近代日本の創生に大きく貢献した英国の科学者Alexander William Williamsonについての本が無料で読めます。

明治維新の前1863年に、長州藩が密かに英国に留学させた長州ファイブなる5人の長州藩士がいました。長州五傑(ちょうしゅうごけつ)と呼ばれる5名は、井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)です。主に英国のUniversity College London (UCL) で学び、彼らを下宿させて化学を教えたのがAlexander William Williamson教授でした。UCLには長州ファイブの顕彰碑が建てられているそうで、それに倣って日本でも顕彰碑がたてられたそうです。日本の顕彰碑設置に活躍した犬塚 孝明先生の著書が発売されています。

アレキサンダー・ウィリアム・ウィリアムソン伝 = A Biography of Alexander William Williamson : ヴィクトリア朝英国の化学者と近代日本
幕末、命を賭して密航した長州ファイブと薩摩スチューデント。英国で彼らを受け入れ「世界」を知らしめた「知の巨人」の生涯を追う。(提供元: 出版情報登録センター(JPRO))

今回紹介する本は、この本をもとにした英語版です。留学生のその後についての記述が増補されています。
以下のページにあるダウンロードリンクからダウンロードできますので読んでみてください。

https://directory.doabooks.org/handle/20.500.12854/74765

英国の科学者とその夫人が日本の留学生を自宅に住まわせ、世話をして異文化交流に尽くしてくださったことがよくわかる本です。日本からの留学生で亡くなった方もいたそうですが、夫妻は自宅で彼を親身に世話して最後をみとり、一家の墓のある墓地に埋葬したとのことです。英国のすばらしい一面を学べるよい本だと思います。Williamson教授から化学を学んだ留学生の中には日本の化学の礎を築いた日本化学の桜井錠二(理化学研究所の設立に貢献した科学者の一人)もいて、彼のこともこの本に詳しく書かれています。

桜井博士についてはこちらの理化学研究所のサイトをご覧ください。https://www.riken.jp/pr/historia/sakurai/index.html

『こころを旅する数学 ――直観と好奇心がひらく秘密の世界』という本はよさそうです。

今日は一般向けの日本語で読める数学関係の本を紹介します。

『こころを旅する数学
――直観と好奇心がひらく秘密の世界』https://www.shobunsha.co.jp/?p=7513

これは、フランス語原書からの翻訳なので英語版の出版より早く日本語で読めました。
英語版のサイトはこちらです。
https://yalebooks.yale.edu/book/9780300270884/mathematica/

著者のツイートはこちらです。

 

数学が嫌いな人にも、好きな人にも是非読んでもらいたいと、Steven Strogatzも推薦しています。
英語版によせられた推薦の言葉が以下にのっています。
https://yalebooks.yale.edu/book/9780300270884/mathematica/#tab-4

フィールズ賞受賞者のTerence TaoやHugo Duminil-Copinも絶賛しています。推薦の辞の一部を上のサイトから引用しておきます。

“I was utterly charmed by Mathematica. Whether you love math or hate it (or just think you hate it), please read this book. It’s about what mathematics really is.”—Steven Strogatz, author of Infinite Powers

“I felt like David Bessis put in writing the way I learn, enjoy, and live mathematics. A must-read for mathematicians and non-mathematicians alike.”—Hugo Duminil-Copin, 2022 Fields Medal laureate

“In this revealing book, David Bessis leads us on an earnest and personal journey into how to think mathematically: a process of exploration, making mistakes, and gradually correcting and improving one’s understanding.”—Terence Tao, 2006 Fields Medal laureate

“The inside story on how mathematicians think, how they choose their problems, how they avoid getting discouraged, and why common beliefs about mathematics are wrong. Brilliant, readable, and perceptive.”—Ian Stewart, author of What’s the Use?

私も読み始めていますが、とても読みやすい翻訳です。一度読んでみてください。

クマムシが量子もつれ?!という動画が必見です。

LEOさんと夏生さんの『物理学者とティータイム』の本日配信されたライブ動画が面白かったです。
クマムシが量子もつれ?!
https://www.youtube.com/live/jGHWBPl-lYc?si=ngN4TT_HUNqTn4tQ

紹介文を引用しておきます。
『ネットニュースでクマムシが話題になりました。
なんと極低温でクマムシが量子もつれした?!
この論文について簡単に解説します。』

プレプリントサーバーに2021年からあった内容がアクセプトされて論文として2022年に公開されたらしく、それが今頃ナゾロジーというサイトでの報道されて、SNSで話題になっているのだそうです。(私は今日まで知りませんでした)

