VSCodeの入門書が期間限定無料公開中です。動画なども紹介します。

プログラムを書くときに利用するエディタとよばれるソフトウエアで最も人気のあるのはVS studio code (VSCode)というマイクロソフトの公開している無料のエディタです。atomとかviとかいろいろプログラム作成用のエディタがあるのですが、VSCodeは今やプログラマーの二人に一人が使っているエディタなのだそうです。機能を拡張できるプラグイン(拡張機能)もPython用、Julia用、Java script用、Wolfram言語用(Mathematicaの使っているプログラム言語です)などなど、ほとんどあらゆるプログラム言語に対応したものがあります。拡張機能を入れておくと、プログラムに誤りがあったとき教えてくれたり、書くときに自動補完機能が使えたりと、大変便利です。私もUdemyの無料講座でVSCodeを学びましたが、近ごろは小学生でも、このエディタでプログラムを書いている子が増えているそうです。プログラム教育が始まったおかげですね。
Udemyの無料講座は今はもうないのですが、私がみたUdemyの講座は今、1220円でセールをやっています。
無料の講座がいいという方は、同じ講師のYouTube動画があるのでご覧ください。

https://youtu.be/e3DmHK2PDGA

再生リストは以下の場所にあります。9本の動画があります。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLh6V6_7fbbo8GHGIT2YUN56OcwEpz5I5n

本で勉強したい人には、ちょうど今、3日間限定で「Visual Studio Code完全入門」というインプレスから発行されている入門書が無料で公開されています。見るのに登録とかは不要で読めますので、是非ご覧ください。5月19日から5月21日土曜日の午後11時59分までの期間限定公開とのことです。
https://book.impress.co.jp/items/vs-code

漱石はタイムマシーンを読んだか?

先日は漱石の弟子、寺田寅彦のことを書きました。寅彦は漱石が熊本で高等学校の先生をしていたときの生徒でした。物理学が大変革を経験していた時代に生きた漱石はロンドン滞在時代に化学者の池田菊苗が同じ下宿に滞在したこともあり、科学への興味をかきたてられて、文学を科学として考えるプランをたてたようです。その成果が、帰国後東京大学で行った講義をもとに刊行された「文学論」です。漱石はあのラフカディオ・ハーンの後任だったため、独創的な科学としての文学をねらう講義は大変不評であったと伝えられています。その後も漱石の科学への興味は続いて、原子論なども寅彦と議論していたようです。この辺のところは中公新書の「漱石が見た物理学 首縊りの力学から相対性理論まで」)小山慶太著(古本で入手できます)に詳しく書いてあるのでおすすめします。

このように科学に強い漱石でしたが、漱石の「夢十夜」(1908年)を読むと、まるで映画のタイムマシンでみたような描写に驚かされます。
第一夜を引用してみます。

第一夜

こんな夢を見た。
腕組をして枕元にすわっていると、仰向あおむきに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭りんかくやわらかな瓜実うりざねがおをその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、くちびるの色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然はっきり云った。自分もたしかにこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上からのぞき込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼をけた。大きなうるおいのある眼で、長いまつげに包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒なひとみの奥に、自分の姿があざやかに浮かんでいる。
自分はとおるほど深く見えるこの黒眼の色沢つやを眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕のそばへ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうに※(「目+爭」、第3水準1-88-85)みはったまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。
じゃ、わたしの顔が見えるかいと一心いっしんに聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。
しばらくして、女がまたこう云った。
「死んだら、めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片かけ墓標はかじるしに置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。またいに来ますから」
自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
自分は黙って首肯うなずいた。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓のそばに坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
自分はただ待っていると答えた。すると、黒いひとみのなかにあざやかに見えた自分の姿が、ぼうっとくずれて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長いまつげの間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。
自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きななめらかなふちするどい貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿しめった土のにおいもした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
それから星の破片かけの落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちているに、かどが取れてなめらかになったんだろうと思った。げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。
自分はこけの上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石はかいしを眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定かんじょうした。
しばらくするとまた唐紅からくれない天道てんとうがのそりとのぼって来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。
自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも百年がまだ来ない。しまいには、こけえた丸い石を眺めて、自分は女にだまされたのではなかろうかと思い出した。
すると石の下からはすに自分の方へ向いて青いくきが伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりとゆらくきいただきに、心持首をかたぶけていた細長い一輪のつぼみが、ふっくらとはなびらを開いた。真白な百合ゆりが鼻の先で骨にこたえるほど匂った。そこへはるかの上から、ぽたりとつゆが落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露のしたたる、白い花弁はなびら接吻せっぷんした。自分が百合から顔を離す拍子ひょうしに思わず、遠い空を見たら、あかつきの星がたった一つまたたいていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。

