞(英語のthe)や不定冠詞(英語のaとan)についていえば、古代ギリシャ語には不定冠詞はなく、ラテン語や現代ロシア語には定冠詞も不定冠詞もないのだそうです。

夏のおすすめ本2020―その1 Rに関するおすすめ本2冊

毎日猛暑がつづきますが皆さんお元気の事と思います。今日から数回にわたって、面白そうな本、役に立つ本などを紹介していきたいと思います。第一回目はR(アール)の本です。今や統計解析にソフトの定番のプログラミング言語Rは無料で使える素晴らしいソフトですが、統計解析だけではなくゲノム解析にも活躍しているソフトです。昔はグラフィカルインターフェースがなかったのですが、今ではRのパッケージのR commanderや日本の神田善伸先生(自治医科大学)が開発されたEZR(イージーアールと読みます。これも大評判になってRのパッケージになりました)がありますので、グラフィカルインターフェースでRを使うことができて、初心者にもやさしいソフトとなりました R commanderはRをインストールしたあと、パッケージとして追加インストールして使います。EZRはR commanderの追加プラグインになっています。インストールするとどちらも日本語で使えます。EZRを中心に使いたい場合は開発者の神田先生のサイトからダウンロードして使うのもおすすめです)。また、RStudioというRの統合開発環境ソフトを使えば、Rをもっと便利にスムーズに利用することができるようになったので、Rはますます便利で使いやすくなっています。インストール法については以前の記事二つがありますので、ここここを参照してください。

今日紹介するのは、EZRの使い方を、その開発者の神田先生が解説した本です。先生のホームページにも簡単な使い方などが載っていますのでそちらも参照してみてください。

EZRでやさしく学ぶ統計学 改訂3版〜EBMの実践から臨床研究まで〜神田善伸 著(2020年10月発行)

これ一冊あれば、生物系医学系の普通の統計解析はすべて日本語のプルダウンメニューを使ってできます。私も論文のデータ解析にはこの本を主に参照しています。大変役立つ本ですので、是非一冊購入して統計解析の勉強や研究に活用してください。私は第一版を購入して使っていますが、すでに第3版がでているほどに売れている本のようです。これがちょっと難しそうという方むけに、神田先生はもうすこしやさしい初心者向けマニュアルも書かれています。全く初心者の方にはこれがおすすめです。 マンガの部分もあったりしますが、統計解析の基本をひととおり学べますし、EZRの開発秘話とかものっています(立ち読みで読めます)。

サラっとできる! フリー統計ソフトEZR(Easy R)でカンタン統計解析
という本です。立ち読みしてみて、まずこちらを買うのもありかもしれません。医療や生命科学関係の事柄を急いで学びたいという人には同じ著者の

初心者でもすぐにできるフリー統計ソフトEZR(Easy R)で誰でも簡単統計解析

がいいかもしれません。まず神田先生の簡単な入門書で学び、実験データの解析には最初の本(第3版)を使うというので、Rを使った生命科学の統計データ解析には十分だと思います。他にいろいろ本を買う必要はないでしょう。(以上2020/11/19追記)

Rはバイオインフォマティクスや次世代シークエンサーのデータ解析、ゲノム解析にも大活躍しているソフトです。最近英語の本ですが、こんな本が公開されています。
Computational Genomics with Rという本です。
紙の本や電子ブックはこの秋にでるようですが、Rをつかって出力されたhtml版が上のリンクから無料で読めます。バイオインフォマティクスの専門家による本ですので、役立ちそうです。
著者は日本にもいたことがある人で、Rのバイオインフォマティクス解析用のBioconductorの多くのパッケージを開発している方たちです。著者紹介によると、この本のほとんどを書いた方は、Dr. Altuna Akalin wrote most of the book and edited the rest. Altuna is a bioinformatics scientist and the head of Bioinformatics and Omics Data Science Platform at the Berlin Institute of Medical Systems Biology, Max Delbrück Center in Berlin.(以下略)ということで、ドイツのベルリンにあるバイオインフォマティクスとオミックスデータセンターのヘッドだそうです。まだ私も読んでいないのですが、勉強してみたい本ですので紹介しておきます。

写真は、散歩の途中で撮影した山百合と葛の花です。山百合の間によくみると葛の花が咲いているのがわかります。

オンラインシンポジュウム 糖の起源と進化~宇宙 & 深海~は明日zoom開催です。今日8/20中に参加登録してください

毎日酷暑が続いていますが皆さんお元気ですか。庭の百合も山百合もあちこちで満開です。さて明日21日は、比較グライコーム研究会のzoomシンポジュウムがある日です。

今8月20日木曜日中の参加申し込み受付ですので、ここから是非申し込んでご参加ください。プログラムと申込みリンクはこちらにあります。

九大伊都キャンパスのイトリーイトがなくなってしまいました。(10/01からリニューアルオープンしています!)

