今日のGigazineのニュースによると、
https://gigazine.net/news/20230728-worm-resurrected-permafrost/
シベリアの永久凍土から回収された線虫が4万6000年前のもので、凍結状態から復活して今も元気にどんどん増殖しているそうです。多細胞生物の線虫がこれほど長期にわたって生存していたのは新記録です。この線虫は実験でよくつかわれているC. elegans(シーエレガンス)とは異なる種で、Panagrolaimus属にふくまれる新種です。シベリアのコリマ川の下流の永久凍土から発見されたことにちなんで、Panagrolaimus kolymaensisと名付けられました。
論文はこちらから読めますので興味のある方は読んでみてください。
https://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1010798
C. elegansはダウアー(dauer)とよばれる耐性幼虫になるのですが、この新発見の線虫はダウアーにはなりません。ダウアーについては、次の記事をご覧ください。
この新発見の線虫は、ダウアーにはならないものの、C. elegansがダウアーになるときに必要な遺伝子をいろいろもっています(daf-2, daf-16, daf-11, daf-7, daf-9, daf-12他多数のdaf遺伝子があります)。またC. elegansがダウア―になるときに体内でトレハロース(trehalose)という糖の含有量が急上昇するのですが、この線虫でもトレハロースを合成する遺伝子や関連の代謝遺伝子がすべてそろっているそうです (tps-2やgob-1などの遺伝子)。トレハロースは、C. elegansを凍結するときに加えると、解凍後の生存率が目覚ましく上昇することが知られていて私達もC. elegansの凍結保存にトレハロースを利用していました。おそらく糖の存在が水の水素結合のネットワークに作用して、凍結時の氷晶形成による細胞傷害を抑制するのだと思います。この新発見の線虫は、遺伝子解析から三倍体であること、雄がなくて単為発生で増殖することなどもわかったそうです。
線虫って丈夫ですね。実はC. elegansはスペースシャトルに搭載されて宇宙にいったこともあるモデル生物なんですが、宇宙実験の後、地球に帰還するスペースシャトルコロンビアが空中分解した時の唯一の生存者だったことでも有名です。これについては明日書くことにいたします。