家康も読んだ秘伝書 「風姿花伝」を読んでみましょう!

「風姿花伝」は、日本の芸術論を語るときに欠かすことができない古典です。日本文化について世界に発信する際には、ぜひ読んでおくべき一冊です。たしかNHKの100分de名著でも取り上げられていたように思います。https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/29_fushikaden/index.html

能は多くの武将の心をとらえたことでも有名で、信長や家康も能を舞ったそうです。風姿花伝は秘伝書として一子相伝で長らく伝えられてきた書物です。その最後の頁によると信忠が家康に読ませてほしいとねだったとありますから、家康が所持して読んでいた秘伝書だということがわかります。この本は秘伝書なので、その存在は知られていたものの、全部の内容が明らかになったのはなんと20世紀に入ってからです。華族の堀家から1908年に古書店朝倉屋に売られていた能の古書若干を、安田善次郎が買い求めて所蔵していました。当時 世阿弥の伝書を探索しておられた吉田東伍博士が、大蔵流狂言師岡田紫男からこの書物の存在について聞いて、直ちに調査してそれが世阿弥の真筆の伝書であることを確認したとのことです。安田氏の古書コレクションは関東大震災で消失したので本当に間一髪のところで風姿花伝が書籍として日の目を見たのだと思います。安田善次郎は、安田財閥の祖であり、東大の安田講堂はこの人の寄付で建ったそうです。またジョンレノンの奥さんのオノ・ヨーコの曽祖父にあたるとのことでした。この辺のところは、集英社新書の世阿弥の世界(増田正造 著)で知りました。

https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0787-f/

この本は能を知らない読者が、世界に通じている能という芸術とその起源、風姿花伝の内容などを学ぶのに絶好の本だと思います。一読をおすすめします。なお増田正造先生は2022年に92歳で亡くなったとのことです。とても良い本を残してくださいました。

風姿花伝を世にだした吉田東伍博士の本、世阿弥十六部集は国立国会図書館のデジタルコレクションでログインなしで誰でも読むことができます。ダウンロードも可能です。
吉田東伍 校注『世阿弥十六部集 : 能楽古典』,能楽会,明42.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/859394 (参照 2024-02-08)

これはしかし読みにくいのでもっと読みやすいように評釈を付けた本がでていてこちらなら理系の読者でも簡単によめます。
能勢朝次 著『世阿弥十六部集評釈』上,岩波書店,1949. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1705509 (参照 2024-02-08)

風姿花伝の現代語訳はやはり国立国会図書館の個人送信資料でこちらがよみやすいです。
金井清光 著『花伝書新解』,明治書院,1958. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2485968 (参照 2024-02-08)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2485968

世阿弥の直系である金春家伝承の風姿花伝を含む様々な能楽関係の資料も公開されて本になっているので、個人送信資料で読むことができます。この本では、風姿花伝は、風姿華傳と書かれています。
川瀬一馬 註『頭註世阿弥二十三部集』,能楽社,1945. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1840598 (参照 2024-02-08)