実験ノートについて(1)

科学を研究することはそれを職業にするにしろ、楽しみにするにしろ、とても楽しいことです。その楽しさを分かち合い、そして皆の共通の財産にできるようにするため、そしてせっかくやった研究や実験の結果を忘れないようにするためには、得られた結果はきちんと誰がみても理解できるような形で残しておくことが大切です。

実験ノートをきちんととりながら実験や研究をすること、そしてそれを保存しておくことはとても大切です。左と右下の写真は私達が英国ケンブリッジにあるMRC Laboratory of Molecular Biology (MRC LMB)にいって講演させてもらったときに撮したものです。たくさん並んでいる緑のノートは2002年のノーベル賞医学生理学賞受賞者 Sydney Brennerさんの実験ノートです。線虫シーエレガンス(C. elegans)の研究はここ MRC LMB(分子生物学研究所)で始まりました。線虫に薬剤を与えて遺伝子に異常を引きおこして、突然変異をもった線虫を次々と取得していった様子がこのノートに生き生きと書かれています。最初は突然変異をおこす方法とかもまだまだ試行錯誤だったので、なかなか変異体がとれませんが、やがて条件検討の結果、とれる数がどんどん増えていく様子、そして観察眼も向上していって微妙な異常も見逃さなくなっていき、突然変異体がどんどんとれていくという様子がよくわかります。もう40年以上もたつノートもありますがちゃんと保存されているのですね。イギリスにはもっと古い実験ノートも保存されています。次回はそんな実験ノートの話をしたいと思います。