ルクレチウスの本のこと

にわかに春めいて来て、あちこちに花が咲きだしています。
以前にルクレチウスについては記事を書きました。今日はルクレチウス(ルクレティウス)についての本の紹介です。岩波書店から2020年に刊行された『ルクレティウス 『事物の本性について』――愉しや、嵐の海に』 (書物誕生 あたらしい古典入門) 、岩波書店、 2020/8/5、小池 澄夫・瀬口 昌久 (著)という本です。出版されてすぐ買って読みました。とてもよい本で、ルクレティウスの本が、無神論の本なのになぜ消されずに残ったかという謎や、魂の原子についての議論など、これからルクレティウスを読んでみようという人、そして読んだことのある人が次に読む本としてはベストの本だと思います。日本西洋古典学会の新刊書コーナーに著者による自著の紹介がでています。その紹介によると、ルクレティウスの「事物の本性について」の日本語訳は、なんと仁科記念賞を授賞した東京大学の物理学者 岩田義一先生による翻訳が最も優れているのだそうです。岩田先生は東京大学の講師時代、ノーベル賞を授賞した南部陽一郎さんを指導していたそうです。物性研究という雑誌にのった南部先生の回想をご覧になるとわかります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soken/112/6/112_KJ00004715042/_pdf

岩田先生は助手のころは物理学教室の小平邦彦先生(数学者でフィールズ賞受賞した先生)の助手、そして東大を兼担されていた湯川秀樹先生の助手もつとめていたとのことです。岩田はルクレティウスの翻訳のためにギリシャ語・ラテン語を学んだとあります。翻訳は世界古典文学全集〈第21巻〉ウェルギリウス,ルクレティウス(筑摩書房)で読めます(中古品しかありません。図書館でみることができると思います)。下のリンクは、岩波の本の著者のお一人、瀬口 昌久先生(名古屋工業大学教授)のルクレチウスについて書かれた日本語の論文です。参考になるかと思います。
http://id.nii.ac.jp/1476/00001524
http://id.nii.ac.jp/1476/00001515

研究倫理の話―封筒からウイルスを抽出?

梅が咲く季節になりました。先日、カナダから中国に届いた郵便物の表面や内部からオミクロン株のコロナウイルスを検出したというニュースを見てこんな話を思い出しました。昔、アメリカのニューヨーク市立大学ストーニーブルック分校に出張していたとき、研究倫理の講習会に参加しました。有名な糖鎖科学の研究者のLennarz先生が、いろいろ研究倫理の話をされました。その中にあった話です。ある研究室で、論文にでた研究試料であるバクテリオファージ(バクテリアに感染するウイルスです)を提供してほしいと著者に連絡しました。なかなか送ってこなかったのですが、やっと送ってきた試料からファージを増やそうとしたのですが、ファージは増えません。増えないからもう一回送ってくれといって送ってきたものからもファージは増えません。何度送ってもらってもダメでした。これは、競争相手の彼らにファージを渡したくないのでちゃんとしたファージを送ってきていないのだと、強く思わせる状況でした。そこで、きっと送り手の研究室の室内にはファージがうようよいるはずだから、送ってきた封筒にも付着しているだろう、封筒からファージを回収してみろ、といってやってみると、なんと目的のファージが増えて入手に成功したのだそうです。論文に発表した研究試料は論文が公開されたら、希望者に提供することという原則が科学界にあります。論文の著者は競争相手への試料の提供をしぶっていたのでしょうか?
この話、有名な話らしくてある本(「ヘウレーカ! ひらめきの瞬間―誰も知らなかった科学者の逸話集」の第162話、化学同人 発行)ではつくり話だと書かれています。ただ講習会があったとき、隣にいたラボのヘッドがこれはどこそこの研究室であった本当の話だと院生に話していたので、おそらくいろいろ都合の悪い事があるのでフェイクということにされた、真実であるのかもしれません。これが実はBrenner先生が作ったつくり話だというのは本人が以下に書いていますので読んで本当かどうか、一つ考えてみてください。
https://www.cell.com/current-biology/pdf/S0960-9822(06)00385-X.pdf
Brennerさんはファージを他の研究者からもらおうとしてもらえず、たしかケンブリッジの汚水処理場からファージを回収して使ったようです。ファージは下水から回収することが多かったらしいです。φX174というファージがありますがこれはフランスの汚水処理場からとられたものだそうです。Xはパリの10区の汚水処理場由来ということで、ローマ数字の10なのだそうです。下水で思い出しました。私は昔、カリフォルニア大学バークレー分校のJohn Gerhartさんのところに滞在していました。アフリカツメガエルの研究をしていたころの話ですが、カリフォルニア大学で飼育されているアフリカツメガエルの一部は、サンフランシスコの下水道にいたもの由来だといっていました。網をもって下水道にはいって採集したのだそうです。そう、ワニがいるという都市伝説のサンフランシスコの下水道です。その時はXenopus tropicalisというカエルを日本に持って帰って、日本での標準の実験材料にしようと計画していました。しかしカリフォルニア州の規則でX. tropicalisは他の州から輸入できないということで、ダメになりました。