いかがでしょうか。タイムマシンを思わせますね。ウエルズがタイムマシンを書いたのは1895年ですので、漱石が英国滞在中、あるいは帰国後にタイムマシンを読んでいたかもしれませんね。

漱石の蔵書にはウエルズのタイムマシンは無いみたいです。東京大学図書館にはあったはずですので寅彦が紹介していたかもと思っています。寅彦の随筆にはでてきますので。

専門家向けの感じの日本語OCR処理ソフトウエアが公開されています

国立国会図書館、OCR処理プログラムと学習用データセットを公開という記事をみました。 これはGithubに公開されているプログラムで、たとえば古い日本語の本の画像をよみこんで、OCR処理をしてテキストファイルを出力するといった使い方ができるソフトウエアです。プログラムのインストールと使い方はhttps://github.com/ndl-lab/ndlocr_cli
で公開されています。Ubuntuにインストールしてdockerを利用して使うもので、GPUも使うのでそれなりのスペックのLinuxパソコンが必要らしいです。ただもっと簡単に、Google Colaboratoryで試すこともできるようで、まずこちらで試してみるのがよさそうです。https://zenn.dev/nakamura196/articles/a8227f4524570c

寺田寅彦随筆集より―「ジャーナリズム雑感」を紹介します。

寺田寅彦は夏目漱石の弟子だった自然科学者です。随筆集はとても有名で今も読まれていますし、漱石の作品の中にある光圧の実験や首くくりの力学などは寅彦からの情報によるのだそうです。寅彦は優秀な物理学者で、X線回折の実験は英国のブラッグら(ラウエと書いていたのは間違いでした。すみません。5/17日追記)の実験に先んじており、彼の論文のほうがノーベル賞をとったブラッグの発見より時間的には先にでていたが、日本から遠く離れたヨーロッパには論文が届くのが遅れたのだそうです。ノーベル賞を授賞してもおかしくない科学者で、金平糖の形のできかたとか、今日の複雑系物理学のさきがけの実験もやっていた人物です。科学図書館には彼の未完の名著「物理学序説」がおいてあります。http://www.cam.hi-ho.ne.jp/munehiro/science/scilib.html#terada
私が中学生か高校生の時によんだ次の随筆は今も印象にのこっているので紹介しておきます。ジャーナリズム雑感という随筆です。青空文庫に公開されているので読んでみてください。https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2492_10275.html
トップページはこちらです。https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2492.html

新聞報道は、定型に従った報道が多く、殺人事件があったらその定型に従って報道します。「事実の類型化」と寅彦は呼んでいます。これをやるので、一つ一つの事件の差異とか個性というものは顧みられず、結局報道する側も、受け取る側も思考停止して、事件の奥に潜む真実は顧みられないそうです。今でもテレビのニュースをみていると、昭和9年(1934年)の随筆に書いてあるのとそっくりの、事実の類型化という、型(かた)にそった報道があふれているのは残念なことです。今の報道でも、犯人が語る言葉としてよくでてくる、「誰でもよかった」とかいう言葉の報道はその典型かと思われます。犯罪の報道の定型にあわせて事件を報道されても、今後の犯罪抑制には、有害な効果のほうが多いのではと感じています。昔は、三原山で心中した二人が最後に語り会った会話を、そばで記者が速記したように報道する新聞もあったのだそうです。よく似たことは今でも報道にあるようで、メディアリテラシーをつけるにはうってつけの随筆だと思い、紹介することにしました。

2022年4月のNHKスペシャルに対する望月新一先生による「合格発表」が掲載されていました。

先日固定ページで紹介したNHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか? abc予想証明をめぐる数奇な物語」(=完全版(90分)+簡略版(60分))の望月新一先生による講評が先生のブログに掲載されていました。
「2022年4月のNHKスペシャルに対する「合格発表」: 前半はぎりぎり合格、後半は不合格」というタイトルです。最初の段落を引用します。
「2022年4月に放送されたNHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか? abc予想証明をめぐる数奇な物語」(=完全版(90分)+簡略版(60分))を閲覧しました。NHKという看板(やその看板から推測される潤沢な予算)と立派に釣り合う、高精細なCG技術や世界規模の取材ネットワークとは裏腹に、残念ながら、多くの視聴者の誤解を招くような、様々な不正確な内容もありました。誤解や不正確な情報の拡散に歯止めを掛けるためにも、また最も中核的な当事者である私自身の考えに関する明示的な記録・「証言」を残すためにも、番組内の不正確な内容について、この度、ブログ記事という形で補足的な解説を公開し、警鐘を鳴らすことに致しました。」

