今日は毎週開講されている神戸大学計算科学教育研究センター提供の遠隔講義、計算生命科学の基礎10の講義の日でした。今日は「タンパク質人工設計の基礎」という講義で、
講師は古賀 信康 先生 (大阪大学蛋白質研究所)でした。タンパク質を設計して天然にない構造のものもつくれるという実例も面白かったですが、なによりも蛋白質の折りたたみ、立体構造のルールを物理化学的な研究で明らかにしたという研究は刺激的でした。またタンパク質のfoldingの原理もよくわかる講義でした。またAlphaFold2のような機械学習のAIは既存のタンパク質の立体構造を学習して予測するため、天然に存在しない新たなタンパク質を作って、それらの構造を予測させると誤ることが多くなる(予測構造と実際の構造とが一致しない)というのもなるほどと思いました。そのAlphaFoldですが、東京医科歯科大学教授の清水 秀幸先生のツイートでさらに強力にバージョンアップしていることを知りました。
AlphaFoldは最近大きなアップデートがあり、精度が大幅に向上し、タンパクだけでなくPDBにあるほぼすべての分子について予測可能です。創薬や新型CRISPR探索にも(一定程度は)使えます。DeepMindチームの記事です。https://t.co/uVllHMwIq0
— H_Shimizu (@biomedicalhacks) November 29, 2023
ツイートにあるサイトをみると、https://deepmind.google/discover/blog/a-glimpse-of-the-next-generation-of-alphafold/
私たちが研究している糖鎖生物学にもこれからずいぶん役立ちそうです。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(糖タンパク質です)の抗体と結合したモデルの動画などもこの記事にのっています。この記事内のRead our progress updateというリンクにある最新情報入りのpdfには、糖鎖付加したタンパク質の糖鎖を含めた構造も予測できるようになっている例や精度についての評価ものっています。
https://storage.googleapis.com/deepmind-media/DeepMind.com/Blog/a-glimpse-of-the-next-generation-of-alphafold/alphafold_latest_oct2023.pdf
もちろん動的な糖鎖の動きを知るのは先の話ですが、とりあえずは糖鎖を含めた蛋白質の構造のスナップショットがうまくいけば原子サイズレベルで予測できると期待できるようです。糖鎖生物学の新しい展開を期待しています。