有名なベイズ統計学の教科書が賞を受賞したそうです。

昨年紹介した(文末に記事へのリンクを埋め込みました)ベイズ統計学の教科書Statistical Rethinking 2nd ed (Chapman & Hall/CRC) が賞を受賞したそうです。

 

この本をもとにした講義がYouTubeで公開されており、著者のGithubのページにはRやPythonのコード、スライドもダウンロードできるようになっています。またYouTubeビデオへのリンクもあります。
https://github.com/rmcelreath/stat_rethinking_2024
2024年の講義サイトですが、動画へのリンクは2023年のもののようです。動画の一例(第6回目の講義)を埋め込んでおきます。
https://youtu.be/uanZZLlzKHw?si=5Da_osSR4O0lrsfy

 

ベイズ統計学の「院生、研究者むけ」のよい教科書があるそうです。

やまなみ書房からでているCC BY 4.0で公開されているPDF版の本を紹介します。

クマゼミが毎朝早くから鳴いています。ものすごくやかましいので都会から来た人はおどろくかもしれません。写真は朝、我が家の壁にのぼって脱皮し終えたクマゼミとその抜け殻です。早朝6時過ぎにみつけたのですが10時すぎて見るともう飛び去っていなくなっていました。

今日は、やまなみ書房という出版社からでている本を紹介します。紙の本は有料で販売されていますがpdf版は無料でダウンロードできます。どれも出版社のトップページにあるリンクからダウンロードできますのでご覧ください。

https://www.yamanami.tokyo/

素粒子読本  樋口正人 (著), 小林悌二 (編集), 齋藤曉 (編集)
https://www.yamanami.tokyo/particle_tokuhon/
解析力学 細谷曉夫著
https://www.yamanami.tokyo/analytical_mechanics/

形式論理探求 第1巻 古典論理のタブロー 高木 翼 著
https://www.yamanami.tokyo/tableau_contents/tableau01classical_logic/

地球最古の微生物―20億年前から生きている生きた化石―が回収されたというニュースの論文が公開されています。

7月18日のNHKニュースに「“20億年前”地球最古の微生物? 生命の起源に迫る重要な発見か」というのがありました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240718/k10014514831000.html

東京大学の鈴木庸平先生たちのグループによる発見です。南アフリカの Bushveldというところにある古い岩石層(ブッシュフェルト複合岩体)をドリルして20億年の地層の岩石を採取したところ、なんとその中に生きた微生物が存在したというニュースです。サンプリングの際の生物の混入がないように慎重にデザインされた方法で採取されているのでコンタミネーションはないと考えられ、コンタミがおこったらら検出できるような実験方法でサンプリングされています。その上で、岩石内部に微生物が存在することをOptical-photothermal infrared (O-PTIR) spectroscopyという非破壊的手法で確認したあと、切片をつくってDNAを SYBR Green I という蛍光色素で染めて顕微鏡で観察したり、電子顕微鏡で観察したりしています。生きた化石というのはいままでいろいろ知られていましたが、なんと20億年前から岩石の中で生きている微生物がいたというのはすごい発見です。ゲノム配列の解析をしているとのことで、どんなDNAの塩基配列が含まれているか本当に楽しみですね。

論文がプレプリントとしてすでに公開されています。

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.07.08.602455v1.full.pdf

鈴木先生の研究室のツイートはこちらからみることができます。
https://nitter.poast.org/YoheysuzukiL

鈴木先生のこの発見の解説記事はこちらにあります。
https://yoheysuzuki.jimdofree.com/%E5%A4%A7%E6%B7%B1%E5%BA%A6%E6%8E%98%E5%89%8A%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B20%E5%84%84%E5%B9%B4%E5%89%8D%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%A7%8B%E7%94%9F%E5%91%BD%E6%8E%A2%E6%9F%BB/

「身の回りに潜む対称性」という東大TVの動画をお薦めします。

今日は対称性についての最近公開されたわかりやすい動画を紹介します。
東京大学の数理物理学者 松井千尋先生による公開講座の録画です。
松井 千尋「身の回りに潜む対称性」第137回(2023年秋季)東京大学公開講座
https://youtu.be/daKYy2r_i1Y?si=SylamvnSGsXs-0fS

