|
野村一也 「科学を学ぶ人のために」 九大野村研ホームページの拡張版です
|
桜の花も満開をすぎた福岡です。緑の葉っぱが桜の花の色にまじってとてもきれいです。道ばたには散った桜の花びらがカーペットのように積もっていてとてもきれいでした。八重桜は満開。九州大学でも先週は入学式が行われ、学部ごとの入学式も終わりました。フレッシュな新入生がおどっています。本当に踊っていました。私達のラボでも新入生を迎えました。
それぞれ希望の大学やすべりどめの大学、そして予備校と新しい場所でのスタートの季節ですね。下宿生活になった人や外国生活をはじめた方もいるかもしれません。どうか健康に気をつけて生活をスタートして下さい。
インターネットの発達した今日では、たとえ希望の大学に入れなくても、勉強を自分ですすめることができるようになってきました。たとえば東京大学の講義をインターネットで聴くこともできます。リンク集にも幾つか紹介してあります。
私たちもいろいろ検索して勉強してみようと思っています。生命科学系の大学院に入った方や意欲的な学部生や一般の方は下のバックナンバー(2009年3月31日の記事)「トップジャーナルに投稿しよう!」にあるNIHの講演なども聴いてみて下さい。字幕つきです。ただ字幕は結構いいかげんです。字幕をタイプしている人が解らないときは適当に言葉を換えて字幕を入れたりしていますので注意して下さい。
科学の研究では研究成果は論文にして発表します。論文を投稿するとき、その成果がとても優れたものならハイクラスの雑誌(ジャーナル)、英語ではtop-tier journalと呼ばれる雑誌に投稿したいものです。Top-tier journalの一つである雑誌Scienceの編集者を長年つとめたKatrina L. Kelnerさんによると、
Science, Nature, Cell などのtop tier journal へ投稿するかどうかの判断基準は以下のようなものだそうです。
よいストーリーと説得的なデータを用意して投稿しましょう!
・今までの自分の研究で最高のものか?
・大きなインパクトのある研究か?
・他分野の科学者の興味をひくようなものか?
・既存の知識・常識をひっくり返すようなものか?
・長い間未解決だった問題の
(予想できなかったようなものであることも多い)解決や、
広範囲に影響を及ぼすような成果へつながる大きな一歩か?
いかがでしょうか。こういう成果にめぐりあえたら是非、top-tier journalにチャレンジしたいものですね。彼女の英語での講演はPublishing in Journalsと題して2009年3月16日に行われました。論文の書き方についての貴重な講演ですので是非ご覧下さい。(後半は別の方による講演です。論文を投稿するときに添える編集者への手紙であるcover letterの書き方その他についての懇切丁寧な解説があります。) 講演を聴くには上の青字の部分をクリックするとNIH VideoCastingのページにつながります。
前回は日本語で科学を楽しく学べる優れたサイトを紹介しました。今回は英語の面白いサイトを一つ紹介したいと思います。科学についての動画がアップされているちょっと専門的な雰囲気のサイトです。
JoVEというサイトで
Journal of Visualized Experiments (JoVE) is a peer reviewed, PubMed indexed journal devoted to the publication of biological research in a video format.
という説明があります。目で見る実験の雑誌とでもいうのでしょうか。要するに科学の専門誌で動画をのせるものという位置づけです。掲載にあたっては通常の科学論文と同じでレフリーによる審査があるそうです。
今話題のiPS細胞はどうやって作るのかなど実験のやり方まで詳しく紹介しているビデオサイトです。生物科学の科学論文を補う目的で実験のやり方を解説したサイトで現代の生物科学の実験の様子を詳しくみることができます。大学や研究所の研究室の見学はオープンキャンパスなど以外は結構しきいが高いものですが、一般の方々や高校生や中学生の皆さんもパソコンの前に座ったままで、研究の現場の見学ができるのです。いろいろのぞいてみて、生物科学の実験の様子をご覧下さい。
英語の解説は聞き取りにくいかもしれませんが、映像を眺めるだけでiPS細胞がどのような研究室でつくられているのか、どんな姿をしているのかなどがよくわかります。是非ごらんください。
検索窓でキーワード検索をしたりトップページのビデオのタイトルをぱらぱらみていくと、面白いビデオがいろいろあります。リンク集にもあげてありますのでまた後日、解説していきたいと思います。
(追記:2010年1月29日および2009年9月23日、および2018年4月1日)
上記のサイトですが有料化されてしまいました。ただ2006年の創刊号から2007年分となぜか2008年分がなくて2009年分がPubMed Central にて無料公開されていますので高校生や中学生、一般の方はまずこちらでビデオをご覧下さい。(上で紹介したiPS細胞の作り方も2010年現在無料公開になっています。ほかのビデオで有料のものは「free trial」をクリックして無料おためしの手続きをして見てみるとよいでしょう。1日だけ無料のトライアルです。)
では無料のPubMed Centralでの見方を説明しましょう。まずここをクリックしてください。
2006年の第1号から2017年の130号までのリンクがでてきます。今回は2007年の10号の部分をクリックしてみましょう。2007 年の一番右下、
(10):402-635 と書いてある部分をクリックして下さい。ざーっと論文のリスト(ビデオのリストです)がでてきたでしょう。
上から4番目のビデオを見てみましょう。発生生物学Developmental Biologyと青色の背景に書かれた部分に
Derivation of Human Embryonic Stem Cells by Immunosurgery
Alice E. Chen and Douglas A. Melton
J Vis Exp. 2007; (10): 574. Published online 2007 December 13. doi: 10.3791/574.
