「ロウソクの科学」を読んでみよう!秋の読書のすすめです

  • 昨日は即位礼正殿の儀ということで、お雛様のような美しいいでたちの皇族の方々をテレビで拝見しておりました。さて、この秋、ノーベル化学賞が吉野彰さんに授与されましたが、吉野さんは化学の道へ、マイケル・ファラデーの「ロウソクの科学」を読むことでいざなわれたのだそうです。前にノーベル賞を授賞された大隅先生もそのようにおっしゃっていたと思います。というわけで、今「ロウソクの科学」が飛ぶように売れているそうです。英語でよければここにあります(前に紹介したファラデー著作集のサイトです)ので、pdfやepubなどお好きな形式でダウンロードして、タブレットなどで辞書をひきながら読めば簡単に読めると思います。またこちらの本には、「ロウソクの科学」と「力と物質」が収録されています。また女性が英語で朗読しているので良ければ「ロウソクの科学」のオーディオブックがここにあります。 mp3やM4B形式(M4B形式はAppleのiTuneで再生できる形式です)でダウンロードできます。私が普段使っているメディアプレーヤーのMPC-BEでもM4B形式は再生できます。
    また、この「
    ロウソクの科学」のオーディオブックは、YouTubeにもあります。

ロウソクの科学」は理化学研究所の企画 科学道100冊にも選ばれています。科学道ジュニアというジュニア向けの科学の推薦図書一覧もあって、そちらにも選ばれて入っています。科学道に選ばれている本にはこのブログで紹介したものもあって、どれも面白そうですのでこれからの読書計画の参考に是非ご覧ください。
最後にFaradayの有名な言葉を紹介しておきます。下の写真は英国ロンドンにある
ファラデー博物館(The Faraday Museum)で昔私が撮影した
彼の実験ノートの一部の拡大写真です。
“All this is a dream. Still, examine it by a few experiments.
Nothing is too wonderful to be true, if it be consistent with the
laws of nature and in such things as these, experiment is the
best test of such consistency.”と書いてあります。Faraday 博物館の写真の説明文は以下のようでした。
This note was made by Faraday on 19th March 1849, when set out
in search of a connection between gravity and electricity and magnetism
–the final link in the unity of natural forces in which he so firmly believed.

ファラデーは、現代の物理学で使われている場の概念を初めて導入した現代物理学の創始者です(以前紹介した物理学を変えた二人の男―ファラデー,マクスウェル,場の発見(岩波書店)がとても面白い本ですので是非お読みください)。人類の歴史の中で最高の実験家といえるでしょう。彼の直観した場の概念を、数学の言葉で実体化したマックスウエルとともに、現代の場の理論がこの二人のおかげで誕生したのです。彼は前にも書いたのですが、当時知られていた重力、電気力、磁力の三つの力を統一しようと実験を行っていました。統一場の理論の先駆者ですね。

弁理士を紹介する動画がでています

こんな動画がYouTubeに出ているのを教えてもらいました。日本弁理士会広報戦略チャンネルによる公開動画です。下のはメイキング映像です。

弁理士は知財を扱う職業として特に理系の学生に人気の資格です。弁理士試験の合格率は10パーセント以下、ふつう三回目くらいの受験でやっと合格するという、難関資格だそうです。試験は3つあって短答式、論文式、口述試験となっています。論文式試験の選択科目は大学院で修士号や博士号を取得しておれば免除される制度があります。また上の動画でも紹介していますが、弁護士バッジよりかっこいいといわれている、弁理士バッジというのも弁理士登録するともらえます。
弁理士試験(合格すると官報に名前がでます)ですが、会社勤めの人が弁理士試験に合格したら転職に有利だそうです。弁理士試験合格発表の直後に転職というパターンも多いとかで、合格発表後はすぐに転職相談会が開催されるという話も聞きます。結構、最強の資格の一つらしいです。弁理士試験合格後、研修を終了したらはれて弁理士となれるのですが、さらに弁理士となった後、特定の研修をうけて「特定侵害訴訟代理業務試験」に合格すれば、裁判に代理人として弁護士と一緒に出席して参加することができるようになります。学生さんが就活するときも、弁理士試験の短答試験や論文試験に合格していたりすると、知財関係に関心の高い会社だと有利になることがあるようです。

糖鎖生物学入門―7 ABO式血液型の話 その2 糖転移酵素をゲノムブラウザで調べてみよう!

