福岡は雪です。―リンク集の改訂と英語の辞書と教科書の紹介:大学図書館を活用しよう その3です― (2016.1.25)

今年のお正月は3月下旬から4月上旬なみの温かい日もありましたが、一昨日からは最高気温が氷点下という40年ぶりとかの寒波に見舞われています。私たちのいる九大伊都キャンパスへはバスが走っているのですが、降雪で運休とのことで大学の授業は休講、予定されていた会議は休会となりました。そこで本日はこのサイトのリンク集を見直して、リンク切れなどを修正し、廃止されたサービスは代替のサイトに変更しましたのでお知らせします。変更したリンクには、無料で使えるFirefoxの機能拡張であるWeblioの辞書を自動でひいてくれるもの(webliopane)など目新しいものもありますので、ご覧ください。
今日は英語の勉強に役立つ辞書と論文発表やプレゼンについての本をいくつか紹介したいと思います。: 私はiPadも使っていますが、iPadで一番役にたっている英和・和英辞書はウイズダム英和・和英辞典2というアプリです。英語を書くときに語法をチェックするのに便利です。また英英辞典アプリはいろいろ試しましたが、論文を書いたり本を読んだりするのに最も便利(ほかの学習用辞典などではのっていない、知りたい意味がたいてい書いてあるという)な英英辞書アプリはMerriam-Webster Dictionary HDです。広告のでる無料版もあるはずですので一度試してみてください。九大の人は図書館のJapanKnowledge Libというサービスにアクセスすると、百科事典のほか、ランダムハウス英和辞典、コビルド英英和などのほか、日本大百科全書なども検索、利用できますので参考にしてください。 また研究社のオンライン辞書(リーダーズ+プラス、ルミナス、新英和、新編英和活用大辞典、その他いろいろ)も九大の人は利用できます。
さらに、Oxford English Dictionaryという権威ある英英辞典も九大の人は使えますので、試してみてください。
最後に英語での情報発信の本ですが九大の契約しているSpringerの電子ブックからは以下のような本がダウンロードして読めますので利用してみてください。Adrian Wallworkの本です。

English for Academic Research: Grammar Exercises
English for Academic Research: Vocabulary Exercises
English for Academic Research: Writing Exercises
English for Research: Usage, Style, and Grammar
Presentations, Demos, and Training Sessions
Meetings, Negotiations, and Socializing
Email and Commercial Correspondence
Telephone and Helpdesk Skills
CVs, Resumes, and LinkedIn
User Guides, Manuals, and Technical Writing

新しいPowers of Ten :ものの大きさの旅 プランク長から宇宙の果てまで 大学図書館を活用しよう―その2です(2015.06.12)

まず7月6日(月曜日)、7月7日(火曜日)に開講される三谷昌平先生の特別講義開講のお知らせです:学部3年生も聴いて得るところが多い講義ですので多数の学生の聴講をすすめます。

東京女子医科大学の三谷昌平先生をお迎えしての特別講義が7月6日,7日の2日間箱崎で開講されます。「線虫のゲノム機能解析と医学・生命科学への展開」というタイトルで,線虫C. elegansを全く使ったことのない学生にも、本格的に研究している研究者にも役立つ講義をしていただきます。学部生から大学院生に最適の講義ですので、是非聴講におこしください。

線虫の飼育と保存,形態や細胞系譜,遺伝様式にはじまりトランスジェニック解析・RNAi・遺伝子破壊から線虫の表現型など線虫を医学・生命科学にこれから使ってみようかなと思っている医師医学研究者・学生に大いに役立つ講義です。

The Scale of the Universeというweb pageをみつけました。これは昔、本ででていたPowers of Ten の最新版のようなものです。