Itori-Itoはめでたくリニューアルオープンしたそうです(10月1日)。ですので以下の記事は昔の話となります。よかったです。(2021年1月3日追記)
https://kikin.kyushu-u.ac.jp/news/view.php?cId=1317&mode=1
===以下は古くなった記事です===
卒業生の皆さんにおなじみだった九大伊都キャンパスのイタリア料理店ITRI ITOが倒産したそうです。消費税増税で売り上げが落ちていた上に、新型コロナウイルスの影響(伊都キャンパスでの学生の感染や大学への立ち入り制限、緊急事態宣言などで休業になったことなど)で経営難となり、ひと月ほど前に倒産したとのことです。新型コロナウイルス関連の倒産ニュースをみていて気づきました。

イトリーイトは、学外からのお客さんのおもてなしや、研究室でのお祝いごとなどでよく利用した素敵な伊都の食材を活かしたイタリアンのレストランでした。伊都キャンパスは周りに何にもないキャンパスですので、イタリアンレストランはなくてはならないお店でした。皆さんの思い出のお店がこんな形で消えるとは、残念なことです。日本中で本当に多くのお店や会社が影響をうけているのが身に染みてわかるニュースです。どうぞ一日も早く再出発をしてくださいますよう祈っております。

新型コロナウイルスの蔓延は止まらないようですが、季節は着実に変わっています。写真は丘のふもとの雑草の中にきれいに咲いていた百合の花と、自宅で咲いた朝顔の花です。散歩していると いたるところで白いユリや朝顔がきれいに咲いています。

オープンアクセスの電子ブックをダウンロードしてみよう―Pythonや制御理論や統計学の教科書、力学の教科書やFelix Kleinについての本などなど

以前の記事に書きましたが、分子生物学会のランチョンセミナーでオープンアクセスの電子ブック(無料で読める電子ブック)を探せるサイトDOAB(Directory of Open Access Book)を紹介しました。リンク集にもリンクをのせてあります。今日、ちょっとのぞいてみるといろいろオープンアクセスの本が新しく公開されていました。検索窓にPythonと入れて検索してみると、Pythonに関連した本がずらずらとでてきます。本のLicenseの下にある
Abstract | Keywords | Free access | Buy the book |の部分のFree accessのリンクをクリックすると本がダウンロードできます。いろいろな本がありますがPythonを学ぶにはIntroduction to Scientific Programming with Python
Authors: Dr. Joakim Sundnes in Simula SpringerBriefs on Computing。Springer Nature (2020) とか
Programming for Computations – Python
Authors: Linge, Svein — Langtangen, Hans Petter
Book Series: Texts in Computational Science and Engineering, Springer Nature (2020) などは面白そうです。
また神経科学へのPythonの応用を紹介している本で
Python in Neuroscience
Authors: Eilif Muller — James A. Bednar — Markus Diesmann — Marc-Oliver Gewaltig
Book Series: Frontiers Research (2015)Publisher: Frontiers Media SA
も神経科学に興味がある人には面白いのではないでしょうか。

検索窓にソフトウエアのMathematicaをいれて検索すると、こんどは制御理論の教科書がでてきました。Mathematicaを使って制御理論を学ぶ教科書のようです。
Control Theory Tutorial: Basic Concepts Illustrated by Software Examples
Author: Steven A. Frank Book Series: SpringerBriefs in Applied Sciences and Technology, Springer Nature (2018)

ほかにもいろいろ面白そうなオープンアクセスの本があります。Browseボタンを押して色んな本をタイトル、分野、そして出版社別にながめることもできます。Publisherで検索すると、各出版社から何冊くらいオープンアクセス本がでているかがわかります。とても多くのオープンアクセス本をだしているSpringer Nature社の面白そうなタイトル(2019-2020年発行)を以下にならべておきますので、検索してみてください(直リンクははってないので、上のサイトでタイトルで検索するなどしてみてください)。科学だけではなくて哲学、社会学の本とかもあります。たとえば王陽明の紹介本とかもありました。

Make Life Visible
Prof. Yoshiaki Toyama, Ph.D. Atsushi Miyawaki… (2020) 生物科学の可視化の技術の本のようです。

Statistical Population Genomics
Julien Y. Dutheil in Methods in Molecular Biology (2020)

