internet archiveで本を借りる方法

internet archiveで本を借りる方法を簡単に紹介します。
internet archiveは学術研究教育、研究用途の用途でのコレクションの利用が許されているサイトですのでそれ以外の用途の利用は禁止されています。また、コレクションの内容には不快感を与えるものも含まれていますから、各利用者の属する国の法律(著作権や刑法その他法律など)にのっとった利用が必要なことには留意してください。こちらに詳しく書かれています。https://archive.org/about/terms.php

貸し出しの方法は以下のとおりです。
まずアカウントを作ります。無料です。アカウントを作れば資料のアップロードや図書の借用が可能になります。
https://archive.org/account/signup
アカウントですが、Google accountを使うのも可能です。それがいやなら、emailアドレスを入力、screen nameを好きな名前に決めて、さらにログイン用のパスワードを設定すると、アカウントが作成されます。登録完了メールが登録したアドレス宛てにとどいたらOKです。

あとは本を検索して、Book to Borrowとなっていたら先ほど作ったアカウントでログインして借りることができます。Log in and Borrowボタンを押して、あとはBorrow for 1hrとかいう短時間貸出モードで貸出すれば自由にブラウザ上で読むことができます。1時間貸出はすべての貸し出し可能な本で使えるブラウザで本を読むモードです。他に誰も同じ本を借りなければ自動更新で貸出期間は延長さます。貸出用の本が2冊以上登録されている場合には、14日間の貸し出しモードも表示されていますので、14日間貸出してもらうこともできます。この場合はブラウザで14日間自由に読めるのはもちろんですが、Adobe Digital Editionsの暗号化ファイルをダウンロードしてパソコン上で読むこともできます(煩わしい著作権管理システムをインストールする必要があるので私は途中でインストールをするのがいやになってインストールを止めました)。詳しくは以下のリンクをご覧ください。
https://help.archive.org/help/borrowing-from-the-lending-library/

jpegファイルから不要な余白を連続して次々と切り取る方法を紹介します

2022/4/28の「日替わりリンクなど」で、紹介した画像閲覧・処理ソフトの追加記事です。私がブログに画像をアップロードする前に、画像のEXIF情報を消したり、ファイルサイズを小さくしたりするのするのに使っているソフトの紹介です。私はFastStone Image Viewerというソフト(ホームユーザーは無料使用可能なソフトウエアです)を使っています。こちらからダウンロード可能ですので使ってみてください。https://www.faststone.org/FSViewerDetail.htm
画像名を一括で変更したり、画像の型式を変換する(例えばtiffファイルをjpegファイルに変換するなど)などもできます。スキャナでスキャンした画像から、余分な周辺部分を切り抜くのも簡単です。日本語はサポートされていないので英語のままで使いましょう。日本語化パッチというのもあるみたいですが、どんな人が作っているのかよくわからないので、日本語化はおすすめしません。
このソフトでどうやってjpeg画像から不要な余白を切り取るかを紹介しておきます。

スキャンしたjpegファイル(他の画像形式でも出来ます)から余分な余白を切り取る方法。
一括でやる方法があるのかもしれませんが、今回は手動でやる方法を試してみたので報告します。自炊するためにスキャンした本のページの画像から、余白部分など不要な部分を連続で切り取るのがとても簡単にできますのでお試しください。

①FastStoneImage viewerで処理したい複数の画像ファイルのあるフォルダを開きます(フォルダを作って処理したいjpeg画像をまとめておくのが便利です)。

②画像viewerで画像を一つ開いて、画像上で右クリック。
EditのプルダウンメニューからCrop Boardを開きます。下の写真のようになります。
Crop Boardをクリックすると下の写真のような画面に替わります。
中央真下にある#マークをクリックすると、マウスでcropしたい範囲を選択できるようになります。マウスで余分な部分を切り取って残しておきたい範囲を選択します(上の写真のグリッド線)。この時、下にあるスライダでjpeg画質を設定できるので100%とかに設定しておきます。右下のCrop to Clipboardボタンの上にあるLossless Crop to Fileボタン(あるいはCrop to Fileボタンになっているかもしれません)でファイル名を指定して保存場所を指定した上でOKを押して保存します。下の写真のような画面で保存先、保存ファイル名、保存ファイル形式を選んで保存ボタンを押します。