Firefoxではみられないので、ブラウザをIEにかえてここにアクセスすると、Adobe Flash Playerの使用を許可しますかという画面がでるので許可してから、利用してみてください。AppleのiOS版もある(120円)そうですので、そちらをみるほうがいいかもしれません(2018年4月3日追記)
身近なものの大きさからウイルス、核酸、αヘリックスや水分子、原子、原子核など小さなもの。そして家やエッフェル塔、地球や土星、オールトの雲、マゼラン星雲から宇宙のはてまで、interactiveに大きさのスケールを体感させてくれるホームページです。3 メートルもあるミミズとか,顕微鏡でみることができる巨大なウイルスMimivirusとかも載っています。
細胞の大きさといえば、細胞生物学の授業でも先日紹介した本:GoodsellさんのThe Machinery of Life (second edition)という本が面白いと思います。細胞の構造を実際のサイズで描いたカラーの図が満載の本で,細胞内部がけっこう混み合っているというのがよく分かります。翻訳本は「生命のメカニズム―美しいイメージで学ぶ構造生命科学入門」というタイトルで今年発行されました。英語の本でよければ九大関係の人は学内からあるいはSSO-KIDとパスワードで自宅などからアクセスして一冊まるごとダウンロードできます(2016.1.29注:去年は可能でしたが契約変更のためもうダウンロードできなくなりました!残念です)。 前に紹介したようにSpringer社の多くの書籍はhttp://link.springer.comから,無料でダウンロードできます。

下は上のリンクからGoodsellさんの本をダウンロードできるページにいったときの写真です。

大学図書館はいろんなサービスを提供しています。

今日は大学の中央図書館で読める日本語の本の紹介です。丸善eBook Libraryをクリックするといろんな本がオンラインで読めます。TOEIC対策本や就職活動に役立つ本、数学や生命科学の本からピケティの21世紀の資本だど文科系の本まで、多くの本が大学図書館経由でオンラインで読めます。すこしづつダウンロードすることもできます(一回に最大60ページまで)ので九大関係の方は是非試して下さい。たとえば以下の本はどうでしょう。そのほか、分子生物学講義中継など羊土社の本などもありますので、ブラウズしてみてください。英語の冠詞の本だの就職関係の本、iPadの本などなどいっぱいありますよ。以下は読める本のタイトルの例です。

遺伝統計学の基礎 ―Rによる遺伝因子解析・遺伝子機能解析―

おもしろ遺伝子の氏名と使命

いかにして問題をとくか・実践活用編

Microsoft Excel 2013対策テキスト&問題集 WordやPowerPointの本もあります

エントリーシート完全突破塾 [2016年度版]

就職活動がまるごと分かる本

3か月でやり直し!英語モジュール学習法

分子生物学講義中継 セット

バイオ実験超基本Q&A ―意外に知らない、いまさら聞けない―改訂版

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術 ―プロフェッショナル根性論―

ライフサイエンス英語表現使い分け辞典

ライフサイエンス文例で身につける英単語・熟語

医師のためのモバイル仕事術 ―iPad/iPhoneを使い倒す!―新版

Rによる統計解析

Rによるやさしい統計学

医薬研究者のための統計記述の英文表現 改訂3版

国際誌エディターが教えるアクセプトされる論文の書きかた

21世紀の資本 ピケティ

2015年、あけましておめでとうございます!大学図書館を活用しよう―その1です(2015.01.13)