Gene Drives at Tipping Points
Precautionary Technology Assessment and Governance of New Approaches to Genetically Modify Animal and Plant Populations
Prof. Dr. Arnim von Gleich… (2020) ジーンドライブについての本

Data Journeys in the Sciences
Dr. Sabina Leonelli, Dr. Niccolo Tempini (2020)

The Amazing Journey of Reason
from DNA to Artificial Intelligence
Mario Alemi in SpringerBriefs in Computer Science (2020)

Introduction to Scientific Programming with Python
Dr. Joakim Sundnes in Simula SpringerBriefs on Computing (2020) これは最初に紹介した本です。

The Pangenome
Diversity, Dynamics and Evolution of Genomes
Dr. Herve Tettelin, Duccio Medini (2020)

Bioimage Data Analysis Workflows
Dr. Kota Miura, Dr. Nata?a Sladoje in Learning Materials in Biosciences (2020)

Good Research Practice in Non-Clinical Pharmacology and Biomedicine
Editors :Anton BespalovMartin C. MichelThomas Steckler 薬学や医学での研究の再現性、正しいサンプリング、実験デザインなどを教えてくれる本です。

The Everyday Life of an Algorithm
Authors: Daniel Neyland アルゴリズムのやさしい紹介の本。

Principles of Mechanics
Fundamental University Physics
Salma Alrasheed in Advances in Science, Technology & Innovation (2019) 物理の力学の本

The Ethics of Vaccination
Dr. Alberto Giubilini in Palgrave Studies in Ethics and Public Policy (2019) ワクチン接種の必要性を議論している本

Understanding Statistics and Experimental Design
How to Not Lie with Statistics
Prof. Dr. Michael H. Herzog… in Learning Materials in Biosciences (2019) 統計学と実験計画法の教科書

The Legacy of Felix Klein 数学者フェリックス・クラインについての本
Prof. Dr. Hans-Georg Weigand… in ICME-13 Monographs (2019)

The Brownian Motion
A Rigorous but Gentle Introduction for Economists
Authors;Andreas Loffler, Lutz Kruschwitz 経済学者のためのブラウン運動の理論の教科書。

写真は5月ごろに撮影したバラの花をホテルにしているアマガエルです。昼間はこのバラの花の部屋の中でじっと休憩していますが、夜になると外にでかけて大きな声で鳴きます。今も外はカエルの声がにぎやかです。

私達の新しい論文が公開されました―どんなGPIアンカー型タンパク質が配偶子幹細胞の発生に関与しているかを明らかにしました

私のラボの二人の修士の学生さんの修士論文をもとにできあがった論文が、6月24日に雑誌 Journal of Biochemistryにアクセプトされて、本日公開されました。
Rikitake, Matsuda et al. (2020)
です。
Analysis of GPI-anchored proteins involved in germline stem cell proliferation in the Caenorhabditis elegans germline stem cell niche
「線虫C. elegansの配偶子幹細胞ニッチでの配偶子幹細胞の増殖に関与しているGPIアンカー型タンパク質の解析」
という題です。図書館などでこの雑誌の電子ジャーナル版が見られる方は是非ご覧ください。
Analysis of GPI-anchored proteins involved in germline stem cell proliferation in the Caenorhabditis elegans germline stem cell niche
The Journal of Biochemistry,https://doi.org/10.1093/jb/mvaa075

私達はヒトと共通な糖鎖関連遺伝子を、モデル生物である線虫C. elegans(シーエレガンス)で網羅的に機能阻害してその隠された機能を明らかにしてきました。GPIアンカー型タンパク質(下の模式図と註1参照)を合成する遺伝子について調べたところ、GPIアンカー型タンパク質GPI-APの合成が阻害されている場合には、配偶子がつくれないこと、すなわちGPIアンカー型タンパク質の合成は子孫を作る時に必須であることを明らかにしました(Murata et al. MBoC 2012)
これはGPIアンカーが生命の連鎖に不可欠な分子であるという初めての発見で、学会で大変ほめていただきました。

今回の研究では、GPIアンカー型タンパク質のプロテオーム解析の結果をもとに、RNAi (RNA 干渉法)で網羅的に機能阻害を行い、配偶子幹細胞が正常に発生するために必要なGPIアンカー型タンパク質を3種類同定しました。GPIアンカー型タンパク質の合成阻害で配偶子幹細胞の数が激減するという今回の結果は、おそらくヒトにおいても同様なGPIアンカー型タンパク質の働きが存在しており、不妊の原因の一つにGPIアンカー型タンパク質合成に関わる遺伝子やGPIアンカー型タンパク質をコードしている遺伝子の異常が潜んでいることを強く示唆しています。今回の研究成果が今後、ヒトの不妊研究に役立つ可能性があり、また幹細胞ニッチの形成一般にGPIアンカー型タンパク質がかかわっている可能性が示唆されるとても興味深い成果だと考えています。

