ChatGPTに自然言語で文献検索を依頼するときの注意点(その2)

ChatGPTなど生成AIでの文献検索を行う際の注意点をChatGPTにまとめてもらった文章をところどころ読みやすく改訂したものを以下にペーストしておきます。


Europe PMC、RSS、PubMed、Textpresso、ChatGPT、Deep Research、MCPの使い分け

1.文献検索は「検索式を作る作業」から変わりつつある

従来の生命科学の文献検索では、PubMed、Europe PMC、Web of Scienceなどに対して、研究者自身がキーワード、MeSH、Boolean演算子を組み合わせた検索式を作ることが基本でした。
例えば、C. elegans と chondroitinの文献を検索する場合、

(“Caenorhabditis elegans”[MeSH Terms]
OR “Caenorhabditis elegans”[Title/Abstract]
OR “C. elegans”[Title/Abstract])
AND
(“chondroitin”[ Supplementary Concept]
OR “chondroitin”[All Fields]
OR “chondroitin”[MeSH Terms]
OR “chondroitins”[All Fields]
OR “chondroitine”[All Fields])
のような検索式を組み立てます。これは現在でも非常に重要で、2026年版MeSHについては以下のリンクをご覧ください。
(メッシュデータベース)
しかしChatGPTのようなLLMが登場したことで、研究者が最初からこのような式を書く必要はなくなりつつあります。
例えば、

  1. C. elegansを用いたchondroitinの研究を探してください。同義語(略語を含む)も考慮し、PubMedとEurope PMCを検索してください。

と自然言語で依頼し、AIに検索式を組み立てさせることができます。ここで重要なのは、検索式が不要になったのではなく、検索式を人間だけで作る必要がなくなったということです。AIが裏で検索語や検索式を作ることになるため、その内容を確認できるようにしておく配慮が、研究の再現性の観点から重要です。

2.文献検索の目的別の手法一覧

文献検索を行う目的によって、PubMed、Europe PMC、ChatGPT、Textpressoなどからどれを選べば良いかを一覧しておきます。

目的 適した方法
ある研究分野の概要を知る ChatGPT Search / Deep Research
特定テーマの論文を漏れを少なく検索する PubMed / Europe PMC
検索を再現可能にする PubMed / Europe PMC + 検索式保存
新しい論文を継続監視する Europe PMC RSS / PubMed Saved Search
論文本文中の特定記述を探す Europe PMC全文検索 / Textpresso
C. elegansの本文中の遺伝子・表現型・相互作用を探す Textpresso
複数DBを横断して遺伝子・疾患・化合物などを調べる TogoMCPなど
文献群を読ませて比較・統合する Deep Research / Work
systematic reviewに近い検索 PubMed等の正式な検索式+AI補助

上の表を目安に、検索の目的に応じて用いる手法、文献データベースを使い分けるとよいでしょう

3.PubMed ― 再現性のある文献検索の中心

PubMedは現在4,000万件以上の生命科学・医学文献のcitationを収録しています。全文データベースではなく、主に書誌情報、abstract、MeSHなどを検索するシステムです。(NCBI)
PubMedの大きな特徴はAutomatic Term Mapping(ATM)を採用している点です。例えば単純な自然言語に近い検索語を入力しても、PubMed側がMeSH、同義語、表記揺れなどをある程度自動で解釈してくれます。さらにAdvanced Searchの Search Details を見ると、入力した検索がPubMed内部でどのような検索式に翻訳されたか確認できます。(PubMed)

したがって現在では、C. elegans chondroitin proteoglycanのような簡単なPubMed検索から始め た場合、重要な調査ではSearch Detailsを確認し、”Caenorhabditis elegans”[MeSH]などが意図通り使われているかを見るのが大事です。PubMedはこの意味で、探索にも使えるが、最終的には検索式を明示して再現可能にできるデータベースという位置づけのサービスと考えるとよいでしょう。

4.Europe PMC ― PubMedよりも「全文」と「監視」に強い

Europe PMCはPubMedと大きく重なるが、完全に同じものではありません。Europe PMCにはPubMed/MEDLINEのabstractに加え、PubMed Centralの全文、preprint、Agricola由来文献、書籍などが含まれます。Europe PMC自身の説明でも、PubMedとPMCの内容を取り込みながら、それ以外のコンテンツも収録していると記しています。(Europe PMC)

さらに大きな違いは全文検索です。PubMedは基本的にcitation metadata、abstract、MeSHなどを対象にするのに対し、Europe PMCでは利用可能な論文について全文が検索できます。TITLE:、ABSTRACT:、TITLE_ABS: だけでなく、Introduction、Methods、Results、Discussionなど特定sectionを対象にした検索も可能である。(Europe PMC) したがって、
「この遺伝子について論文タイトルやabstractには書かれていないが、Resultsに記述されていないか」という検索をしたい場合などではEurope PMCが非常に有用になります。またREST APIも提供されており、検索結果をXMLやJSONとして取得できる。(Europe PMC)

5.Europe PMC RSS ― 「検索」ではなく「定期監視」の道具

昨日の記事で紹介したRSSは、保存した検索条件を定期的に再実行して、新しく追加された文献を知らせる仕組みです。Europe PMCではキーワード、著者、ジャーナルなど任意の検索をRSS feed化でき、新しい該当論文が追加された時に追跡できる。(Europe PMC)
例えば、”Caenorhabditis elegans” AND glycosylationを昨日の記事で紹介した方法でをRSSにすれば、新しい関連文献を毎日チェックできます。ただしRSSを使う場合、検索式が悪ければRSSで得られる結果も悪いという点に留意する必要があります。
例えば、elegansだけなら感度は高いがノイズも増て無関係な文献もたくさんヒットしてしまいます。検索語を追加して、”Caenorhabditis elegans” AND  (“glycosaminoglycan” OR “chondroitin sulfate”)とするとヒットする論文はずいぶん絞られます。RSSは、検索式を完成させた後、その検索式を自動監視装置にする方法であると理解するのがよいでしょう。またRSS feed自体を「過去文献を網羅する検索結果」として使うべきではないのは昨日記したとおりです。過去の文献探索はEurope PMC本体やAPIで行い、RSSは今後追加されるものの監視に使う方が適しています。

明日はtextpressoやMCPについて触れて完結する予定です。