PMCID: PMC2557078
とありますね。 上のArticleと書かれた部分をクリックするとビデオへのリンクがあるページがでてきます。
まず 要旨( Abstract)があり、その次がビデオの画面です。クリックすると再生します。そのすぐ下のダウンロード(Download video fileとある部分)をクリックすると自分のパソコンにビデオをダウンロードできます。ビデオの下には方法Protocolの解説が書いてあり、その下はDiscussion(考察)、 Acknowledgments(謝辞)、References(引用文献)と続いているのは普通の論文と同じですね。
このビデオ(論文)はヒトの胚性幹細胞を抗体と、補体という二つのものを使ってどのように作り出すかの実験方法を見せてくれます。
その他のビデオもいろいろ見てみてください。生命科学の実際の実験を見せてもらったのと同じ効果があります。
高校、中学、一般の方で探すのが面倒というかたは以下のリンクで幾つかお試し下さい。慣れたらいろいろ探して下さい。
RNAの取り方の実験例:
RNA Extraction from Neuroprecursor Cells Using the Bio-Rad Total RNA Kit
Jia Sheng Su and Edwin S. Monuki
J Vis Exp. 2007; (9): 405. Published online 2007 October 31. doi: 10.3791/405.
PMCID: PMC2566323
ニワトリの卵を用いた実験の実際
Windowing Chicken Eggs for Developmental Studies
Matthew J. Korn and Karina S. Cramer
J Vis Exp. 2007; (8): 306. Published online 2007 October 1. doi: 10.3791/306.
PMCID: PMC2562489
上のニワトリ卵の実験法を使った発生生物学の実験例:
Placing Growth Factor-Coated Beads on Early Stage Chicken Embryos
Matthew J. Korn and Karina S. Cramer
J Vis Exp. 2007; (8): 307. Published online 2007 October 1. doi: 10.3791/307.
PMCID: PMC2562490
細胞培養とはどんなものかがわかるビデオ。ヒトの神経の幹細胞の培養と植え継ぎ(継代passaging)
Passaging Human Neural Stem Cells
Steven Marchenko and Lisa Flanagan
J Vis Exp. 2007; (7): 263. Published online 2007 August 22. doi: 10.3791/263.
PMCID: PMC2565844
上のビデオの続き。ヒトの神経の幹細胞の数え方:
Counting Human Neural Stem Cells
Steven Marchenko and Lisa Flanagan
J Vis Exp. 2007; (7): 262. Published online 2007 August 22. doi: 10.3791/262.
PMCID: PMC2565849
| Abstract | Full Text | PDF?139K |
DNAマイクロアレイとはどんなものか。見てから勉強をはじめましょう。
Bacterial Gene Expression Analysis Using Microarrays
Sinem Beyhan and Fitnat Yildiz
J Vis Exp. 2007; (4): 206. Published online 2007 May 28. doi: 10.3791/206.
