やさしい英語で書かれた集団遺伝学の最新の教科書が無料公開されています。英語の誤用についての本も紹介しておきます。

スタンフォード大学の集団遺伝学の教授Jonathan K Pritchard先生が集団遺伝学のやさしい教科書を公開されています。

https://web.stanford.edu/group/pritchardlab/HGbook.html
から読めます。最新の執筆中の教科書なので最後のパート(GWASなどが扱われる予定)は未完ですが、集団遺伝学の入門部分は完成してわかりやすいです。上のリンクから本の紹介文を引用しておきます。

An Owner’s Guide to the Human Genome:
an introduction to human population genetics, variation and disease

by Jonathan Pritchard, Stanford University

In this book I describe the forces that govern genetic variation including mutation, drift, recombination and selection, as well as what genetics teaches us about human history, and the role of genetic variation in human phenotypes and diseases. When complete, the book will combine the three pillars of human population genetics – population genetics, population history, and trait genetics – under a single umbrella, with a focus on examples and applications in human genetics. Moreover, each section emphasizes the essential interplay between theory, statistical methods, and biological applications, with a focus on building intuition while avoiding heavy technical detail where possible.

Parts 1 and 2 of the book were released in September 2023. The chapters of Part 3 were released in April and September 2024. I’ll release the chapters of the final section, Part 4, as I finish them. Original material is provided under a CC-BY-4.0 Creative Commons License.

I’m very happy to hear from readers, including students at any stage, with feedback, questions, errors (or even just to say that you enjoyed it!) at pritch@stanford.edu. Include “human genetics book” in the subject line.

ということです。是非読んで意見や気づいた点、誤りなどあれば先生にメールしてあげてください。

もう一つ、英語の誤用についてのこれも無料で読める本を紹介しておきます。ワシントン州立大学の英語の先生のサイトです。先生は引退していますが、教材をいろいろオンラインで公開されています。ポッドキャストもあるので興味がある人は聴いてみてください。医学用語についてとかも議論されていますので生命科学系の人にの役立ちそうです。https://commonerrorspodcast.wordpress.com/

先生のサイトはこちら。The Web Site of Professor Paul Brians
https://brians.wsu.edu/

Brians先生が2013年に出した本、Common Errors in English Usage という本のオンライン版がこちらです。
https://brians.wsu.edu/common-errors-in-english-usage/

印刷された本の販売促進の文もありますが、このサイトを暇なときに見るだけでもずいぶん勉強になると思います。
Kindle版は今みたところでは985円で買えるので購入するのもよいと思います。

早稲田大学の村田昇先生の統計学、確率論、統計解析などの講義資料が秀逸です!

今日も大学の先生が公開されている講義資料を紹介します。早稲田大学の村田昇先生のサイトにある講義資料はよさそうです。2022年の講義となっていますが、資料自体は2024年に書き込まれたものもあるので最新版と考えてよさそうです。

https://noboru-murata.github.io/lectures/
にある資料です。

講義のタイトルをコピペしておきます。
多変量解析 (後期火曜1限)
確率・統計 (前期火曜1限)
信号処理 (前期金曜1限)
情報学習論 (前期月曜3限)
統計データ解析 (前期・後期金曜5限)

「多変量解析」の講義では、講義のスライドも公開されていて、講義ノート
https://noboru-murata.github.io/multivariate-analysis/pdfs/multivariate-analysis.pdf
とともに役立てることができます。
「確率・統計」の講義では、スライドの他、https://noboru-murata.github.io/probability-statistics/page/notes/  確率論と統計学の講義ノートをダウンロードすることができます。こちらは理論をしっかり学ぶのに最適の資料です。

「統計データ解析」(IとIIがあります)の講義では、RとRStudioのインストールの仕方からはじまって、実際のデータの統計解析法をじっくり学ぶことができます。R言語の入門と、使い方も学べて大変よい講義です。なんとQuartoの使い方まで学べます。https://noboru-murata.github.io/statistical-data-analysis2/post/post3/

なお信号処理にも資料がありますが、情報学習論だけは資料へのリンクがないようですので注意してください。

九州大学地球惑星学科の吉田茂生 先生のホームページが面白いので紹介します。

九州大学地球惑星の吉田茂生 先生のホームページが面白いので紹介します。

九大の地球惑星学科で教えておられる吉田茂生 先生のホームページをたまたま見ました。
http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/

