国立国会図書館デジタルコレクションで読める本の紹介(第21回)

今年はじめての国会図書館デジタルコレクションの個人送信サービスで読める本の紹介です。番号は紹介している本の通し番号です。

216)  寺田寅彦は、複雑系の物理学の先駆的業績のほか、当時正統派物理学だったX線結晶構造解析でノーベル賞級の仕事(ブラッグのノーベル賞の研究に迫る業績)をしたとよくききます。本当のところはどうだったのでしょうか。この本と次の論文でそのへんのところがよくわかると思います。是非読んでみてください。
宇田道隆 編著『科学者寺田寅彦』,日本放送出版協会,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12590546 (参照 2025-01-26)
217)  責任編集: 辻哲夫『物理学史研究 : その一断面』,東海大学出版会,1976. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12621801/1/30(参照 2025-01-26) ”寺田寅彦の『結晶によるX線回折』の業績について(小林惟司) ”
218)  糸川英夫 著『独創的発想法 : デセンター思考に強くなろう』,プレジデント社,1984.8. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12673836 (参照 2025-01-26) 宇宙探査機はやぶさがサンプルリターンに成功した小惑星「イトカワ」は日本のロケットの父、糸川英夫さんにちなんだ命名です。糸川さんの本は今まで読んだことがなかったのですが、この本を先日読んで時間がたつのを忘れました。この本の執筆当時は日本の科学技術はいけいけだったのですが、その弱点について深い洞察がなされていました。政治家や官僚が立案する科学政策は民主主義社会では多くの人が納得する平均的なものにしかなりえず、真に革新的な発想はそこからは生み出されないという部分は真実をついていると思います。糸川先生の『逆転の発想』という本はシリーズになって何冊もでていました(『逆転の発想続』、続々。新逆転の発想上下は個人送信サービスで読めます)。
219)  竹内啓 著『現象と行動のなかの統計数理』,新曜社,1980.2. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12622571 (参照 2025-01-26)
220)  清水良一 著『中心極限定理』,教育出版,1976. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12622468 (参照 2025-01-26)
221)  V.オレル 著 ほか『メンデルの発見の秘録 : メンデルの生誕150年記念祭にささげる』,教育出版,1973. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12604881 (参照 2025-01-26)
222)  森毅 著『マトリックス』,明治図書出版,1964. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1380255 (参照 2025-01-26)
223)  ジャック・モノー 他著 ほか『科学論とマルクス主義』,福村出版,1975. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12221235 (参照 2025-01-26) ノーベル賞をとったモノーがマルクス主義についてかいた文章が読める本です。モノーの文章は最初だけしかなくてあとは別の論者の文章が並んでいますが、モノーの思想がわかる本です。
224)  市川亀久弥 著『独創的研究の方法論 : 自然科学と工学技術学の問題を中心として』,三和書房,1963. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1379781 (参照 2025-01-26) 湯川秀樹さんと共同で創造性について研究していた市川先生の本です。
225)  『講座教師のための数学入門 幾何編』第4巻,森毅 著,明治図書出版,1963. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2422055 (参照 2025-01-26) 森先生が教師のために書かれた線形代数の本でもあります。
226)  渡辺一郎 編『明治武道史 : 史料』,新人物往来社,1971. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12148865 (参照 2025-01-26)
日本の武道についての資料です。江戸から明治にかわった直後の文書があつめられているので、日本の武道について知るのによい本だと思います。
227)  岩崎允胤, 宮原将平 著『現代自然科学と唯物弁証法』,大月書店,1972. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12590199 (参照 2025-01-26) これは唯物弁証法と自然科学についての記事をあつめた本のようです。著者のお二人の本は他にもいろいろ個人送信サービスで読めます。

ABC予想の解決で有名な望月新一先生のインタビュー記事や工学のための微分方程式入門コースの動画

望月新一先生が年頭にブログで予告されていたインタビュー記事が公開されました。

https://www.sci-sci.org/voices-anabelian-geometry-rims


望月先生のような高度な数学ではありませんが、工学のための微分方程式の入門動画Differential Equations for Engineers(各回10分前後の長さです)がでていたので紹介しておきます。
再生リストはこちらです。https://youtube.com/playlist?list=PLkZjai-2JcxlvaV9EUgtHj1KV7THMPw1w&si=0pJdHI058K4DeFgK
第一回目の動画を参考のために埋め込んでおきます。
https://youtu.be/CYs5wEm2Kic?si=dVxHj73PPrF23Jkc

