The Nomura Institute of Glycosciece Blog

野村一也 「科学を学ぶ人のために」 九大野村研ホームページの拡張版です

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新型コロナウイルスとワクチン―Sタンパク質はヘパリンと結合する

新型コロナウイルスSARS-COV-2のワクチンの接種がすすんでいます。3回目の接種も国民の6割を超えたとか。そこで今日は、糖鎖生物学からみたワクチンの話です。現在接種が行われているmRNA(メッセンジャー・アールエヌエーと読みます。エム・アールエヌエーというと専門家風に聞こえます)ワクチンは、分解しにくいように塩基を改変した合成mRNAが主成分です。このmRNAはウイルスの表面に生えているスパイクタンパク質(SpikeのSをとってSタンパク質とよばれます)を作るもので、このmRNAを入れた脂質ナノ粒子を筋肉注射します。注入されたmRNAが、体内で翻訳されてスパイクタンパク質(Sタンパク質)が合成され、これを異物として体が認識するので抗体ができ、その抗体は感染してきたウイルス表面のSタンパク質を攻撃するのでウイルスの感染が成立しなくなるというわけです。下はオープンアクセスの解説(総説)からとった解説図です。総説はこちらから読めます。mRNAワクチンについての概観を得るのに最適の解説だと思います。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8071766/
An external file that holds a picture, illustration, etc. Object name is ijbsv17p1446g002.jpg
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/core/lw/2.0/html/tileshop_pmc/tileshop_pmc_inline.html?title=Click%20on%20image%20to%20zoom&p=PMC3&id=8071766_ijbsv17p1446g002.jpg
上が図へのリンクです。

さて、このワクチンに含まれているmRNAの配列は公表されていますが、ワクチンそのものからmRNAを回収して配列決定した方もいます。その配列はたしかにSタンパク質のmRNAのものであり、間違いなくSタンパク質を体内で作ると期待されます。
https://github.com/NAalytics/Assemblies-of-putative-SARS-CoV2-spike-encoding-mRNA-sequences-for-vaccines-BNT-162b2-and-mRNA-1273/blob/main/Figure1Figure2_032321.fasta

このSタンパク質、実は糖鎖と結合するのですが、この事実はあまり知られていません。Sタンパク質はタンパク質なので、特定の配列のアミノ酸がつらなって配列している分子です。Sタンパク質の中にある、アルギニンなどプラスの電荷をおびているアミノ酸がつらなって並んでいる配列の部分が、細胞表面の糖鎖の一種であるグリコサミノグリカン(グリコサミノグリカンglycosaminoglycan: GAGと略されます)と強固に結合します。グリコサミノグリカンというのはマイナスに電荷を帯びている糖鎖で多くの場合、タンパク質と結合してプロテオグリカンとよばれる糖タンパク質として存在しています。Sタンパク質のアミノ酸配列中にはプラス電荷の多いアミノ酸からなる部分が最低3つあり、これがマイナスの電荷をおびているグリコサミノグリカン(ヘパリンやヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などの糖鎖部分をいいます)と結合するのです。日本やスエーデン、米国など世界各国でSタンパク質がグリコサミノグリカン、特にヘパリンと強固に結合することが論文発表されています。一例としてEsko先生のグループの論文を紹介しておきますので興味のある方はご覧ください。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32970989/
このリンクから論文がダウンロードできます。
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)31230-7?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867420312307%3Fshowall%3Dtrue

その他のレセプターについては以下をご覧ください。https://www.nature.com/articles/s41392-021-00653-w

このSタンパク質は、3つあつまって三量体となって働きます。Sタンパク質が結合するのはACE2というタンパク質(アンギオテンシン・コンバーティング・エンザイム2=つまり血圧調節などに働いているアンギオテンシンというタンパク質を活性型に切断する酵素)です。糖鎖生物学の研究によると、ACE2と結合するとき、Sタンパク質は先ほど述べたプラス電荷の多い部分を利用して、さきほど述べたグリコサミノグリカン(プロテオグリカンなど)とも結合して感染が成立するそうです。
すなわち新型コロナウイルスの結合にはACE2とグリコサミノグリカン両方が必要とされています。興味深いことに、このグリコサミノグリカンとの結合配列ですが、以前流行したSARSやMERSではアミノ酸配列が異なっており、今回のウイルスほど結合力が強くなかったようです。SARSやMERSウイルスがグリコサミノグリカンと結合するという報告もなかったのではないでしょうか。