解説と一般向け講演というページには、
http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/articles/j-articles.html

映画日本沈没と小松左京の小説日本沈没の比較や、本当に日本が沈むかという科学解説があります。
(高校生向けの出前授業の資料です)
『進路説明会「理学部・模擬授業」 一般向け講演:映画「日本沈没」を科学で読む
岐阜県立加茂高等学校, 2008 年 9 月 18 日
講演原稿 時間がなかったのと、DVD の機能が全部使えない機械だったので、 実際は適当に端折って話した 』
http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/articles/chinbotsu.html

また第27回名大サロン 一般向け講演:映画「デイ・アフター・トゥモロー」を科学で楽しむ
という講演の資料もあります。

どれも面白くわかりやすいのでおすすめです。

また、先生が読まれた本のノートのような記録集もおすすめです。
『活字中毒の記』
http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/articles/j-articles.html
先生は推理小説がお好きなようで、シャーロックホームズやポアロなど私も好きな小説のノートが公開されています。
また100分de名著もお好きなようでいろんな本が紹介されています。中には
「科学論文の英語用法百科 第2編 冠詞用法」
http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/books/2023/paquette20230417.html
などのように内容にまで深く立ち入ったノートもあって、これから読もうと思う人(私は全部読みました)にも役立ちます。

あと授業の資料も公開されています。
『ベクトルとテンソル』 の講義資料はよさそうです(地球惑星数理演習 修士向けの講義ですが学部でもわかると思います)。
吉田担当分 ベクトルとテンソル(1回3時間分)
http://dyna.geo.kyushu-u.ac.jp/~yoshida/japanese/lecture/math-exercise/vector-analysis-v_12_0.pdf

とても面白い統計学の一般向け動画が公開されています(失敗に終わったケネディ大統領時代のキューバ侵攻計画=ピッグス湾事件やMI5の公式マグカップの話もあります!)

英国で一番有名な統計学者David SpiegelhalterさんのOxford大学での公開講演が面白かったです。
タイトルは、
“Chance, luck, and ignorance: how to put our uncertainty into numbers” – David Spiegelhalter
です。動画では、コイン投げの実演や、ケネディ大統領にキューバ侵攻計画の成功確率をどうつたえて許可を得たか(侵攻は失敗におわっています)など、面白い話題とクイズを通して、どのようにあることに対する無知を数値化していくかというベイズ統計の基本がわかりやすく説明されています。彼が英国情報局MI5での講演した時もらったMI5公式マグカップには、情報局員が使うlikelyという言葉は、確率55-75%の意味だというような表が書いてあるそうです。その話が面白いので、今回の講演動画はそのマグカップがでてくる部分から再生するように設定して、埋め込んでおきます。

https://youtu.be/Cybnip2Kyw0?si=LcyPk4lJtxhAS8ri&t=598

この動画は、Spiegelhalterさんの今年出版された本に基づく講演動画です。
The Art of Uncertainty: How to Navigate Chance, Ignorance, Risk and Luck’ (Penguin, September 2024)
という本で、面白そうです。翻訳がでるといいのですが‥‥。

David Spiegelhalterさんはケンブリッジ大学の教授やMRCの統計ユニットのリーダーを長年つとめケンブリッジ大学の名誉教授です。ベイズ統計の専門家で、リスクの統計的に正しい扱い方の専門家です。医療統計への貢献の他 数々の業績で賞を多数受賞している科学者です。彼は英国王立統計協会会長でしたし、WinBUGS, OpenBUGSなどのベイズ統計ソフトウエアの開発のリーダーでした。Amazonで検索してみるとわかりますが、ベイズ統計の本や統計学の入門書あるいはPyTorchの入門書など多くの本を書いています。日本語訳もいろいろ出ています。彼の本のお世話になった人も多いのではないでしょうか。日本語訳を2つ紹介しておきます。

統計学の極意
https://www.soshisha.com/book_wadai/books/2692.html

もうダメかも 死ぬ確率の統計学
https://www.msz.co.jp/book/detail/08888/

Royal Institutionの公開した動画―視聴に年齢確認が必要でびっくりしました。

いつもよくみているYouTubeのThe Royal Institutionの動画の紹介です。臓器移植の最先端技術を紹介する次の動画が数日前に公開されました。

というわけで、ログインせずに動画のサムネールをクリックすると、次のメッセージがでます。
「年齢確認のためログインしてください この動画は、一部のユーザーに適さない可能性があります。」

英国のRoyal Institutionの公開する動画でもこんな制限をつけるのですね。びっくりしました。外科手術の場面などが問題なのでしょうか?手術の場面などがにがてな方には向いていないかもしれません。
ログインしてご覧になると、最新の臓器移植の情報がよくまとまっているのがわかると思います。

NHKのドラマ「宙わたる教室」最終回を見ました!