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もありますし、アインシュタインの「相対論の意味」やその他の本、オーディオブックもあります。https://www.gutenberg.org/ebooks/search/?query=einstein&submit_search=Go%21
生物物理学の発展のもとになったような本で、ルネ・トムのカタストロフィーの理論で有名になった本、D’Arcy ThompsonのOn Growth and Form (1919)も読めます。
https://www.gutenberg.org/ebooks/55264
ロバートフックのマイクログラフィアもダウンロード可能です。図はHookeの細胞の有名な顕微鏡による細胞の図です。

上の動画はフックが勤めていたRoyal Societyによるマイクログラフィアの紹介ビデオです。

PyMOLやProtein Data Bankの講習会ビデオの紹介です

昨日はpymolをLinuxにインストールする方法を紹介しました。ちょうどよい紹介ビデオや資料が載っているサイトを見つけたので紹介しておきます。これは
BINDS-PDBj講習会「PDBから見てわかるタンパク質の最新研究」という講習会で、2021年9月30日(木) に実施されたものです。
https://pdbj.org/news/workshop20210930
上のリンクをクリックすると、講習会のビデオや資料へのリンクがありますのでご覧ください。講義資料「PDBデータの使い方・分子ビューワの使い方の基礎」からは以下のビデオへのリンクと講義資料のpdfがダウンロード可能です。https://www.youtube.com/watch?v=sHXn0tzUhcg 

PymolをUbuntu にインストールして使おう!

日替わりリンクなどのページのほうに簡単に書いたUbuntu (Linuxのもっとも普及しているディストリビューション)への分子グラフィックスソフトPyMOLのインストール法をまとめておきます。写真はPymolで表示したInaZというバクテリアのタンパク質の立体構造(AlphaFold2による予測構造)です。驚くような不思議な構造をしていますね!
https://alphafold.ebi.ac.uk/files/AF-P06620-F1-model_v2.pdbからInaZタンパク質の立体構造情報が記述されているpdbファイルをダウンロードして、PyMOLの画面(一番下の写真)にドラッグアンドドロップすれば表示されます。タンパク質を立体的に表示することができて、自由に拡大、回転、反転もできます。さらに立体構図の描画方法も様々に変化させて表示することができます。構造生物学には必須のソフトウエアです。

Ubuntu の最新版LTS20.04へのインストール法は簡単です。デスクトップ左端にあるAと書いてあるアイコン(Ubuntu Softwareという、Ubuntuでソフトウエアをインストールするときに使うツールのアイコンです)をクリックします。開いたウインドウで検索窓にpymolといれてエンターを押すとpymol-ossというソフトウエアがヒットします(下の写真)。
上の写真ではインストール済みとなっていますが、初めてのインストール時には、インストールボタンが表示されているので、それを押すとインストールが始まります。インストール中と表示されて、インストールの進み具合がインストール中24%などと表示され、100%になると、権限の設定画面がでます。デフォルトでチェックが入っていない、USB上のファイルの読み書きを許可すると言う英語の表示にもチェックをつけて、閉じるボタンを押したらおしまいです。ソフトを起動すると以下のような画面になります。

この画面に立体構造を表示したいpdfファイルをドラッグアンドドロップすればただちに立体構造が表示されます。これでPyMOLが使えるようになりました。この後は、東京大学の森脇 由隆先生のpymol bookを読むといいでしょう。日本語でほんとうに丁寧に説明されていますし、ページ右上のprinterのアイコンを押せば印刷もできます。そのときプリンタをpdf printerに指定すればpdf版の本もできます。

一週間分の日替わりリンクなどを掲載しておきます。

元旦から毎日更新の固定ページをつくりました。まだご存知ない方が多いようなので、一週間分の掲載内容をトップページにもまとめておきます。庭の水仙が咲きだしました。

2022/1/8
NHKでシャーロック・ホームズのドラマを毎週みています。オンラインで日本語でシャーロック・ホームズの日本語訳を読めるのはここがよさそうです。https://221b.jp/


