量子生物学の教科書を書いて公開している人がいます。

量子生物学は今盛んに研究されている分野です。ゴードン会議でも量子生物学の会議がとりあげられるようになったのは研究者が増えてきた証だと思います。このゴードン会議に参加していた人が、量子生物学の教科書がまだないという若い人の声にこたえて書いているのがこちらの教科書です。さっき知ったばかりでまだざっと目をとおしただけですが、量子生物学の入門には役立ちそうに思えます。プレプリントサーバーのarxive.orgにアップロードされているモノグラフです。

[Submitted on 14 Mar 2025]
Physical Principles of Quantum Biology
Nathan S. Babcock, Brandy N. Babcock
https://arxiv.org/abs/2503.11747

Cite as: arXiv:2503.11747 [physics.bio-ph]
(or arXiv:2503.11747v1 [physics.bio-ph] for this version)

https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.11747

全部で169ページのモノグラフで、本文は69ページと短く、残りはAIを活用して作られた初心者向けの簡単な用語解説と1754もの文献リストになっています。著者はこんな論文を書いている人です。
https://www.csbj.org/action/showPdf?pii=S2001-0370%2824%2900401-X
YouTubeのチャンネルもあるそうです。
https://www.youtube.com/@drbabcock

米国科学アカデミーの新会員による各自の研究紹介動画が公開されました!

米国科学アカデミー (The National Academy of Sciences)は非営利団体で会員は研究成果によって毎年選出されます(国内、国際会員)。有名な国際誌PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United Stats of America)の発行元としても有名です。ツイートはnitterなら誰でもみることができます。科学関係のツイートが毎日更新されているので是非チェックしてみてください。
https://nitter.net/theNASciences

先日、NASの年会があってそこで選ばれた会員数名による各自の簡潔な研究紹介講演がありました。YouTubeで限定公開されているので是非ご覧ください。
https://www.youtube.com/live/OC5ECHm3v00?
蝶の羽の模様や色はどうして決まるのか?パルサーとはどんなものなのか?結核菌に対する免疫とは?その他動画をまじえたわかりやすい最先端の科学者による研究紹介でとても面白いと思います。講演の内容はこちらにリストされています。

https://nasonline.swoogo.com/NAS162_researchbriefings?

NASのツイートでも、一連の講演が紹介されていました。2つほど埋め込んでおきます。

新学期であちこちの大学で講義動画や講義資料の公開が始まっています!

新学期がはじまって、大学の講義動画や講義資料がたくさん公開されています。
今日はいくつか、そうした動画や資料を紹介します。
たとえば、東北大学の大関真之先生の一連の講義はとても勉強になります。
このブログでも何度も紹介していますが、以下の先生のYouTubeの再生リストから自分にあったものをみつけて一学期、じっくり勉強するとよいでしょう。あちこちのYouTube動画をあさるより、一度このようなしっかりした講義を聴くのが科学の理解への近道だと思います。
先生の講義:応用数学A, B 量子力学B などは当該分野を学ぶ基礎として十二分の講義だと思います。また高校物理をあつかっている動画もあるので受験生にも役立ちます。
https://www.youtube.com/@mohzeki22/playlists

他にも神戸大学の中澤 港先生の次の講義資料も魅力的です。


このブログでもたびたび紹介しているRやそのグラフィカルインターフェイスのEZR(R Commanderのプラグイン)ですが、これらを利用すればたいていの統計解析は簡単にできてしまいます。中澤先生の講義資料は最新のRについての情報がまとまっているので、どんな分野の人にも役立つものです。また実験の計画、データの取得や扱いの注意なども詳しく書かれているので統計解析する前に知っておくべき基礎知識・常識をつちかうのにも最適です。是非ダウンロードしてお読みになることをお薦めします。

写真は散歩途中に咲いていたキンランの花です。毎年4月20過ぎくらいに咲いているのをみかけます。夕方になると花を閉じますが午後2時ごろには大きく花開いていました。小さくてきれいな花です。

九州国立博物館の特別展はにわ を見てきました!