以上まとめると、Sタンパク質は体内のグリコサミノグリカンとよばれる糖鎖と強力に結合します。論文によるともっとも強固に結合するのは硫酸化されて強いマイナス電荷をおびているヘパリンだそうです。新型コロナウイルスが感染する血管の上皮細胞(血管内皮細胞)はプロテオグリカンに覆われていますし、肺もプロテオグリカンが豊富な器官です。新型コロナウイルス感染症が肺と血管の病気と言われる理由がこのへんにあるわけです。

そこで思いつくのは感染を阻害するにはSタンパク質に結合するグリコサミノグリカンを血中にいれてやるという治療法です。血中にはいったグリコサミノグリカンはウイルスのSタンパク質にべたべたとくっつくので、ウイルスの感染を阻害できるはずです。実際、ヘパリンを注射すると感染が阻害されることがわかっています。

ヘパリンは血液凝固阻害剤(ヘパリンはアンチトロンビンやその他の成分と結合して血液凝固を阻害するので血栓ができそうなときに予防と血栓溶解のためによく用いられます)として医療で日常的に利用されているグリコサミノグリカンで、5つの糖が並んだ糖鎖からなるヘパリンが普通に治療には使われているようです。ヘパリンはマスト細胞(肥満細胞)という免疫系の細胞が細胞質内に大量にたくわえている生理活性分子で、マスト細胞は他にヒスタミンや血小板活性化因子なども含んでいて、アレルギー反応に関与する重要な細胞です。この肥満細胞は肺に多いですし、肺にはプロテオグリカンも豊富です。肥満細胞の分泌するヘパリンは血栓の生成を抑えるはたらきが強いグリコサミノグリカンです。抗凝固作用はヘパリンが最強で、ヘパラン硫酸プロテオグリカンと呼ばれる一群のプロテオグリカンの抗凝固作用をしのぐ強さです。

以上の知識をもってワクチンについて考えてみましょう。
ワクチン接種でSタンパク質が体内にできると、三量体になってそれぞれがヘパリンあるいは体内の別のプロテオグリカン(たとえばヘパラン硫酸とかコンドロイチン硫酸)と結合するでしょう。可能性として考えられるのは、
1)これによってヘパリンやプロテオグリカンの体内での減少が引き起こされるかもしれません。ヘパリンへのSタンパク質の結合によって、ヘパリンの制御ネットワークが影響されて血栓につながる可能性はないでしょうか。
2)あるいは、Sタンパク質とヘパリン(あるいはその他のプロテオグリカン)の複合体に対して自己抗体ができたりする可能性も思いつきます。

ウイルス感染にともなっておこる血栓がワクチンでもおこっているとしたら、ワクチンの合成するSタンパク質を原因として疑うのは自然です。そのへんのところは、ちゃんと調べられているのでしょうか。専門家の方々に教えてもらいたいところです。

新型コロナウイルスは血管の内皮細胞(血管をつくっている上皮細胞を内皮細胞とよびます)を攻撃することが知られています。そして内皮細胞はびっしりと糖衣(とうい=グライコケイリックス)でおおわれており、糖衣の成分としてヘパラン硫酸などおプロテオグリカンが存在するのでこれとACE2 の複合体にウイルスがくっつくわけです。
一つ面白い論文を紹介します。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7347485/
この論文によるとSARS-COV-2のSタンパク質は以前流行したSARSやMERSウイルスよりもはるかに強くヘパリンと結合するそうです。肺にはヘパラン硫酸やコンドロイチン硫酸が豊富に存在し、ウイルスがこれらと結合する可能性は高いそうです。さらに肺には多量のmast cellが存在しており、この細胞は上で述べたように大量のヘパリンをふくんでいます。ヘパリンはヘパラン硫酸やコンドロイチン硫酸よりも強くS タンパクに結合することもわかっています。要するに新型コロナウイルスのSタンパク質の単量体や三量体は、従来のコロナウイルスよりはるかに強くヘパリンやその他のグリコサミノグリカンに結合するのです。また興味深いことに肺ではSARS-COV-2のレセプターであるACE2タンパク質の発現は極めて少ないとされています。肺での感染には肺の細胞表面に存在しているグリコサミノグリカンが、ACE2よりもさらに大きく感染に関与しているのかもしれません。

Sタンパク質がグリコサミノグリカンに結合するための結合領域は、次の配列です。The SGP contains three putative GAG-binding motifs with the following sequences: 453–459 (YRLFRKS), 681–686 (PRRARS), and 810–816 (SKPSKRS), which we define as sites 1, 2, and 3, respectively.
これは以下の論文(下のリンクから無料ダウンロード可能です)からの引用です。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7347485/

はやぶさ2の持ち帰った小惑星サンプルから20種以上のアミノ酸が検出されたそうです!