理論生物学についてのわかりやすい動画を紹介します。

京大の望月 敦史先生の理論生物学についての動画を紹介します。

こちらは望月先生の肩のこらない動画。
【裏講義】理論生物学の裏側
https://youtu.be/nS84LDlmQ9Y

チューリングの話とかが面白いです。エニグマの映画の話もあります。
これで興味を持った方は次の計算生命科学の基礎9での望月先生の講義動画をどうぞ。
一回の講義を三本の動画にわけてアップロードしてあります。これは2023年4月にこのブログで紹介した計算生命科学の基礎9のアーカイブ動画です。上の動画が面白いので、併せて紹介しておきます。

計算生命科学の基礎9「生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定する」① 望月 敦史(京都大学)
https://youtu.be/S-HE3R2FChk

計算生命科学の基礎9「生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定する」②
• 計算生命科学の基礎9「生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定…
https://youtu.be/F9ZwMcJI6GM
計算生命科学の基礎9「生命システムの振る舞いをネットワークの形だけから決定する」➂
https://youtu.be/d6Rt4J7Kja4

以前、一昨年の生化学会での望月先生の招待講演を紹介したこともあります。その記事も貼り付けておきます。

東京大学の動画: 医学英語論文執筆セミナー2024の動画や高校生のための冬休み講座の動画が公開されました!

高校生のための冬休み講座2024 「幾何学における非存在性」今野北斗准教授
https://youtu.be/j1utzNuXb1g?si=QgjANFQQZ0mdCu8G

これは2024年12月に開催された高校生むけの冬休み講座の数学の動画です。私はライブで見逃したのですが、これから物理学、生物学など全部の講演動画が公開されると思います。この数学についての講演では、n次元多様体とか斜影空間とか、耳慣れない言葉の意味が解説されています。現代数学の入門になる動画ではないでしょうか。。

こちらは、東大で開催されていた医学英語論文執筆セミナーを公開して下さっている動画です。最近は有料で英語論文執筆についての講演などがよく開催されていますが、無料でこのレベルの動画が視聴できるのですからこれを見ない手はありません。

【必ずacceptされる医学英語論文執筆のコツ 基礎コース「初心者も安心、論文執筆の心構えと準備」】_康永秀生 2024医学英語論文執筆セミナー
https://youtu.be/RfZw5PyOHx0?si=BxY68tTs7i7_F8av

このところAIが普及して研究者が英語論文を執筆する際の校閲などは手軽にできるようになりました。しかし一度も英語論文を書いたことのない人の場合は、ChatGPTなどに書いてもらってもなかなか思ったようには書けないものです。この動画を見ることで、医学英語論文に限らず、生命科学系の論文の執筆法の基礎が学べます。おすすめの動画です。発展コースの動画も公開されています。
【必ずacceptされる医学英語論文執筆のコツ 発展コース「なぜあなたの論文はacceptされない?」】_康永秀生 2024医学英語論文執筆セミナー
https://youtu.be/x-yVmtacDOA?si=PyjYWCWEJjGLdxJ5

是非、基礎と発展両コースを見ることをお薦めします。講師の先生は医学英語論文執筆法についての本を多数書かれていて、大変勉強になります。

日本語で学べる物理の講義動画シリーズを紹介します。

物理の講義シリーズの紹介です。

高校レベルからの物理の講義は、東北大学の大関真之先生の動画が一押しです。
再生リストはこちら:
『みんなと物理 大学受験対策も学び直しもここからできるよ!』
https://youtube.com/playlist?list=PLsBJ3psEqyr9lVENrOBwVaqw1xrmM0DpP&si=-cXqJFw0775Noooi
力学から電磁気学、熱力学までの講義があります。最新の動画はこちらです。
【受験生必見!みんなと物理】第11回: 熱サイクルで熱力学マスター!【Education Open Style】
https://www.youtube.com/live/__iT5Wyd5sg?si=8wBpi145mFFtwjNv

