進化についての最新の研究がわかる動画が公開されています。

進化の本を先日紹介しましたが、無事本日「進化と人間行動第2版」のほうも到着しました。著者のお一人、大槻久先生は九大生物学科のご出身と知りました。なかなかよさそうな本です。今日は、進化の動画で面白そうなものが公開されたので紹介しておきます。閉鎖とのことで話題の京都大学OCW(オープンコースウエア)にて、昨年11月に京都大学の第17回MACSコロキウムで行われた以下の二つの講演が動画公開されています。
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/course/1101/
早水先生の講演は進化系統樹についての話で、倉谷先生のほうは進化と発生のパターンについての講演です。要旨を読むとどちらも面白そうです。それぞれ1時間程度の動画です。

第17回 MACSコロキウム
進化の系統樹と系統ネットワークに関する組合せ論
早水 桃子(早稲田大学・専任講師―当時 : 現在は准教授)
https://youtu.be/mBHRueanQoY

進化と発生のパターンについて
倉谷 滋(理化学研究所・主任研究員)
https://youtu.be/1d_m39AzbfQ

Rによる疫学解析のためのハンドブックがあるそうです。

無料で利用できるR言語はいまや統計解析で使うプログラミング言語の標準となっています。統計学の学習や研究に必須の道具です。疫学の研究向けのEpi R Handbookという本がオンラインで読めますので、疫学に興味のある方はご覧ください。ダウンロードしてオフラインで読むこともできます。html版をダウンロードするか、あるいはRのパッケージとしてダウンロードすることもできます。
詳しくはhttps://www.epirhandbook.com/en/
の中にあるダウンロードページを見てください。

https://epirhandbook.com/en/download-handbook-and-data.html
日本語版も9月中旬公開予定だそうで楽しみですね。
また関連情報がこちらApplied EpiTMのページにまとまっています。
https://www.appliedepi.org/
登録が必要ですがオンラインチュートリアルもあるそうです。
https://appliedepi.org/tutorial/
写真は我が家で毎日咲いている朝顔の花です。クマゼミの声はもう聴かれなくなり、ヒグラシの声も減って来たようです。毎日雨がふって典型的な夕立の夏です。

進化論で戦争勃発の原因が説明できるのでしょうか?

私が昔 さきがけ研究に採択されて研究を終えたころ、米国のイラクへの攻撃が始まろうとしていました。さきがけの同じ領域の研究者がつどうメールリストには、国連にイラク侵攻反対の署名を送ろうという切実な訴えのメールがすぐれた研究者のかたから送られてきていました。あの時、心から平和を願っていた研究者の方々の志の高さに感服します。ウクライナの戦争が続く中、どうしてこうした戦争がおこるのか、どうすれば阻止できるのかという学問が進む必要があると心から思うこのごろです。そうした学問として、進化政治学という分野があるというのを知りました。進化論を政治に応用することで、戦争や平和の原因を説明することができるそうです。今回のウクライナでの戦争がどうして起こったのかなどもすっきりと説明できるという話ですので、この分野の研究者である広島大学の伊藤隆太先生による以下の本を読んでみようかなと思っています。

進化政治学と平和 科学と理性に基づいた繁栄:伊藤 隆太 著
芙蓉書房出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4829508329

こちらに詳細な書評がでています。https://shorebird.hatenablog.com/entry/2022/06/11/115732
関連した本として、長谷川真理子先生他による今年出版されたこの教科書も面白そうなので紹介しておきます。
進化と人間行動 第2版:長谷川 寿一,長谷川 眞理子,大槻 久 著
東京大学出版会
https://www.amazon.co.jp/dp/4130622307

量子生物学の動画や量子力学の基礎についての動画をみつけました!