暗いニュースばかりのこの頃でしたが、今日、はやぶさ2の持ち帰った小惑星リュウグウの砂から20種類以上のアミノ酸が検出されたと言う報道をNHKニュースでみました。
新聞はとっていないのでさっそくネットで朝日新聞を確認しました。さわりだけ読める有料記事…。でも無料公開されているさわりの部分によると、グリシンやイソロイシン、バリン、グルタミン酸などもみつかっているようですね。小惑星にアミノ酸がみつかったのははじめてだそうで、画期的な発見です。石質隕石で見つかっている糖もあるのではないかと思います。そして糖鎖もみつかるのではないでしょうか。欲を言えば、Fred Hoyleの唱えていたようなバクテリアなども見つかるといいのですが。近く論文発表されるとかで、とても楽しみです。
リンクははやぶさ2のサンプルの写真ののっているページです。上の写真もこのJAXAのサイトに載っています。
https://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20201225_samples/index.html

Glycobioinformaticsの動画を紹介します―NIH videocastです

昨日は糖鎖生物学へのバイオインフォマティクスの応用Glycobioinformaticsについて書かれた、創価大学の細田 正恵 先生と木下 聖子 先生が書かれた日本語の総説を紹介しました。日本の研究については先生がたの総説を手掛かりに、GlyCosmos Portal https://glycosmos.org/ などからいろいろたどっていくことができますので、後日紹介します。

今日はこの季節、例年恒例行事となっている、NIH videocastのGlycobiology関係のシンポジュウムの紹介です。今年の4月26日から2日にわたって行われた講演会で、NCBI, EMBL-EBI, UniProt, PDB, CAZy, Gene Ontology などのデータベースを使っているが、糖鎖生物学が専門でない人向けに行われたGlycobioinformaticsについてのおすすめの講演会です。是非ご覧ください。どちらのビデオも+Moreと書かれている部分をクリックするとダウンロードリンクが出てきますのでダウンロード可能です。超高画質でダウンロードできますので、ダウンロードしてゆっくりご覧になるのをお勧めします。Caption textもダウンロードできますので、字幕付きでダウンロードした動画をみることもできます。
Glyco-Informatics at the Interface of Disease and Data – Day 1
https://videocast.nih.gov/watch=45185

詳しいプログラムこちらにあります。
https://mregs.nih.gov/nigms/a5lb-d131
Glyco-Informatics at the Interface of Disease and Data (Day 2)
https://videocast.nih.gov/watch=45187

「糖鎖関連インフォマティクスへの入り口」という総説がでています。おすすめです!

糖鎖生物学の有用なリンクを紹介します。「糖鎖関連インフォマティクスへの入り口」という題の総説が、JSBi Bioinformatics Reviewというオープンアクセスの総説誌にでていて誰でも読めます。糖鎖配列をデータベースで扱う時の表記法なども詳しく解説されていますので、糖鎖に関心のある方には必須の知識が学べる良い総説です。是非読んでみてください。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbibr/2/1/2_jsbibr.2021.10/_html/-char/ja
この総説誌は 特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会 https://www.jsbi.org/が発行しているもので、糖鎖に限らずバイオインフォマティクス一般の興味深い総説が掲載されているのでおすすめです。

糖鎖生物学の教科書Essentials of Glycobiologyの最新版(第4版)がオンラインで公開されました。

糖鎖生物学の教科書Essentials of Glycobiologyの最新版(第4版)がオンラインで公開されました。
Essentials of Glycobiology [Internet]. 4th edition.
Varki A, Cummings RD, Esko JD, et al., editors.
Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 2022.
これは糖鎖生物学の標準的な教科書ですので是非オンラインで読んでみてください。Cold Spring Harbor Laboratory Pressから書籍としても販売中です。ブラウザでよむので、Life Science Dictionaryを使って辞書を引きながら読むことができます。オンライン版のリンクです。また
こちらは印刷に適したオンライン版の一例です。上の行にあるリンクで好きなページを表示して、ページの右上にあるViewsのところにあるPrint Viewをクリックすると表示されます。