私はNHKスペシャルの60分版と90分版、どちらも楽しくみさせてもらいました。掛け算と足し算の違いについてわかりやすく説明されていて、なぜ足し算のほうが、掛け算より未知の問題が多いのかの理由を垣間見ることができたように感じました。ただ後半についてはポアンカレの言葉を引用してそれと対照的な考えを望月先生が使っているので数学者でさえ理解が難しい、というようなあいまいな話で終わっていたような気がしました。出演された数学者の方の、私達は今、アインシュタインの一般相対性理論の提唱に匹敵するような革命に立ち会っているのかもしれませんというような内容の発言がとても印象的でした。

しかし、望月先生のブログによると、こうした内容が含まれている後半は不合格ということでした。理由も先生が詳しく書かれていますので是非お読みください。NHKスペシャルの製作者の皆さんが、特殊相対性理論と一般相対性理論が提唱された時に、今回のNHKスペシャルのような一般向けの番組をつくったとしたら、やはり大変な困難に見舞われたと思われます。そうしたチャレンジングな課題に挑戦された製作者の皆さんに感謝するとともに、望月先生の「合格」の講評が得られるような新しい番組を、是非見てみたいと期待しております。

R Markdownとは?

R Markdownというのを聞いたことがありますか?これで論文を書いて、できた原稿をWordの原稿やpdfあるいはPower Point ファイルなどに自由に変換することもできます。本を書くことも出来るそうです。

データ解析をRで行った後、できたグラフを論文やレポートに貼り付けて仕事を完成させるのは普通に行われている作業です。しかしこの貼り付けると言う作業があるため、できた論文原稿やレポートにのっているグラフや表が、どんなRのプログラムやスクリプトで作られたかがわからなくなることがあります。よくあるこうしたトラブルを避けるには、レポートや論文原稿の内部に、Rでどんな解析をしたかをプログラムやスクリプトごと書き込んでおけばよいわけです。Rマークダウンは、Rのプログラムと普通の文書を同時にレポートにうめこんでおき、必要なときにpdfやdocxファイル、パワーポイントファイルなどなどを一発で生成できる道具です。RStudioからR Markdownが使えるので、だれでも簡単に再現性のあるデータ解析結果のレポートをつくることができます。これを使えば、一番最初に書いたような、このグラフを作ったR のプログラムを探す必要がなくなりますので、完璧に再現性のあるレポートを作ることができます。本としては、おすすめは
「再現可能性のすゝめ―RStudioによるデータ解析とレポート作成― (高橋 康介著)」共立出版です。
https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320112438

この本の第一章が特に再現可能性の必要性についてわかりやすく書かれており、なぜRマークダウンが必要かがよくのみこめます。この本を買う前に、次のスライドやリンクで概要をつかめるのでまずこれらのリンクをたどってみてください。
R Markdown 入門 (Tokyo.R #91) https://rpubs.com/ktgrstsh/755893
R ユーザー以外も知るべき R Markdown 入門/Introduction-to-R-markdown-for-Everyone https://speakerdeck.com/ktgrstsh/introduction-to-r-markdown-for-everyone?slide=3

TokyoR98 RMarkdown入門 Visual modeではじめよう (niszet, @​niszet0)
https://nitter.net/tech_slideshare/status/1522109628125179904
このスライド末尾のほうにいろんな入門サイトのリンクがありますので大変参考になります。

MRC分子生物学研究所の2022年度生物物理学的技術入門講義シリーズというのが公開されています

MRC LMB (英国ケンブリッジ)ではThe 2022 Introduction to Biophysical Techniques lecture seriesというのをやっています。こちらにタイトル一覧があります。下の一覧表のWebinar の部分をクリックすると、該当する講義の動画がみられますので試してみてください。https://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/research/scientific-training/biophysics-lectures/