今日は九州国立博物館で開催されている特別展「はにわ」を見てきました。朝一番に入館したのでけっこうすいていてゆっくり観覧することができました。これはすばらしい展覧会でした。はにまるくんの写真の前で記念写真をとっている人もいて楽しい、平和な光景でした。これほどたくさんの有名な「はにわ」が集まっているのを見るのははじめてで、まだ見ておられない方は是非ご覧になることをすすめます。5月11日までの開催(5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館)です。
https://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s72.html

九博のサイトにある以下の動画で予習することをおすすめします!
『特別展「はにわ」を担当研究員がご紹介!』
https://youtu.be/jMv32x7MYLw?

この動画にある2mもある巨大な円筒埴輪や、大きな家の埴輪、挂甲(けいこう)の武人、かわいい動物たちの埴輪など時間のたつのを忘れて見入ってしまうことうけあいです。踊る人の有名な二体のはにわもありますが、踊っているのではなくて傍に馬の埴輪が埋めてあったので、馬をひいている人かもしれないとの説が有力だそうです。

こちらの動画をみてからっ実物を見ると理解がさらに深まります。
『特別展「はにわ」みんなの質問にこたえよう!スペシャル!!』
https://youtu.be/RNH6YclHS6g?

埴輪の本では次の本をお薦めします。埴輪についてのすべてを東京国立博物館の研究員の方がわかりやすく解説しています。うちの奥さんはこの本を読んでから今日 九博にでかけました!

「はにわのヒミツ」
河野 正訓/著山本 亮/著
A5判128頁2000円+税 ISBN 978-4-7877-2415-1
2024.10.30発行[新泉社]
https://www.shinsensha.com/books/6696/

一部の埴輪は写真撮影が禁止されています(撮影禁止表示があります)が、挂甲(けいこう)の武人や動物埴輪などを含むほとんどは写真撮影も可能でした。

無料で使えるオープンソースの画像エディタGIMPを使ってみましょう!

私はAdobe Photoshopのユーザーですが古いバージョンを使っていて最新版のサブスクリプションはしていません。
でも以前はGIMPというフリーでオープンソースの画像エディタもPhotoshopの簡単な代替品として時々使っていました。
GIMPはthe GNU Image Manipulation Program (GIMP)の略だそうです。サイトはこちらです。
https://www.gimp.org/
このGIMPはWindows, Mac, Linux版があって無料で使えるPhotoshopの代替品としてとても優れたものだと思います。サードパーティーのプラグインもいろいろあるようで画像エディタとして部分的にはPhotoshopを超える機能も実装しているそうです。
今年になってようやくGIMPのバージョンアップが完了したとのことで、GIMP 3.0のシリーズ(現在は3.0.2)は、各OS版がこちらからダウンロードできます。
https://download.gimp.org/gimp/v3.0/

GIMPの使い方は日本語ではYouTubeの解説がいろいろあるので検索してみてください。たとえばこちらなどもよさそうです。

『GIMP3.0で大幅に改善して大規模アップデート!Photoshopに近づいた!何が変わったか解説!』
https://youtu.be/_1S0sMwFN04?

この動画をつくっている方の本もあります。Kindle unlimitedにこの本がいっているので、今やっているKindle unlimitedの2か月無料キャンペーン
https://forest.watch.impress.co.jp/docs/bookwatch/sale/2010081.html
などを使って読んでみるのもよいと思います。

メンデルの古典的論文にでてくる7つの形質を支配する遺伝子すべての同定が完了したそうです!

メンデルの7つの形質を支配する遺伝子すべてが同定されました!