 あけましておめでとうございます。
本年も皆様にとってすばらしい一年でありますように!
自宅で余った干し柿を庭木につるしておきました。すると春を告げる鳥たちがこまめに食べにやってきています(写真)。春ももうすぐです。
去年の末にSpringer社からGlycoscience Biology and Medicineという本が出ました。私達もコンドロイチンやGPI anchorの話を書いています。この本(e-bookもあります)は糖鎖生物学とその医学への応用について基礎から最新の成果までコンパクトにまとめてある本で是非、図書館には備えておいて欲しい本です。同様な趣旨の本が(これにも私達が書いた章があります)、今年日本語でも刊行されますので(NTS社)、糖鎖生物学を学ぶためのテキストとして両者をお勧めします。
さらにHandbook of glycosyltransferases and related genes 2nd editionという本もお薦めです。この本の線虫の糖鎖遺伝子についての項目のほとんどに私達の仕事が引用されています。九大のメンバーなら大学経由で各章をダウンロードできますので、研究・学習に役立てて下さい。
上の本にかぎらずSpringer社の多くの本は、九大がSpringerと契約を結んでいるため、無料で読むことが出来ます。残念ながら最初に紹介した本は駄目ですが、
Methods in Molecular Biologyシリーズなどは2014年-2015年分までは全部pdfでダウンロードできます。 なお2016年分は今のところダウンロードできます(2016.01.29追記)九大の方は、このリンクからSpringerのサイトにつなぎ、
Browse by disciplineからLife Sciencesとか、Statisticsとかを選びます。
その後、表示されるページから、Content typeでBookをクリックし、さらに九大からダウンロードできる本に限定するため、Include Preview Only Contentという左上の鍵マークの部分のチェックを外します。するといろんな本が表示されますが、どれもダウンロードできます。表示をsort してnewest firstにすると便利だと思います。RNA Interference
Chromosomal Mutagenesis
RNA bioinformatics
Epistasis
など丸ごとダウンロードして読めます。Methods and Protocolsシリーズは全部無料です。
例えば平林淳先生が編集されたLectinsという本などは以下からダウンロード出来ます。

統計学の本では、Statisticsのジャンルで探せば
Excel 2013 for Biological and Life Sciences Statistics
Bayesian Essentials with R
Functional and Phylogenetic Ecology in R
とか、SpringerのRを使ってみよう(Use R!) シリーズなど、英語版ですが、無料ダウンロードできます。他に、物理の本とか哲学の本とかいっぱいあります。
是非、大学図書館を活用して下さい!(2015.01.13)

ヒト糖鎖遺伝子の線虫オーソログの網羅的RNAiと新しい線虫糖鎖遺伝子データベースCGGDBの論文がでました!(2014.8.29)

私達の研究室ではヒトの糖鎖遺伝子の機能をモデル生物線虫C. elegansで研究するため、全ヒト糖鎖遺伝子のオーソログ遺伝子を同定してその網羅的な機能阻害をおこなってきました。秋好さんの論文はその集大成となる論文で、181個の線虫のヒト糖鎖遺伝子オーソログの分類と阻害結果を網羅しています。コンドロイチンの合成遺伝子やヘパラン硫酸プロテオグリカンの糖鎖部分の硫酸化遺伝子を阻害すると卵母細胞の形成が異常になることを見いだしました。さらに大きな発見はN型糖鎖(アスパラギン:一文字のアミノ酸記号でNです。タンパク質のアスパラギンに結合する糖鎖をN型糖鎖といい、一般的な糖鎖修飾です)の合成の初期過程で働く遺伝子群(小胞体の細胞質側で働く脂質Dolicholに結合したオリゴ糖の合成に働く遺伝子群)の機能阻害で、卵母細胞の形成がそこなわれ体長が短くなり、小胞体ストレスが引きおこされることの発見です。小胞体の内腔側で働く遺伝子群やゴルジ体での糖鎖修飾に関わる遺伝子を阻害してもこうした異常はみられませんでした。効果のあった遺伝子はどれもヒトの先天性グリコシル化異常症(Congenital Disorders of Glycosylation: CDG)タイプ1の原因遺伝子なので、線虫をCDG type 1の病気の研究のモデル生物として手軽に利用できることを明らかにした重要な研究成果です。またこの論文では、私達と産総研が共同で作製した線虫糖鎖遺伝子データベース(CGGDB)の作製と使い方についても紹介しています。データベースには今回の論文で発表した成果のほか、ヒト糖鎖遺伝子の線虫オーソログ遺伝子についての世界中で集められた研究成果が簡単に鳥瞰できるように集めてあります。この論文の発表と同時に公開しておりますので是非、使ってみて下さい。

自分たちで使っていますがとても便利です。詳しい使い方はデータベースに後日、アップロードする予定です。またこのホームページでも公開致します。(2014.8.29)