(糖鎖生物学入門連載記事をまとめて読みたい方は固定ページにありますのでここをクリックしてください

さて血液型と性格に関係があるかという話です。この問題に関しては、どのような論文がでているのか、文献データベースであるPubMedで検索キーワード ABO blood type personality で検索してみました。すると今日現在で42個の論文がヒットし、関係のない論文も入っていますが、たしかにABO式血液型と性格の関係を論じた論文が公表されているのがわかります。こうした論文を自分で読んで考えられるようにすることを目標にABO式血液型の話を続けます。

今回はABO血液型を決定する遺伝子について調べてみましょう。どんな遺伝子が働いてA型やB型の血液型物質が合成されるのでしょうか。そしてその遺伝子はゲノムのどこにあって、周辺にはどんな遺伝子が並んでいるのでしょうか。まわりにある遺伝子には、もしかしたら血液型と性格の関連を示唆するものがあるかもしれませんね。早速調べてみましょう。

<糖鎖は糖転移酵素が合成する>

糖鎖は通常、単糖をグリコシド結合で連結する酵素(糖転移酵素:英語ではグリコシルトランスフェラーゼ glycosyltransferaseです)を使って合成されます。転移酵素という名前がついていますが、糖転移酵素は糖鎖合成酵素です。糖転移酵素には様々な種類があり、ヒトでは現在240種類ほどの酵素が知られています(CAZYデータベース参照。ケイジ―データベースと読みます。CAZYデータベースに関する動画はこちらをみてください。詳しくは註1参照)。

ABO式血液型物質も糖鎖ですから、糖転移酵素によって合成されます。まずO型物質を合成する糖転移酵素を使って、土台のO型物質が合成されます。そのO型物質にGalNAcをα1-3結合させる酵素をGTA、O型物質にGalをα1-3結合させる酵素をGTBと呼びます。この名称に含まれているGTは糖転移酵素glycosyltransferaseの略、AやBは血液型物質を示します。酵素タンパク質であるGTAとGTBはABO糖転移酵素遺伝子(遺伝子名はABO)がコードしています。

<ゲノムブラウザでABO遺伝子を探してみよう>
このABOという名前の遺伝子がヒトゲノム中のどこにあるのかを、ゲノムブラウザで探してみましょう。ゲノムブラウザというのは、いろいろな生物のゲノムの様子を表示してくれるソフトです。オンラインで使えるものが多く、いろいろ種類がありますが、今回は有名なゲノムブラウザであるUCSC genome browser (UCSCというのはUCがカリフォルニア大学 SCがサンタクルーズ分校の意味です)
https://genome.ucsc.edu/index.html
を使ってABO遺伝子を探しだし、この糖転移酵素遺伝子との周辺を眺めみましょう。
上のリンクをクリックして開くトップ画面の
上段部分にあるGenome Browserの部分をクリックすると以下のページが開きます。プルダウンから選ぶとアジアのサイトを使えetcというページがでて面倒なので最初は単に一回クリックしてください。すると以下のヒトゲノムブラウザのページが開きます。
右上にあるgoボタンの左にある検索窓に遺伝子の名前ABOをタイプします。するとポップアップウインドウが 開いて図のように遺伝子のちゃんとした名前が表示されますのでポップアップウインドウの中のABOの遺伝子名(alpha 1,3 GalNAc and alpha1,3 Galtransferaseなどと書いてあります)をクリックします。
すると検索窓にポップアップの内容が自動記入されますので、右側のgoボタンを押します。すると新しいウインドウでABO 遺伝子が表示されます。
検索窓の下にある帯状の図が遺伝子の存在するヒトの染色体の模式図です。赤枠で囲まれている部分にABO遺伝子があることを示しており、染色体の模式図の下には赤枠で囲んでいるあたりを拡大して表示してあります。染色体の模式図の一番左にはchr9 (q34.2)とありますね。これはABO遺伝子が染色体9番のq34.2の位置にあることを教えてくれています。これでこの遺伝子がヒトの第9染色体のバンドq34.2とよばれる部分にあることがわかりました。このようにして遺伝子名を検索窓に入れて検索すると、検索した遺伝子の存在するゲノム内での位置がわかります。