この動画をみて興味を持った方には、超有名なファインマン物理学の教科書の該当箇所をお読みになるとよいでしょう。
英語版の第一巻52章がイントロになっています。以下のサイトではファインマン物理学の全巻が無料で読めるのみならず、ファインマンさんの講義の録音も聴くことができます。講義写真とかもみられます。すごいサイトです。
https://www.feynmanlectures.caltech.edu/I_52.html

さらに対称性についてのファインマンさんのさらに進んだ解説講義もあります。日本語で読める翻訳書 ファインマン物理学(岩波書店)Vの量子力学の巻、第17章は対称性についての章です。こんな文章が書かれてるので岩波書店の本から引用しておきます。
『したがって,諸君は,各種の保存則とこの世界の対称性との間の関係を知ることができたわけである.時間のずらしに関する対称性はエネルギー保存則を与え,またx, y, z の位置のずらしに関する対称性は,それぞれの方向の運動量の成分の保存をもたらす. x,y およびz 軸のまわりの回転に関する対称性は,角運動量のx,y,z 成分の保存則を与えるというわけである.反転に関する対称性はパリティーの保存を与える.また, 2 個の電子のいれかえに関する対称性は,名前をもたない何かの保存を与える等々といった具合である.』

対称性がエネルギーの保存則や運動量の保存則を与えるというのは面白いですね。

原文は以下で読めます。原書では第三巻の第17章です。原文も引用しておきます。わかりやすい英語ですね。講義の録音も聴くことができるのでよかったら聞いてみてください。
https://www.feynmanlectures.caltech.edu/III_17.html

You see, therefore, the relation between the conservation laws and the symmetry of the world. Symmetry with respect to displacements in time implies the conservation of energy; symmetry with respect to position in x, y, or z implies the conservation of that component of momentum. Symmetry with respect to rotations around the x-, y-, and z-axes implies the conservation of the x-, y-, and z-components of angular momentum. Symmetry with respect to reflection implies the conservation of parity. Symmetry with respect to the interchange of two electrons implies the conservation of something we don’t have a name for, and so on. Some of these principles have classical analogs and others do not. There are more conservation laws in quantum mechanics than are useful in classical mechanics—or, at least, than are usually made use of.

また、有名なウイグナーの次の本にも対称性についての議論があります。
E.P.ウィグナー 著 ほか『自然法則と不変性』,ダイヤモンド社,1974. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12609298 (参照 2024-07-19) この本は有名な「自然科学において数学がおかしなほど有効であることについて」という文章を含んでいる本です。是非お読みください。

最後に少し離れるかもしれませんが、前に紹介したヘルマン・ワイルの本も面白いかもしれません。国立国会図書館の個人送信資料で探すときにはワイルではヒットしません。ヘルマン ヴァイルとしなくてはヒットしないので注意してください。
ヘルマン・ヴァイル 著 ほか『シンメトリー : 美と生命の文法』,紀伊国屋書店,1957. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2484767 (参照 2024-07-19)

ゴッホが見た星月夜という本がでています

印象派誕生150周年を記念して、オルセー美術館に所蔵されている ゴッホの有名な絵画Starry Night (Arles, Sept. 1888)(ローヌ川の星月夜)という作品が、絵が描かれた地元アルルに里帰りしているそうです。アルルで展覧会が開かれているようです。

Van Gogh and the Stars – A cosmic journey through 165 works by over 76 artists!

