周期律の発見者メンデレーエフが無煙火薬の製造法の秘密を探った方法とは?

先日動画でみる周期表のサイトを紹介しました。周期律表をつくりあげたメンデレーエフはすぐれた推理力をもっていて、フランスの国家機密であった無煙火薬の製造法をつきとめたというエピソードを読んだことがあります。古い本ですが「数に語らせる」 (岩波書店1952年)という本に載っています。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1629634
著者の増山元三郎は、朝日賞も受賞された国際的統計学者で、日本の統計学、推計学の発展に貢献した有名な先生です(米国のカトリック大学教授や東京理科大学教授などを歴任)。
この本にのっているメンデレーエフの推理を要約すると以下のようになります。詳しくは国立国会図書館の個人送信資料でお読みください。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1629634/10?tocOpened=1

メンデレーエフは1890年代にロシア政府から無煙火薬の製造法の調査を依頼され、世界一の無煙火薬を生産しているフランスにでかけました。無煙火薬の成分であるエーテルとパイロ・コロジオン(綿火薬の一種)の比率が知りたいのですが、フランス政府はもちろん教えてくれません。いろいろ考えてメンデレーエフが気づいたのは、フランス陸軍の火薬工場が鉄道の幹線ではなく、寂しい支線の端にぼつんと建っていることでした。この支線は火薬工場だけに使われているらしいので、この支線を通る貨車はみんなこの工場でつくる火薬の材料を運んでいるに違いないわけです。運ばれた材料はすべてすぐに使われてどんどん火薬を作っているだろうと考えました。それならこの支線を一年間に通る貨車が運搬する、エーテルと硫酸と硝酸と綿花の量を調べてその割合を計算すれば、エーテルとコロジオンの比率がわかるはずです。メンデレーエフはフランスの運輸鉄道統計をとりよせて、その数字を調べるだけで、使命をはたして本国に引き上げたそうです。

これは公開情報だけを利用して秘密を探るという方法の模範のような話です。初めて読んだとき感銘をうけました。今、いろんなインターネットサービス業者もこうした公開情報をつなぎ合わせるだけで、様々な秘密の情報を得ているといわれています。公開情報だけから秘密を探る方法(オシントといわれます。Open-Source Intelligenceの略)は情報収集の基本手段ですので、公開する情報には気をつけなくてはいけませんね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B9

https://en.wikipedia.org/wiki/Open-source_intelligence