トップジャーナルに投稿しよう! 2 (レフリーとのやりとりの見本)(2011.5.17)

近、私達の新しい論文が雑誌Glycobiology6月号に掲載されました。科学の研究では自分たちの論文の掲載がふさわしいと思う雑誌に投稿して、掲載が適当かどうかの判断をレフリー(論文の内容が理解できて掲載の可否を判断できると考えられる専門家で、2-3人が普通です。reviewerともいいます)とエディターに委ねます。レフリーのコメントをふまえてエディターは掲載の可否を判断してくれます。別の雑誌に投稿して下さい(rejectといいます)という返事がかえってくる場合もありますし、改訂して実験を付け加えて再投稿してくださいという場合も多いです。私達はレフリーとエディターのコメント(改善すべき点などの指摘)に応じて論文を改訂してより良いものにして、最終的な掲載に至るわけです。よいレフリーにあたると建設的な問題点の指摘があったりして論文が格段によくなりますし、良く読まないで内容を誤解したりして、とんでもないことをいってくるレフリーの場合は、そういう誤解をされないように内容をよりわかりやすくするなどして対処していきます。やりとりは全部英語で行いますので、どうしてもレフリーに反論したりするための英文の手紙を書かなくてはなりません。

レフリーに対する答え(response)の手紙の書き方ですが、こうした手紙の見本は今までは入手が難しかったので同僚や先生の書いたものをまねして書くのが一般的でした。ところが、最近になってレフリーと著者とのやりとりの手紙(レフリーのコメントとそれに対して著者の書いたレスポンスの手紙)すべてが公開される例がいくつかでてきました。(2018年4月追記:以下の記述については古くなっているので、アップデートされた講演スライドをご覧ください。)例えば有名なThe EMBO Journalでは掲載された各論文について掲載までのやりとりの手紙が完全に公開されています。Review Process Fileというのがそれです。論文を投稿した後で受け取るeditorrefereeのコメントの手紙、それを受けて改訂した原稿を送るときに付けるresponseの手紙、それに対する答え、再改訂の手紙などが読めます。たとえばここにはThe EMBO Journalの2011年5月号の目次があります。EMBO Openと書いてある論文は無料で誰でもダウンロードできますから、その論文のReview Process Fileをダウンロードして読んでみてください。論文の投稿の実態がよく分かると思います。

論文の書き方を勉強している人や現にレフリーとやりとりをしている方は、是非、できるだけ沢山のReview Process Fileをダウンロードして読んでみて、よりよい英文を書くためのデータベースとして活用して下さい。もちろんレフリーをやっている方にとっても、レフリーのコメントの書き方の例として貴重なものです。