このブルーバックスはおすすめです! 「土と生命の46億年史」土と進化の謎に迫る

図書館で借りてきて今読んでいる本です。
「土と生命の46億年史」土と進化の謎に迫る (藤井一至 著)講談社ブルーバックス

https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000404469
土と生命について、地球の進化、生命の進化について学べる素晴らしい本です。粘土の定義とか、粘土が生命の誕生に果たしたであろう役割とかから始まる本で、ぐんぐん引き込まれていきます。土と生命、地球や宇宙に対する新しい見方が学べる本ですので是非買って読んでみてください。巻頭にはたくさんのカラー写真があるほか、本文中の多数の図版が白黒でみにくいものについては、特設サイトにあるカラー図版へのリンクのQRコードが載っています。巻頭のカラー図版もちょっと小さくてみにくいので大きいものがあればなぁと思っていました。なんと、上の講談社のサイトにある試し読みのリンクをクリックすると、ネットで大きな図をみることができて至れり尽くせりです。参考文献、索引、そして本文ででてくる化学反応の解説ページまであって、啓蒙書と教科書を兼ねた、誰でも読める素晴らしい本に仕上がっています。

こちらのリンクはブルーバックスの関連サイトで色々な記事があって役立ちます。
https://gendai.media/list/books/bluebacks/9784065378380
本文内のカラー図版リストはこちらです。
https://bluebacks.kodansha.co.jp/books/9784065378380/appendix

知識グラフとオントロジーについての講習会に参加しました。福岡は梅雨明けしたようです??

福岡は梅雨があけたような天気でした。気象台を無視して、勝手に梅雨明け宣言をだしました。暑い夏のはじまりですね!
テレビの気象予報によると今週末には、気象台から梅雨明け宣言が九州北部にでるかもしれないそうです。6月中に梅雨があけるとしたら観測史上最も早い梅雨明けになるそうで楽しみです。

今日はこんな講習会に参加しました。
AJACS「生命科学分野におけるナレッジグラフとオントロジーを知って・学んで・使う」
https://biosciencedbc.jp/event/ajacs/ajacs2025-06-26-knowledge-graph-and-ontology.html
ライフサイエンスデータベース統合推進事業のバイオサイエンスデータベースセンターNBDCによる講習会です。
私達も線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBを以前こしらえたのですが、最新のデータベースの情報にうとい私のようなものには最適の入門コースでした。知識グラフとRDF(Resource Description Framework)についての入門講義もよかったですし、オントロジーについての様々な角度からの講義、そしてTogoIDの紹介など役立つ情報満載でした。講義動画や資料、質疑応答の内容などは一月後位をめどに公開されるそうなので公開されたらまたこのブログでも紹介します。
今日の講義でオントロジーについてのよい入門資料のサイトの紹介があったので、メモしておきます。オントロジーについての基本が学べるコースが無料公開されています。Gene Ontologyを構築したBarry Smithさんのサイトで、オントロジーの基本についての講義スライドや動画がダウンロードできます。今日の講習会の講師の藤原 豊史先生の一押しのコースとのことで、是非学んでみたいと思いました。
https://ontology.buffalo.edu/smith/BioOntology_Course.html
Smith先生のYouTubeチャンネルはこちらです。
https://www.youtube.com/@BarrySmithOntology

JST研究倫理教育映像教材というのができているんですね!是非ご覧ください。教材もダウンロードできます。

私達研究者がお世話になることが多いJST(科学技術振興機構)がドラマ仕立ての研究倫理教育用の動画を配信しています。自然科学系や人文科学系の研究倫理に関する動画で、各動画に関する教材やあらすじ・人物相関図などもあるので、教材を手元において動画をみて勉強するとよいと思います。
こちらのサイトに動画や教材へのリンクがあります。
https://www.jst.go.jp/kousei_p/measuretutorial/mt_movie.html
YouTubeのJST Channelでも見ることができます。https://www.youtube.com/@jst_channel
一本、見本に広報用の動画を埋め込んでおきますのでよかったら本篇をYouTubeでご覧ください。

『物理学者とティータイム』の新しい動画が公開されています。

カリフォルニア大学バークレー分校の物理学者の野村泰紀先生が出演されている動画を紹介します。

まずは「物理学者とティータイム」のチャンネルの動画です。何年か前の収録とのことですが、有名な書道家のなつきさんの質問がさえています。
Why does the universe exist? Questions for popular physicists!
https://youtu.be/J4xms1uJW6I?

7/100 in a mock exam → A world-class physicist? The strange life of a physicist.
https://youtu.be/zNQu-JmKfog?


リンクをコピーしておきます。
https://youtu.be/jyAZpcjzxFU?
https://youtu.be/hio2XdBPW5Y?
https://youtu.be/DEG9OZoYzIU?
https://youtu.be/4yiyaq0q6xQ?
https://youtu.be/If8msXol9zo?
https://youtu.be/VWo6k3TiDRs?

九段理江さんがその95%を生成AIに書かせた小説『影の雨』のプロンプト入りの作成記が公開されています!

