実験ノートについて (2)

英国に保存されている実験ノートで最も有名なのはファラデーの日記Faraday’s diaryと呼ばれている
マイケル・ファラデーMichael Faraday(1791-1867)の遺した実験ノート(写真)です。
彼のクリスマス講演からできた本「ロウソクの科学」で名前をきいた方もあるかもしれません。

生まれたのは寛政3年(1791年) で、歌川広重、遠山金四郎や千葉周作などとほぼ同年代の人です。
1859年にDarwinが「種の起源」を出版していますからダーウインとも同時代ですね。76才でなくなったのは1867年、幕末で坂本龍馬の暗殺された年です。化学者で物理学者、彼の研究の上に現代文明が築かれた といってよい大科学者です。

磁気と電流の関係を発見して世界ではじめての変圧器、モーター、発電機を発明。磁気の光に対する影響の初めての発見(ファラデー効果)、電流の化学結合への影響を示した電気分解の実験(電気分解の実験でファラデーという単位名があります)、ベンゼンの発見、初めての気体の液化に成功、 そして遠隔作用と考えられていた電磁気を、近接作用と考える電磁場の概念のさきがけなど、どれ一つをとっても偉大な発見をした人です。たしか後にゼーマン効果とよばれる現象も予想して観測したのですが当時の観測機器の精度が悪く見つからなかったそうです。

重力と電磁気力の関係の探究などチャレンジングな研究も行っています。彼の研究を数学的にまとめることでマックスエルの電磁気学が完成したのだそうです。この大科学者が詳細な実験ノートを遺していると聞くと是非のぞいてみたくなります。写真はイギリスの王立協会にあるファラデー博物館に展示してあった彼の実験ノートの写真(私の撮影)です。1821年の実験ノートで Very Satisfactory, but make more sensible apparatus.と書かれた9月3日分の日記の下にある、9 月4日火曜日の日記を読んでみましょう。きれいな字で書かれているのに感心させられます。
TuesDay Sept. 4 と下線が引いてあり、その下は

Apparatus for revolution of wire and magnet. A deep basin with bit of wax at bottom
and then filled with mercury, a Magnet struck upright in wax so that pole just above the surface of mercury,
then piece of wire floated by cork, at lower end dipping into mercury and above into silver cup
as before, and confined by wire or capillary attraction from leaving the M. Pole
.“と読めます。

下 の写真(これも野村が撮影)に示した世界初のモーターについて述べている実験ノートの部分です。
彼の自筆の絵も入っています。こんな実験ノートをのこせるような実験がしたいものだと思います。