大学レベルでも大関先生の応用数学AとB,量子力学Bを学べば物理の理解が格段に深まるだろうと思います。リンクは大関先生のYouTubeチャンネルやこのブログの過去記事をご覧ください。量子コンピュータや機械学習の講義もあります!
https://www.youtube.com/@mohzeki22/playlists

物理の詳しい講義としては以前紹介したこちらの動画もおすすめします。
『理論物理への歩み』というチャンネルです。市井の理論物理屋を増やしたい!という願いをこめて公開されている動画シリーズです。
https://www.youtube.com/@%E7%90%86%E8%AB%96%E7%89%A9%E7%90%86%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%AD%A9%E3%81%BF/playlists
高校生レベルの初歩の物理学からはじまって物理学専攻の学部レベルの講義が学べます。波動や電磁気学の基礎、理論物理学の数学、さらに理論物理学入門と題して、古典力学、統計力学、量子力学、相対性理論などの日本語での講義が学べます。物理学を本格的に学びたい人には得難い講義シリーズです。こつこつと更新がつづいており今現在295本の動画があります。大学にいかなくても物理が本格的に学べます。最初の動画を埋め込んでおきます。
物理の第一歩 Ⅰ.基礎の力学-1
https://youtu.be/BTLOkUQsL-0?si=bxmTH6FAnWg0Qwql

DeepSeekの新しいAIが話題沸騰しています。

世の中すすんでいきますね。OpenAIのChatGPTに勝るとも劣らないLLMが中国のDeepSeekという企業 からMITライセンスで公開されたそうです。オープンソースで透明性があるAIで、なんと家庭用で使えるモデルまで公開されたそうです。一家に一台 LLMの時代がきたんですね!

量子コンピュータについての市民講演会動画と、Quantum in Picturesの解説講義シリーズの紹介です。

YouTubeのおすすめ動画でこんなのがあるのを知りました。
「量子コンピュータとは何か?―情報学と最先端の物理学理論が融合した先を見据える」添田 彬仁 – 国立情報学研究所 2024年度 市民講座 第2回
https://youtu.be/crEXqvuOay4?si=Y-jIzx7m_vkFeUcS

つい最近(先月の18日=2024年12月18日)開催された一般市民向けの講演会の動画です。
量子コンピュータについて知るにはよい動画のようです。見てみようと思います。スライドもダウンロードできるリンクがYouTubeのページにのっているのでダウンロードしてみて、面白そうだったら見るのもよいと思います。

量子コンピュータといえば、先日紹介したBob Coecke (Quantinuumという量子コンピュータの会社とUniversity of Oxfordの教授)の動画があります。彼は圏論をもとに量子計算を図で行うという手法を開発した研究者です。記事へのリンクを張っておきます。

英国ケンブリッジにあるNewton Instituteで開催された量子コンピュータについての講演会動画が公開されています。

その前の記事ではThe Royal Institutionでの彼の講演を紹介しました。

図式による量子論―圏論をもとにした量子力学の定式化についてのわかりやすい講演が公開されています。

この講演では彼の量子力学の計算を図で実行するという手法が解説されていましたが、その手法のもっと詳しい解説動画があるので、是非そちらの動画も見てください。ガーナにある大学向けの連続講義動画Quantum in Picturesです。再生リストはこちらです。一時間程度の解説が9回まとまっています。
Quantum in Pictures: A New Way to Understand the Quantum Worldという本の内容を詳しく解説しているので必見です。
https://youtube.com/playlist?list=PLrf_yCwRA6PUCSMHPXUTeZFQk4yXjw_6b&si=Y3rKmNvpPh53Iufo
第一回の動画を埋め込んでおきます。
https://youtu.be/IBciXyV04jw?si=miaswxZWmFfFSBMI

この動画があるチャンネルMathematical and Computational Physics – KNUST には他に多数の動画があるのでそちらも面白そうです。
https://www.youtube.com/@MCP-KNUST

Pythonパッケージ管理ツール”uv”を使ってみましょう!