 

研究室のコンピュータのOSをWindowsXPからWindows7に全部変えました(2014.5.27)

私たちはWindowsのパソコンばかり使っているので、Windows XPのサポート打ち切り(4月9日)を前にして、 全部のパソコンのOSをWindows XPからWindows 7に変更しました。
まずWindows XPで動いているパソコンの中にある必要なデータを全部外付けのハードディスクにコピーしてバックアップとします。これはたいそう時間のかかる作業ですが、まあ一日近くかければ終わります。(あっと言う間に終わったとしたらコピーではなくて、外づけハードディスクにショートカットを作っているだけとかの場合がありますので気をつけてください。)このときドライバとかブラウザのお気に入り、ブラウザが記憶していることがあるサイトへのログイン名とパスワードもわすれずにバックアップしてください。電子メールやスライドのファイル、pdfファイルその他思いつく限り忘れずにバックアップすることです。
(私たちが実際やってみた手順はここに画像入りのpdfファイルでおいてありますので参考にどうぞ。パソコンによってうまくいかなかったりしても無保証としますので、バックアップは絶対ちゃんととってからはじめてください。)九州大学はマイクロソフトと一括ライセンス契約していますので、職場のコンピュータにはWindowsのOSをアップグレードでインストールすることができます。(学生や職員個人のパソコンにも一台限りアップグレードインストールできるはずです。)この契約を利用して、XPのパソコンのOSをVISTA businessにし、成功したらすぐにWindows 7にしました。VISTAでは重いという感じのパソコンでもWindows 7にするとスムーズに動くようになりました。(XPから一挙にWindows 7へのアップグレードはできません。必ず二段階アップグレードする必要があります。)やり方の詳細はファイルに書いてありますが、OSを入れ替えるには、アップグレードインストールというのとクリーンインストールという2つの異なった方法があります。アップグレードインストールはできるだけXPで使っていたファイルを残したまま、OSをVISTAやWindows 7に入れ替えるもので、いままで蓄積したファイルをなるたけ残したままにする方法です。(もちろん消えてしまうことがあってもメーカーは保障してくれませんので事前のバックアップは不可欠です。)これに対してクリーンインストールは、今までのデータを全部すててまっさらにしたハードディスクにOSを入れるものです。アップグレードインストールではXPで使っていたソフトが動くことが多いので、今回はアップグレードインストールをやってみました。

やりかたは九大の情報統括本部のソフトウエアのページなどを参考にしてください。OSのインストールについての注意点やマニュアルのあるページからマニュアルをダウンロードして用意し、さらによくある質問FAQのページには必ず目をとおしてからはじめることを強く勧めます。10台ちかくのコンピュータをXPからWindows 7で動くようにしましたが、中にはアップグレードインストール中にブルースクリーンがでて自動的に再起動の無限ループになったものも2台ありました。

XPから VISTAには問題なくアップグレードできて、すぐにWindows 7へのアップグレードへとすすみました。ちゃんとWindow 7のロゴがではじめたあたりのアップグレードの途中でブルースクリーン、再起動の無限ループになりました。その時表示されたブルースクリーンメッセージは、 The driver is mismanaging system PTEsというもので、
STOP: 0x000000DA (0x00000504,0xC0248EEC, 0x00000030,0x000123BB)となっています。セーフモードで起動したときには、予期しないシャットダウンから回復しましたというエラーメッセージがでて、詳細をみると、Blue Screen 6.1.7601.2.1.0.256.4 ロケールID 1041, Bccode: daとなっていました。ネットでこれらのメッセージを検索キーワードで探してみると、同じような事例の相談が英語のページなどにいくつか見つかりましたが、どれも解決できていないようでした。セーフモードでは起動できるし、またネットワークにつないだ状態でも起動できますし、今まで作ったファイルも全部ひらけます。あきらめる前になんとかやってみようと、色々試していたところ、別の検索をしている時、SafeMSIというソフトをいれるとセーフモードでドライバーが更新できることがわかりました。そこでSafeMSIをセーフモードでネットワークがつながった状態で起動して、ドライバを更新したら無事、ブルースクリーンもでずに起動するようになり解決し、アップグレードインストールが成功しました。詳しくは添付のpdfファイルの末尾のほうをご覧ください。

