国立国会図書館デジタルコレクションで読める本の紹介(第5回)渡辺慧・柴谷篤弘・堀淳一の教科書やエッセイも読めます。

国立国会図書館デジタルコレクションの5月初日のアップグレードで、昔の本を探すときには古本を探すよりも、まず第一に個人送信資料で読めるかどうかをチェックすべきという時代になりました。無料で多くの本が参照できるのは本当にありがたいことです。たとえば以前紹介した(文末に英語版について書いた記事を再録しました)渡辺慧さんの『知識と推測』上下二冊は、今Amazonで中古本を買うとすると合計24494円しますが、デジタルコレクションでは以下のアドレスで無料で読むことができます。
54) 渡辺慧 著 ほか『知識と推測 : 科学的認識論』上,東京図書,1987.9.. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12628984
55) 渡辺慧 著 ほか『知識と推測 : 科学的認識論』下,東京図書,1987.9.. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12628985

渡辺慧先生は、世界的に有名な日本の物理学者でハワイ大学教授でしたがド・ブロイのところに留学しておられたこともあります。Wikipediaのリンクをあげておきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E8%BE%BA%E6%85%A7

渡辺先生の本もいろいろ読めますが、先日紹介した『時間と人間』のほか、以下の本がわかりやすいと思います。
56) 渡辺慧 著『時間の歴史 : 物理学を貫くもの』,東京図書,1987.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12621964
57) 渡辺慧 著『生命と自由』,岩波書店,1980.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604371

昨日は最後に今西進化論と正統派進化論の本を紹介しました。次の本は岡田節人先生がとても喜んで読んでおられた本です。獲得形質の遺伝を証明したという実験で有名なカンメラーという科学者のお話です。アーサー・ケストラーの有名な本の一つです。
58) アーサー・ケストラー 著 ほか『サンバガエルの謎 : 獲得形質は遺伝するか』,サイマル出版会,1984.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12224136

柴谷篤弘さんの本で紹介していなかったもので読みやすそうなものを紹介しておきます。他にも『反科学論』をはじめとするいろんな本が読めるので探してみてください。
59) 柴谷篤弘, 藤岡喜愛 著『分子から精神へ : 紋様形成と酔能』,朝日出版社,1980.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604762
60) 柴谷篤弘 著『発生現象の細胞社会学 : 紋様形式の理論』,講談社,1979.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604931
これ(60)は1979年当時までの理論生物学のよくまとまった教科書です。

最後に、読みやすい科学関連の読み物と物理数学と確率論の教科書を紹介します。
61)  G.ステント 著 ほか『<真理>と悟り : 科学の形而上学と東洋哲学』,朝日出版社,1981.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12590154
62) 砂川重信 著『新物理学対話 : 現代物理学入門』,河出書房新社,1970. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12609060
63) 白上謙一 著『生物学と方法 : 発生細胞学とはなにか』,河出書房新社,1972. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604905
64) 堀淳一 著『物理数学』第1,共立出版,1969. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12621968
65) 堀淳一 著『物理数学』第2,共立出版,1969. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12621967
堀先生は地図の愛好家で有名で数々の地図についての本もデジタルコレクションに入っています。この物理数学の本は、線形代数的扱いを基本に搖動散逸定理や量子力学に使われる物理数学を解説したもので、堀先生のランジュバン方程式の本の理解にも役立つと思われます。
確率論の教科書としては、超有名なフェラーの本も読めるようになっています。
66) W.フェラー 著 ほか『確率論とその応用』[第1] 上,紀伊国屋書店,1960. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1378045


以下は以前の固定ページの毎日更新記事からの再録です。
2022/7/8
今日はInternet Archiveから本を一冊を紹介します。 Internet Archiveにアカウントをもっている人は簡単に一時間貸出で読むことができます(アカウントは無料で取得できます)。ただ貸出は普通の図書館と同じで、一冊の本を複数の人が同時に借りることはできません。ですから、貸出できないこともあると思います。そういう時は時間をおいてから貸出するとよいでしょう。 以下は私の貸し出しの例を紹介します。手元に有名な物理学者だった渡辺慧先生の「知識と推測―科学的認識論―(村上陽一郎、丹治信春 訳で全4巻)」の第一巻があります。残りの本を買おうか買うまいかと迷っているうちに、もう古書でしか入手できなくなっていました。私の持っている本は、四分冊で一冊1500円でしたが、古書は上下二巻の新装版で一冊11000円、合計22000円の値段がついています。渡辺先生はハワイ大学教授だったのでこの翻訳本の原書は 英語で出版されています。Knowing and guessing; a quantitative study of inference and informationという本です。Internet Archiveで検索してみるとBooks to Borrowになっていて、ネットで借りることができるのがわかりました。 https://archive.org/details/knowingguessingq0000wata/page/n9/mode/2up
上は貸出して本を開いたところです。全画面表示でみています。これなら無料で読めるので、内容を知らずにやみくもに日本語訳の古本を注文する前に一度読んでみることができます。さっそく借りて残りの部分をみてみましたが、結構難しい本だとわかりました。目次はこんな感じです。

この本は情報理論と推測、量子論理などをあつかっています。翻訳本は大学図書館などにあるかもしれませんので、英語の本をみて読みたいかたは、借りてみるとよいでしょう。明日はもう少しやさしい本を紹介します。