Talk Date Technique Speaker Download Talks
1 Tuesday 18/01/2022 Introduction to Light Microscopy Nick Barry Webinar
2 Thursday 20/01/2022 Image Analysis Tools Jérôme Boulanger Webinar
3 Thursday 27/01/2022 Fluorescent Labeling and Light Sheet Microscopy Ben Sutcliffe Webinar
4 Thursday 03/02/2022 Super-resolution Microscopy Jonathan Howe Webinar
5 Tuesday 08/02/2022 Fluorescence Spectroscopy and Microscale Thermophoresis (MST) Stephen McLaughlin Webinar
6 Thursday 10/02/2022 Single Molecule Spectroscopy Chris Johnson Webinar
7 Tuesday 15/02/2022 Biomolecular Thermodynamics and Calorimetry (ITC) Chris Johnson Webinar
8 Thursday 17/02/2022 Biosensor Technologies (Biacore, SPR, SwitchSense, Octet) Stephen McLaughlin Webinar
9 Tuesday 22/02/2022 Introduction to Biomolecular NMR Trevor Rutherford Webinar
10 Thursday 24/02/2022 Advanced NMR applications Jane Wagstaff Webinar
11 Thursday 03/03/2022 Protein Crystallization Fabrice Gorrec Webinar
12 Tuesday 08/03/2022 Structural biology 2.0: Crystallography at the LMB in the era of cryo-EM and AlphaFold Dom Bellini Webinar
13 Thursday 10/03/2022 Light Scattering Techniques Chris Johnson Webinar
14 Tuesday 15/03/2022 Analytical Ultracentrifugation (AUC) Stephen McLaughlin Webinar
15 Thursday 17/03/2022 Curve Fitting, Errors andAnalysis of Binding Data Chris Johnson & Stephen McLaughlin Webinar
16 Tuesday 22/03/2022 Introduction to Flow Cytometry Fan Zhang Webinar
17 Thursday 24/03/2022 Instrument and Sample Optimisation for Fluorescence Activated Cell Sorting (FACS) Pier Andrée Penttilä Webinar
18 Tuesday 29/03/2022 Bioinformatics Tim Stevens Webinar
19 Thursday 31/03/2022 Biological Mass Spectrometry Holger Kramer Webinar
20 Thursday 07/04/2022 Quantitative Proteomics and Omics Data Analysis Holger Kramer Webinar
21 Tuesday 12/04/2022 Alphafold2 at the LMB – Use and Applications Clinton Lau Webinar

去年の録画も公開されていますが、最後のAlphafold2の解説(結果の見方や応用を詳しく解説してくれています)が目新しいですね。写真は自宅で咲いたバラです。ことしはカエルが花の中に入らず、庭でやかましく鳴いています。そろそろ梅雨ですね。

「いかにして問題をとくか」(丸善出版)について―ポリアの本を紹介します

「いかにして問題をとくか」(丸善出版)という有名な本がリニューアル出版されたそうです。https://www.maruzen-publishing.co.jp/contents/howtosolveit/index.html
スタンフォード大学教授だった有名な数学者のポリア(George Pólya)によって65年ほど前に書かれて世界各国でベストセラーを続けている本です。以前NHKで紹介されて有名IT企業も採用している問題解決に役立つ本ということで、ビジネスマンの間で大ブームになった本ですね。私も読みました。論理の本などを読むのは止めて、こちらを読むべき本です。問題の解き方について学べる良い本だと思います。原書はこちらで読めます(読めなくなっています。この本はライブラリから除かれたとのことです―2024/06/14追記。https://archive.org/details/princeton-science-library-g.-polya-how-to-solve-it.-a-new-aspect-of-mathematical/page/n13/mode/1up

あるいはこちら(貸出しリンクです―2024/06/14追記)。

https://archive.org/details/howtosolveitnewa00pl/page/n9/mode/2up
また、プログラマーのためにこの本を紹介しているこちらのサイトも面白そうです。
http://www.softpanorama.org/Bookshelf/Classic/polya_htsi.shtml

芳沢光雄先生がこの本をよむための手引きにもなる良い本を書いておられます。こちらから先に読むとよいかもしれません。「いかにして問題をとくか・実践活用編」(丸善出版)https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=294094