アップグレードが終わったらライセンス認証を行い、ウイルスソフトがないならインストールして、さらにWindows updateをコントロールパネルから選んでWindows の更新を行います。だいたい一日は更新にかかると思います。シャットダウンするときに更新することが多いので、電源が切れるまで時間がかかりますので気をつけてください。

ウイルスソフトの再インストールでのトラブルの実例、ウイルス対策ソフトの完全アンインストールによる解決の例などもpdfファイルに載せていますので参照してください。

アセチルCoAトランスポーターの総説を書きました。(2013.3.26)

今日は九大の卒業式、はれやかな学部卒業生、大学院卒業生が集っています。私達の研究室からも修士、学部併せて3名の学生さんが卒業です。桜が満開でとてもきれいな卒業式です。


さて、昨年原稿がアクセプトされて出版をまっていた
Molecular Aspects of Medicineのトランスポーター特集号がonlineでみられるようになりました。
私達も理化学研究所の脳科学総合研究センターの平林義雄先生と一緒に The acetyl-CoA transporter family SLC33というタイトルでミニレビューを書きました。

acetyl-CoAはトランスポーターで輸送される分子のなかでは極めて大きな分子です。線虫を使ったトランスポーターの研究もこれからますます盛んになっていくと思います。特集号の最初の項目
The ABCs of membrane transporters in health and disease (SLC series): Introduction はトランスポーターについてのわかりやすい序論になっています。機関が契約していて無料で読める方はどうぞ。

acetyl-CoAというのは生化学ではじめのほうで習う分子ですね。生化学の歌の本というのを昔買いました。イギリスなどのfolk songを替え歌にして歌うというもので、The Biochemists’ Songbook(なんとクエン酸サイクル発見者のSir Hans Krebsが序文を書いています!)というのが第2版になってまだ売っています。カセットテープがあったのですがそれは入手不可となったそうで、歌のほうだけは著作権者の許諾をうけカセットテープからmp3ファイルにしたファイルがダウンロードできるようになっています。歌詞もネット検索したらあちこちでみられますのでどうぞ。もっともこの歌詞を覚えるよりは、そのままクレブス回路などを思える方がはやいという噂です……。とにかく一度聞くと、妙に耳にのこる音楽です。

遺伝子ネットワーク解析ソフト VISANTの使い方です!(2013.03.08)

VISANT超入門:

VISANT (Integrative Visual Analysis Tool for Biological Networks) というサイトは遺伝子の遺伝的相互作用、タンパク質‐タンパク質相互作用を、免疫沈降、yeast two hybrid等によって相互関係やその可能性を画面で表示して解析するプログラムのサイトである。ヒトやマウス、ショウジョウバエや線虫、酵母やバクテリアなど、様々な生物の持っている遺伝子の間の相互作用を、遺伝学的相互作用やタンパク質間相互作用などのビッグデータに基づいてネットワーク表示して解析できる。自分の研究している遺伝子のリストを検索用ボックスに入れて、それらの相互作用、その他の遺伝子との相互作用を調べるのに便利で、各自の遺伝子について試してみると思いがけない相互作用が見つかるかもしれない。このVISANTは、遺伝子-遺伝子相互作用の解析に有用であるにもかかわらず、日本語の使用の手引が現在も存在せず、なんとなく使いづらいものであった。そこで、私達の研究室で卒業研究を行った学生さんが卒業論文の一部として、VISANTの使い方を日本語でまとめてくれた。その卒論では糖鎖遺伝子のネットワークを解析する際,VISANTを活用した。その卒論から遺伝子ネットワーク解析サイトVISANTの使い方の解説部分を抽出し、野村が最近のサイトの些細な改変について加筆したものをpdfファイルでおいておくのでダウンロードして利用していただきたい。下に線虫での糖鎖を合成する酵素の一つのグループであるN-アセチルガラクトサミン転移酵素GalNAcT(N-acetylgalactosamineを付加していく酵素で多数の遺伝子がある)の遺伝子についてのVISANTによる解析結果の画像(全体図) を挙げてみた。この解説でVISANTの使い方がだいたいわかったら、次に英語のチュートリアル(http://visant.bu.edu/tutorials/tutorials_list.html )やヘルプを読んで、このプログラムサイトを大いに活用していただきたい。