註1; 上の図で模式図を示していますが、GPIアンカー型タンパク質というのは、細胞膜表面(細胞の外界と面しているほうの膜)に存在しており、フォスファチジルイノシトール(PI)という脂質に糖(図にあるグルコサミンGlcNやマンノースMan)が結合し、さらにエタノールアミンリン酸EtNPのアミノ基を介して特定のタンパク質のカルボキシル基とアミド結合している分子です。ヒトのアルツハイマー病をひきおこすプリオンタンパク質には、GPIアンカー型タンパク質として存在しているタイプがあることがわかっています。その他200を超える種類のGPIアンカー型タンパク質(酵素や受容体、接着分子、補体制御因子、その他)が存在すると推定されており、膜上で信号伝達に働くなど様々な役割が知られています。

雨が毎日続きますが、皆様のところは被害がないでしょうか。北海道まで豪雨が到達したようですが、皆様のご無事をお祈り申し上げます。写真は最近撮影した、近所で巣立ったモズの若鳥と実をつけたクリの木の写真です。金蘭の花もねむの木の花も終わって今はアジサイがきれいです。ヒグラシも鳴き始めて季節は着実にすすんでいます。

windows7のサポート終了:windowsをやめてLinuxへうつるチャンスです(2)

さて、今日は前回の続きで、windows7を残したままで、外付けHDDやSSD、あるいはUSBメモリからLinuxを起動して使う方法を紹介します。(どんな外付けのSSDがよいかについては、記事の末尾の註1をみてください。) 下のギャラリーの写真は最新のUbuntu Desktop 20.04 LTS日本語版Remix をインストールする手順です。起動直後から日本語入力ができる上にLong Time Support (LTS)版ですので5年間のサポート(2025年4月まで)付です。

今回の記事はウインドウズ7を残したまま、Linuxを外付けSSDやHDD、あるいはUSBメモリにインストールして使う方法と題していますが、もちろんwindows10とかのパソコンに外付けディバイスをつないで(註1)、そこにLinuxをインストールして使いたいという時にも使えます。サポート切れのwindows7のパソコンの場合は、使う時にネット接続を遮断しておき、Linuxを起動したときのみ、Linux側でネット接続するのが安全でしょう(註2)

以下では、windowsユーザーでLinuxを初めて使ってみようと思う人のために、具体的なインストール手順をまとめておきます。

1)まずLinuxのインストール用メディアを作ります。
インストールするLinuxのディストリビューションを決めてインストール用のDVDあるいはUSBドライブを作成します。(この操作は、前に紹介した本の付録などについているインストール用DVDを使うなら不要です。)前回紹介したいろいろなLinuxのディストロの中でまず試してみようと思うもののISOファイルをダウンロードしてください。前回紹介したubuntu Linuxの日本語版のISOファイルとか、Linux mintのisoファイルとか、puppy Linuxのisoファイルとかお好きなものを選んでダウンロードしてください。次にisoファイルをwindowsのburn dvdの機能を利用してDVDに焼きます。usbメモリをインストール用に使う場合は、rufusというソフトをダウンロードして空のUSB(4G以上は必要でしょう。isoファイルのサイズによってはもっと容量の大きいものを用意してください。)をLinuxインストール用のUSBメモリとします。(追記:もっと簡単なソフトとしてEtcherというものもあります。これはISOイメージを選び、USBメモリを選んでボタンを押せばブート用USBメモリが出来上がるという簡単ソフトです。2021/01/11追記)