保存が終わると、自動的に次の画像が表示されています。cropの範囲は前の時と同じなので、一連のスキャン画像で同じ範囲を切り取るのは簡単です。前と同様にLossless Crop to Fileボタン(またはCrop to Fileボタン)を押してOKを押すと、前に選択した範囲と同じ範囲で、クロップされた画像が保存されます。こうして保存すると次の画像に替わるのでどんどん同じ範囲をクロップしていくことができます。こうして余分な領域を除いた画像ファイル群が簡単に作れますので、お試しください。スキャンした画像から自炊pdfファイルを作ったりするのもwindowsの標準機能で簡単です。Crop Boardで次の画像を選ぶには、矢印キーを押しても可能です。

「ビーカーくんがゆく! 工場・博物館・実験施設」という本を紹介します

図書館で借りてきた本でおもしろかった本を紹介します。
「ビーカーくんがゆく! 工場・博物館・実験施設: そのこだわりにはワケがある! 実験器具たちのふるさと探訪」という本です。
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/kids/67578/
これは大学生や大学院生も読んで面白い本だと思います。もともとは雑誌「子供の科学」に連載されていた記事で、それを大幅に改訂、追加を行い、連載記事よりずっと面白い本になったというようなことが始めのほうに書いてあります。小学生が読めるようにマンガで紹介するスタイルですが、内容は濃いです。最初の方では、リトマス試験紙の製造法やビーカーの製造法、pHメーターの作動原理などがわかりやすく紹介されています。ぐいぐいと引き込まれてスーパーカミオカンデやニュートリノにまで及ぶ実験装置の理解が進むという本です。紙の本とKindle版その他の電子書籍版がでているようです。出版社のサイトでの試し読みや、Kindle版の試し読みができるのでご覧ください。買おうと思うこと請け合いの本です。

ライブカメラを楽しみましょう!

今日の福岡はとてもいい天気でした。日曜日なのでベニス(ベネチア)の風景のライブカメラ映像を楽しみたいと思います。

https://youtu.be/HpZAez2oYsA

https://youtu.be/HpZAez2oYsA
ものすごい高解像度の配信もありますので帯域が許す方は超高解像度で楽しめます。
このYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/ILoveYouVenice
にはほかにもいろんなライブカメラがあって、
Live Webcam around the World – Cámaras en vivo – Rolling Cam World
では世界各地の今のライブカメラ映像が次々に切り替わって面白いです。

https://youtu.be/8KGXSjtS5pk

https://youtu.be/8KGXSjtS5pk
ページの下には各ライブカメラ単独のリンクアドレスものっていて、たとえば東京とかもみられます。

https://youtu.be/QOjmvL3e7Lc

Mathematica入門動画と機械学習入門本を紹介します。

今日はこのブログでもたびたび触れているMathematicaについてです。私が九大に就職したころは生物数学演習の科目ではMathematicaが教えられていました。そのころから比べるとこの製品も格段の進歩をとげています。簡単な入門はYouTubeのWolfram Japanのチャンネル(再生リストはこちら。https://www.youtube.com/c/WolframJapan/playlists
にMathematica First Stepという日本語の動画がありますのでこれで入門するのがいいと思います。第一回目はこんな動画です。

https://youtu.be/R35pBPWenYU
また、
機械学習の入門本も無料公開されているので、英語ですが機械学習についてざっと理解するには、この本を学ぶのもよいかもしれません。ちょっとみただけですが、なかなかよさそうです。

https://www.wolfram.com/language/introduction-machine-learning/

プログラミング言語Juliaは科学技術計算に使い物にならない?

今日は忙しかったので簡単な記事で失礼します。Juliaというプログラム言語は今人気急上昇中のようです。このJuliaに否定的な意見がでているようです。https://yuri.is/not-julia/ 
Juliaのコアやパッケージがエラーだらけであるので使い物にならない。もうJuliaを使うのをやめたというような内容です。RとかPythonとかに較べると新しいプログラム言語ですので、これからの改善が望まれるわけですが、筆者によるとちゃんと改善する体制には今はなっていないとのことです。これから反論も出てくると思いますので注目したいと思います。
では世界中で十分使い込まれているpythonやRがいいのでは、ということになりますね。Pythonといえば、さっきYouTubeでJuliaに否定的な動画をみていたら右のほうにPython入門動画がでてきました。これは面白そうですので紹介しておきます。