PMCID: PMC2556170
| Full Text | PDF?89K |
最近はインターネットで小学生向けから一般向け、そして専門家向けと、様々な科学を学ぶ人のためのサイトが提供されています。またテレビ番組にも無料で学べる放送大学のように充実した番組が多いですね。さらに外国の番組とかも衛星放送(CS,BS)やハイビジョン番組、あるいはDVDなどで手軽に見られるようになってきていて、すばらしいです。大学の講義も国内外でいろいろ公開されています。今回は科学のテレビ番組を無料放送しているサイエンスチャンネルを紹介いたします。衛星放送のスカパーででも無料で視聴できますが、まずはネットでストリーミング配信しているいろいろな番組をご覧下さい。小学生から研究者まで楽しめる番組がいろいろあります。宣伝ですが私の出演した番組もストリーミングで視聴可能です(注:2018年3月半ばで配信終了したようですリンクをYouTubeに変更しましたがこれも消えてしまいました。サイエンスチャンネルの都合のようですね。)。糖鎖生物学の入り口の話しとしてご覧いただければありがたいです。
https://www.youtube.com/watch?v=7MCMfA7qaqc
|
Webラーニングサービスは廃止されたようです。(2018.3.31追記)
前回は英語で読める教科書・参考書の紹介をいたしました。日本ではこうしたサービスはまだそれほど普及していません。しかし科学を日本語で学ぶためのオンラインのサービスは驚くほど充実してきています。今日は日本語でつかえる科学の勉強に役立つサイトを一つ紹介します。
日本語による科学の勉強のサイトとしては、Web ラーニングプラザがおすすめです。これは生命科学にかぎらず科学(工学、情報、化学、環境、知財、科学史他)の様々な分野の基礎を一からオンラインで学べる科学技術振興機構が提供する自習教材のサービスです。フラッシュムービーでの解説のあと、クイズが出題され理解度をチェックするという順で学習が進みます。電子ディバイスの基礎や材料力学、塑性加工とか技術者倫理といった人気コースもありますし、生命科学の勉強コースも充実しています。分子生物学や生化学の基礎、バイオインフォマティクスなどいろいろありますので、まだご存じない方は是非、利用してみて下さい。
大学の授業に出席しなくても、大学の授業の基礎的な部分はこれで充分勉強できます。もちろん大学の授業の補助教材としても学生に強く薦めることができる優れたコース集です。
この項目は2018年3月31日に最新の情報にあわせて修正をくわえました。
NCBI (National Center for Biotechnology Information)という米国のサイトにSearch NCBI databases (昔のEntrez アントレです)というサービスが提供されています。このweb siteでは遺伝子や文献、蛋白質の立体構造など様々な生命科学のデータベースを一発で横断的・縦断的に(あるいは個別に)検索することができます。今回は教科書や参考書を検索して読む方法を紹介いたします。
検索窓にキーワードを入れて検索すると論文、遺伝子、本、病気など多数のデータベースを一括して検索して結果をかえしてくれます。Pubmedというのにはキーワードを含む論文のヒット数が表示されますし、右上のBooksにはキーワードを含む教科書などのオンライン版のヒット数が表示されます。オンライン版の本だけを検索したいときには以下のようにします。
右上にあるBooksをクリックするとonlineで読める書籍を検索して読めるページにジャンプします。検索窓に適当なキーワードを幾つかいれて検索を始めると、サイトに登録されている多数の本の内容を検索して検索語を含む本をリストにしてくれます。クリックするとその本が開いて内容を読むことができます。
登録されている本は基本的な医学、生命科学の教科書が網羅されています。
発生生物学の定番教科書であるギルバートのDevelopmental Biology (第6版)や分子細胞生物学の標準教科書であるMolecular Biology of the Cellの第4版、ストライヤーの生化学(第5版)、エッセンシャル糖鎖生物学(第三版、2015年発行の最新版)などなど、生命科学に関わる教科書・参考書がどこでもだれでも、無料で内容を検索して読むことができるのです。
英語の勉強にもなりますのでまだご存知ない方は是非、活用してみて下さい。
|
研究や勉強にはGoogle検索の活用がかかせません。Google検索のコツをゆっくり解説していきます。今日は英文を作成するときの英文校閲のヒントを紹介したいと思います。
「AによってBのような結果になった」と英語で書きたいとき、”A resulted B.”
で良いでしょうか?そうではなくて”A resulted in B.”だったでしょうか。これをGoogleを使って調べてみることにします。英語の論文での使い方をみたほうがよいので、検索するサイトを科学雑誌Scienceのサイトに絞って検索してみましょう。もちろんsite:jbc.orgとかsite:nature.comとかもよいので試して下さい。
サイトの後にコロンをつけて
site:sciencemag.orgとして検索語(複数個も可)を入力することでScienceのサイトに絞った検索が出来ます。
(site:www.sciencemag.orgでもよいです。ただし後者の場合の検索ヒット数は前者より減ります。それはsite:sceincemag.orgとするとstke.sciencemag.org
のようにsciencemag.orgの前がwwwでないものも検索するからです。)
前回紹介した引用符で囲んだ検索と、任意の一語を表すアスタリスク表示を組み合わせて使います。“resulted *” のようにresultedの後にアスタリスクを入れて引用符で囲み、resultedの後にくる任意の一語をアスタリスクで代表して検索するのです。実際やってみると、resulted fromだとかresulted inとかいう用例がヒットします。その例をよんでいくとA resulted in B.というのが適切な用例であることがわかります。
site検索で自分の投稿する論文のサイトを指定して調べると安心です。有名論文サイトの論文はたいてい英文校閲してあるはずだからです。site検索をしない場合には、英語を母国語としない人の書いた誤った用例も検索してしまいますので、その用例をどこの国の人が書いているか、そのような用例がいったい何例ヒットしているかに注意を払うとよいでしょう。少ないヒット数や非英語圏のサイトが中心の用例は要注意でさらに確認が必要となります。