他に、ポリアの本で英語で読めるものも紹介しておきます。(以下のリンクはまだ生きています。本のダウンロードも可能です―2024/06/14追記)
Mathematical Methods in Science by George Pólya Edited by Leon Bowden
https://archive.org/details/MATHMETODSSCIENCE
Induction And Analogy In Mathematics; Volume I of Mathematics and Plausible Reasoning; By George Polya

https://archive.org/details/Induction_And_Analogy_In_Mathematics_1_/page/n9/mode/2up
Patterns of Plausible Inference; Volume II of Mathematics and Plausible Reasoning; By George Polya

https://archive.org/details/Patterns_Of_Plausible_Inference_2_/page/n11/mode/2up

動物愛護と動物実験、線虫シーエレガンスのわかりやすい入門用論文

今日は線虫C. elegans(シーエレガンス)の紹介です。最近、動物愛護の声がたかまってきて実験動物としてマウスでさえ使用が抑えられる傾向がでてきています。製薬会社などでも動物を使った実験が難しくなってきているので、培養細胞を利用するのと、線虫C. elegansなどを利用して薬剤開発に役立てようという流れがでてきているようです。昔は動物愛護の人は、計算機のなかで薬剤開発ができるはずだといったりしていましたが、なかなかそう簡単にはいかないものです。また動物愛護の人の中には、研究室に忍び込んで実験に使われているマウスを逃がしたり、ひどい場合は手紙爆弾を作って送り付けて人を殺そうとする輩もいました。私がCambridge大学の動物学教室にいたときは、建物に爆弾を仕掛けたという犯行声明がでて、実験サンプルやノートをもって避難したこともあります。建物の中に爆発物検知犬が警官(ポリース)に綱をもたれて歩き回っていました。(結局爆弾はなかったです)。なんで動物は愛護するのに、人を殺したりするのか、その辺の精神が私には理解不能です。話がそれましたが、現在は動物愛護の精神が普及しているので、マウスやイヌ、サルなど意識のある動物の使用を別の意識のないもの(線虫とかハエとか)に置き換えて実験したり、意識のある動物の使用数を減らしたり、動物の使用方法を改善してよりより苦痛がなく、より無駄な実験がないようにするという機運が高まっています。これをThe 3Rs alternatives(Replacement, Reduction and Refinement)というそうです。この解説を読んでみてください。Hubrecht, R. C., and E. Carter. 2019. The 3Rs and Humane Experimental Technique: Implementing Change. Anim. Open Access J. MDPI. 9: 754.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6826930/
線虫はこの流れにピッタリのモデル生物なので今後の活用が期待されるというわけです。英語ですが、こちらには線虫のわかりやすい解説がのっています。
A Transparent Window into Biology: A Primer on Caenorhabditis elegans 
著者はAnn K. Corsi,Bruce Wightman,and Martin ChalfieでChalfieさんはノーベル賞を下村先生と同時受賞した線虫C. elegansの研究者です。無料でダウンロード可能ですのでpdfと書かれている部分をクリックしてダウンロードしてみてください。https://academic.oup.com/genetics/article/200/2/387/5936175
訂正のpdfのリンクもあります。

https://academic.oup.com/genetics/article/201/1/339/5930076
これからおいおい線虫の活用についてもこのブログで触れていく予定です。

糖鎖生物学の教科書Essentials of Glycobiologyの最新版(第4版)がオンラインで公開されました。

糖鎖生物学の教科書Essentials of Glycobiologyの最新版(第4版)がオンラインで公開されました。
Essentials of Glycobiology [Internet]. 4th edition.
Varki A, Cummings RD, Esko JD, et al., editors.
Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2022.
これは糖鎖生物学の標準的な教科書ですので是非オンラインで読んでみてください。Cold Spring Harbor Laboratory Pressから書籍としても販売中です。ブラウザでよむので、Life Science Dictionaryを使って辞書を引きながら読むことができます。オンライン版のリンクです。また
こちらは印刷に適したオンライン版の一例です。上の行にあるリンクで好きなページを表示して、ページの右上にあるViewsのところにあるPrint Viewをクリックすると表示されます。

今回の最新版では、表紙が新型コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質がウイルスの膜に埋め込まれた状態を示す絵になっています。
左の図はスパイクタンパク質のアミノ酸鎖をシアンで示しており、それに糖鎖がついている様子を様々な形と色の単糖の表記で表しています。右はその糖鎖が空間的に揺れ動いている様子を1マイクロ秒にわたって重ねた結果を示しており、分子動力学によるsimulationの結果のフレームを重ね合わせたものです。濃い青色が糖鎖が動き回っている空間的範囲を示しています。糖鎖がグリカンシールドというシールドを作っている様子がわかります。そしてそのシールドから、にょきっと上に抜け出ている (スパイク蛋白のてっぺんの部分の)シアン色で示しtのタンパク質骨格部分が、ACE2に結合する部分でいわゆる、レセプター結合ドメイン(RBD)です。ウイルスの抗体やリンパ球からの攻撃回避手段としてのグリカンシールドを目で見えるようにした表紙ですね。