論文やプレプリントを一挙に検索できるEurope PubMed Centralの使い方(2)

昨日の続きです。

Europe PMCは、デフォルトで本文も検索対象にしているため、PubMedで検索できない論文も検索でヒットする可能性が高い上に、PubMed, PubMed Central, preprint serverを一括して検索できるので、論文検索のもれが無くなる可能性が高いということを書きました。
一方で、
fat
division

のような一般的な単語を含む検索では、本文中にたまたまその語が登場しただけの論文まで拾い、検索結果がかなり増える可能性があります。その場合には、Europe PMCの

TITLE_ABS:

を使う方法がおすすめです。

これは検索対象をtitleとabstractに限定するフィールドです。Europe PMCでは2023年にtitleとabstractを同時に検索する TITLE_ABS: フィールドが追加されました。

たとえば、より厳密にするなら、

TITLE_ABS:elegans AND
(
TITLE_ABS:glyco* OR
TITLE_ABS:sugar OR
TITLE_ABS:transferase OR
TITLE_ABS:proteoglycan OR
TITLE_ABS:fatty OR
TITLE_ABS:fat OR
TITLE_ABS:division OR
TITLE_ABS:meiotic OR
TITLE_ABS:meiosis OR
TITLE_ABS:GPI OR
TITLE_ABS:lipid OR
TITLE_ABS:sphingo*
)
AND
FIRST_PDATE:[2003-01-01 TO 2030-12-31]

という検索式にするというのもありです。

こちらは全文中に単語が出てくるだけの論文を除外できるので、毎日見るRSSとしてはこちらの方が扱いやすい可能性が高いかもしれません。

ただし、Europe PMCの特徴である全文検索能力を積極的に利用したければ、最初のフィールド指定なしの検索式を使う方がよいでしょう。

まとめると:

広く文献を拾いたい場合 → フィールド指定なし

PubMedに近い感覚で新着論文を監視したい場合 → TITLE_ABS:

の使い分けが可能であるということになります。

実際にRSS feedを作る

操作は簡単です。ただ注意したいのは、昨日書いたようにRSS feedを作成する検索式にFIRST_PDATE:[2003-01-01 TO 2030-12-31]などのFIRST_PDATE:が入っているとRSS feedが作れないことです。詳しくいえば、Europe PMCでは FIRST_PDATE:[2003-01-01 TO 2030-12-31] のような日付範囲は通常のWeb検索では利用できます。しかし、2026年9月現在、この日付範囲の入っている検索式からRSSを生成しようとすると HTTP 400 Bad Request というエラーがでてRSS feedは作れませんでした。ということで、継続的な新着文献チェックを目的とするRSSでは日付条件を外し、キーワード部分のみをRSS検索式として使用するのがおすすめです。過去文献を調査するときには、通常のEurope PMC検索で FIRST_PDATE: を追加すればOKです。

ではRSS feedの作り方です。

  1. Europe PMCを開く。 Europe PMC
  2. 検索欄にEurope PMC用の検索式を入力する。たとえば

elegans AND
(glyco* OR sugar OR transferase OR proteoglycan OR fatty OR
fat OR division OR meiotic OR meiosis OR GPI OR lipid OR sphingo*)

  1. Searchを実行して、検索結果を確認する。
  2. 検索結果ページ右上から二番目にある Subscribe to RSS を選ぶ。
  3. 表示されたRSS feedのURLをコピーする。
  4. Feedly、Inoreader、Thunderbirdなど、自分が使っているRSS readerにURLを登録する。

これで、その検索条件に一致する新しい論文がEurope PMCに追加されると、RSS readerから確認できます。
検索結果が出た直後の画面をペーストしておきますので参考にしてください。

Europe PMCの公式文献によれば、検索結果ページの Subscribe to RSS からカスタムRSS feedを登録でき、RSSにはEurope PMC検索結果の先頭25件が提供されます。

RSS URLを自分で組み立てるよりも、検索を実行して Subscribe to RSSから生成されたURLをコピーする方法の方が、Europe PMC側のURL仕様変更にも強く安全です。

Preprintも同じRSSに入る

ここがEurope PMCを使う大きなメリットです。上の検索式ではpreprintを除外していないので、

PubMed収載論文
+
PMC収録論文
+
preprint

をまとめて検索できます。

Europe PMCではpreprintに PPR というsource codeが割り当てられています。
したがって、preprintだけを検索したければ、検索式に
SRC:PPRを追加します。

例えば、
elegans AND
(glyco* OR proteoglycan OR lipid OR sphingo*)
AND
SRC:PPR

とすれば、該当するpreprintだけを検索してくれます。

逆にPubMed由来の文献は
SRC:MEDで指定できます。研究分野によっては、
全論文+preprintのRSSと、
preprintのみのRSS
の2つを登録して利用するのも良いと思います。

preprintだけを別feedにしておけば、「昨日から今日にかけてbioRxivなどで何が出たか」を短時間で確認でます。

Preprintから正式論文になった場合

一つ注意したいのは、同じ研究が
preprint

査読

journal article

となった場合です。Europe PMCではpreprintと正式出版版を可能な場合には相互にリンクしています。preprintのページからjournal-published versionへ移動することもできます。したがってRSSでは、以前preprintとして読んだ研究が、後日正式な論文として再び現れることがあるというわけです。これは「以前のpreprintが正式出版された」という情報であり、とても、研究動向を追う用途ではむしろ有用である。

Europe PMCのRSSをPubMed RSSの代わりにできるか

完全に同一の検索結果にはなりません。

PubMedとEurope PMCでは検索エンジンやフィールドの扱いが異なり、特にEurope PMCでは全文検索とpreprint検索が加わるためです。

しかし、「自分の研究テーマについて新しい研究が出たら知りたい」

という目的にはEurope PMCのほうが適していると思われます。特に
PubMed
+
PMC full text
+
bioRxivなどのpreprint

を一つの検索式、一つのRSS feedで監視できる点が秀逸です。
従来PubMed RSSを使っていた方は、PubMed RSSとEurope PMC RSSをしばらく併用して、どの程度検索結果が異なるかを比較してみるとよいでしょう。

Europe PMCでフィールド指定なしの全文検索を使う場合には、思いがけない論文を拾う利点がある一方、検索結果が増えすぎる可能性もあるので、しばらく使ってみて、必要ならTITLE_ABS:を使ってtitleとabstractに限定するのもよいでしょう。