この論文がどのように怪しいのかを詳しく解説している動画で、公開された論文でも怪しいものがあるというのがよくわかってとても役に立つ内容だと思いました。プレプリントサーバーがどんなものなのかとかも、一般の人によくわかるように説明してくれています。要は、クマムシでなくてもクマムシの中のゴミかなにか、もっと小さいものが量子効果を示しているだけではないかという批判でした。詳しくは動画をどうぞ。

論文として発表された仕事でも無批判にうけいれてはいけません。私は大学院に入ったばかりの時、米国科学アカデミーの論文誌PNASの論文を、セミナーで紹介したことがありました。その時はじめて、米国科学アカデミーの会員ならほぼフリーパスで、怪しい論文を掲載できるのだということを教えてもらいました。私が選んだ論文は、そうした怪しい論文だったのです。プレプリントはだれでも投稿できてほぼ100%掲載されますが、査読を通った論文でアクセプトされたといっても怪しいものがあるわけです。

クマムシの論文はこちらでオープンアクセスなので誰でもダウンロードできます。

Entanglement in a qubit-qubit-tardigrade system:https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1367-2630/aca81f

ワールブルク・エフェクトを哺乳類細胞で起こらなくすることに成功したというプレプリントがでました。

癌細胞や幹細胞では酸素が存在しても呼吸系よりも解糖系の作用が亢進していることが知られており盛んに乳酸が産生されています。この現象は、これを詳しく研究したドイツの偉大な生化学者ワールブルクWarburgにちなんでワールブルク効果と呼ばれています。Warburgは晩年、癌の治療にこの好気的解糖の阻害が効果があるはずだという仮説をたてて、癌の治療法を開発しようとしていたことも有名です。
このWarburg effectを哺乳類の細胞でなくしてしまうことに成功したというプレプリントが発表されました。その結果は、増殖がとまることなく呼吸系を用いて細胞増殖が普通におこるという結果だったそうです。プレプリントと、この研究を行ったPIによる一連のツイートをご覧ください。


プレプリントはこちらです。

Multiplex genome editing eliminates the Warburg Effect without impacting growth rate in mammalian cells
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.08.02.606284v1

ワールブルクの簡単な伝記は丸山工作先生の書かれた『生命現象を探る―生化学の創始者たち』(自然選書)で読めます。
国立国会図書館の個人送信資料へのリンクをはっておきます。
https://dl.ndl.go.jp/pid/12603521/1/98
ワールブルク効果についてはこの辺りに書かれています。
https://dl.ndl.go.jp/pid/12603521/1/119

生成AIに関する動画2本を紹介します。

台風は福岡からどんどん離れていっています。衛星ひまわりの画像では台風の雲がはっきりみえなくなって、台風が消滅したのにまだ気象庁が台風があるといいはっているなどというSNSの意見もあったようです。先日紹介したhttps://earth.nullschool.net/jp/
で風の動きを見ると夕方にはまだはっきりとした渦がみられました。しかし夜の11時前にみると渦もなにやらあやしくなくなりそうに見えていました。

さて今日は生成AIに関する動画を2本埋め込んで紹介します。最初は日本語の動画です。

「AIはどうして急に賢くなったでのか、これからどうなるのか」黒橋 禎夫(国立情報学研究所 所長) 2024年度 軽井沢土曜懇話会 第1回
https://youtu.be/6YnGNpbVq7g?si=BQlZojhTl4xhDDDu

もう一つは、生成AIの父とよばれているドイツ人科学者Jürgen Schmidhuber, the father of generative AI のインタビュー動画です。日本語字幕もあるので理解しやすいと思います。

 

動画のタイトルは、Neural and Non-Neural AI, Reasoning, Transformers, and LSTMsというものです。
LSTMというのはLong Short-Term Memory (LSTM) の略でJürgen Schmidhuberさんはこの研究で著名なのだそうです。

https://youchu.be/watch?v=DP454c1K_vQ

夕方には台風はおさまりました‥。動画をpdf化する方法について追加情報です。

ものすごい台風というふれこみの台風10号、風が午前中から午後4時過ぎまではものすごくて雨がたたきつけるように降っていました。このまま半日も雨が続くと河川があふれるかもと思わせる豪雨で、ちょっと換気のために窓をあけると雨の吹込みがすごかったです。しかし夕方には風がおさまり、結局急激に勢力を落として普通の低気圧の通過という感じになってしまいました。今は990 hPaの台風になったようで、心配をしてくださった方が多かったようですが被害はゼロでした。

先日、動画からpdfに変換するpythonコードを紹介しました。Zoomで行われるイベントの画面などをOB Studio(ビデオ録画と生放送用の無料でオープンソースのソフトウェアhttps://obsproject.com/ja)で動画として録画しておいて、pdf化してあとで素早く復習するとかの用途には絶好のコードだと思います。

動画からpdfを作成するPython コードが公開されていました!