今回の最新版では、表紙が新型コロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質がウイルスの膜に埋め込まれた状態を示す絵になっています。
左の図はスパイクタンパク質のアミノ酸鎖をシアンで示しており、それに糖鎖がついている様子を様々な形と色の単糖の表記で表しています。右はその糖鎖が空間的に揺れ動いている様子を1マイクロ秒にわたって重ねた結果を示しており、分子動力学によるsimulationの結果のフレームを重ね合わせたものです。濃い青色が糖鎖が動き回っている空間的範囲を示しています。糖鎖がグリカンシールドというシールドを作っている様子がわかります。そしてそのシールドから、にょきっと上に抜け出ている (スパイク蛋白のてっぺんの部分の)シアン色で示しtのタンパク質骨格部分が、ACE2に結合する部分でいわゆる、レセプター結合ドメイン(RBD)です。ウイルスの抗体やリンパ球からの攻撃回避手段としてのグリカンシールドを目で見えるようにした表紙ですね。

生体分子系の分子動力学シミュレーションデータの解析入門―動画の紹介です。

今日は動画を一本紹介します。今年の2月に行われた第4回オンラインサロン「スパコンコロキウム」講演動画
題名:生体分子系の分子動力学シミュレーションデータの解析入門
講演:松永 康佑(埼玉大学大学院理工学研究科)

この動画では松永先生が、分子動力学シミュレーション(Molecular Dynamicsという言葉からMDと呼ばれる解析です)について学部4年レベルで解説してくださっています。MD解析の基本の解析の後、データの解析法、解析例をわかりやすく説明してくださっています。一時間弱の動画ですので是非ご覧ください。」https://youtu.be/xQWCA7vWLLE 
MD解析は以前の記事で紹介したように、新型コロナウイルスが細胞表面のレセプターに結合するとき、糖鎖をスイッチとして結合、侵入を行っていることを明らかにした手法です。現在さまざまな生命科学の解析に使われていますので学んでそんはないテーマです。

癌の糖鎖生物学―NIH videocastの紹介です

秋が深まってきたようで、近所では稲刈りの真っ最中です。今日からこのブログのスタイルをちょっと変更して、短い記事をこまめに投稿していこうと思います。長い記事は書くのに時間がかかるので、こちらは今までと同じ頻度になると思います。

いつも紹介しているNIHのvideo castのサイトに今月(2021年)9月16日と9月17日にわたって開催されたGlycobiology of Cancerという講演会の動画リンクがアップロードされています。初日の16日の分がこちら2日目の17日の分がこちらにありますので画面左下の+Moreの部分をクリックして開く画面で、Downloadのボタンをクリックしてダウンロードしてご覧ください。画質はビットレートで、1240k、1440k、1840kの三種類が選べます。ダウンロードした動画は、f4vファイルという形式で作成されており、1840kの場合は2ギガちょっとのサイズですのでダウンロード先の空き容量を確かめてからダウンロードしてください。f4vファイルはMPC-HCなどの無料版動画プレーヤーで再生できます。英語がちょっとと思われる方は同じDownload画面に、スクリプトのダウンロードリンクもありますので、まずは英語の講演のスクリプトをダウンロードして、それを眺めながら自分の興味のある講演だけをみるとよいと思います。
下には講演の演目を並べておきます。

一日目(September 16, 2021)1:00-5:00p.m., EDT
Session I: Cancer Progression & Metastasis(Chair, Dr. Karl Krueger, Program Director, NCI)
1:00p.m., Dr. Gerard C. Blobe, Duke University Medical School
Loss of ALK4 Function Promotes Cancer Progression Through Reprogramming of Receptor Glycosylation
1:30p.m., Dr. Kevin Yarema, Johns Hopkins Medical School
Metabolic Glycoengineering Labeling of Sialic Acid for Early Cancer Detection
2:00p.m., Dr. Prakash Radhakrishnan, University of Nebraska Medical Center
Cancer-associated Short O-glycans in Pancreatic Cancer Malignancy
2:30p.m., Dr. Charles Dimitroff, Florida International University
The Role of Hypoxia Driving Melanoma Glycobiology Signature