「宙わたる教室」の最終回を見ました。疲れました!

毎週楽しみにしていた「宙わたる教室」も昨日が最終回でした。さきほど録画していたものを見終えました。

「疲れたー!」というのが正直な感想です。感動の最終回でした。定時制高校の生徒たちの学会発表が口頭発表に採択されました。口頭発表のための準備、練習の詳細、そして実際の発表の様子などが、実際の研究発表の時とまったく変わらない正確さで描写されていました。発表まえの練習、発表まえのどきどき感、そして発表をみているもののドキドキ、発表者の緊張感などがほんとうに迫真の演技で描かれていました。

久ぶりに、学生さんの口頭発表の準備や発表前の想定質問への対応練習(みんなでどんな質問がでるか、おもいつくままに列挙してそれに対する解答を用意します)、プレゼンをみまもるときの緊張感を思い出して、ドラマの学会発表を見終わるまでにどっと疲れました。本当によいドラマでした。私達もこのドラマで描かれたような、緊張感を何度何度も味わいました。卒論、修論、博士論文、学会発表、ポスター発表など、あの緊張感がほんとうにうまく描かれていました。なおドラマでは描かれませんでしたが、私たちの研究室では、予想される質問に答えるためのスライドもあらかじめ拵えて、発表で使ったスライドの後に並べておくのがかっこいいと学生が代々伝えて、皆いつも発表前に用意していました。質問がでると、「スライドをもう一度映してもらえませんか」、などといって用意したスライドを見せながら説明するのです。

学会のあとに会場で質問されたり、共同研究の申し込みがあったりするのも実際どおりです。ドラマではJAXAの火星探査計画に参加することになるという展開でした。これは私にも経験があります。学会での私のポスター発表が終わって、たまたま食事に行ったお店で一緒になった先生から共同研究を申し込まれたのが、研究のブレイクスルーになりました。

昨日の最終回は、NHK plusで一週間は配信していますので、まだみていない方はごらんになることをおすすめします。前に書いたように、AmazonのPrime Videoでも一週間おくれで全話配信しています。

東北大学の大関真之先生による、高校物理の学び直しの動画シリーズは必見です。

以前の記事でも紹介した、東北大学の大関真之教授による高校物理の学び直し動画がつぎつぎとアップロードされています。最初は力学でしたが電磁気学の部がはじまっていて、とても参考になります。電磁気が苦手という意識がある人にはうってつけのリフレッシュ動画です。
再生リストはこちらで見ることができます。https://www.youtube.com/playlist?list=PLsBJ3psEqyr9lVENrOBwVaqw1xrmM0DpP

第五回から電磁気にはいっています。最新の動画は第八回で、

前の回では、コンデンサーやキルヒホッフの法則などがあつかわれていました。
受験生必見の講義ですね。大関先生は予備校の先生をしておられたこともあるので、授業はめちゃくちゃわかりやすいし、面白いです。

AIが本をさっと書いてくれる時代がきています!AGI(汎用人工知能)はもうできている?

中央大学の田口善弘先生がChatGPTに本を書かせたという記事をQiitaに投稿しておられます。
次の記事へのリンクから、GoogleドライブへログインするとChatGPTが書いた本をダウンロードすることもできます。

『o1に「生命はデジタルでできている」というタイトルの新書を書かせてみた』
https://qiita.com/Yh_Taguchi/items/48d089d54362b889a36b
田口先生のツイートも埋め込んでおきます。


AGI (Artificial general intelligence:汎用人工知能)はすでに ほぼ実現しているというOpen AIの技術者の人のツイートも注目ですね。いや まだAGIではないというこのツイートへの反論もみられます。
まったくの素人の私見ですが、現在のAIは確率的に挙動するシステムなので、AIの自律的発想を確率的におこなうようにすれば人間のように思いつく能力をもったAIがつくれるのではないでしょうか。それと数学の証明をAIで行うシステムが統合されれば、AGIができるような気がします(もうできている?)。