この絵は私たちの家にも複製画が飾ってあって毎日みています。ゴッホが天文学に興味をもって星や月を描き始めた最初の作品だそうです。この絵には北斗七星が描かれていて、その星の光に合わせるように街の灯がローヌ川の川面に映えています。1888年の9月にゴッホが夜スケッチしたという記述が手紙に残っているそうです。こんな星空が本当にみえたのかどうか、興味がありますね。天文ソフトStellariumを使って1888年9月の星空をゴッホがカンバスをたてていた川辺の緯度経度で再現してみようと前から思っていました。ところが同じことを考える人がいるもので、フランスの天文学者の方が、すでにこんな本を出しているのを知りました。

ゴッホが見た星月夜

ゴッホが見た星月夜 天文学者が解き明かす名画に残された謎

ローヌ川の星月夜だけではなくて、ゴッホの描いている星や月の絵を当時の星図をみながら考察しているよい本です。フランスの人なのでアルルの現地にいってゴッホがどこから上の絵を描いたかなど検証しています。

とても面白い本ですので読んでみることをおすすめします。
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/020900537/

Pythonの初心者向け資料と、深層学習入門の資料を紹介します。

Pythonの入門資料でこんなのがありました。


『たった1日で基本が身に付く! Python超入門』という本の著者による本と並行して利用できるスライドです。

また別のツイートで東京大学の鈴木大慈先生の深層学習の資料を知りました。
https://ibis.t.u-tokyo.ac.jp/suzuki/lecture/2023/TohokuUniv/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E5%A4%A7%E5%AD%A62023.pdf
鈴木先生のサイトはこちら。
https://ibis.t.u-tokyo.ac.jp/suzuki/
このサイトからたどれる鈴木先生のスライドなどは勉強になりそうです。
https://speakerdeck.com/taiji_suzuki

LLMがブームになる前の鈴木先生の高校生向け講義も視聴できます。
鈴木大慈「機械学習の数学」ー高校生のための東京大学オープンキャンパス2017 模擬講義
https://youtu.be/vcruS8hYrUg?si=HMsCYLObVWER8Qx2

本格的な講義は以前紹介したこちら。

ちょっと本格的なニューラルネットと機械学習の数学についての講演動画が公開されています。

AIは数学の研究や学習にどう役立つのか?

雑誌数学セミナーの8月号が届きました。今月号の特集は『生成AIとこれからの数学』です。
https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/4.html
多くの人の興味は、生成AIが数学の未解決問題を解けるのか?とか、数学研究を生成AIが助けてくれるのか? あるいは生成AI が数学学習の助けになるのかなどではないでしょうか。今月号の特集ではこうした疑問に答えてくれる記事が満載されているので、 じっくり読んでみようと思います。数学の証明をコンピュータが行うという研究は昔からすすんでいたのですが、生成AIの登場でどのようになっていくのかも楽しみですね。おりしも汎用AI に関する、こんなニュースもながれてきています。


純粋数学にAIが役立つかというテーマを扱う会議 『AI and Pure Mathematics Conference – June 2024』が先月マイアミ大学で開催されました。講演動画が公開されているので、上に紹介した「数学セミナー8月号」に興味を持って、さらに詳しく知りたい人にはお勧めです。再生リストはこちらです。
https://youtube.com/playlist?list=PLZut3oE4FI0xjfJWP389r1Ubs_4tU92rt&si=JigZSJybwxIrWvzf
ChatGPT4oで数学の問題が解けるかを試したという話も含まれている再生リストにある次の講演も、面白そうです。

データサイエンスを学ぶ人向けの確率論の上級者向けテキストや、学部生向きの確率論の講義動画が公開されています。

ツイートをみていたらこんな本があるのを知りました。


この本の著者Professor Roman Vershynin はカリフォルニア大学教授です。この本は確率論の上級者向けの本でこの本に関連した、著者の講義動画をみたり、ノートをダウンロードできるようになっています。データサイエンスを学んでいる人には必要になる知識のようです。以下のリンクから本(ケンブリッジ大学出版会から出ている本のドラフト版)もダウンロードできるので読んでみるとよいでしょう。

https://www.math.uci.edu/~rvershyn/teaching/hdp/hdp.html

もっとやさしい学部向けの確率論の講義も著者が公開中です。
Undergraduate Probability
with Professor Roman Vershynin
https://www.math.uci.edu/~rvershyn/teaching/ugp/ugp.html
第一回はこんなかんじです。https://youtu.be/IE2r-Y7T2zY?si=YUqDfbbTbzIcJUWw