2022/1/7
機械学習の教科書の紹介です。 Dive into Deep Learning (Dが二つ続くのでD2Lと省略して紹介されることも多い本です)という教科書で、スタンフォード大、マサチューセッツ工科大、ハーバード大、ケンブリッジ大など世界の300の大学で採用されている教科書だそうです。Jupyter notebookで手を動かしながら学んでいくというスタンスの教科書で評価の高いものだそうです。
https://github.com/d2l-ai/d2l-enのサイトにある、Book Websiteをクリックして開くページで、MXNetやPyTorch, Notebooks,Coursesなどとあるタブの最初のMXNetをクリックするとpdf版がダウンロードできます。Coursesをクリックすると授業のシラバスやスライドなども見られます。最初のほうの日本語訳もできているようでここから見られます
2022/1/6
ものすごい図鑑 NHKのサイト
これは子供だけでなく大人も楽しめるデジタル昆虫図鑑です。
カブトムシ、モンシロチョウ、ハンミョウ、キリギリス、ノコギリクワガタなど、いろんな虫を画面上で回転、拡大、縮小して立体的に観察することができます。複眼の電子顕微鏡写真もあったりして、楽しいサイトです。お子さんと一緒にどうぞ。
2022/1/5
動画編集にはどんなソフトを使っていますか?以前、Scientific Americanという雑誌をパラパラみていたら、DaVinci Resolve  17という動画編集ソフトの広告がでていて、ハリウッドで使われているソフトで、なんと無料で利用できるとありました。Blackmagic Design Pty. Ltd.社の製品ですが最近日本語のリファレンスマニュアルが無料で公開されているのを知りました。チュートリアルとかも充実しているので時間のある方は試してみるのもいいと思います。Windows, Mac-OSX, Linux対応のソフトです。HDビデオの編集程度ならさほど高スペックなコンピュータはいらないもようです。
2022/1/4
Juliaというプログラミング言語が注目を集めています。前もちょっと紹介しましたが、Pythonより早くて使いやすいそうです。Juliaをつかったデータサイエンスの入門書(英語)が以下に公開されています。興味のある方はご覧ください。

Introduction to Datascience: Learn Julia Programming, Math & Datascience from Scratch

2022/1/3
今日は、わかりやすい量子化学計算の解説ページを紹介しておきます。元旦に紹介した「ノーコードではじめる機械学習」の著者である久我涼子さんのホームページで、pythonによるアプリケーション開発などの記事もあってきわめて参考になります。このブログの記事から生まれた本は

ゼロからわかる!! 独習 量子化学計算: 理論からはじめない新しい量子化学計算の本

というKindle本で、これは解りやすい本です(紙の本はありません)。またこちらのページには、tsujimotterさんこと辻順平さんによる、簡単な分子軌道法の入門解説記事があります。

2022/1/2
QDくんの過去ツイまとめ(機械学習、時系列分析、確率・統計に関する有益記事紹介)というtwitterの記事に有益なリンクがまとめられています。日本語字幕付きのハーバード大学コンピュータサイエンス入門講義の動画とか、いろいろありますので参考になります。
2022/1/1
機械学習に興味がある方へ
:プログラミングなしで機械学習が学べるOrange 3というのをご存知ですか?日本語の解説書としては「ノーコードではじめる機械学習」がよさそうです。Kindleなど電子書籍版と紙の本が最近発行されたばかりですが、買ってみる価値があると思います。YouTube動画を見るのも参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=HXjnDIgGDuI 

謹賀新年―2022年元旦

あけましておめでとうございます。福岡は快晴で初日の出も拝めて穏やかな元旦です。年賀状もどっさりとどいて、懐かしい方々からの便りになごませてもらっています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新年元旦から本の紹介や参考になりそうなリンクなどを毎日、新しい固定ページ(「日替わりリンクなど」という名前です)にまとめることにしました。従来の投稿よりは簡単な紹介ですが参考になるかと思いますので、是非毎日アクセスしてみてください。ページ上部の画像の下にあるタブ(日替わりリンクなど)をクリックしてもページが開きます。

年末に近くの古墳にのぼってきました。光正寺古墳(国指定史跡)という前方後円墳です。古墳公園になっていて古墳のてっぺんまで歩いて登れます。

左の写真は駐車場から歩いてすこしのところにあるのぼり口、古墳がみあげられます。右の道路をすすんでいくと古墳の上に歩いて登れます。右の写真は円墳部分から方墳部分をみた写真です。丘の上にあるので海が遠くに眺められます。海を臨むように古墳が建造されたものと思われます。下の写真は方墳の部分から円墳の部分をみた様子です。大きさがわかると思います。