福岡は梅雨空の一日でした。やや涼しくてここ数日の真夏日がうそのようでした。今も雨が結構強く降っています。
今日は『東京都同情塔』で芥川賞を受賞した九段理江さんが生成AIとの共同作業で小説を書いた一連の経過がネットで公開されているので紹介します。これはすごい資料です。生成AIで小説を書くという試みの詳細がわかるだけでなく、科学系の本の作成にも役立ちそうです。

こちらのツイートをご覧ください。95%を生成AIが書き、5%を九段さんが書いたとう小説とその作成課程がプロンプトとともに読めます。

九段理江に95%AIで小説書いてもらってみた。
小説『影の雨』、プロンプト全文公開

https://kohkoku.jp/case01/prompt/
写真は満開のねむの木の花と、今朝から咲き出したアサガオです。合歓の木の花や朝顔が咲き出すとそろそろ梅雨の終りも近そうだと感じます。

 

1型糖尿病の画期的治療法が完成間近となりました!

1型糖尿病の画期的治療薬が完成間近だそうです。Vertexという会社が開発している幹細胞治療法です。New England Journal of Medicineに先日掲載され、同時に学会発表があった研究成果で、1型糖尿病が治るという画期的成果です。

会社からの発表はこちら。
https://news.vrtx.com/news-releases/news-release-details/vertex-presents-positive-data-zimislecel-type-1-diabetes
Vertex Presents Positive Data for Zimislecel in Type 1 Diabetes at the American Diabetes Association 85th Scientific Sessions
– Results from the study continue to demonstrate the transformative potential of zimislecel with consistent and durable patient benefit –
– All 12 patients with at least one year of follow-up who received a full dose of zimislecel as a single infusion achieved ADA-recommended target HbA1c levels <7% and >70% time-in-range (70-180 mg/dL), and 10/12 patients were insulin free –
論文はこちらです。

Stem Cell–Derived, Fully Differentiated Islets for Type 1 Diabetes
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2506549
幹細胞から分化させた膵島細胞 Zimislecel(商品名:旧称VX-880)を患者に門脈から注入して移植してインスリンの産生を回復させます。免疫抑制剤を投与しながら、門脈から分化させた膵島細胞0.4×109 cells(半分量)0.8×109 cellsを移植したた1型糖尿病の患者12人についての研究です。この論文によると、10人はインシュリン投与不要になる回復をみせたそうです。また低血糖症なども起きなくなり糖尿病の指標として使われる血中の糖化ヘモグロビン(HbA1c)も7%未満と優れた治療効果が確認されています。HbA1cのHbはヘモグロビンの略で、HbA0が糖化されていないヘモグロビン、HbA1a, HbA1b, and HbA1cなどはカラムクロマトグラフィーでの溶出順を示すフラクション名を反映しています。HbA1cは糖尿病で糖が結合している糖化ヘモグロビンの呼称でその血中濃度を7%未満にコントロールするのがよいとされています。読み方はヘモグロビンエーワンシーです。

この研究成果は、幹細胞研究で有名なMelton教授のリーダーシップで完成しました。Meltonさんはアフリカツメガエルの研究者として素晴らしい業績を挙げた先生です。私も昔はアフリカツメガエルの研究をしていたので、カリフォルニア大学バークレー分校のJohn Gerhart教授との共同研究でバークレーに滞在していた時、同じ部門にあったMeltonラボにお邪魔してMeltonさんに自分の研究の話を聴いてもらったことがあります。その後、教授の二人のお子さんが成人して1型糖尿病を発症されたとのことで、その治療のために幹細胞から膵島細胞を分化させる研究をはじめ、ヒトの幹細胞研究で有名な業績をあげられました。幹細胞研究センターの所長として大学で研究をすすめておられたのですが、治療法の開発には自分で会社を作るのが一番ということでSemma Therapeuticsを創立してI型糖尿病の幹細胞治療研究をすすめました。その後、会社がVertexという会社に買収された後、Meltonさんはこの会社に参加して古巣のSemmaのすすめていた治療法開発を完成させたという経緯だそうです。今回の論文は1/2相の研究成果の報告ですが現在は3相まで研究が進んでおり、来年には治療法として確立すると期待されているそうです。
まるで映画のような経過での治療法開発ですが、完成間近ということで感動もひとしおです。
https://www.biospace.com/harvard-researcher-heads-to-vertex-to-curate-diabetes-portfolio

幹細胞を分化させたものを移植しての治療というのは、誰でも思いつくことですがそれをチームを組んで実用化するというのはとてつもなく大変な作業で、まさに偉業です。このような心ふるえる画期的業績は科学に携わる皆の励みになりますね。Melton先生、おめでとうございます!

『遺伝子重複による進化』という進化研究史に輝く名著が日本語で読めます!