あけましておめでとうございます。(2013.01.18) 

年末は福岡市で分子生物学会、生化学会が開催され私達の研究室メンバーの発表がつづきました。分子生物学会はiPad貸し出しなんかもあって、iPadで要旨やポスター発表のチェックなどができたほか、発表に「いいね」がつけられるなど画期的な改革で開催されました。生化学会もiPadで要旨がみられるようなアプリができていて面白かったです。村田大輔君の博士論文を中心としたGPI anchor型タンパク質についての研究発表を生化学会でしたのですが、質問に立たれた先生に思いがけず私達の研究を大変ほめて頂きました。古細菌からヒトにいたるまでGPI anchor型タンパク質は存在しており、質問者の先生は古細菌にもGPI anchor型タンパク質があることを示したのだが、なんで生物みんながGPI anchor型タンパク質をもっているのかはわからなかった。先生達の研究でそれがはじめてわかったのでとてもよかったといっていただきました。

質問というよりコメントをいただいたこの先生は私達がGPI anchor型タンパク質を研究するときに勉強していた論文や総説の著者の先生で、日本のGPI anchor型タンパク質の研究の開拓者、私達の研究で利用しているphosphatidyl inositol 特異的phospholipase CというGPI anchor型タンパク質からGPI anchor部分を切断する酵素の発見者、池澤宏郎先生でした。大先生からとてもありがたいお言葉をちょうだいして、よい新年がすごせました。ありがとうございました。

生化学ということで、今回は糖鎖生物学の基礎を簡明に説明した、カリフォルニア大学バークレー分校のBertozzi先生の講演のムービーを紹介しておきます。YouTubeで字幕付きでみられますので是非ご覧下さい。わかりやすいクリアな英語でききとりやすいです。糖鎖生物学がインフルエンザの治療や炎症の治療に役立つことがよくわかりますよ。糖鎖生物学に興味を持った方は、このブログの糖鎖生物学入門の固定ページもご覧ください。

山中伸弥先生、John Gurdon先生 ノーベル賞おめでとうございます。(2012.10.09)

 昨日、 学校からの帰り道、6時半の発表を楽しみにして車のラジオをつけていると、山中先生の医学生理学賞の受賞の臨時ニュースがとびこんできました。他の受賞者については報道されていなかったのでGurdonさんは絶対もらっているはずだなどと話しながら7時のニュースをラジオできくと、やった!Gurdonさんとの共同受賞でした。Gurdonさんは九大の発生生物学講座こられたこともあり、一緒に太宰府を散策したこともある先生です(写真は太宰府散策中の先生。竹藪に入りたいといって、このあと入っておられました)。今回の受賞は現代的に変容した、発生生物学への受賞ともいえると思います。発生生物学を学ぶ人がこれからさらに増えるのではないでしょうか。発生生物学の基礎研究の成果が山中先生の偉業として花開いたのだと思います。BriggsとKingにはじまる核移植とGurdonさんにはじまって、山中先生にいたるこの道を拓いたのは、いったん分化した細胞が別の分化した細胞へと変化する、分化転換の研究(岡田節人先生や江口吾朗先生、 スイスの故Schmid先生などによる精力的な研究)だと思います。

