国立国会図書館の個人送信資料にはポーリングの本もあります…‥
ポーリング(Linus Pauling)はノーベル化学賞と平和賞をダブル受賞したアメリカの偉大な科学者です。2つのノーベル賞を授賞した科学者は何人かいますが、それぞれの賞を単独で2つ受賞したのはポーリングだけだそうです。彼は量子力学を化学結合の解明に初めて応用した化学者の一人で、化学結合論のパイオニアです。1954年その業績やその他の業績に対してノーベル化学賞を授与されています。その他の業績にはタンパク質の構造の解明(αヘリックスの発見)や抗体と抗原の結合がカギと鍵穴の関係にあるという説の提唱、分子病の概念(鎌形赤血球貧血症がヘモグロビンのアミノ酸配列の突然変異で起こることの発見から、一般化した概念)の提唱なども含まれます。さらに東西の核兵器の軍拡に反対した功績で1962年のノーベル平和賞も受賞しています。以前の記事で彼の実験ノートを紹介したことがあります。奥さんとの愛情を示す奥さんによるほほえましい書き込みI love youが残っている実験ノートです。晩年はビタミンCが風邪や癌の予防や治療に効くという本を書いてひんしゅくをかったり、常温核融合のニュースがでたときはその理論を論文にしたりしていたのも思い出しました。ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を考えていた時、リン酸基に配位するイオンの大きさを知りたくてポーリングの本をもとめて、ケンブリッジ中の本屋を何軒も探し回った話も有名です。探し当てた本はPauling のThe Nature of the Chemical Bond 2nd editionという本です。これは初版が1939年に発行され量子物理学で化学結合を説明して瞬く間に古典となった本で研究者の必携書であるばかりか、多くの大学、大学院で教科書として使われた本です。クリックが買ったこの本をワトソンがいつも読んでいるので、クリスマスプレゼントにクリックがワトソンに一冊あげたという話も「二重らせん」に書いてありました。ワトソンとクリックは、DNAの立体構造もポーリングが先に解いてしまうのではないかとびくびくしていたという話もこの本で読んだことがあります。
PaulingについてはPauling onlineというサイトがあって、http://scarc.library.oregonstate.edu/coll/pauling/index.html
彼の実験ノートや写真、Pauling本人の講演ビデオや関連ビデオや資料が網羅的に集められていますので是非訪れてみてください。面白いことうけあいです。
http://scarc.library.oregonstate.edu/digitalresources/pauling/
http://scarc.library.oregonstate.edu/coll/pauling/bond/index.html
平和運動についてもまとめてあって、現在おきている、第三次世界大戦が勃発するかもしれないような行動をとっている愚かな国々の行動を止めさせるためのヒントにもなると思います。http://scarc.library.oregonstate.edu/coll/pauling/peace/index.html
個人送信資料にはポーリングの翻訳書がいくつもありますのでご覧ください。
私が高校、大学生の時に読んでいたポーリングの化学の教科書や、高校生の時に読んでいた化学の絵本「分子の造型―やさしい化学結合論」もみつけました。
ワトソンとクリックが読んでいた化学結合論第二版はこちら。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2440315
Paulingの大学用教科書College chemistryの翻訳書はこちら。われらが科学 化学Iと化学IIという二分冊で翻訳されたものです。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2421549
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2421550
分子の造型という絵本はこちらです。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1382524