昨日の記事の後半部分(つづき)です。ChatGPTの回答をワードのファイルにして保存したり、pdfにして保存する方法の紹介の後半です。昨日はChatGPTやGeminiなどの回答(markdown形式)をVS Codeにペーストしてmdファイルとして保存→Pandocという文書コンバーターをコマンドラインで使ってMS Wordの文書に変換したり、MS Wordからpdfに出力する方法を解説しました。今日は昨日の記事の続きの応用編です。ChatGPTの回答を少し修正したものです。明日はトラブルシューティングとPandocとMarkItDownとの違いをまとめます。
・Pandoc = 文書形式どうしを構造的に変換する汎用コンバーター、
・MarkItDown = PDFやOfficeファイルなどから、LLMが読みやすいMarkdownを取り出すためのマイクロソフトが無料で公開しているツールです。日本語の簡単な比較は次の記事などを参照してください。
技術調査 – markitdown (に公開)https://zenn.dev/suwash/articles/markitdown_20260410
15. LibreOffice Writer形式に変換する
Microsoft WordではなくLibreOffice Writerで使いたい場合は、ODT形式に変換できます。
pandoc report.md -o report.odt
すると、
report.odt
が作成されます。
LibreOffice Writerで開いて編集できます。
16. HTMLファイルに変換する
ブラウザで見られるHTMLに変換することもできます。
pandoc report.md -s -o report.html
-s はstandalone、つまり単独で開ける完全なHTML文書を作成する指定です。Pandoc公式の例でもこの形式が使われています。 (Pandoc)
作成した
report.html
をChromeやFirefoxで開くと、整形された文書として表示できます。
ブラウザの
「印刷」→「PDFに保存」
を利用することもできます。
17. Pandocから直接PDFを作ることもできる
Pandocでは、
pandoc report.md -o report.pdf
という変換も可能です。
ただし、PDFを直接作成するときには通常LaTeXなどのPDF作成エンジンが別途必要になります。Pandocの標準PDF出力はLaTeXを利用します。 (Pandoc)
そのため、初心者にはまず、
Markdown
↓
Word
↓
PDF
をおすすめします。
18. 同じMarkdownから複数の形式を作る
一つの
report.md
から、
pandoc report.md -o report.docx
pandoc report.md -o report.odt
pandoc report.md -s -o report.html
とすれば、
report.md
report.docx
report.odt
report.html
を作成できます。
つまりMarkdownを「原本」として残し、用途によって出力形式を変えられます。
19. おすすめのフォルダ構成
文章だけの場合は、
ChatGPT_manual/
├── report.md
├── report.docx
└── report.pdf
程度で十分です。
画像を含む文書では、
ChatGPT_manual/
├── report.md
├── images/
│ ├── figure1.png
│ └── figure2.png
├── report.docx
└── report.pdf
としておくと管理しやすくなります。
Markdownには例えば、

と書きます。
PandocでWordへ変換するときも、このフォルダ構造を保ったまま変換します。
20. Wordの書式を統一したい場合
通常、
pandoc report.md -o report.docx
でもWord文書を作れますが、フォント、見出し、ページ余白などを研究室や授業で統一したい場合には、Pandocの reference-doc 機能が便利です。
まずWordで、
reference.docx
という文書を作成し、
- 標準本文
- 見出し1
- 見出し2
- 見出し3
- フォント
- ページ余白
- ヘッダー
- フッター
などを設定しておきます。
その後、
pandoc report.md --reference-doc=reference.docx -o report.docx
とします。
Pandocは参照DOCXを利用してWord出力のスタイルを変更できます。 (Pandoc)
研究室のマニュアルや講義資料を何度も作る場合には、この方法が非常に便利です。
21. Word文書をMarkdownへ戻す
逆方向の変換もできます。
例えば、
old_manual.docx
というWord文書をMarkdownにする場合、
pandoc old_manual.docx -o old_manual.md
とします。
これによって古いWord文書をMarkdown化し、VS Codeで編集したり、ChatGPTに渡して再編集したりできます。
ただし、Word独自の複雑なレイアウトや図形などはMarkdownでは完全には表現できません。
したがって、
Markdown → Word
は非常に扱いやすい一方、
Word → Markdown
では一部の書式が失われる可能性があります。
22. よく使うPandocコマンド一覧
Markdown → Word
pandoc report.md -o report.docx
Markdown → LibreOffice Writer
pandoc report.md -o report.odt
Markdown → HTML