Mendelが遺伝学を拓いたとされる有名な論文を読んだことがありますか?このブログでも何度も紹介していますが、日本語や英語版で読むことができます。

「植物の雑種に関する実験」(1866年) 日本語訳は国立国会図書館デジタルコレクションで読めます。
https://dl.ndl.go.jp/pid/12406051/1/262
英語への翻訳はこちらで読めます。
https://academic.oup.com/genetics/article/204/2/407/6072056
この論文は理論生物学の論文ともいえる素晴らしいものですが、メンデルがこの論文であつかっていた7つの形質の遺伝子がいったいどんなものなのかが、ついに全部わかったという論文がでました。7つのうち4つの形質を支配する遺伝子が同定済みだったのですが、残りの3つの同定は難航していました。今回Nature のArticle年て発表された論文では、エンドウマメのゲノム配列の完全解読をおこなっていた中国の深センにある研究所の著者たちの長年の研究をもとに、英国のNorwichノリッジにあるJohn Innes Centreの研究者(こちらには世界中から集められたエンドウマメの品種のコレクションがあり、このコレクションで同定したSNPsとGWASを駆使した共同研究を行ったそうです)と共同で残り3つの遺伝子がすべて同定されたそうです。またそれ以外のエンドウマメの様々な形質を支配している遺伝子の研究の基礎を築いたという意味でも画期的な研究になっています。7つの表現型というのは、豆の丸としわ・さやの色・花の色・茎の長さ・さやの形その他ですが実際にどんな遺伝子かはオープンアクセスの論文ですのでダウンロードしてご覧ください。
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08891-6
遺伝子については
Extended Data Fig. 1: Schematic illustration of the genetic loci for each of Mendel’s seven traits plotted along the seven chromosomes (linkage groups)という図がわかりやすいのでお勧めです。遺伝子は全部異なる染色体上にのっています。

また本文にあるメンデルが解析した実際の表現型の写真ものっているのでとても参考になります。
Fig. 2 :Genetic architecture and genomic diversity of the genes underlying the seven pairs of contrasting traits that Mendel studied in detail.

遺伝学でメンデルの法則の話を習いますが、実際の表現型の写真をみたことがない人が多いのではないでしょうか。この論文はそんな人にもおすすめです。
Natureの紹介記事はペイウオールで全部は読めないので(論文自体はオープンアクセスなので読めます)、雑誌Scienceの紹介記事がおすすめです。Google検索で以下のdoiをいれていみてください。
doi: 10.1126/science.zz3djnc

必見の番組、動画を紹介します。これは絶対みなくては!

東大の理系を卒業し東大大学院の修士を修めた世界的なピアニスト 角野隼斗さんが出演するNHKの番組がアナウンスされました。

なんと、こちらも世界的な数学者、山下真由子さんとの対談だそうです。NHKのサイトはこちら。5月2日と5月7日のEテレでの放送だそうです。これは見なくては!
https://www.nhk.jp/p/switch-int/ts/K7Y4X59JG7/episode/te/JZRKY21213/


こちらは従来考えられていた漸進的な突然変異の集積による進化のメカニズムではない、急激な進化のメカニズムの研究についてのわかりやすい動画です。進化論の書き換えが必要になるかもしれない研究です。これも必見の番組です。
Milstein Lecture 2025: Mechanisms driving the rapid evolution of genomes by David Pellman
https://youtu.be/NN0uWbFb990?

数学を本格的に学ぼうとする時につまづきやすい用語解説の本をおすすめします。

以前紹介したことがある、American Mathematical Societyの無料で読める教科書や講義資料のサイトをまた紹介します。

AMSのOpen Math Notesというサイトには無料の英語の数学の教科書や講義資料がいろいろ公開されていて無料でダウンロードできます。
https://www.ams.org/open-math-notes

このサイトに数学の本を読むうえでまずおさえておきたい証明についての初学者向け解説があったので紹介します。数学での言葉づかいについての注意、定義とは何か、命題とは何かなどの基礎的事項から始まって証明に必要な論理や集合についてとてもわかりやすく解説してある講義ノート(去年の秋の講義ノート)です。これはおすすめの本です。英語ですがAI翻訳を使いながら読む値打ちがあると思います。
Handbook of Mathematical Proof
サイトの講義ノートの紹介文を引用しておきます。

This can be used for an intro to proofs course, or a reference in a proof-based course Designing any guide or text on mathematical proof leads to a discussion of sets first or propositions first. We introduce a little of each first, and then constantly bring the discussion back to categorizing what each kind of thing is, with emphasis on mathematical language.