Session II: Diagnostics & Therapeutics(Chair, Dr. Neeraja Sathyamoorthy, Program Director, NCI)
3:15p.m., Dr. Joseph Contessa, Yale University Medical School
Developing an Inhibitor of N-glycosylation for Cancer Therapy
3:45p.m., Dr. Steven Banik, Stanford University
Targeted Protein Degradation from the Extracellular Space
4:00p.m., Dr. Mia L. Huang, Scripps Department of Molecular Medicine
Tools to Discover and Surveil Glycoconjugate Targets in Cancer Biology
4:15p.m., Dr. Dannielle Engle, Salk Institute for Biological Studies
Interception of the Aberrant Glycan CA19-9 in Pancreatic Disease
4:30p.m., Dr. Edgar Engleman, Stanford University School of Medicine
Targeting Dectin-2 for Tumor Immunotherapy
5:00p.m., Adjourn

二日目(September 17, 2021)1:00-5:15p.m., EDT
Session III. Cell Signaling (Chair, Dr. Neeraja Sathyamoorthy, Program Director, NCI)
1:00p.m., Dr. Mauricio Reginato, Drexel University
O-GlcNAcylation: Linking Signaling and Metabolism in Cancer
1:30p.m., Dr. Virginia Shapiro, Mayo Rochester
ST8Sia6 Promotes Tumor Growth in Mice by Inhibiting Immune Responses
2:00p.m, Dr. Anita Hjelmeland, University of Alabama Birmingham
A Protumorigenic Role for ST6Gal1-Mediated Sialylation in Brain Tumor Initiating Cells
2:30p.m., Dr. Thomas Clausen, University of California San Diego
Binding of Malarial VAR2CSA to Oncofetal Chondroitin Sulfate Depends on Sulfation and Ligand Accessibility

Session IV. Glycoproteomics & Informatics (Chair, Dr. Karl Krueger, Program Director, NCI)
3:15p.m., Dr. Richard Drake, Medical University of South Carolina
Integrated Workflows for Carbohydrate Antigen Immunohistochemistry, N-glycan Imaging Mass Spectrometry and Targeted Glycoproteomics on the Same Tumor Tissue Slide
3:45p.m., Dr. Stacy Malaker, Yale University
Revealing the Cancer-Associated Mucinome
4:00p.m., Dr. Hui Zhang, Johns Hopkins School of Medicine
Characterization of Human Cancers by Glycoproteomics
4:30p.m., Dr. Raja Mazumder, George Washington University
Exploring Cancer Mutations and its Effect on Glycosylation Sites Using GlyGen Supersearch
4:45p.m., Dr. Lingjun Li, University of Wisconsin
Development and Application of Chemical Tags for Quantitative Glycomics and Glycoproteomics
5:15p.m., Adjourn
今日も長くなりましたが、面白そうな講演なので是非聴いてみてください。

英単語の発音を調べるサイト―FASTA, GWAS, RNAseq, glycocalyx, Entrezなど正しく発音できますか?

毎日うだるような暑さですがお元気でしょうか。今日は英語の話です。
英語で発表しようとする時や、会話のとき、この単語の発音でいいのかな?と思うことがよくあります。そんなときはYouGlishというサイト(リンク集にいれてあります)にアクセスして、検索窓に発音を調べたい単語を入れて、Say It!というボタンを押しましょう。するとYouTubeの音声コーパスからその単語を含む動画を選び出して再生してくれます。動画の下には、その単語を含む文(字幕)が表示されます。いくつかの動画をみて比較したいときは、次の動画のボタンを押すと別の動画が同様に再生されます。これは便利なサイトです。Improve your English pronunciation using YouTubeというタイトルのサイトです。

ブックマーク必須のサイトですので、是非試してみてください。
以下はこのサイトを使ってみるための 練習問題です。それぞれの単語を検索窓にいれて発音を調べてみてください。面白い動画も見つかると思います。

RNAseq  (アール・エヌ ・エー・セックという人が多いですが‥本当はどう発音するでしょう)
glycocalyx (細胞表面を覆っている糖衣)
sialic acid  (シアル酸)
GWAS (ゲノムワイド関連解析―この解析でABO式血液型物質合成遺伝子と血液凝固に関係があることや、新型コロナウイルスの劇症化とABO式血液型が関連することも解明されています)
FASTA  (塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列を記述する標準記載形式です。ファスタという発音も正しいですが、ファストエイと読む人も多いです)
Entrez (NCBIのデータベースの入り口ですが、フランス語として読むようです), genome (ゲノムですが英米人の発音はどうでしょうか?)
Lucretius (ルクレチウス)
などなど、いろいろ遊んでみてください。

