植物の血液型についての論文をみつけました

私が糖鎖生物学の研究をはじめたのは、両生類であるアフリカツメガエルの卵母細胞や受精卵、初期卵割胚の細胞表面にB型血液型物質が存在しており、B型血液型物質が初期胚の細胞接着に働いていることを発見したのがきっかけです。それでABO 式血液型物質には特に興味をもっています。今日は植物にもABO式血液型物質が存在するのかというお話です。以前、糖鎖生物学の入門書籍で植物にもABO式血液型があるという話を読んだことがあります。たしかカエデは紅葉する前後で血液型物質の種類が変わると言う話だったと思います。多くの糖鎖生物学の入門書は、退職の時に学生さんにあげたり図書館に寄贈したりしたので、どの本で読んだのか思い出せません。血液型物質の研究で有名な山川民夫先生に、懇親会で植物がABO型の血液型物質をもっているって本当ですかと質問したことがあるのですが、そんな話はきいたことがないというお答えでした。Google検索では、「植物の血液型」で検索するといくつもweb pageがヒットして植物にも血液型があると書いてありますが、文献があげてないので真偽不明です。さっきおもいついて、国立国会図書館のデジタルコレクションの全文検索で、「植物の血液型」というキーワードで検索すると論文がヒットしました。もちろん植物が血液をもっているわけではないので、ABO(ABH)式血液型物質(の糖鎖構造)が存在するかを血液凝集活性阻止実験や吸収実験で確認している論文です。

「植物の血液型学的研究-4-抗H,抗A,抗B凝集素を阻止する高等植物の種子と果実について / 山本茂 ; 森岡ハツ 」科学警察研究所報告. 30(2)(118号) 86-93
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1781133/8
「植物の血液型学的研究-5-ABO式血液型様活性を有する野菜,果物,香辛料の血清学的性状 / 山本//茂」 科学警察研究所報告. 34(4)(136号) 191-196
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3390226/3

カエデなどにH型物質(これがO型物質のことです。)やA型物質、B型物質が存在すると書かれています。いろんな植物、種、果物、野菜などでの検索も行われています。
論文が見つかって安心しました。ABH式血液型物質については、これからいろいろ解説していく予定です。