2)次はwindowsのパソコンにインストール用メディアをいれた後、電源を入れたら、このインストール用メディアからパソコンが起動するように設定します。
インストール用のDVDやUSBが用意できたら、windows7のパソコンの設定を変えて、電源を入れた時にインストール用のDVDやUSBの入っているドライブからパソコンが起動するようにします。やり方はwindows7のパソコンのBIOS (あるいは最近のパソコンならUEFI(Unified Extensible Firmware Interface))の設定を変えて、「まず最初に起動設定を探しにいくドライブ」を、DVDドライブあるいはUSBドライブに設定するのです。やり方は、パソコンの電源を入れた直後の最初の起動画面で、BIOS設定(古いパソコンはこれ)やUEFI設定(最近のパソコンはこっちでしょう)をするにはどのキーをおすかという指示がでます (F2キーとかを押すとよいとか英語で書いてあると思います)。すぐメッセージが消えてwindowsが起動するので、よくわからない人は、起動の様子をムービーで撮影しておいて、あとでムービーを再生して、ゆっくりどのキーを押せばよいのかを確認してください。起動時に押すキーがわかったら、電源を入れた直後にそのキーを押して、BIOS画面やUEFI設定画面を表示させ、最初に起動のときにコンピュータがみにいくドライブを指定します。こうしておけば、USBメモリやUSB接続の起動ディスク(SSDやHDD)をつないで起動したときはLinuxのインストーラー(インストールが終わった後なら、Linux)が起動し、これらをつながないで起動すればwindows7が起動します。

3)以上の設定が終わったらいよいよlinuxのインストール作業に入ります。
パソコンに上の2)で作成したインストール用DVD(USBやCDの場合もあるでしょう)を入れて起動します。先ほどのBIOS(またはUEFI)設定がうまくいっていたら、Linuxインストール用のDVD あるいはLinuxインストール用のUSBからパソコンが起動します。ubuntuのインストーラーの場合では下のギャラリーの1~3のようにいろいろ画面が変化した後、下のギャラリーの4の画面がでてきます(ギャラリーのサムネールをクリックすると写真がみられますので、クリックしながらみてください)。

ubuntu desktop LTS 20.04 Remixのインストール用DVDの場合、2のようにディスクチェック (インストール用DVDのチェックのようです)が最初に行われ4の画面で止まります。4の画面の「Ubuntuを試す」のほうを押すとインストールなしでubuntu Linuxを使ってみることができます。今回は「Ubuntuをインストール」のほうを選んでクリックします。

すると、5のようにキーボードを選ぶ画面がでて、「続ける」ボタンをクリックすると、6の「アップデートと他のソフトウエア」の画面に変わります。ここでは「通常のインストール」で、「Ubuntuのインストール中にアップデートをダウンロードする」を選んでおきましょう。「続ける」ボタンを押して次に進むと7の「インストールの種類」の画面がでてきます。「コンピュータにはwindows7がインストールされています。どのようにしますか?」ときいてきます。ここでは必ず一番下の選択肢「それ以外」を選んでください。一番上の選択肢は一見よさそうでwindows7とLinuxが共存できそうですが、これを選ぶとトラブルが起こった時対処が大変なので選ばないでください。必ず「それ以外」を選んで「続ける」ボタンを押して次に進みます。

次の8の画面ではコンピュータのハードディスクなどの構成が表示されます。いよいよLinuxをインストールするディバイスとパーティションの設定を開始します。8にでているsdaとかsdbなどというのがHDDドライブなどのディバイス類のことで、sda1、sda2などの数字はそのパーティションです。ディスクの大きさ、使用しているサイズ、空サイズ、パーティションの種類(ntsfなどの種類)やサイズが表示されています。写真では私のHDDドライブの使用量や空サイズの部分は念のためぬりつぶして隠してあります。一番下に空のSSDの空き領域128G余りが表示されているのをご覧ください。フォーマットもしていないので空き領域となっているだけで、ここにLinuxをインストールします。まちがってwindows7や10が利用しているドライブやパーティションなどを選ばないことが大事です。写真9の一番下にはブートローダーをインストールするディバイスという項目があります。これがLinuxをインストールするドライブになっていることを確認し、もしwindowsのドライブなど残しておきたいドライブになっていたら、プルダウンで正しいディバイスを選びなおします。写真ではちゃんと128GのSSDがえらばれていることがSSDのメーカーの型番で確認できます。
(注意:もしこの段階のドライブの表示でどれがwindows7の使っているドライブか、どれが新しいSSDかがどうしてもわからないようでしたら今はこれ以降の作業はとりあえず中止してLinuxにもうすこしなれたほうがよいです―記事の末尾にある註3を参照してください。)

では、下のギャラリーの9の画面から128G余りのSSDにLlinuxをインストールするためのパーティションを設定していく例を紹介します。
9の図のように128Gちょっとある空領域を選択します。(買ったばかりで未フォーマットの、まっさらのSSDでまだ空き領域がない場合は空き領域が表示されません。その場合はdev/sdcなどSSDを選びます。この場合、9の画面で選べるのは「新しいパーティションテーブル」だけですので、それをクリックすると、空き領域ができます。)