こちらが再生リストです。https://www.youtube.com/c/kinocode/playlists
紀貫之の子孫という方の動画でどれもずいぶんわかりやすそうです。

VSCodeの入門書が期間限定無料公開中です。動画なども紹介します。

プログラムを書くときに利用するエディタとよばれるソフトウエアで最も人気のあるのはVS studio code (VSCode)というマイクロソフトの公開している無料のエディタです。atomとかviとかいろいろプログラム作成用のエディタがあるのですが、VSCodeは今やプログラマーの二人に一人が使っているエディタなのだそうです。機能を拡張できるプラグイン(拡張機能)もPython用、Julia用、Java script用、Wolfram言語用(Mathematicaの使っているプログラム言語です)などなど、ほとんどあらゆるプログラム言語に対応したものがあります。拡張機能を入れておくと、プログラムに誤りがあったとき教えてくれたり、書くときに自動補完機能が使えたりと、大変便利です。私もUdemyの無料講座でVSCodeを学びましたが、近ごろは小学生でも、このエディタでプログラムを書いている子が増えているそうです。プログラム教育が始まったおかげですね。
Udemyの無料講座は今はもうないのですが、私がみたUdemyの講座は今、1220円でセールをやっています。
無料の講座がいいという方は、同じ講師のYouTube動画があるのでご覧ください。

https://youtu.be/e3DmHK2PDGA

再生リストは以下の場所にあります。9本の動画があります。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLh6V6_7fbbo8GHGIT2YUN56OcwEpz5I5n

本で勉強したい人には、ちょうど今、3日間限定で「Visual Studio Code完全入門」というインプレスから発行されている入門書が無料で公開されています。見るのに登録とかは不要で読めますので、是非ご覧ください。5月19日から5月21日土曜日の午後11時59分までの期間限定公開とのことです。
https://book.impress.co.jp/items/vs-code

漱石はタイムマシーンを読んだか?

先日は漱石の弟子、寺田寅彦のことを書きました。寅彦は漱石が熊本で高等学校の先生をしていたときの生徒でした。物理学が大変革を経験していた時代に生きた漱石はロンドン滞在時代に化学者の池田菊苗が同じ下宿に滞在したこともあり、科学への興味をかきたてられて、文学を科学として考えるプランをたてたようです。その成果が、帰国後東京大学で行った講義をもとに刊行された「文学論」です。漱石はあのラフカディオ・ハーンの後任だったため、独創的な科学としての文学をねらう講義は大変不評であったと伝えられています。その後も漱石の科学への興味は続いて、原子論なども寅彦と議論していたようです。この辺のところは中公新書の「漱石が見た物理学 首縊りの力学から相対性理論まで」)小山慶太著(古本で入手できます)に詳しく書いてあるのでおすすめします。

このように科学に強い漱石でしたが、漱石の「夢十夜」(1908年)を読むと、まるで映画のタイムマシンでみたような描写に驚かされます。
第一夜を引用してみます。

第一夜

こんな夢を見た。
腕組をして枕元にすわっていると、仰向あおむきに寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭りんかくやわらかな瓜実うりざねがおをその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、くちびるの色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然はっきり云った。自分もたしかにこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上からのぞき込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼をけた。大きなうるおいのある眼で、長いまつげに包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒なひとみの奥に、自分の姿があざやかに浮かんでいる。
自分はとおるほど深く見えるこの黒眼の色沢つやを眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕のそばへ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうに※(「目+爭」、第3水準1-88-85)みはったまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。
じゃ、わたしの顔が見えるかいと一心いっしんに聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。
しばらくして、女がまたこう云った。
「死んだら、めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片かけ墓標はかじるしに置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。またいに来ますから」
自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
自分は黙って首肯うなずいた。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓のそばに坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
自分はただ待っていると答えた。すると、黒いひとみのなかにあざやかに見えた自分の姿が、ぼうっとくずれて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長いまつげの間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。
自分はそれから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きななめらかなふちするどい貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光が差してきらきらした。湿しめった土のにおいもした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光が差した。
それから星の破片かけの落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちているに、かどが取れてなめらかになったんだろうと思った。げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。
自分はこけの上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石はかいしを眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定かんじょうした。
しばらくするとまた唐紅からくれない天道てんとうがのそりとのぼって来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。
自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも百年がまだ来ない。しまいには、こけえた丸い石を眺めて、自分は女にだまされたのではなかろうかと思い出した。
すると石の下からはすに自分の方へ向いて青いくきが伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりとゆらくきいただきに、心持首をかたぶけていた細長い一輪のつぼみが、ふっくらとはなびらを開いた。真白な百合ゆりが鼻の先で骨にこたえるほど匂った。そこへはるかの上から、ぽたりとつゆが落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露のしたたる、白い花弁はなびら接吻せっぷんした。自分が百合から顔を離す拍子ひょうしに思わず、遠い空を見たら、あかつきの星がたった一つまたたいていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。