 

嗅覚の勉強に役立つ動画と、ノーベル賞受賞講演ライブの動画の紹介です。

今、私は線虫C. elegansの嗅覚の遺伝子を調べています。線虫には光を感じる神経もあるのですが、外界を認識する手段の多くは嗅覚にたよっているのです。ヒトの遺伝子とよく似た遺伝子もあるので、嗅覚の研究にはとても役立つモデル生物です。Google検索していると、臭覚あるいは嗅覚について勉強するのに最適の動画がでていたので紹介します。
東京大学理学部オープンキャンパス2024 講演「臭覚について語る」竹内春樹教授
https://youtu.be/8pa1q9KFFzw?si=G-1HzqqMWnzPbhY0

竹内先生の動画は今年の8月にも紹介しました。

東京大学が公開している、高校生以上向けの一般講演の動画を紹介します。

面白い講義なので是非ご覧になることをおすすめします。

あと今年のノーベル賞の受賞講演が公開され始めていますね。
2024 Nobel Prize lectures in chemistry | David Baker, Demis Hassabis and John Jumper
https://www.youtube.com/live/HnT1VWzdFWc?si=oyddWGbJS-a3X9g0

2024 Nobel Prize lectures in physiology or medicine | Victor Ambros and Gary Ruvkun
https://www.youtube.com/live/VQ9NZbPcTyA?si=jCXZenbeeORGkWfW

2024 Nobel Prize lectures in physics | John Hopfield and Geoffrey Hinton
https://www.youtube.com/live/lPIVl5eBPh8?si=3lMGYHy9egrAHtec

タンパク質の構造解析の化学賞、マイクロRNAの発見の医学生理学賞、AI関係の物理学賞など時間ができたら見てみたい動画ばかりです。

国立国会図書館デジタルコレクションで読める本の紹介(第20回)

国立国会図書館デジタルコレクションで読める本の紹介(第20回) 紹介した本も200冊を越えました。最近みかけた本をリストしておきます。

205)アン・セイヤー [著] ほか『ロザリンド・フランクリンとDNA : ぬすまれた栄光』,草思社,1979.6. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12221585 (参照 2024-12-07) 有名な本です。最近のこんなYouTube動画も参考になります。

206)篠原兵庫 [著]『生命科学の先駆者 : ホプキンス,ワールブルク,サムナー』,講談社,1983.12. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12603282 (参照 2024-12-07) 以前紹介した丸山工作さんの本とはまた違った感じの伝記です。

207)アルフレッド・レーニイ 著 ほか『確率についての手紙』,講談社,1980.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12622573 (参照 2024-12-07)

208)山川民夫 [著]『糖脂質物語』,講談社,1981.9. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12669438 (参照 2024-12-07)
世界の糖脂質研究をリードした山川民夫先生の本です。私が糖鎖生物学をはじめたとき最初に読んだ本です。開拓者の書かれた本ですので歴史的な用語もはいっているのでネット検索しながら読むと読みやすいです。

209)古沢岩美 絵『石川啄木ローマ字日記』,ノーベル書房,1982.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12485944 (参照 2024-12-07)

210)伊吹武彦 等訳『パスカル全集』第3巻,人文書院,1959. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2998510 (参照 2024-12-07) 有名なパンセの完訳を含む巻です。
211)伊吹武彦 等訳『パスカル全集』第1巻,人文書院,1959. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3034935 (参照 2024-12-07) これは以前記事中で紹介したパスカルの科学論文集です。高校生でも読めます。面白い本で高校の図書館で借りて夢中で読んだのを覚えています。
212)伊吹武彦 等訳『パスカル全集』第2巻,人文書院,1959. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2998501 (参照 2024-12-07) これはプロヴァンシアル書簡という有名な論争を引き起こした文書を含む巻です。
213)西義之, 井上修一, 横谷文孝 訳『アインシュタイン・ボルン往復書簡集 : 1916-1955』,三修社,1976. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12286000 (参照 2024-12-07)
214)W.パウリ [著] ほか『物理と認識』,講談社,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12609332 (参照 2024-12-07)

215)C.G.ユング [著] ほか『空飛ぶ円盤』,朝日出版社,1976. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12703843 (参照 2024-12-07)