9の図にある+/-変更というボタンの+ボタンを押します(この画面では選べるのは、+ボタンと元に戻すボタンだけです)。すると10のように「パーティションを作成」という画面がポップアップします。空き領域のサイズが表示されていますね。まずスワップ領域を設定します。基本パーティションと場所は図のとおりにして、利用方法という部分からプルダウンメニューを11のように表示させ、「スワップ領域」を選びます。サイズの部分を変更して、メモリーと同じくらいに設定します。12の図では4G(4000MB)にしてあります(図12)。マウントポイントの項目はきえていますね。OKを押してこの画面を閉じます。

swap 領域が13の図のようにできました。swap領域のしたに約4Gバイトへった空き領域が表示されています。そこで14のように空き領域をクリックして選択し、+ボタンを押すと、ふたたびパーティションを作成する画面15になります。今度は残りの空領域全部を使ってルートパーティションを作成します。128GのSSDの使用可能領域がswapに設定した4G分減少しているのを確認してください。ここでの設定は 15の図のように「基本パーティション」(論理パーティションにチェックがはいっていたら、基本パーティションに変えてください)と「この領域の始点」、そして「ext4ジャーナリングファイルシステム」はデフォルトのままにして、マウントポイントのみをプルダウンメニューから選択して「/」に変えます。OKをクリックします。

すると17のような画面になり、今作ったswapファイルとext4の領域のサイズや名称が表示されます。/dev/sdcがSSDでその中に/dev/sdc1のswap領域、/dev/sdc2のルートパーティションが設定されています。/dev/sdc2にはチェックが入っています。sdcをクリックして選んでおき、一番下のブートローダーの場所がSSDであることを確認します。インストールボタンを押したら18の最終確認画面「ディスクに変更を書き込みますか?」がでてきます。 「続けると以下に挙げた変更はディスクに書きこまれます 云々」という警告が表示されています。ここまでの設定作業は、戻るボタンを押せば一段階づつもどってキャンセルできます。「続ける」ボタンをおすとディスクに変更が加えられて戻せませんので、ここでゆっくり確認してください。ディスク表示されているのがlinuxをインストールするディバイスであることを確認し(この例ではsdc)、そのパーティションが変更されるのでよいかどうか確認し、よければsdc1 がスワップ領域、sdc2がext4というファイル管理システムに設定されるようになっていることを確認してください。サイズもあっていますか?この18の画面で「続ける」を押すと、ディスクに書き込みが始まり、もとに戻れないので注意してください。間違いなければ設定完了です。「続ける」をおしてディスクに変更がはじまったらubuntuのインストールが始まります。

ubuntuのインストールが始まったら、「どこに住んでいますか?」(時刻を日本標準時にする設定)(19)とか、ログイン名とパスワードの設定(20)、などがはじまります。各項目の設定が終わって画面に指示がでたら指示に従って、再起動してください(22)。ubuntuのログイン画面がでてきますので、先ほど設定したパスワードでログインすると、cloudの初期設定とか(24)いろいろ初期設定項目をきいてきますが、私は全部設定をスキップして使っています。これで日本語入力が使えるubuntu の最新版が windows7と同様にグラフィカルインターフェイスで使えます。ブラウザのFirefoxとか電子メールソフトのThunderbirdとかもはじめから入っていますし、無料のMicrosoft Office互換のOffice Suite一式も入っています。またプログラム言語のpythonもはいっていますので、python入門にも最適です。ただ日本語版ではフォルダ名が日本語になっていて、pythonなど英語圏のソフトを使うとき困りますのでフォルダ名は英語にもどしておきましょう。やりかたはたとえばここにありますのでやってみてください。あとwindows7でつかっていた日本語変換辞書のubuntuの日本語入力システムMozc(Google日本語入力)への移行を行えば日本語入力もとてもスムーズにできます。

別のやり方としてはVirtualboxというソフトでwindows7内にLinuxの仮想マシーンを起動するという方法もあります。これは私が授業で「BioLinux8をwindowsで起動してLinuxの使い方を説明したときに使った方法」です。ubuntuとかを動かすにはメモリーが最低4G、普通は8Gいるようです。それでは4Gくらいしかメモリをつんでいない私のパソコンでは動かないので、ubuntuの代わりにLinux mint 32bit版を使っています。これをinstallしてグラフィカルインターフェースを起動したとき、デスクトップの右上にCheck your video drivers. Your system is currently running without video hardware accelerator. Launch Driver Managerというメッセージがでるかもしれません。これをクリックしてもemptyで何も表示されないと思います。この直し方は簡単です。Linux mintをいったんシャットダウンしてからVirtualboxを起動し、歯車印のアイコンの「設定」をクリックして、ディスプレイを選びます。グラフィックスコントローラー(私の場合VMSVGAとなっていました)の下にあるアクセラレーションのチェックボックスに表示されている「3D アクセラレーションを有効化」というチェックボックスにチェックを入れればOKです。Linux mintを起動すると今度は先ほどのメッセージはでないはずです(2021/04/16追記)。