いかがでしょうか。タイムマシンを思わせますね。ウエルズがタイムマシンを書いたのは1895年ですので、漱石が英国滞在中、あるいは帰国後にタイムマシンを読んでいたかもしれませんね。

漱石の蔵書にはウエルズのタイムマシンは無いみたいです。東京大学図書館にはあったはずですので寅彦が紹介していたかもと思っています。寅彦の随筆にはでてきますので。

専門家向けの感じの日本語OCR処理ソフトウエアが公開されています

国立国会図書館、OCR処理プログラムと学習用データセットを公開という記事をみました。 これはGithubに公開されているプログラムで、たとえば古い日本語の本の画像をよみこんで、OCR処理をしてテキストファイルを出力するといった使い方ができるソフトウエアです。プログラムのインストールと使い方はhttps://github.com/ndl-lab/ndlocr_cli
で公開されています。Ubuntuにインストールしてdockerを利用して使うもので、GPUも使うのでそれなりのスペックのLinuxパソコンが必要らしいです。ただもっと簡単に、Google Colaboratoryで試すこともできるようで、まずこちらで試してみるのがよさそうです。https://zenn.dev/nakamura196/articles/a8227f4524570c

寺田寅彦随筆集より―「ジャーナリズム雑感」を紹介します。

寺田寅彦は夏目漱石の弟子だった自然科学者です。随筆集はとても有名で今も読まれていますし、漱石の作品の中にある光圧の実験や首くくりの力学などは寅彦からの情報によるのだそうです。寅彦は優秀な物理学者で、X線回折の実験は英国のブラッグら(ラウエと書いていたのは間違いでした。すみません。5/17日追記)の実験に先んじており、彼の論文のほうがノーベル賞をとったブラッグの発見より時間的には先にでていたが、日本から遠く離れたヨーロッパには論文が届くのが遅れたのだそうです。ノーベル賞を授賞してもおかしくない科学者で、金平糖の形のできかたとか、今日の複雑系物理学のさきがけの実験もやっていた人物です。科学図書館には彼の未完の名著「物理学序説」がおいてあります。http://www.cam.hi-ho.ne.jp/munehiro/science/scilib.html#terada
私が中学生か高校生の時によんだ次の随筆は今も印象にのこっているので紹介しておきます。ジャーナリズム雑感という随筆です。青空文庫に公開されているので読んでみてください。https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2492_10275.html
トップページはこちらです。https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2492.html

新聞報道は、定型に従った報道が多く、殺人事件があったらその定型に従って報道します。「事実の類型化」と寅彦は呼んでいます。これをやるので、一つ一つの事件の差異とか個性というものは顧みられず、結局報道する側も、受け取る側も思考停止して、事件の奥に潜む真実は顧みられないそうです。今でもテレビのニュースをみていると、昭和9年(1934年)の随筆に書いてあるのとそっくりの、事実の類型化という、型(かた)にそった報道があふれているのは残念なことです。今の報道でも、犯人が語る言葉としてよくでてくる、「誰でもよかった」とかいう言葉の報道はその典型かと思われます。犯罪の報道の定型にあわせて事件を報道されても、今後の犯罪抑制には、有害な効果のほうが多いのではと感じています。昔は、三原山で心中した二人が最後に語り会った会話を、そばで記者が速記したように報道する新聞もあったのだそうです。よく似たことは今でも報道にあるようで、メディアリテラシーをつけるにはうってつけの随筆だと思い、紹介することにしました。