生体分子系の分子動力学シミュレーションデータの解析入門―動画の紹介です。

今日は動画を一本紹介します。今年の2月に行われた第4回オンラインサロン「スパコンコロキウム」講演動画
題名:生体分子系の分子動力学シミュレーションデータの解析入門
講演:松永 康佑(埼玉大学大学院理工学研究科)

この動画では松永先生が、分子動力学シミュレーション(Molecular Dynamicsという言葉からMDと呼ばれる解析です)について学部4年レベルで解説してくださっています。MD解析の基本の解析の後、データの解析法、解析例をわかりやすく説明してくださっています。一時間弱の動画ですので是非ご覧ください。」https://youtu.be/xQWCA7vWLLE 
MD解析は以前の記事で紹介したように、新型コロナウイルスが細胞表面のレセプターに結合するとき、糖鎖をスイッチとして結合、侵入を行っていることを明らかにした手法です。現在さまざまな生命科学の解析に使われていますので学んでそんはないテーマです。

機械学習の定番教科書PRML―大学院生や優秀な学部生むけ―の紹介です。

機械学習に関する本を時々紹介しています。PRMLと略される本をご存知ですか?生命科学系のラボでも卒論生や大学院生が輪読しているという話をよくききます。Pattern Recognition and Machine Learningという本で、定評のある機械学習の教科書だそうです。英語版のpdfは無料で公開されています。https://www.microsoft.com/en-us/research/uploads/prod/2006/01/Bishop-Pattern-Recognition-and-Machine-Learning-2006.pdf
日本語訳は上下二冊にわかれて出版されています。本に書かれているアルゴリズムをJupyter Notebook(こちらhttps://github.com/ctgk/PRML)やGoogle Colaboratoryで動かして学ぶこともできるそうです。サンミンさんのこちらのnoteに詳しく紹介されているのでご覧ください。https://note.com/sangmin/n/n8ccacd35b9b1

この本の程度は、機械学習の初心者むけではないと思います。pdfをパラパラながめてみると、これなら読めるかどうかわかると思いますのでまずpdfを眺めてみてください。

写真は先日紹介したキンラン(金蘭)です。前の写真の時より昨日はもっと咲いている株の数が増えていました。毎年かわいい花をつけますが、絶滅危惧種になっているそうです。花を庭でそだてようと持ち帰っても、花と共生している地中の生物がないので育たないということで、花をつんだり持ち帰ったりしないようにしましょう。

講談社のKindle本のセールを5月5日までやっているそうです

連休は皆さんいかがお過ごしですか。福岡はほぼ毎日晴天が続き、花が咲き乱れ新緑が花に映えてとてもきれいです。写真は家のサクランボです。もう少ししたら完熟になると思います。つやつやしてとても綺麗です。鳥対策に今年はネットをかけています。(枝の間に紐を張って鳥の羽が引っ掛かって入りにくいようにするのも、簡単な鳥による食害対策にはおすすめです。)まだまだ連休は続きますが、連休中にKindle本を読むのはいかがでしょうか。ちょうど講談社のKindle本がAmazonで50%ポイント還元セールというのをやっています(5月5日までです)。これはたとえば1万円の定価のKindle本だったら、1万円で買うと5000円分Amazonのポイントがつくというセールです。AmazonのポイントはAmazonでいろんなものの購入に使えますので、実質半額セールということになります。講談社のKindleタイトル全部が対象というわけではないのですが、多くの本が対象になっているのでこのリンクからみていくと、買いたい本が見つかると思います。講談社現代新書、学術文庫、ブルーバックス、理工系の本などいろんなタイトルが実質半額になっているのでご覧ください。有名な教科書「深層学習(岡谷 貴之著)」は旧版のみセール対象になっているので、「深層学習 改訂第2版 (機械学習プロフェッショナルシリーズ) 」と間違えて買わないようにしましょう。Kindle ストアでは 他のセールもやっています。電子書籍のセール情報はこちらにもでているので参考にしてください。

