ヒト糖鎖遺伝子の線虫オーソログの網羅的RNAiと新しい線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBの論文がでました!(2014.8.29)

私達の研究室ではヒトの糖鎖遺伝子の機能をモデル生物線虫C. elegansで研究するため、全ヒト糖鎖遺伝子のオーソログ遺伝子を同定してその網羅的な機能阻害をおこなってきました。秋好さんの論文はその集大成となる論文で、181個の線虫のヒト糖鎖遺伝子オーソログの分類と阻害結果を網羅しています。コンドロイチンの合成遺伝子やヘパラン硫酸プロテオグリカンの糖鎖部分の硫酸化遺伝子を阻害すると卵母細胞の形成が異常になることを見いだしました。さらに大きな発見はN型糖鎖(アスパラギン:一文字のアミノ酸記号でNです。タンパク質のアスパラギンに結合する糖鎖をN型糖鎖といい、一般的な糖鎖修飾です)の合成の初期過程で働く遺伝子群(小胞体の細胞質側で働く脂質Dolicholに結合したオリゴ糖の合成に働く遺伝子群)の機能阻害で、卵母細胞の形成がそこなわれ体長が短くなり、小胞体ストレスが引きおこされることの発見です。小胞体の内腔側で働く遺伝子群やゴルジ体での糖鎖修飾に関わる遺伝子を阻害してもこうした異常はみられませんでした。効果のあった遺伝子はどれもヒトの先天性グリコシル化異常症(Congenital Disorders of Glycosylation: CDG)タイプ1の原因遺伝子なので、線虫をCDG type 1の病気の研究のモデル生物として手軽に利用できることを明らかにした重要な研究成果です。またこの論文では、私達と産総研が共同で作製した線虫糖鎖遺伝子データベース(CGGDB)の作製と使い方についても紹介しています。データベースには今回の論文で発表した成果のほか、ヒト糖鎖遺伝子の線虫オーソログ遺伝子についての世界中で集められた研究成果が簡単に鳥瞰できるように集めてあります。この論文の発表と同時に公開しておりますので是非、使ってみて下さい。

自分たちで使っていますがとても便利です。詳しい使い方はデータベースに後日、アップロードする予定です。またこのホームページでも公開致します。(2014.8.29)