歴史に残る大数学者ガウスがまだ19歳の学生の時、朝目覚めてベッドから出ようとするせつなに、正17角形の作図法(定規とコンパスで作図する方法)を思いついたというエピソードは有名です。世界的数学者であった高木貞治の「近世数学史談」はこのエピソードからはじまっており、この本は多くの人を数学の道へと誘ってきたといわれています(岩波文庫にはいっていますが品切れとなっていました。中古本は安く入手できるようです。国立国会図書館の個人送信資料にもありますが、1946年版が一番新しくて漢字カナ文なので通読できないと思います)。ギリシャ人は正三角形、正四角形、正五角形、正15角形およびそれらの辺数を二倍にしてできる正多角形―たとえば正六角形、正10角形など―の定規とコンパスでの作図法を発見していましたが、ガウスの時代までの2000年余り、それ以上の発展はありませんでした。ガウスの正17角形の作図可能性の研究はその暗黒を打ち破り、新たな数学の発展を告げる成果だったわけです。「近世数学史談」にはガウスの著した本やガウスの手紙にもとづいてこの発見が生き生きと描写されています。ただ結構むずかしくて私は読み終えられませんでした。新しい入手可能な本では、九州大学におられた高瀬 正仁(たかせまさひと)先生の本「ガウスの数論―わたしのガウス」(筑摩学芸文庫)にも詳しく書かれていますので読んでみてください。https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480093660/
また、英語の本でガウスの正17角形の作図法の発見について高校生向けにやさしく解説してあるOpen Accessの本を見つけたので紹介しておきます。
Mathematical Surprises(Springer Nature 2022)という新刊書です。
高校で習う数学レベルで、多くの驚くような数学の定理や事実を学ぶことができるという本です。
著者のMordechai (Moti) Ben-Ari 先生はイスラエルのthe Weizmann Institute of Scienceの名誉教授で、コンピューター科学のための論理の本やロボット工学の教科書も書いておられるそうです。(Mathematical Logic for Computer Science、Elements of Robotics (with Francesco Mondada))また優れた教育家として次の賞を授賞されているそうです。the ACM SIGCSE Award for Outstanding Contributions to Computer Science Educationおよびthe ACM Karl V. Karlstrom Outstanding Educator Award.
https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-031-13566-8
本のダウンロードは以下からも可能です。
https://directory.doabooks.org/handle/20.500.12854/92235