電子メールのセキュリティ対策について

今日は電子メールのセキュリティ対策について紹介します。
毎日、スパムメールがいっぱい届きます。アマゾンだのJCBカード、メルカリ、三井カード、auなどをかたるメールが多いです。たいていは「残念ながら」などという業務メールではありえない日本語で、アカウントの利用停止を解除してほしかったらすぐにリンクをクリックして手続きをしてくださいというような内容になっています。発信元をみると香港や中国とアメリカ合衆国のアドレスからのものが多いです。こうした電子メールが開封されたかどうか、開封日時や開封した場所などをスパム業者が知る方法があるそうです。これに対する対策ですが、まずhtmlメールをhtml形式では絶対開かないこと、メールは必ずテキストモードでのみ開くことです。
代表的な悪徳業者の手口を二つ紹介します。
1)悪徳業者の手口にトラッキングピクセルをメールに埋め込むという方法があります。これはメールに1ピクセルの透明な画像を添付しておき、そのメールをhtml形式で表示した時にその犯人たちのコンピュータに犯人たちが埋め込んだ画像をダウンロードするためのアクセスがあることから、画像がいつ、どこからダウンロードされたかがわかるという手法です。メールを開いた日時やIPアドレス、位置情報などがわかるわけで、スパムメールをありとあらゆるメールアドレスに一斉に送っておいて、開いたメールアドレスの持ち主の情報を持ち主に気付かれないままに取得することができます。これは悪徳業者だけでなく、一般にも使われている場合もあるので注意が必要です。送ったメールが開封されたかどうかを知ることができるので、マーケッティング調査に利用されたり、そんなメールは開けていないと言うウソを見破るために意図的にトラッキングピクセルがしこまれる場合もあります。トラッキングピクセルを埋め込むサービスをしている業者もあります。

ピクセルトラッキングは、AppleのiOS 15で AppleMailを利用する場合は自動的にブロックされて無効になるようです。またGmailでも対策がとられたようで、htmlの画像ファイルはGoogleのサーバーにダウンロードされて、利用者はそちらにアクセスするようになったので、業者が知ることができるのはGoogleのサーバーに画像がダウンロードされた日時とGoogleサーバーの位置だけになったようです。いろんなメールソフトでhtmlファイルを開くときに画像を自動的にダウンロードしない設定がありますので調べてみてください。ちょっと古い記事ですがこちらの記事が参考になりそうです。https://gigazine.net/news/20210807-stop-email-pixel-trackers/

2)トラッキングリンクの利用も良く行われる手法だそうです。
トラッキングピクセルの他に、トラッキングリンクというのを入れてあるメールもあります。これはリンクのurlアドレスの?(クエスチョン)、&(アンパサンド)、;(セミコロン)以降の部分に受信者固有のコードを記述して送りつける手法です。メールのリンクをクリックすると、だれがこのリンクをクリックしたかが、メールに固有のコードによって業者にわかるという仕組みです。アクセスしてきているディバイスとかもわかるそうで、何度も業者が送り付けてくるリンクをクリックしていると、クリックしている人のプロファイリングが始まって、その結果は売り出されることもあるそうです。こうした怪しいリンクは、リンクを選択して右クリックでクリップボードにコピーして、テキストエディタに貼り付け、?(クエスチョン)、&(アンパサンド)、;(セミコロン)以降のパラメータを削除したものをブラウザに貼り付けて利用することが推奨されています。しかしコードが埋め込まれているように見えない普通のアドレスを生成して市場調査に使っている業者もいるので、心配な人は絶対メールのリンクをクリックしないようにするのがベストです。代わりに送信業者の名前をGoogleなどの検索エンジンで検索して、検索結果に表示されるリンクをクリックするようにするのが安全です。今回は私がとっているメールのセキュリティ対策を二つほど紹介しました。メールに記載されているリンクを不用意にクリックするとプライバシーが保たれない理由の一端の紹介でした。

五月になりました!キンランが今年も咲きました。

キンラン1

今日は面白いブログを一つ紹介します。
とね日記」というブログです。https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw
「理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!」という紹介がトップに書かれています。このブログは物理、数学、フランス語などの話題が満載のブログで面白いのでいつも見ています。先日更新されたこの記事は力作で、物理学者のファインマン先生のことが本当に様々な角度から紹介されていて読みごたえがあります。スペースシャトルの事故調査の話やファインマンさんの日本訪問の話、ファインマンさんが小さい時に勉強した数学の本などもダウンロードリンク付で紹介されているという驚きの内容です。皆さんも是非いろんな記事を読んでみてください。