先日のDNAの突然変異メカニズムの量子力学的モデリングの論文の著者 Jim Al-Khaliliさんの新しい動画です。Oxford philosophy of physics seminarsというオックスフォード大学のセミナーシリーズでの講演です。この方は、テレビなどで科学解説番組にいろいろ出演されているようです。YouTubeで名前で検索するとBBCほかいろんな番組の動画がみられます。

Life on the Edgeはこの前紹介した彼の有名な本の原著のタイトルです。このオックスフォード大学提供のセミナーシリーズ
https://www.youtube.com/c/OxfordPhilosophyofPhysics/videos
は面白そうです。ざっとタイトルを見てみたのですが、みてみたい動画が色々ありました。
https://youtu.be/OmaSAG4J6nw

上の動画のタイトルは、Title: Why We Shouldn’t Believe in Hilbert Spaces Anymore, and the Case for Platonic Quantum Theory というものです。ハーバード大学の先生の講演です。動画の最初のほうは生物をやっている私などにもわかりやすい導入でした。ヒルベルト空間を使った量子力学の定式化はだめだというお話です。提唱したフォンノイマンも1935年に自分ではヒルベルト空間による定式化を絶対的には信じていないといっているという話もありました。かわりになるのは、Gelfand–Naimark–Segal construction (GNS構成法)というC*代数というものを用いる理論だそうです。ハーバード大学のこちらの動画シリーズは物理の人には面白いかもしれません。https://www.youtube.com/channel/UCPRe-yID_EaQwvCZM7hU9Hw/videos
この先生の以下の動画は、物理と哲学の話でより一般向けでわかりやすいかもしれません。同じ画像ですがこちらのほうがより最近の講演です。

世界を変えてしまった物理学の実験という講演の動画をみました

THE ROYAL INSTITUTIONの講演動画の紹介です。
Physics experiments that changed the world – with Suzie Sheehyという動画です。
20世紀のはじめ、21世紀はこんなのになるのではというカードがでていたそうです。

https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:France_in_XXI_Century_(fiction)
上のリンクのような未来予測のカードがフランスででていたそうですが、
この時代には、物理学にもう画期的進歩はなかろうという意見も結構有力視されていたそうです。しかし20世紀への変わり目から、次々と新しい実験的発見がありました。この講演は

1900年あたりのレントゲンによるX線の発見の紹介からはじまります。ラザフォードの実験と彼のグループにいた忘れ去られた優秀な女性研究者Harriet Brooksの話、テスラの1200万ボルトの高電圧発生装置が物理学の発展に及ぼした決定的役割、原子爆弾の開発と、核分裂を発見したLise Meitnerのマンハッタン計画への参加拒絶の話 (彼女はこういって参加を断ったそうです。I will have nothing to do with a bomb!)、広島・長崎への原爆投下で物理学者が物理学の社会とのかかわりに目覚めた話、ウイルソンの霧箱や粒子加速装置の開発からハドロンコライダーまでの話など興味深い話が、デモ実験と併せて展開されています。Sheehyさんは最近The matter of everything twelve experiments that changed our worldという本を書かれたそうで、この講演はその本の内容紹介にもなっています。https://www.amazon.co.jp/Matter-Everything-Twelve-Experiments-Changed/dp/1526618966
https://youtu.be/aXg3edeUrtc

突然変異メカニズムの量子生物学的解析の論文がでています!

昨日はお盆で京都の大文字の日でしたね。BSテレビで生中継を見ていました。雷雨で開始がおくれましたが見事な五山の送り火、久々の全山点灯ということでとても綺麗でした。京都に住んでいたころは、よくみんなで送り火を見に行ったのを思い出しました。さて今日は量子生物学の話題です。

DNAの突然変異の過程に量子現象が関与しているのではないかという議論はずいぶん昔からありました。最近、Nature系列の雑誌Communications Physicsに面白い論文がでていました。オープンアクセスですので誰でも自由に読むことができますのでご覧ください。
An open quantum systems approach to proton tunnelling in DNA というタイトルで
Jim Al-Khaliliのグループ(Department of Physics, University of Surrey, Guildford, GU2 7XH, UK)からの論文です。 この人は昨今の量子生物学ブームに火をつけた方です。このブログでも以前の記事でとりあげています。「量子力学で生命の謎を解く」(SB Creative社発行)という本はベストセラーになりました。