註1:内蔵型のHDDやSSDでもHDD/SSD用のクレードルとかスタンドという名前で売られているUSB接続ケーブルでパソコンとつなぐスタンドを使えば外付けドライブとして使えてLinuxをインストールできます。このクレードルは、古いパソコンからHDDを取り出してHDDの中身を利用したいときにも便利です。私が最近買ったのは、内蔵型の2.5インチのSSDドライブ(480G)と、そのSSDを入れてUSBでPCと接続するケース(USB3.0 2.5インチHDD/SSDケース SATA I/II/III対応)のものです。ケースが1000円ちょっとでSSDが6000円ほどでした。

註2:windows7を起動しているときネット接続を切るには、LANケーブルを抜くとか、wireless接続用のアダプタを無効化する(USB接続のものならUSBポートから抜くか、windowsのネットワーク設定で接続を切る)方法もあります。あるいはNetDsablerとかのソフトをインストールしておいて、クリック一つでネット接続を切る方法もあります。

註3:ここでいったんubuntuのインストールを中止して、ちょっとpuppy LinuxをUSBドライブから起動するようにして、puppy Linuxで遊んでみてください。puppy Linuxではデスクトップにディスクドライブが画像で表示されるのでpuppy LinuxをUSBから起動してしばらく遊んでみて、自分の使っているwindows7のドライブがどれかを理解してから、この作業に挑戦すると間違いないと思います。windowsのパーティションは、パーティションのサイズやntsfなどというフォーマットの種類でわかると思います。(あるいは究極の安全策としてLinuxをインストールする前に、パソコンの箱をあけてwindows7で使っているHDDドライブなどの配線を外しておいてもよいでしょう。しかしそれができる人ならたぶん間違わないでしょうね。)まちがいなくSSDなどLinuxをインストールするドライブやUSBメモリが選べたら、MBRの書き込み先もまっさらのSSD(あるいは自分のインストールにつかうUSBやHDDなどのディバイス)に設定します。
最初私はpuppy Linuxを最初USBにいれて起動する方法を試しました。これはLinuxに慣れるには最適ですし、プログラムの本体自体は300Mb程度、ハーディスクやUSBメモリの容量も10Gもあれば十分つかえるので最初はこれでいいと思いました。しかし私のUSBメモリはエラーを起こしやすかったため、ランプが点滅を繰り返して起動しなくなってフォーマットしなおしたりして面倒なので結局やめました。ちょうど余っていた古いSSD(128G)があったので、これをUSB接続してそこにUbuntu Desktop 日本語 Remix をイントールして使っています。

新型コロナウイルスに対するワクチンはもう存在している?―新型コロナウイルスと闘う糖鎖生物学

先日の記事で新型コロナウイルスSARS-CoV-2について糖鎖生物学からのアプローチを紹介しました。    その記事で紹介していたbioRxivに公開されているプレプリントの論文が査読を終えて有名な科学雑誌Natureに掲載され無料公開されています
   2003年のSARSの流行の時ロンドンで感染から回復した人がいます。その人のもっているメモリーB細胞(memory B cell)をとりだし、SARSウイルスと結合する中和抗体が存在することをつきとめ、その抗体を産生する細胞を不死化してモノクローナル抗体をつくりました(S309と名付けられています)。この抗体分子の全アミノ酸配列もわかっています。この抗体がSARS-CoVおよびSARS-CoV-2の共通の部位(具体的にはウイルスのスパイクタンパク質の、ヒトの細胞表面にあるアンギオテンシンコンバーティングエンザイムACE2分子と結合する部位とその周辺のN型糖鎖)と結合してウイルスを不活性化することがわかりました。Vir Biotechnologyという企業がこの抗体を新型コロナウイルに対する予防薬、治療薬として開発しており、まもなくフェーズ1と2の臨床試験を開始するそうです。これはワクチンではなくて洗練された血清療法のようなものです。新型コロナウイルスにかからないように医療関係者にあらかじめこの抗体を投与しておくとか、コロナウイルスにかかった患者さんの治療薬として使うわけです。この抗体は遺伝子操作で血中の半減期を伸ばしてあり、さらにvaccinal effect という効果で、投与した人に新型コロナウイルスの免疫を与えるように抗体の改変がおこなわれているそうです(Vir Biotechnologyのホームページによる情報)。Natureにでた論文は、前の記事の末尾で紹介したbioRxivにアップロードされていた論文ですので、bioRxivのようなプレプリントサーバーの素晴らしさをこの例からも実感できることと思います。
   このNatureの論文の責任著者は、David Veesler先生(ワシントン大学)で、新型コロナウイルスが結合するヒトの細胞表面分子(ウイルスレセプターと呼ばれます)がアンギオテンシン・コンバーティングエンザイム(ACE2) であることを発見した人です。コンバーティングエンザイムというのは、要するにタンパク質分解酵素のことで、アンギオテンシンの前駆体蛋白質を一定箇所で切断して活性型のアンギオテンシンペプチドを作り出すタンパク分解酵素です。Veesler先生の5月27日に行ったジョンズホプキンス大学セミナーの講演が、NIHのvideo castで公開されていますので下にリンクを載せておきます。SARS, MERS, SARS-CoV, SARS-CoV-2ウイルスのグリカンシールドの解析、ACE2との結合の様子、ウイルスの侵入の様子、様々なコロナウイルスに対する抗体の解析など情報満載の講演です。