出てくる動画は、基本的なものが選ばれているので、動画をはじめから見るのも勉強になりますよ。

写真は散歩の途中でみつけた錦鯉です。なんと川の中を泳いでいます。梅雨入りのころには上流500メートルあたりに泳いていましたが、梅雨の増水で流されたようで少しづつ下流へ移動して今は橋の下で悠々と泳いでいます。これを書いている最中に町内で野生のサルが出没しているので出会ったら家の中に避難するようにという放送が入りました。イノシシやタヌキは時折見かけますが、サルは怖いですね。京都の家の柿の木には毎年サルが実を食べにやってきていました。飼っていた犬が木の上にいるサルに吠えて、まるで絵本のような情景でした。近くの駅では、小学校の下校時にサルが電車の駅のベンチに座っていて、子供たちが逃げるようにして電車に乗り込んでいたそうです。昔の話です。

あけましておめでとうございます!2021年迎春

新年あけましておめでとうございます。昨年は新型コロナウイルスに社会がひっかきまわされた一年でしたが、今年はもとの平穏な社会がもどってくることを願っています。元旦の今日は、新型コロナウイルスについて詳しく解説したパンフレットと、トランプ大統領などの治療に使われた新型コロナウイルスに対する抗体医薬品について紹介します。

このブログでもコロナウイルスについては何回か触れましたが、ここに「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第4.1版」という医療関係者向けの厚生労働省発行の手引きがあるのをみつけました。どうやってPCRをやるのかとか、潜伏期間はどれくらいとか、症状や、マスクや消毒の効果などなど、各自の知識に応じて興味深く読むことができる内容です。読むと新型コロナウイルス感染症の全貌がわかるのでダウンロードして手元に置いておくのをおすすめします。

Google検索していたら、以前の記事で紹介したVir Biotechnology社の抗体医薬品は第3相の世界規模の試験に入ったのがわかりました。またニュースによると(英語のリンクです。日本語の記事は以下を参照してください)同じ記事で紹介していたvaccinal effect (おおざっぱにいえば抗体を投与した後、まるでワクチンをうたれたような防御効果がでる現象です)がインフルエンザウイルスに対する抗体に関して確認されたという論文を、同社が雑誌Natureに載せているそうです。このNatureの論文についてはここに日本語による紹介の記事をみつけましたのでリンクしておきます。またこちらにもわかりやすい日本語での紹介があります。この論文ではウイルスや癌細胞を殺す抗体(ウイルスや癌細胞にある特異的なタンパク質や糖鎖に対する抗体で治療用に使う抗体です)の根元の部分のアミノ酸配列に3箇所のアミノ酸配列変異、いわゆるGAALIE突然変異を導入するという手法を使っています。GAALIE突然変異というのは、G236A/A330L/I332Eの変異から “GAALIE”と名付けられた変異のことす。抗体の研究で有名なKabatさんのデータベースでの抗体のアミノ酸配列の番号づけ(EU index in Kabat )で、Fc領域にある236番目のアミノ酸グリシン(G)をアラニン(A)、330番目のアラニン(A)をロイシン(L)、332番目のイソロイシン(I)をグルタミン酸(E)に変化させた抗体を作成することです。

この三箇所の変異を導入した抗体を人工的に作って投与したらインフルエンザウイルスに対する強いvaccinal effectが観察されたそうです。

このGAALIE突然変異によるvaccinal effectはもともと癌の治療薬として使われた抗体の研究で見つかりました。現在利用されている多くの腫瘍マーカーは糖鎖です。膵臓癌や胃癌、大腸癌などの診断に広く活用されている腫瘍マーカーとしてCA19-9(シーエーナインティーンナイン)というのがあります。これは4つの糖が結合した糖鎖でシアリルルイスa (Sialyl Lewis A (sLeA))と呼ばれる糖鎖(シアル酸がついた糖鎖でシアリルルイスエーと読みます)のことです。この糖鎖の発現がこれらの癌で高まることから、この糖鎖は極めて有用な腫瘍マーカーとして、現在臨床検査で活用されています。