Slocombe, L., Sacchi, M. & Al-Khalili, J.
An open quantum systems approach to proton tunnelling in DNA. Commun Phys 5, 109 (2022). https://doi.org/10.1038/s42005-022-00881-8
論文はこちらからダウンロードできます。
https://www.nature.com/articles/s42005-022-00881-8#Abs1

DNAの塩基G(グアニン)とC(シトシン)は水素結合でDNAの二重らせんの中で結合しています。一方の鎖のGはもう一方の鎖のCと三本の水素結合で結合するというわけです。(塩基のアデニンAは塩基のチミンTと二本の水素結合で結合します)。この論文ではこれら核酸塩基の間に働いている水素結合を担う水素原子(プロトン)が量子トンネル効果で移動して核酸塩基が互変異性体(tautomer)へ変化する現象を量子力学でモデル化して研究しています。例えばG–C ↔ G*–C* → G*–T(註:アスタリスクはGやCの互変異性体を示します)となって、本来Cであるべきところがプロトン移動による互変異性体の形成の結果、Tに変わってしまうという突然変異がおきるわけです。論文ではこうした突然変異が起こる確率を計算しています。プロトンの量子トンネル効果によって互変異性体ができて平衡に達する時間や確率を量子力学と統計力学を用いて計算しています。絶対温度300ケルビン(だいたい摂氏27度の室温です)での計算結果は、互変異性体による突然変異のおきる確率が従来の古典モデルで予想した値の10000倍になることを示しているそうです。今まで量子現象は突然変異にはほとんど寄与指定いないと考えられていたのですが、どうやら突然変異には量子効果が極めえ重大な役割をはたしているようです。今回の論文のように、量子力学を常温での生命現象に応用する試みがこれからどんどん増えていくと思われます。面白い時代になってきました。

以前のブログの記事はこちらです。
https://glycostationx.org/2018/10/02/%e7%a7%8b%e3%81%ae%e3%81%8a%e3%81%99%e3%81%99%e3%82%81%e6%9c%ac%e3%81%9d%e3%81%ae%ef%bc%91%e2%80%95%e9%87%8f%e5%ad%90%e7%94%9f%e7%89%a9%e5%ad%a6%ef%bc%88%ef%bc%91%ef%bc%89/

AlphaFold2についての最近の情報

AlphaFold2を自分のパソコンにインストールする方法についてはこちらのQiitaの記事が参考になりそうです。
https://qiita.com/suginaga/items/b487293c1b54d51714c9
またGoogleのColabFoldをクラウドではなく、自分のパソコンで使えるようにしたシステムLocalColabFoldの利用法もQiitaに記事がでています。
https://qiita.com/Ag_smith/items/fca48002fbdcb15145c0
これはGPUが本家の無料版では安物しかつかえない、使用時間の制限があって使い物にならないなどの場合の対策として利用されているシステムです。
LocalColabFoldのインストールの仕方はこちらにあります。
https://github.com/YoshitakaMo/localcolabfold/blob/main/README_ja.md
これらの記事は、ColabFoldの論文(オープンアクセスでダウンロードできます)
https://www.nature.com/articles/s41592-022-01488-1
の著者でもある東大の森脇先生の書かれた記事です。

森脇先生のこちらのページもMD simulationとかpymolとかいろいろ面白そうな記事があって参考になります。
https://github.com/YoshitakaMo

父が遭遇した謎の発光体―不思議な話の三回目です

お盆なので不思議な話の続きです。ずいぶん前に亡くなった父の体験談です。父が小さかったころ 夜 鉱山から帰る途中 山道を歩いていました。あたりは夜で真っ暗。家路を急いでいると前にある山の斜面の上のほうから、灯(あかり)がゆっくり降りてきたのが見えたそうです。一瞬、提灯を持った人がいるのかなと思ったのですが、山の斜面を提灯をもって人が下りるはずもなく、浮かんでいるその灯はリズミカルに上下しながら、ゆっくり斜面をおりてくるので、ちょっと怖くなって眺めていたそうです。大きさは、ちょうど今でいうサッカーボールほどで、空中に浮かびながら斜面をおりてきて、父に近づいてきて、目の前までくると、パッと消えてしまったそうです。色は提灯の灯のような色だったとのことです。結構長時間観察できたそうで、あれは本当に不思議な体験だった、あれが何だったのかは未だにわからないけれどなどと、時々思い出しては話していました。