高画質でダウンロードも可能ですのでこちらにアクセスしてご覧ください

コロナウイルスは、ウイルスの表面にあるSpike タンパク質(S protein) が三つ集まった複合体(三量体といいます)でACE2分子と結合します。Veesler先生たちの研究で、このSタンパク質三量体が開いたり閉じたりして、ACE2と結合することがわかりました(上の動画にありますので探してみてください)。さらに上で述べたようにS309抗体はACE2分子に結合するウイルスのSタンパク質の、特定のアミノ酸配列と付近のN型糖鎖と結合する抗体であることもわかっています。この配列はすべてのコロナウイルスに共通しており、S309抗体はSARSウイルス、コロナウイルスSARS-Co-V、そして新型コロナウイルスSARS-CoV-2を中和することができるのです。S309抗体(抗体は糖鎖が付加されたタンパク質です)の全アミノ酸配列も遺伝子配列もわかっており、ウイルスのS タンパク質と結合する部分であるFab(Fragment antigen bindingといいます)よりは、IgGの抗体分子そのものの方が中和活性は強いようです。S309といくつかのコロナウイルスに対するモノクローナル抗体を混ぜたものが最も中和活性が強く、この抗体カクテルを使えば、変異したコロナウイルスがまじっていてもきれいに中和できるのでウイルスが変異したものがまじっていても一網打尽に中和・不活性化できると期待されています。

S309抗体は、そのままでは予防薬、治療薬になるだけなのですが、遺伝子配列を変更することでSタンパク質への結合力を上げたり(分子進化の手法)、血清中での安定性を高めたりできます。またIgG抗体は糖鎖修飾されているのですが、その糖鎖からフコースを取り去ると抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が劇的に上がります(日本の糖鎖生物学の有名な成果です)。こうした様々な方法で抗体の作用を高めることもできます。もちろんADCCとかがやたらにおこると致命的になるかもしれませんし、予備的な十分な研究が必要なのはいうまでもありません。また上で述べたvaccinal effectというのも期待できそうです。癌の治療に使うモノクローナル抗体を投与した後、抗体が消えたあとにも癌細胞を攻撃する免疫が生み出される場合があることで有名です。エイズの治療とかでもvaccinal effectはみられるようで、S309モノクローナル抗体で新型コロナウイルスに対してvaccinal effectをひきおこすことができればこれは、ワクチンにもなるわけです。

昔はウイルス感染症から回復したり、感染しても症状が出ない人がみつかってもS309のような抗体を分離することは不可能でした(映画やSFではそれができるかのように描いているものが多かったですね。たとえばアウトブレイクという映画では、ウイルスの宿主で症状がまったくでないサルをみつければその宿主の血清から治療薬がすぐできたりしていたと思います。アウトブレイクの映画をもとにした看護学の教科書―アウトブレイクの映画をみて間違い探しをしながら学ぶという趣旨の本も図書館でみたことがあります。時代が進んだ今では、新型コロナウイルスに感染して回復した人の免疫細胞から抗体をとりだすというアプローチが盛んにおこなわれているそうです。たとえばこちらの雑誌Scienceにのった記事です。生命科学の飛躍的発展によっていまやそれが可能になってきているのですね。新型コロナ対策のみならず多くの感染症対策の一つの道が拓かれていっているのが実感されます。