pandoc report.md -s -o report.html
Markdown → PDF
pandoc report.md -o report.pdf
※ PDFエンジンが別途必要です。
Word → Markdown
pandoc report.docx -o report.md
Word用テンプレートを使用
pandoc report.md --reference-doc=reference.docx -o report.docx
23. よく使うVS Codeの操作
| 操作 | 方法 |
|---|---|
| 作業フォルダを開く | ファイル → フォルダーを開く |
| 別のフォルダへ変更 | ファイル → フォルダーを開く |
| 新しいMarkdownファイル | エクスプローラー → 新しいファイル → 名前.md |
| 保存 | Ctrl + S |
| Markdownプレビュー | Ctrl + Shift + V |
| 横にプレビュー | Ctrl + K のあと V |
| ターミナルを開く | ターミナル → 新しいターミナル |
| ターミナル表示/非表示 | Ctrl + ` |
Markdown previewや統合ターミナルはVS Codeの標準機能なので、基本的な作業には追加のMarkdown拡張機能は必要ありません。 (Visual Studio Code)
24. 「ファイルが見つかりません」と表示される場合
例えば、
pandoc report.md -o report.docx
を実行して、
report.md: No such file or directory
のようなエラーが出た場合、最も多い原因はターミナルが別のフォルダにいることです。
Windows PowerShellなら、
Get-Location
dir
を実行します。
Ubuntuなら、
pwd
ls
を実行します。
目的の
report.md
が一覧に表示されることを確認します。
表示されなければ、
「ファイル」→「フォルダーを開く」
から report.md が入っているフォルダを開き直し、
「ターミナル」→「新しいターミナル」
を実行するのが簡単です。
25. pandoc が見つからない場合
例えばWindowsで、
pandoc : 用語 'pandoc' は認識されません
と表示された場合は、
- Pandocがインストールされているか確認する
- VS Codeを完全に終了する
- VS Codeを再起動する
- 新しいターミナルを開く
- 次を実行する
pandoc --version
それでも認識されない場合には、PandocのPATH設定を確認する必要があります。
26. ファイル名についての注意
Pandocは日本語ファイル名も扱えますが、慣れるまでは、
実験結果 2026年8月.md
よりも、
experiment_2026_08.md
のような、英数字とアンダースコア _ を中心としたファイル名をおすすめします。
空白を含むファイル名の場合は、
pandoc "experiment report.md" -o "experiment report.docx"
のように引用符で囲む必要があります。
27. 最初に覚えるのはこの操作だけでよい
初めて使う場合には、すべての機能を覚える必要はありません。
まず次の流れだけ覚えれば十分です。
① 作業フォルダを作る
Documents
└── Markdown
└── report01
② VS Codeで開く
ファイル → フォルダーを開く → report01
③ Markdownファイルを作る
report.md
④ ChatGPTの回答を貼り付ける
Ctrl + V
⑤ 保存する
Ctrl + S
⑥ プレビューする
Ctrl + Shift + V
⑦ ターミナルを開く
ターミナル → 新しいターミナル
⑧ Wordへ変換する
pandoc report.md -o report.docx
⑨ Wordで開く
必要に応じて書式を調整します。
⑩ PDFが必要ならWordからPDF保存
これだけで、
ChatGPT
↓
Markdown
↓
VS Code
↓
Pandoc
↓
Word
↓
PDF
という一連の作業ができます。
28. この方法の利点
Word文書だけを保存する方法に比べて、Markdownを原本として残す方法には次の利点があります。
- ChatGPTなどのLLMとの文章のやり取りが簡単
- VS Codeで高速に検索できる
- Word、HTML、ODTなど複数形式へ変換できる
- 元の文章が単純なテキストなので長期保存に向く
- 過去の文章を再利用しやすい
- 文書の構造を保ったまま修正しやすい
- Wordの書式変更に原稿自体が影響されない
したがって、
Markdown = 原稿・保存用
Word = 最終調整・配布用
PDF = 完成版・閲覧用
と役割を分けると分かりやすくなります。
29. 基本方針
日常的な利用では、次の方法を推奨します。
┌── Word (.docx)
│
ChatGPT → Markdown (.md)
│
├── LibreOffice (.odt)
│
├── HTML (.html)
│
└── PDF
Markdownファイルを原本としてVS Codeで管理し、Pandocを「形式変換器」として利用する、という考え方です。
この基本さえ理解しておけば、ChatGPTで作成した文章を研究資料、講義資料、学生向けマニュアル、README、報告書などへ効率よく展開できます。
この版は、VS Codeをすでに日本語化している人が最初の1回を自力で完了できることを重視して、フォルダ・ターミナル・エラー対処まで含めました。特に「VS Codeで開いているフォルダ=Pandocを実行する作業場所」という点を理解してもらうと、学生向けマニュアルとしてもかなりトラブルが減るはずです。