LinuxでPythonをインストールする時pipとかcondaを使っていますが、最近pythonのパッケージ管理ツールとしてuvというのがあるのを次の記事で知りました。

『Rust製のPythonパッケージ管理ツール「uv」使ってみよう』 門脇諭(かどわきさとる)
https://gihyo.jp/article/2024/03/monthly-python-2403

興味をもったのですが、使い方はまだわかりませんでした。その使い方を解説している動画がTogoTVにアップロードされたので見てみようと思います。TogoTVの動画の紹介欄を引用します。

uvは、2024年の2月中旬に発表された新しいPythonのパッケージ管理ツールです。uvは高速な動作、クロスプラットフォーム対応のロックファイル、ツール管理の専用インターフェースを提供することで、快適な開発環境を実現しています。uvを用いることで、依存関係の管理やPythonのバージョン管理が容易になります。プロジェクト全体の管理のみならず、仮想環境やpipの代替としてや、インラインスクリプトの実行やPythonバージョン管理だけを行いたい場合にも有用なツールとなっています。今回はWSL2を用いたLinux環境でuvの説明を行います。なお、WSL2の導入方法については「WSL2(Windows Subsystem for Linux 2) を導入してWindows10(11) にLinux環境を構築する」をご覧ください。 』

動画のYouTube版を埋め込んでおきます。
https://youtu.be/vFd0gUcPOW8?si=e6YRCqkSYf01PI_C

糖鎖生物学のものすごく有用なサイトの紹介です―その1

私の専門の糖鎖生物学ですが、さまざまな有用なサイトがネットにあふれています。これから時々、そうしたサイトを紹介していこうと思います。今日は第一回目です。

今日は、ノーベル化学賞受賞者のCarolyn Bertozzi さんが創設メンバーの一人になっている製薬会社Palleon Pharmaceuticalsの糖鎖生物学のサイトを紹介します。
https://palleonpharma.com/glycobiology-education-hub/

糖鎖と免疫生物学の動画などがあって大変勉強になるサイトです。たとえばこんな動画があります。
https://www.sitcancer.org/viewdocument/2024-glyco-immunology-webinar-serie

また、糖鎖生物学についての情報源もいろいろ掲載されているので是非訪れてみてください。糖鎖生物学の有名な教科書Essentials of Glycobiology 4th editionのNIHのページへのリンクも載っています。(本を一冊まるごとダウンロードできるリンクはのっていません。私のこちらの記事にダウンロードリンクがあります。)

さらにありがたいのは、ツイッターで糖鎖生物学関係の情報を発信しているアカウントのリストもあることです。
https://x.com/i/lists/1689730584749166775
このリストにアクセスするとPalleonがリストしている糖鎖生物学関係のアカウントの最新のツイートが読めます。どんなアカウントがあるかは、Membersというタブをクリックするとみることができます。皆さんもこの中からよさそうなアカウントを見つけるとよいでしょう。

私はXのアカウントをもっていないので、もっぱらnitterのインスタンスでツイートを見ています。https://xcancel.com/i/lists/1689730584749166775でみることができるのでXにアカウントがない人はこちらのリンクをためしてみてください。Membersというタブを押すと、リストをみることができます。

今井むつみ先生の講義動画と、Blueskyでみつけた英語論文の書き方についてのツイートを紹介します。

今井むつみ先生の本は、岩波新書の「英語独習法」を紹介したことがあります。大変わかりやすく、英語の勉強の参考になる本でした。
最近書かれた中公新書の「言語の本質ことばはどう生まれ、進化したか」今井むつみ/秋田喜美 著 は、読み始めたもののオノマトペとかいう概念に強烈な違和感をもってしまって挫折しました。この本は多くの賞をとっているのできっと良い本なのでしょうが、私には読み進めない本でした。
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2023/05/102756.html
そんな今井むつみ先生の講義動画が公開されています。これを見たあとなら中公新書もわかるかもしれないと思いました。動画はまだみていませんが、今井先生の考えておられる基本的な概念を解説しておられるので、ひまができたら一度見てみたいと思います。

講義「言語習得を可能にするのは何か―記号接地、アブダクション、ブートストラッピング」(今井むつみ)/総研大日本語言語科学特別講義・第145回NINJALコロキウム
https://youtu.be/2AoSAazI43o?si=zQf6YKj9KE7fx0Gx

話は変わりますが、英語の論文の書き方について参考になるツイートを埋め込んでおきます。こちらの記事で紹介したBlueskyのScience Newsのツイートです。


このツイートの右下にあるRead 1 reply on Blueskyをクリックすると関連ツイートが二つほど読めるようになります。どれも論文の構成を考える上で大変役立つアドバイスになっています。是非ご覧ください。