『遺伝子重複による進化』(岩波書店)

昔読んでみたかったこの本が国立国会図書館デジタルコレクションにあったので紹介します。
大野 乾(すすむ) 先生(故人)の本です。大野先生は遺伝子重複による進化機構の提唱で世界的に有名な方です。木村資生の中立説に遺伝子重複による進化機構をとりこんだものが現代の進化論の基礎になっています。リンクをあげておきます。

S.オオノ 著 ほか『遺伝子重複による進化』,岩波書店,1977.11.
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604963 (参照 2025-06-21)

これはEvolution by gene duplication (1970) の翻訳書です。

遺伝子重複による進化については以前紹介した こちらの動画も参考にしてください。
九大の伊藤 隆司先生による日本生化学会のシンポジュウムでの講演動画です。
https://vimeo.com/channels/jbsoc/page:2

Vimeoの動画は埋め込めないのでリンクをあげておきます。
この福岡で開催されたシンポジュウムについては、こちらの記事で前に紹介しました。

日本生化学会の2023大会プレナリーレクチャー、奨励賞受賞講演動画が公開されました!

 

Watson CrickのDNA模型で有名なCrickの生涯と科学についての講演が公開されました。

今日はDNAの構造を決定し、その後の分子生物学の発展をリードしていった英国の科学者Crickについての最新の動画があるので紹介します。分子生物学の歴史を扱った本もたくさん書いているMatthew Cobb教授がこの秋にクリックの伝記を公開するそうです。
Crick: A Mind in Motion – from DNA to the Brain (English Edition)
三年にわたる執筆を終えて、教授がクリックの業績について語ります。
The life and times of Francis Crick | The Royal Society
https://www.youtube.com/live/JkXcteRrPmc?

前にこちらの記事で書きましたが、私がCambridge大学に留学していた時に住んでいた家の大屋さんはCrickが住んでいたお家のお隣さんでした。そのころはもうCrickは住んでいませんでしたが、家の上の方の窓にDNAをかたどった一重らせんがぶら下げてありました。

らんまんの丈之助のモデルはやはり坪内逍遥でしたね!ケンブリッジ大学の図書館にも彼のシェークスピア全集は所蔵されていました。

こちらのリンクに画像があるのでご覧ください。私の撮影した写真がみつかったらまたこのブログにアップします。
https://media.voicemap.me/uploads/sound_bite_image/image/5422/webp_full/Loc-34-Crick_s-House.webp

Excelで遺伝子名が日付に勝手に変換される件について

論文に投稿しようと準備している遺伝子名が含まれるエクセルファイルを眺めていて、遺伝子名apr-1やoct-1が1-Aprとか1-Octに変換されているのに気付きました。昔よく話題になったエクセルの大欠陥です。
https://genomebiology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13059-016-1044-7
現在Office 365版のExcelだけは、日付への自動変更を無効にするオプションが選択できるようになっているそうです。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2310/24/news091.html
しかし永年利用ができるOffice 2021など Office365以外のOfficeのExcelではこの無効化オプションは選べないそうです。

私のExcelでは下の表の真ん中の列のように遺伝子名が日付に変換されます。最初の列はセルの書式設定を文字列にしてから入れた遺伝子名で、セルの書式設定を文字列に設定しておくと自動変換されません。

oct-1 1-Oct  45931
apr-1 1-Apr  45748
apr-2 2-Apr  45749
sep-1 1-Sep  45901

最初の列の遺伝子名のセルの右が、なにもしないで遺伝子名を入れた時自動で変換されてしまった日付です。oct-1といれると勝手に1-Oct(10月1日)になってしまいます。この誤変換された列を選択して右クリックでセルの書式設定を文字列にした結果が,右の列の45931などの数値です。1-Octは45931に変換されています。この数値は1900年1月1日を1とした経過日数を示しており、2025/10/1に対応しています。

エクセルファイルで誤って日付に変換されてしまったセルをみつけるのにはこの数値を使うことができます。
まず新しいシートに現在のシートをコピーしてそちらで探してみましょう。
誤変換した日付があるかどうか調べたい列を全部選択し、右クリックでセルの書式設定を文字列に変えます。すると日付になっているセルだけセルの中身が数字(上の表の45931などの数値)に変わるので数字だけのセルを見つければOKです。元のシートとくらべれば遺伝子名を復元するのは容易です。誤変換される遺伝子名はそんなに多くないので、この方法でチェックするのが簡単ですので、一度試してみてください。もちろんオンラインでエクセルファイルから日付に変わったセルを見つけるサイトとか、VBAマクロやPythonスクリプトで探すこともできます。その辺のことは明日書くことにします。ではおやすみなさい。

ChatGPTで一時間で物理学の論文が書けるという動画がありました!

東北大学の堀田先生のツイートとnoteで知りました。


動画はこちらです。28分あたりから物理学の論文を一時間くらいで書き上げたという話がはじまります。出来上がった論文は2.5流くらいの雑誌だったら査読を通過するくらいの品質であるそうです。
『学習物理勉強会ホップフィールド模型・ボルツマンマシンの基礎と応用 パネル討論会 AIと科学の融合:generative scienceに向けて』
https://youtu.be/W_M535lP7bI?&t=1684