私は球電ではないのかなと父に話していました。(球電Ball Lightningについては以下のリンクにある英語版Wikipediaが詳しいです)
https://en.wikipedia.org/wiki/Ball_lightning
中谷宇吉郎さんが書かれた岩波新書の「雷」という本には球電のことが詳しく書いてあってそれを読んでいたのでそう思ったのでした。別に雷が鳴っていたわけではなかったそうですが、球電であったとしても そうでなかったとしても、とても珍しい現象にでくわしたのは間違いありません。中谷宇吉郎の本は「雪」とか「雷」とかいう本が個人送信資料で読めます。「雷」については今私の持っている本とくらべると、個人送信資料に収録されている本が戦前のものなので、写真図版がついていないようで残念です。青空文庫では「雪」は読めますが、「雷」は作業中とのことです。

下の写真は昨日収穫した我が家のブドウと赤唐辛子です。どちらも無農薬で育てましたが、今年はカメムシやコガネムシの食害がほとんどなくて、先月の収穫分とあわせて写真の倍以上の量のブドウ (デラウエア)が収穫できました。

Mathematicaの動画の紹介です

Mathematicaは便利なソフトウエアです。以前紹介したMathematicaのYouTubeチャネルhttps://www.youtube.com/c/wolframjapanに新しい動画が入っていますので紹介します。これなどはMathematicaの入門後に、ソフトを使いこなすのには必須の動画ではないでしょうか。
https://youtu.be/b2i96d0rJJA

&, /@, @@, #って? (Function, Apply, Mapの概要)というタイトルの動画です。MathematicaのWolfram 言語で書かれたコードによくでてくる記号を解説してくださっています。演者の丸山先生はWolframの方ですが、微分方程式の入門セミナーを去年されました。丸山先生については去年の記事をご覧ください。
https://glycostationx.org/2021/09/27/mathematica%e3%81%ae%e7%b4%b9%e4%bb%8b%e3%81%a7%e3%81%99%ef%bc%81/

同様の微分方程式の丸山先生によるセミナーが以下から登録できますので登録されるとよいでしょう。「微分方程式を解こう!—教科書の課題から流体計算まで2022」というタイトルです。
https://www.bigmarker.com/series/solving-difference-equation-JP-2022/series_details

フォン ノイマンの本「電子計算機と頭脳」について

今年6月16日の記事で、国立国会図書館デジタルコレクションで世界の名著シリーズが読めることを紹介しました。
世界の名著 現代科学Ⅱ https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2988842
これにはポアンカレの「科学と仮説」やワトソンとクリックのDNAの二重らせん構造の発見のNature論文、ノイマンの「人工頭脳と自己増殖」の論文、マッカローの「なぜ心は頭にあるか」という論文、そしてセントジェルジの「医学の将来」という論文などがのっています。この本に収録されているノイマンの論文の翻訳をされた品川嘉也先生によると、本当はノイマンの「電子計算機と頭脳」を収録しようと思っていたのだが、版権の関係で果たせなかったということです。デジタルコレクションの個人送信資料にはこの本の翻訳書が入っています。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2504659
また英語版では2000年発行のものがInternetArchiveで貸出できます(写真には裏表紙に書いてある推薦文などが写っています。Ulamの推薦文もありますね)。
https://archive.org/details/computerbrain0000vonn/mode/2up
下にはノイマンの論文を推奨しておられたBrenner先生についての過去記事を付けておきます。

Brenner先生がCurrent Biologyに書かれたコラムの記事や関連本がダウンロードできます。

単一細胞のRNA-Seq(scRNA-Seq)の入門動画とBrenner先生の新技術についての金言の紹介です。

Sydney Brenner先生がなくなられました―検索エンジンSemantic Scholarを使ってみよう