この古墳、魏志倭人伝にでてくる不彌国(ふみこく)の王のものという説が有力だそうです。福岡市は奴国(なこく)で隣にあったのが不彌国です。

無料動画講座の紹介です―WordPressの使い方を知ろう

今日はクリスマスイブですね。雨が降っていますが、夜明け前に雪にはならないようです。暖かいです。今夜は多くの家にサンタさんが来ることと思います。メリークリスマス!
写真は10日ほど前に撮った前回紹介した、丘の上のイルミネーションです。昼間、散歩にいって丘の上のベンチに腰をおろしていると、近くでブーブーという鳴き声がして、あわてて丘を下りました。多分イノシシです‥‥。

さて、このブログはWordPressで作成しています。今私が勉強しているUdemyのWordPressの講座(「WordPress開発マスター講座」)の中に、無料でみられる「WordPressの使い方を知ろう―ボーナスレクチャー」というタイトルの動画(36本、トータルで3時間14分の動画)が公開されました。上のリンクをクリックして開くページで、「WordPressの使い方を知ろう―ボーナスレクチャー」の部分をクリックすると、動画の一覧がでてきますので、見たいものをプレビューのリンクをクリックして視聴できます。講師のたにぐち まこと(ともすた)先生はとてもわかりやすく上手に講義されるので、WordPressでブログを作ろうと思う方や、今作っている方に参考になると思います。

コロナに負けんばい―Christmasイルミネーション2021が灯っていました!

昨年2020年の12月には新型コロナウイルス感染の蔓延で、恒例のクリスマスイルミネーションが中止になり、寂しい年末でした。今年はどうなるのかと思っていましたが、今日の夜、散歩していると見事なイルミネーションが灯っていました!丘の周りにイルミネーションがいくつもあるのですが、バス通りに面しては下の写真のようなイルミネーションが輝いていました。

丘をまわっていくと、こんなイルミネーションもありました。

二年ぶりのイルミネーションですが、メッセージ性もあってとても感動的な光景でした。今夜から点灯開始のようで、何人もの人が集まっていました!

新型コロナウイルスといえば、NIHのvideocastでは以下のような動画が配信されていました。ワクチン義務化についての賛否両論が学べますので是非ご覧になることをおすすめします(ここをクリックするとNIHのサイトにとびます。動画はダウンロード可能ですし、字幕のダウンロードもできます)。(下の講演の画像をクリックしてもサイトが開きます。)開いたサイトの動画部分の右下のccというボタン(下の画像参照)で字幕表示をオンにしてご覧になるとより内容がよくわかると思います。

有料や無料の動画講座の紹介です

明日と明後日の19時から21時まで早稲田大学の早見先生による、PowerPointスライド作成実演ライブがYouTubeで開催されるそうです。面白そうなのでYouTubeで視聴されるとよいと思います。下の一つ目の動画は録画に替わっていますので、「ライブ配信準備中です」とでている部分をとばしてみれば11月20分の第一回目がみられます。

早見先生は「離散数学入門(グラフ理論の世界にようこそ)」という全14回の講義をYouTubeで公開されおり、とてもわかりやすいと評判です。グラフ理論は生命科学でも活用されている分野ですので興味のある方はご覧になるのをおすすめします。

今年になって知ったのですが、有料の講座にもいろいろ面白いものがあります。昔は定年になったら放送大学の講義を学ぶという方も多かったようですが、今では放送大学よりもっとわかりやすい有料講座や無料講座、無料講義がいろいろ公開されています。私も今年に入ってからUdemyという有料講座のコースをいろいろ購入して勉強をはじめました。こちらは定価は24000円のとか高い値段のコースが多いのですが頻繁にセールをやっていて、しばらく待っていると24000円のコースが1200円とか1600円とかで購入できる場合が多いです。時々サイトをチェックしてみて、安いときに購入するのがお勧めです。ちょうど今、ブラックマンデーセール(11月26日まで対象コースが1200円より)というのをやっていて、はじめるのには最適の時期だと思います。数学、RやRStudioを含む統計、Pythonなどのプログラミング、GitやGitHub、Docker入門講座もありますし、物理、化学、英語、フォトショップ、ヘルスやエクササイズの講座などなど、日本語の講座や英語の講座がいろいろありますので面白いです。Udemyのコースは修了期限がないので、安い値段のときに購入しておいてあとで時間ができたときに勉強することが可能です。コースの動画の一部が無料公開されているので、購入する前に、コースの動画を何本か視聴してみて、気に入れば購入するというのがいいと思います。