Edward Kim · University of Wisconsin-La Crosse · Date posted: July 11, 2024

こちらからダウンロードできます。https://www.ams.org/open-math-notes/omn-view-listing?listingId=111405
以前の記事も参考にしてください。

無料で読める英語の数学書や講義資料があつめてあるサイトOpen Math Notesを紹介します。

米国の公共放送PBSのGene(遺伝子)というドキュメンタリーがYouTubeにアップされていました。

米国 Public Broadcasting Service(PBS)の国際放送用チャネル
https://www.youtube.com/@PBSAmerica
に”Gene”という遺伝子と遺伝子に由来する病気についてのドキュメンタリーがアップロードされていました。まだ見ていないのですが4時間程度のドキュメンタリー(part1, part2)で遺伝子について学ぶ動機づけになる動画だと思います。遺伝子研究の歴史や遺伝子についての基礎的事実、ゲノム配列の完全解読の歴史、遺伝子に由来する病気などについて目でみて学べる動画です。ただ大統領が変わって、PBSの予算が縮小されているためn今まで入れなかった広告が頻繁に入るらしいです。

The Gene: An Intimate History – Episode 1 (2020) | Full Documentary
https://youtu.be/3OsWLNqoWLA?

The Gene: An Intimate History – Episode 2 (2020) | Full Documentary
https://youtu.be/b-Af6FqaetQ?

絵で学び絵で計算する量子力学

Professor Bob Coeckeはこのブログでも何度も紹介した圏論を量子力学に応用する教科書や一般向けの本を書いている著名な科学者です。簡単な紹介があったので引用しておきます。
https://www.quantinuum.com/meet-bob-coecke
‍『In addition to his post as Chief Scientist, Professor Coecke leads Quantinuum’s Oxford-based Quantum-Compositional Intelligence research team. The team’s research efforts include work in Quantum Computational Linguistics (QCL) and its practical implementation, Quantum Natural Language Processing (QNLP). Bob is Distinguished Visiting Research Chair at Perimeter Institute for Theoretical Physics, Emeritus Professor at Wolfson College, Oxford University, and a Visiting Fellow at the Computer Science Department and the Mathematical Institute of Oxford University.』
彼はヒルベルト空間を使うスタイルではない、圏論をもとにした図で計算する量子力学の開拓者です。現在は量子コンピュータの研究と量子コンピュータに基づくAIの研究などをしておられるようです。

彼のツイートを引用しておきます。


記事はこちらから読めます。
https://thequantuminsider.com/2025/04/04/picturing-the-future-quantum-workforce-visual-thinking-may-help-break-quantum-education-barrier/
なんと高校生に図式で学ぶ量子力学の教育をおこなったら、通常の課程で学んでいる専門の大学生をしのぐ能力を身につけたそうです。その教育については以下のプレプリントに詳しく書かれています。このプレプリントの付録には、図式と通常の量子力学の言葉との対応が完結にまとめられていて、通常の量子力学を学んだ人が圏論による量子力学との対応を知る上でもとても役立ちます。
[Submitted on 1 Apr 2025]
Making the quantum world accessible to young learners through Quantum Picturalism: An experimental study
Selma Dündar-Coecke, Caterina Puca, Lia Yeh, Muhammad Hamza Waseem, Emmanuel M. Pothos, Thomas Cervoni, Sieglinde M.-L. Pfaendler, Vincent Wang-Maścianica, Peter Sigrist, Ferdi Tomassini, Vincent Anandraj, Ilyas Khan, Stefano Gogioso, Aleks Kissinger, Bob Coecke

Comments: 82 pages, 14 figures. This paper is on the outcomes of the study proposed in this https URL (arXiv:2312.03653)
Subjects: Physics Education (physics.ed-ph); Quantum Physics (quant-ph)
Cite as: arXiv:2504.01013 [physics.ed-ph]
(or arXiv:2504.01013v1 [physics.ed-ph] for this version)

https://doi.org/10.48550/arXiv.2504.01013

圏論や圏論で学ぶ量子力学の本には中平健治 先生の本もでています。私はまだ読んでいませんが先生のこのサイトには無料の資料も多数公開されていて、とてもよさそうです。
https://sites.google.com/view/nakahira/