スライドでのプレゼンの心得について

プレゼンスライドの作り方についてのメモです。

講演スライドの構成は、朝ドラ方式でつくるのが初心者にはわかりやすいかもしれません。15分の朝ドラ(テーマ曲をのぞくと12分ちょっと)というのは学会での口頭発表の時間とほぼ同じです。学生さんも朝ドラが好きな人が多いので、学会発表の講演の構成を朝ドラのストーリー展開を参考に組み立てるとよいとアドバイスしたりしました。たった12・3分で結構たのしませてくれたり、はらはらドキドキさせてくれたりする朝ドラをお手本に、学会の口頭発表も聴いている人が聴いて良かったと思えるような構成にするのはそんなに難しくないわけです。

科学者が主人公の朝ドラが放送されるようです―牧野富太郎

朝ドラのテーマソングに相当するスライドは次の2枚です。
1)講演タイトルや学会名、開催日、所属、自分の名前などが入った口演の第一枚目のスライド。
2)第2枚目に置くことが多い謝辞のスライド:これは今回発表する仕事の共同研究者、お世話になった方々、研究資金の提供元などを列挙したスライドです。謝辞のスライドは末尾のほうに置く人も多いですが、講演に熱がはいってしまって時間オーバーになった時、さらっとしか見せられなくなるので私は最初のほうに置くようにしていました。初心者は謝辞を忘れることが結構あるので、その防止にもなります。

あとは朝ドラの本篇に相当する講演内容のスライドです。
どのように研究方法や研究成果、結論や今後の展望を語るかが腕のみせどころになります。私は以下のような点に気をつけてスライドを用意していました。

●見やすいスライドにすること。後ろの方からでも見えるようにフォントの大きさや種類を決めてスライドをつくる必要があります。昔、国際学会で日本の演者がスライドで発表していました。大きな会場の入り口で日本の偉い先生がたが二人、そのプレゼンをみて話しておられるのが聞こえました。当時は白黒のスライドかOHPのトラペレというものでプレゼンするのが普通でした、「あのスライドはなんですか。見にくいスライドですねぇ。字が薄くて何が書いてあるか読めませんねぇ。もうちょっと見えるように作れんものでしょうかなぁ」研究費の申請で不利になること請け合いのプレゼンとはこんなものかと、院生時代に実感した恐ろしい風景でした。

●スライドにやたらにアイドルだのピカチュウだのをいれて発表しないこと。たしかにピカチュウだとかR2D2だとか、スタートレックのエンタープライズ号とかをいれて講演すると受けることがあります(昔きいたヒトデの再生に関する講演。スライドにヒトデの形をしたエンタープライズ号が描かれ、下のほうにStarfish the next regenerationと書かれていました! ピカード船長の活躍するSFテレビドラマStartrek the next generationのもじりで、ものすごくうけていました)。そうした面白い発表を何回か聞いたことがあります。しかしこうした人目をひくスライドを使うべきかどうかは、オーディエンスを慎重に考慮してきめてください。これも私の経験なのですが、上に述べたような一般受けするスライドを入れて研究発表をした研究者が、そのプレゼンの態度を最後に酷評されて二度と研究会に呼んでもらえなくなったのを目にしたことがあります。研究会のオーディエンスをあらかじめ予想して、そのオーディエンスにあったスライドをつくらなくてはいけません。

●スライドの配色を統一しましょう。留学生の人にありがちな、カラフルすぎる極彩色のスライドは日本の研究者にはうけません。極彩色の色に気をとられて研究内容に集中できない人が多いので、配色には気を付けてください。

●発表では、研究の結論をはじめのほうに提示することも多いです。またはじめのほうで、この講演の流れをスライドでみせる場合もあります。こうした場合に注意するべきことは、講演の流れや結論をアニメーションで示さないことです。アニメーションでひとつずつ項目をみせていくと、全体を一目で把握することが困難になります。短時間みただけではついてこれない人がでます。どこでアニメーションを使うのが聴衆の理解に最適かどうか、全体を一度にみせておいてポインタで順に説明する方がいいのではないかをよく考えましょう。たいていはアニメーションをやめて、最初から一枚のスライド全体をみせるほうがいいと思います。

●図などを他人の資料から引用している場合は必ず出典を書きこんでおくことも忘れないようにしましょう。スライドにのせてある総説とかを後で読もうと思って、熱心にメモする人も多いです。講演でこの研究に興味を持った人が、文献を探せるように自分の論文や他人の論文、そして総説などのソースが書き込まれていると喜ばれます。PubMedとかで検索する人が多いので、筆頭著者名と雑誌、発行年が書いてあればよいでしょう。著者名と発行年だけでも捜せると思います。もちろん、学会のアブストラクトなどに文献をあらかじめ載せておくのもよい習慣です。

●最後のスライドは、質問の時間の間に出したままになる場合もあるので、そういう場合には講演の結論やこれからの展望、そしてメールアドレスなどを書き込んでおくとよいでしょう。またスライドの最後に、予想される質問回答用のスライドをあらかじめ数枚用意しておくのも役だちます。四年生が、そうした予想質問への回答用スライドがさっとでてきた大学院生の発表をみて、「かっこいい」と卒論発表で真似していました。

この講演をきいて良かったと一人でも多くの人に思ってもらえることを目指して発表しましょう。