毎年近所で咲いている金蘭が今年も咲きました。

今は春爛漫で家の前でもつつじが満開です。今日は天気がよかったので、つつじを眺めながら庭で昼食を食べていると蝶々が舞い、お隣のモッコウバラの茂みにキジバトがせっせと小枝を運んで巣をこしらえていました。のどかな春の一日でした。写真はモッコウバラと、家で羽化した蝶々が羽根をかわかしている様子です。

広重や川瀬巴水(かわせはすい)の作品を鑑賞できるサイトがあります

国立国会図書館(National Diet Library:略称NDL)のNDLイメージバンクは国立国会図書館の電子展示会での一つだそうで、現在公開中です。私の好きな歌川広重の名所江戸百景の版画や、川瀬巴水の風景画などが満載されており、出典を表記しておけば著作権がきれているものばかりなので、自由に利用、ダウンロードできます。
たとえばこの広重の版画は、名所江戸百景の一枚で、 「隅田川水神の森真崎 で里桜が咲いているかなたには、筑波山がみえています。ダウンロードは簡単です。名所江戸百景のページに移動して、下のほうの「全部見る」ボタンを押して全画像を表示させます。あとはお好きなサムネールをクリックすると、拡大画像が表示されますので、それを右クリックなどで保存するだけです。

高解像度の画像がほしければ、上の右の画像の下の方にある国立国会図書館デジタルコレクションへというリンク部分をクリックすると、該当する画像のデジタルコレクションのページが開きますので、そこからjpegやpdf形式で高解像度画像をダウンロード可能です。

庭のアンズやサクランボの花も満開で虫もいっぱい蜜を吸いに来ていました。しかし、ここ数日の雨で散ってしまいました。散歩道には桜がちらほらと咲き始めて春の到来です。

 

 

ルクレチウスの本のこと

にわかに春めいて来て、あちこちに花が咲きだしています。
以前にルクレチウスについては記事を書きました。今日はルクレチウス(ルクレティウス)についての本の紹介です。岩波書店から2020年に刊行された『ルクレティウス 『事物の本性について』――愉しや、嵐の海に』 (書物誕生 あたらしい古典入門) 、岩波書店、 2020/8/5、小池 澄夫・瀬口 昌久 (著)という本です。出版されてすぐ買って読みました。とてもよい本で、ルクレティウスの本が、無神論の本なのになぜ消されずに残ったかという謎や、魂の原子についての議論など、これからルクレティウスを読んでみようという人、そして読んだことのある人が次に読む本としてはベストの本だと思います。日本西洋古典学会の新刊書コーナーに著者による自著の紹介がでています。その紹介によると、ルクレティウスの「事物の本性について」の日本語訳は、なんと仁科記念賞を授賞した東京大学の物理学者 岩田義一先生による翻訳が最も優れているのだそうです。岩田先生は東京大学の講師時代、ノーベル賞を授賞した南部陽一郎さんを指導していたそうです。物性研究という雑誌にのった南部先生の回想をご覧になるとわかります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/soken/112/6/112_KJ00004715042/_pdf

岩田先生は助手のころは物理学教室の小平邦彦先生(数学者でフィールズ賞受賞した先生)の助手、そして東大を兼担されていた湯川秀樹先生の助手もつとめていたとのことです。岩田はルクレティウスの翻訳のためにギリシャ語・ラテン語を学んだとあります。翻訳は世界古典文学全集〈第21巻〉ウェルギリウス,ルクレティウス(筑摩書房)で読めます(中古品しかありません。図書館でみることができると思います)。下のリンクは、岩波の本の著者のお一人、瀬口 昌久先生(名古屋工業大学教授)のルクレチウスについて書かれた日本語の論文です。参考になるかと思います。
http://id.nii.ac.jp/1476/00001524
http://id.nii.ac.jp/1476/00001515

研究倫理の話―封筒からウイルスを抽出?

