2022/4/10の固定ページの記事に書いたように、私が武道に興味をもったのは、昔九大生物学科におられた清水博先生の本を読んだからです。「生命知としての場の論理」(中公新書1333)という本です。この本は最初はとっつきにくく読めなかったのですが、この本でとりあげられている柳生新陰流についての本を読んだりした後、やっと読めるようになりました。清水先生の本「生命を捉えなおす 生きている状態とは何か」がベストセラーになったのでお読みになった方もいるかもしれません。清水先生の本のおかげで、生命科学の研究の役に立つかもと思って、いろんな武道の伝書を読むようになりました。清水先生の「生命を捉えなおす」と言う本はビジネスパーソンに感動を与えて、先生はいろんな企業や政府の会にも呼ばれてお話をされていたようです。企業戦士に影響を与えたといえば、宮本武蔵も世界的ですね。宮本武蔵についてはその著書 五輪書(ごりんのしょ)が、Book of Five Ringsというタイトルで英訳されて世界中のビジネスパーソンに読まれているそうです。日本語で五輪書の原文と現代語訳が読めるのは国立国会図書館の近代デジタルライブラリーにある、この本(宮本武蔵五輪書詳解 1943年刊)が手軽です。また最近使えるようになった国立国会図書館の個人送信資料の中にも五輪書が入っています。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1265872
また、同じ個人送信資料にある日本武道全集の第一巻にも五輪書がよみやすい形で含まれています。これには柳生新陰流、タイ捨流、心形刀流、二天一流などの解説と伝書がいろいろはいっていますので時代劇ファンの方にも興味がもてる本だと思います。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2466845
またNHKの100分de名著シリーズでも五輪書をとりあげていました。
福岡県には巌流島もありますし、2022/2/26の固定ページの記事でも書きましたように、アニメの「鬼滅の刃」の聖地として人気の観光スポットである竈門神社もあります。かまど神社には本殿のとなりに夢想権之助神社でという神社もあります。夢想権之助は、宮本武蔵に挑んで敗れたのですが、この神社近くの宝満山(福岡市民が手軽に登山するのに大人気の山です)にこもって修行し開眼。杖術を創始してそれで宮本武蔵と再度試合して勝ちを収めたとも伝えられています。杖術は福岡藩に伝えられ受け継がれて、現在の警察でも採用されているそうです。言い伝えによると、夢想権之助は宮本武蔵が晩年熊本に居を構えて五輪の書を書いているときにもしばしば訪れて交流していたそうです。海外に紹介された五輪書は、ビジネスパーソンに人気でベストセラーになっていますが、この英訳本のおかげで五輪というのが世界に紹介されたとも言われています。五輪書は、地の巻、水の巻、火の巻、風の巻、空の巻からなっています。地水火風空は五大元素の名前、すなわち物質の5つの構成要素をしめす言葉です。五輪書の各巻の名前はこの5大元素の名前から取られています。五重塔もこの5つの要素をかたどっているはずです。さっき気づいたのですが、この5つの要素というのは近代科学に対応するものを予見しているような名前ですね。私たちが習う物質の4つの状態とは、固体、液体、気体、プラズマです。これは地、水、風、火とよく対応していますね。火はエネルギーに対応しているのかもしれません。また空の巻は、五輪書の英訳ではThe Ether Scrollと訳しているものがあります。空はエーテルを意味しているのかもしれません。前に書きましたように、般若心経の空もエーテルを意味していると考えると、難解な空の解釈がすっきりすると思いました。