科学について考えるためのブックガイド本二冊を紹介します。

図書館で「科学者の本棚」(2011,岩波書店、現在品切れ、中古本は安く買えます)という本を借りてきました。雑誌「科学」編集部編の「人生においてもっとも心に残っている本、ご自身の研究への道を拓くきっかけとなった本、後世に残したいあるいは後輩に伝えたい本のことを書いてください」という編集部の依頼で63人の科学者、あるいは科学に関連の深い方々が雑誌「科学」に寄せられた本の紹介をまとめたものです。ユークリッドの原論、鉄腕アトム、果てしなき流れの果てに、マッハの力学、解析概論などSFから随筆、マンガや教科書、哲学書など興味深い本が紹介されていて読んでいてあきません。

同じく岩波書店から、「ブックガイド文庫で読む科学」という本もでていて、こちらも面白い本です。2007年の発行ですが在庫ありになっていました。こちらは藤永茂先生や田口善弘先生他の9名のかたが、科学について考えるための有益な本を紹介されています。例えば田口先生は、「科学的思考法のすすめ」と題する文中で、レーニンの「唯物論と経験批判論」やグリッグの「カオス」、ワトソンの「DNA」(ワトソンの二重らせんとは違う教科書風の本です)の三冊を挙げておられます。レーニンの「唯物論と経験批判論」をあげておられるのはユニークですね。唯物論と観念論、そしてトンデモ科学のようなものについて考えるよいきっかけになる本だと思われます。藤永先生は「学ぶということ」と題して、ロウソクの科学、アインシュタイン相対性理論(アインシュタインの論文を内山龍雄先生が訳して解説した岩波文庫)、ファインマンの「物理法則はいかにして発見されたか」、ガストン・バシュラールの「新しい科学的精神」の四冊を紹介されています。最後の本の紹介ではトマス・クーンのパラダイムの考え方がどのように誤っていて、パシュラールの考え方が科学の本質をついているかがわかりやすい例で説明されています。

この二冊で取り上げられている本は、古い本も多いので国立国会図書館の個人送信資料で探すと、オンラインで読むことができるものが多いです。先ほどの「唯物論と経験批判論」は、いくつかの版が読めますが、画像がきれいで読みやすいのはこちらだと思います。https://dl.ndl.go.jp/pid/12244020