この糖鎖と結合する抗体を投与することで癌細胞を殺す治療法が研究されていました。この治療用のシアリルLewis aに対する抗体の根元部分(Fc部分)にGAALIE突然変異を入れた抗体を作って投与すると、vaccinal effectがみられることが発見されて論文になっています。ここにロックフェラー大学の特許へのリンクがあります)。最初に紹介したNatureの論文では、インフルエンザウイルスに対する抗体で、このアミノ酸配列の三か所での改変を行うと、インフルエンザウイルスに対する高い免疫効果がみられたそうです。同様の改変はもちろんSARS-CoV2の治療抗体でも既に実施されています。

このように新型コロナウイルスに対する治療用抗体薬品の開発もすごい勢いで進んでいますので、COVID-19に感染しても抗体で治療することが容易になる日も近いと思われます。ワクチンの開発もすすんでいますし、今回 phase IIIに進んだというのを紹介したFc部分を改変したヒト型モノクローナル抗体も巨力な治療効果が期待されるので、ちょっと明るい希望が見えてきた元旦だと思います。みなさんもどうぞゆっくり休んで英気を養って、コロナにまけないように今年もがんばっていきましょう。

お正月ですので、写真は床の間の掛軸とハイビスカスの花にしました。般若心経の掛軸を飾っています。

ヒトの細胞の世界:世界で一番詳しい解説図が公開されています

世界一詳しいヒトの細胞の図解が2018年に公開されています。細胞を構成している分子についての知識は飛躍的に増えていて、X線結晶構造解析、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance: NMRと略します)、クライオ電顕などを使って、細胞内での生体分子の様子がずいぶんわかってきました。その成果の集大成の図といえるでしょう。

こんな図です。きれいですね。秘密の花園みたいにきれいです。図には二つの細胞が描かれています。図の右上隅の細胞は、カドヘリンを介して画面のほとんどを占めている細胞と接着しています(この記事の下から二番目の図にカドヘリンのある場所がしめしてあるのでご覧ください)。画面左上からカドヘリンによる接着部位に向かって広がっているのは細胞膜とその膜上および膜外(細胞外基質)にあるいろいろな分子です。画面左下の黄色いバスケットのように見える部分(核膜孔)の周りの膜は、核膜などでその下は核の内部です。青い紐はDNAでいろんな転写因子も描かれています。

Cellular landscape cross-section through a eukaryotic cell, by Evan Ingersoll & Gael McGill – Digizyme’s Molecular Maya custom software, Autodesk Maya, and Foundry Modo used to import, model, rig, populate, and render all structural datasets
こちらには同じ図ですが、図のあちこちをクリックすると分子の名前だとか分子の詳しい説明などがみられる図(クリックしてサイトを開いてみてください)が掲載されています。ページを開くと上の図が大きく表示されていますが、下に6枚、上の図の部分図が表示されています。絵で描かれている分子の部分をクリックすると、分子の名前が英語で表示され、ダブルクリックすると分子の情報を英語で詳細に書いてあるページが開きます。以下の図はこのサイトの使い方の一例です。
図の中の細胞と細胞の接着部位にある分子をクリックしてみましょう。

マウスカーソルが指に変わって、n-cadherinという分子名が表示されます。これはN-cadherinです。

下の図に示すように、各図の左上にSelect a pathwayと書かれているプルダウンメニューがあります。プルダウンして、Cell Structureを選んでみましょう。以下のような細胞の構造に関わっている分子とその分子名が一斉に表示されます。これでチューブリンだのアクチンだのがどこにあるかが一目瞭然ですね。それぞれの分子をクリックすると分子の解説ページが開きます(何故かN-cadherinの場合は開きませんでした)。

この図で灰色っぽい白に表示されているのは、細胞膜です。上の細胞と下の細胞が結合している部分にN-カドヘリンがびっしり膜から生えているように見えるのがわかると思います。この接着部位は、接着結合(adherens junctions)あるいはその一例である 細胞をぐるっと取り囲む接着帯(adhesion beltあるいはzonula adherensとも言う)と呼ばれています。図の細胞膜の表面(図の左上のすみのほう)には、プロテオグリカンの一種であるperlecanが描かれています。図をひらいてみていろいろクリックしてみて細胞がどんな分子で構成されていて、それぞれの分子がどこにあるかなどをみてみてください。
このMcGillさんたちが作った図では分子の密度は実際のものより薄まっていると書かれています。実際はもっと細胞内は分子が込み合っているようです。