この記事を書いた後調べてみると他にもQiitaでこんな記事をみつけました。

【Python】動画から特徴量マッチングでPDF資料を自動生成するWebアプリを作ってみた
https://qiita.com/adumaru0828/items/3043d6a668cc7d4ae0e0
記事の最初の部分を引用しておきます。
『授業動画だけ配布されてPDF資料が配布されなかった経験、Zoomのウェビナー等で「資料が欲しい」と言いにくかった経験はありませんか?

この記事では、

  1. 動画から一定間隔でフレームを切り出す
  2. AKAZE(特徴量マッチング手法の1つ)で、類似スライドを削除する
  3. 選ばれたスライド画像を結合してPDFにする

という3ステップで問題を解決したいと思います。』

という記事です。これも役立つのではないでしょうか。これらのコードを参考に、自分用に改変したアプリをつくることもできそうですね。最近の生成AIがよい相談相手になってくれると思います。

台風が近づいています‥‥。

今朝から福岡は風が強くて台風が近づいているのを実感しました。台風に備えて午前中は日よけの天幕などを外したり巻き上げたり、風で飛びそうなものに土嚢の重しをのせたりしていました。以前紹介したのですが、こちらのサイトでは台風の風を動画でみることができます。
https://earth.nullschool.net/jp/
詳しい見方は、以前のこの記事を読んでみてください。

今 台風が福岡に接近中です

こんな感じの画面で台風の風の渦巻きが動いているのをみることができます。

風は強かったですが、夕方には日がさして青空がでてきました。山の方をみるとなんと綺麗な虹がかかっていたので写真をとりました。
写真ではカットしていますが、外側にもう一本虹がかかっている二重の虹でした。


台風が福岡に最接近するのは明後日とのことですが、今台風が近くにいる地域の方々に深刻な被害がないことをお祈りしています。

漸近解析についての講義動画が公開されています。

漸近解析についての講義動画が公開されているのを知りました。


 Steven Strogatzさんの講義動画です。私には初耳の単語だったのでネットで調べてみました。微分方程式の解の挙動を計算機で長時間追っていくと誤差がでてきて手に負えなくなることがよくあります。そういうときに漸近解析を使うと長時間(無限時間を含む)後の解のふるまいを的確に予測できるのだそうです。その他、量子力学とか流体力学などでもよく使われる手法とのことです。江沢洋さんの「漸近解析入門」という岩波書店から出ている本を図書館などで読まれると、漸近解析が物理学や工学でも大いに役立つことがわかると思います。

講義の第一回の動画を埋め込んでおきます。

Terence Tao教授が2024年国際数学オリンピックで講演した動画が公開されています!

Terence Tao カリフォルニア大学教授は数学オリンピックで最年少の金メダル記録を得たのち大学で数学を専攻しフィールズ賞を受賞した数学者です。以前オックスフォード大学での講演を紹介しました。

AIが科学や数学に今後どのように貢献するかというテーマの、フィールズ賞受賞者の講演を紹介します。

今日は彼が、国際数学オリンピック2024で講演した動画を紹介します。

Terence Tao at IMO 2024: AI and Mathematics
https://youtu.be/e049IoFBnLA?si=jbbV-02CTquT-B-z

数学オリンピック2024の参加者向けの講演なのでOxford大学での講演よりわかりやすいと思います。日本語字幕がついているのでそちらで見るとよいでしょう。なおこの動画を掲載しているサイトの主催者は国際数学オリンピックで金メダルを獲得できるみんなが無料で使えるAIを開発した者に、多額の賞金を出すということです。https://aimoprize.com/

GlycoRNAのN型糖鎖は3-(3-amino-3-carboxypropyl)uridine (acp 3 U)を介してRNAと共有結合しているという論文がでました!

RNAが糖鎖修飾をうけているというGlycoRNAについてはこのブログでも何度もとりあげています。最近ではglycoRNAがアーティファクトである可能性をにおわすプレプリントがでたことを紹介しました。

glycoRNAはアーティファクトなのでしょうか!

さきほどツイートをみているとGlycoRNAの発見者のRyan A. Flynnさんによるツイートで、N型糖鎖がRNAのどの部分に結合しているかを明らかにした論文が有名学術誌のCellに掲載されたのを知りました。

 

ペイウオールの中の論文なのでまだ中身を読んでいませんが、RNAの塩基で修飾されているウリジンである3-(3-amino-3-carboxypropyl)uridine (acp 3 U)にN型糖鎖が結合していることを明らかにした論文のようです。

この論文の元になったプレプリントはこちらから読めます。
The modified RNA base acp3U is an attachment site for N-glycans in glycoRNA
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.11.06.565735v3

tRNAがacp3U修飾をうけて細胞表面の sialoglycoRNAsになるという仮説の図がでていました。面白い展開ですね。