英語ですが、ゆったりとすすむよい講義のようです。よかったらご覧ください。

国立国会図書館デジタルコレクションで読める本の紹介(第16回)

今日は壊れたPCのHDDを新品のHDDに換装してWindowsのImageから復元していました。WindowsのImageをつくったときには、Cドライブとパーティションを切ったDドライブ、EドライブのうちシステムのあるCドライブと大きなEドライブだけを含むイメージしかつくれませんでした(Dドライブをイメージに含めるとエラーになった)。今回、CとEドライブパーティションのみからなるイメージからの復元をやってみました。新品の未フォーマットのディスク(壊れたHDDを外して新品の1Tバイトのディスクをとりつけてあるものです)にHDDを換装したPCをあらかじめ作っておいたシステム修復ディスクで起動し、にWindowsの書き込みましたImageファイルのはいったUSB HDDをつないでおいてそこから復元します。数時間を要旨ましたが無事復元に成功して問題なく起動するPCが復活しました。パーティションはちゃんときられており、CドライブとEドライブが中身ごと完全復活しただけではなく、Dドライブもちゃんとできていました。もっともDドライブの中身はほぼ空ですが。
Dドライブのパーティションを切りなおさなくてはならないかもと心配していましたが杞憂でよかったです。

さて今日は久しぶりに国立国会図書館の個人送信資料で読める本を紹介します。夜が遅いのでコメント抜きですみません。

164) ハラルト・シュテュンプケ, ゲロルフ・シュタイナー 著 ほか『鼻行類 : 新しく発見された哺乳類の構造と生活』,思索社,1987.4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12587921 (参照 2024-07-14)

165) フランシス・クリック [著] ほか『生命この宇宙なるもの』,思索社,1982.9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604328 (参照 2024-07-14)

166) 江崎玲於奈 著『創造の風土』,三笠書房,1987.11. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12240373 (参照 2024-07-14)

167) 井川洋二 編『生物科学の奔流 : 創造的研究への提言』,共立出版,1983.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12603163 (参照 2024-07-14)
168) 井川洋二 編『生物科学の奔流 : 創造的研究への提言』続,共立出版,1988.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12603165 (参照 2024-07-14)

169) 杉田元宜 著『学問と創造のはたらき』,大月書店,1979.4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12590130 (参照 2024-07-14)

170) 杉田元宜 著『工学的発想のすすめ』,大月書店,1977.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12628160 (参照 2024-07-14)

171) 小田中敏男 著『創造性と数学』,森北出版,1978.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12608583 (参照 2024-07-14)

172) W.I.B.ビヴァリッジ 著 ほか『発見と創造 : 科学のすすめ』,培風館,1983.1. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12591537 (参照 2024-07-14)

173) トード・ハッル 著 ほか『数学のアイデア : 甦るガウスの発想』,東京図書,1978.9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12608807 (参照 2024-07-14)

174) G.W.バワーソック 著 ほか『背教者ユリアヌス』,思索社,1986.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12221734 (参照 2024-07-14)

175) 中山正和 著『悟りの構造 : 正法眼蔵の解明』,産業能率大学出版部,1985.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12270092 (参照 2024-07-14)

水と氷の違い、Bohrの原子模型の危機はいかに回避されたか?についての面白い動画を紹介します。

今日は物理関係の動画の紹介です。
まずは物理学者とティータイムの動画です。
水と氷って何が違うの?【教えて物理学】 #007
https://www.youtube.com/live/0XcZ5fxIotc?si=ih_PuR3w22TslJEm

LEOさんの研究の話や、水と氷の話、面白い動画です。対称性の破れとか相転移、Ising模型などの紹介もあります。

もう一本はDr. Jorge S. Diazによる動画です。
This star almost broke Bohr’s atomic model
Bohrの原子模型で説明できない星のスペクトルが見られたという話でそれをどうBohrが克服したかというような話らしいです。いつもながら面白そうな動画です。詳しい文献のリンクもあるので内容をより深く知りたい人は現論文にあたって調べることもできます。
https://youtu.be/BcX1aYrLct4?si=-TjHzhvsiVhmRsmF