Gurdonさんの業績は教科書にのっており、分化した体細胞の核には受精卵の核の状態に戻って個体をつくれるだけの情報があることを鮮やかに示したものでした。私がCambridgeの動物学教室にいたときはGurdonさんは同じ教室におられたので、DNAの塩基配列の決定をGurdonさんの研究室で机を借りて行っていたのでよく話していました。名前を冠したGurdon Instituteができてからも何度かおじゃましたことがあります。とても紳士的な先生で、九州に以前こられたときは塩川光一郎先生のお宅にとまられて趣味の蛾の採集をされていたときいています。去年も九大医学部にこられておりました。その前には帝京大学で学生相手に特別講義をされたりもしていて、若い人々を鼓舞するのもとてもお上手です。ノーベル賞講演が楽しみですね。山中先生のノーベル賞講演も楽しみですが、その前に、以前紹介したNIHでの山中先生の講演のビデオ(2010.1.29のこの欄)も是非ごらんください。はじめにNIHの所長がいかに信じがたいほどすばらしい業績かというのを述べているところが印象的です。山中先生の論文発表の後、多くの研究者が自分の研究に、山中先生たちが4つの転写因子に絞り込んだ方法をお手本として(Yamanaka methodと称して)使っています。

科学の方法論の提示という業績も山中先生の御仕事には含まれていますね。

真のリーダーシップをもった先生(2012.05.10)


私が大学院に入学した年の夏、東京で国際発生生物会議が開催され(1977年8月29日-9月2日経団連会館)、学会後のオプショナルツアーに同行させてもらいました。鎌倉から三崎の臨海実験所、箱根へと移動して一泊、その後、菅島の臨海実験所や伊勢志摩をめぐり、京都に向かいました。ツアーには岡田節人先生のかつてのボスだったEbert先生、Moscona先生、Abercrombie先生など教科書で名前をみた先生方が、多くはご夫妻で参加されていました。Ebert先生と奥様の隣の席でバスに乗って三崎の臨海実験所での有名な団先生のThe last one to goのエピソード (ここにもpdfがあります)をEbert先生から教えてもらったり、菅島の臨海実験所の先生にわざわざ紹介して頂いたり、かけだしの学生にとても優しい配慮をしていただいたのに今でも感謝しています。

Ebert先生と奥様はドライブの途中の交通事故でなくなってしまって(2001年5月22日)、再びお目にかかってお礼をいう機会もないのは残念です。

Ebert先生はすぐれたリーダーシップをもつ学者の見本の先生といわれています。リンク先のEbertご夫妻を悼む言葉を読んではじめて、先生が第二次大戦中は海軍で駆逐艦にのっておられて、日本の特攻機に船が撃沈されて海をただよっておられたことがあるのを知りました。生き残った最上級士官として、乗組員の戦死を家族に知らせる責務を果たす際に、同じ海軍にいた女性隊員の奥様と出会われたのだそうです。戦後、実験発生学を学び、カーネギー研究所の所長、ウッズホール臨海実験所の所長などの他、アメリカ科学アカデミーのVice-Presidentなどを歴任されました。戦争が終わってからは日本の発生学、発生生物学の発展のために40年以上にわたって格段の助力をいただいたと聞いています。そして亡くなる前には中国の発生生物学を学ぶ人たちを援助することに大変な力を注いでおられたのだそうです。

各人の才能を開花させることの天才というような先生で、花を育てる時、個々の植物に応じた水やりや肥料やりが大切ですが、科学者 個人個人によって異なる長所と、それぞれの個性によって違う研究方向をみきわめて、援助と財源獲得をすすめることで、米国の科学のみならず日本や中国の科学の発展にも大きく貢献されたと思います。Brown博士の弔辞の結びです。

In summary, Jim Ebert’s major contribution to 20th century biology was one of leadership. He directed others with common sense and intelligence removing obstacles so that scientists could mature and follow their own instincts. We have come to identify these principles with the highly successful administration of science that is practiced in the United States. (Donald D. Brown, Staff member, Department of Embryology , Carnegie Institution of Washington, September 2001)

写真は我が家のサクランボです。研究室のみんなと食べました。