エイズのワクチン接種起源説 再考

二年ほど前に固定ページにエイズが、ポリオワクチンのせいで広がったという仮説を紹介しました。その説は、有名な進化生物学者のHamiltonさんが真剣に検討しており、彼はその仮説の検討のためアフリカでの実地調査中に悪性のマラリアに感染して命を落とされました。この説は、陰謀論という人が多くて、チンパンジーがもっていた免疫不全ウイルスが偶然、チンパンジーからヒトへと感染したのだという説が主流を占めています。最近、エイズのワクチン接種起源説ももっとちゃんと検討すべきだという論説がでたそうです。陰謀論というタイトルの本の序文と、該当する章が以下のサイトからダウンロードできるのでご覧ください。
http://www.aidsorigins.com/where-did-aids-come-from-a-new-essay-by-lochlann-jain/
本は以下のものです。
“Conspiracy/Theory”, introduced and edited by Joseph Masco and Lisa Wedeen; [Durham: Duke University Press, 2024].
https://www.dukeupress.edu/conspiracy-theory
Duke大学出版会の上のサイトによると、陰謀論について考えるのに最適の本のようです。購入してみてはいかがでしょうか。
以前の固定ページの記事も以下にペーストしておきますので参考になさってください。

2022/2/22
今日は2が並ぶ日だそうで、2022/2/22/22:22に投稿することにしました。さてこのところワクチンの話題がニュースをにぎわしていますが、エイズのパンデミックは、アフリカでポリオワクチン接種した時、ワクチンそのものにチンパンジーのエイズウイルスが混入していたことから起こったという説をご存知ですか?ポリオウイルスを産生するのにチンパンジーの培養細胞を使ったため、チンパンジーのもっていたエイズウイルスが増殖してそれがワクチンに混入しており、それをアフリカの人々に接種したため、ヒトでのエイズパンデミックが始まったのだという説です。実際、不活性化ポリオワクチンや生ワクチンに癌ウイルスSV40(サルの癌ウイルス。ポリオーマウイルスの仲間で感染していたサルの培養細胞をポリオウイルスの増殖用に使ったのが原因)が混入しており、1955年から1962年の間にポリオワクチンを接種された多くの人々がSV40に感染したという事故があったのは確かです。リンクにある総説によるとソビエト連邦では1978年までイタリアでは1999年までSV40が入ったポリオワクチンを使っていたとか。SV40が人のいくつかの発癌と関係しているという報告も多いです。興味のある方は、否定する論文も紹介しているリンクの総説をご覧ください。この例でわかるように、エイズウイルスがチンパンジーから人に伝播するときに、ポリオウイルスを増やすのに使ったチンパンジーの培養細胞からワクチンに混入していったという可能性は大いにありうるものと考えられます。この説について詳しく紹介しているのは以前ペリカンブックスから発行されていたThe Riverという本です。今では入手が難しかったのですが著者のHooperさんが海賊版が横行しているのをみかねて電子ブック版をご自身のホームページで公開されています。この本はなんと進化生物学の大御所Hamilton先生が序文を書かれている本です。Hamilton先生はエイズウイルスのポリオワクチン起源説を調査するためコンゴを訪れた折、悪性のマラリアに感染して命を落とされてしまいました。ハミルトン先生の強い支持を得ていたこの説を皆さんもこの本で知ることができると思います。