梅が咲く季節になりました。先日、カナダから中国に届いた郵便物の表面や内部からオミクロン株のコロナウイルスを検出したというニュースを見てこんな話を思い出しました。昔、アメリカのニューヨーク市立大学ストーニーブルック分校に出張していたとき、研究倫理の講習会に参加しました。有名な糖鎖科学の研究者のLennarz先生が、いろいろ研究倫理の話をされました。その中にあった話です。ある研究室で、論文にでた研究試料であるバクテリオファージ(バクテリアに感染するウイルスです)を提供してほしいと著者に連絡しました。なかなか送ってこなかったのですが、やっと送ってきた試料からファージを増やそうとしたのですが、ファージは増えません。増えないからもう一回送ってくれといって送ってきたものからもファージは増えません。何度送ってもらってもダメでした。これは、競争相手の彼らにファージを渡したくないのでちゃんとしたファージを送ってきていないのだと、強く思わせる状況でした。そこで、きっと送り手の研究室の室内にはファージがうようよいるはずだから、送ってきた封筒にも付着しているだろう、封筒からファージを回収してみろ、といってやってみると、なんと目的のファージが増えて入手に成功したのだそうです。論文に発表した研究試料は論文が公開されたら、希望者に提供することという原則が科学界にあります。論文の著者は競争相手への試料の提供をしぶっていたのでしょうか?
この話、有名な話らしくてある本(「ヘウレーカ! ひらめきの瞬間―誰も知らなかった科学者の逸話集」の第162話、化学同人 発行)ではつくり話だと書かれています。ただ講習会があったとき、隣にいたラボのヘッドがこれはどこそこの研究室であった本当の話だと院生に話していたので、おそらくいろいろ都合の悪い事があるのでフェイクということにされた、真実であるのかもしれません。これが実はBrenner先生が作ったつくり話だというのは本人が以下に書いていますので読んで本当かどうか、一つ考えてみてください。
https://www.cell.com/current-biology/pdf/S0960-9822(06)00385-X.pdf
Brennerさんはファージを他の研究者からもらおうとしてもらえず、たしかケンブリッジの汚水処理場からファージを回収して使ったようです。ファージは下水から回収することが多かったらしいです。φX174というファージがありますがこれはフランスの汚水処理場からとられたものだそうです。Xはパリの10区の汚水処理場由来ということで、ローマ数字の10なのだそうです。下水で思い出しました。私は昔、カリフォルニア大学バークレー分校のJohn Gerhartさんのところに滞在していました。アフリカツメガエルの研究をしていたころの話ですが、カリフォルニア大学で飼育されているアフリカツメガエルの一部は、サンフランシスコの下水道にいたもの由来だといっていました。網をもって下水道にはいって採集したのだそうです。そう、ワニがいるという都市伝説のサンフランシスコの下水道です。その時はXenopus tropicalisというカエルを日本に持って帰って、日本での標準の実験材料にしようと計画していました。しかしカリフォルニア州の規則でX. tropicalisは他の州から輸入できないということで、ダメになりました。

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Project Gutenbergには、ポアンカレの「科学と方法」、「科学と仮説」、「科学の価値」の三つの本の合本(英語版)https://www.gutenberg.org/ebooks/39713
もありますし、アインシュタインの「相対論の意味」やその他の本、オーディオブックもあります。https://www.gutenberg.org/ebooks/search/?query=einstein&submit_search=Go%21
生物物理学の発展のもとになったような本で、ルネ・トムのカタストロフィーの理論で有名になった本、D’Arcy ThompsonのOn Growth and Form (1919)も読めます。
https://www.gutenberg.org/ebooks/55264
ロバートフックのマイクログラフィアもダウンロード可能です。図はHookeの細胞の有名な顕微鏡による細胞の図です。

上の動画はフックが勤めていたRoyal Societyによるマイクログラフィアの紹介ビデオです。

PyMOLやProtein Data Bankの講習会ビデオの紹介です

昨日はpymolをLinuxにインストールする方法を紹介しました。ちょうどよい紹介ビデオや資料が載っているサイトを見つけたので紹介しておきます。これは
BINDS-PDBj講習会「PDBから見てわかるタンパク質の最新研究」という講習会で、2021年9月30日(木) に実施されたものです。
https://pdbj.org/news/workshop20210930
上のリンクをクリックすると、講習会のビデオや資料へのリンクがありますのでご覧ください。講義資料「PDBデータの使い方・分子ビューワの使い方の基礎」からは以下のビデオへのリンクと講義資料のpdfがダウンロード可能です。https://www.youtube.com/watch?v=sHXn0tzUhcg