染色体の模式図の下にある拡大図ではABO遺伝子のエクソンとイントロンの構造がよくわかります。このABO遺伝子はGalあるいはGalNAcを転移する活性をもっているタンパク質をコードする遺伝子です。この遺伝子は354個のアミノ酸からなるタンパク質をコードしています。354個のアミノ酸の中の、たった4個のアミノ酸の違いでABO遺伝子の産物がGTAの機能(A型物質合成酵素活性)をもつか、GTBの機能(B型物質合成酵素活性)をもつかが決まるのです。O型の人はこの糖転移酵素遺伝子(ABO)の塩基配列の中に停止コドンが入っており、酵素活性のある糖転移酵素が合成できません。このためO型物質にGalやGalNAcが結合せず、土台のO型物質のみをもつO型の血液型になります。ABO遺伝子という名前の糖転移酵素遺伝子ですが、O型物質をつくる酵素活性はもたないので注意してください。

では、この遺伝子の周辺にどんな遺伝子があるかをゲノムブラウザで眺めてみましょう。
上の図のように開いたゲノムブラウザ画面の上のほうにはzoom in (1.5x 、3x、10x、baseのボタン)とzoom outのボタン(1.5x 、3x、10x、100xのボタン)があります。zoom inのほうのボタンは表示をさらに拡大(遺伝子を大きく拡大表示したりbaseボタンを押して塩基配列を表示)、zoom outのほうは遺伝子をゲノム中でもっと小さく表示して遺伝子の周辺をみるのに使います。
遺伝子の周辺をみたいときにはzoom outのボタンを押します。1.5xを一回押してさらに10xを押すと表示を15倍に拡大というふうに何回かボタンを押してみやすい倍率まで拡大縮小をするのが普通です。

ABO遺伝子の周辺をx10ボタンで拡大表示(zoom out)した例がこれです。
図ではABOの右側にSURF6, MED22その他いろいろな遺伝子があるのがわかります。
100xボタンを一回押した画面を下に載せておきます。
それぞれの遺伝子名をクリックすると、その遺伝子の説明が開きます。100xボタンを押して表示される遺伝子にDBHというのがありますね。これはdopamine beta-hydroxylase (DBH)遺伝子でこの遺伝子がABO式血液型と性格に関連があるという研究のきっかけになったことがある遺伝子です。これが論文です。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0126983

たしかに染色体の同じバンド内にありますね。この論文はGoogle検索してみると出版以来15回ほど引用されています。Web of Science検索では5回でした。

註1:糖鎖を合成する糖転移酵素や分解酵素など糖に関する様々な酵素が網羅されているデータベースです。ヒトだけでなくバクテリアからC. elegansやショウジョウバエ、ゼブラフィッシュやカエルや植物、マウスなど、さまざまな生物別に糖関連の酵素が網羅されています。

マイケル・ファラデーの著作集がダウンロードできます―Faradayの日記(Faraday’s Diary)も全巻公開されました!

福岡は昨日から急に寒くなって朝は19度台の気温でした。まだ8月なんですが、まるで雪がふってもおかしくないような外の様子です。ニュースによると10月中旬ごろの気温だそうで、秋雨の典型のような日が続いています。雨が止んだ時をねらって散歩していると葛の花がいっぱい咲き乱れていました。

さて、今日はFaraday’s Diaryの最新情報の紹介です。
マイケル・ファラデーはイギリスの生んだ偉大な科学者です。彼についてはこのブログでもたびたびふれていますが、Faradayの著作集が公開されているのに昨日気づきましたのでお知らせします。Internet ArchiveからFaradayの実験ノート(Faraday Diary)のvol.1-vol. 5までをダウンロードすることができるのは以前お知らせして、このブログの人気記事になっています。ファラデーの実験日誌は全7巻なのですが残りはまだアップロードされていませんでした。しかし今回公開されたFaradayの著作集には、ファラデーの実験日記全巻がまとめて一冊になってアップロードされていました!ここにアクセスして、Scientific Books Collectionのページを見てください。Faradayの多くの著作―「ロウソクの科学」「力と物質」はもちろんのこと、Bence JonesによるFaradayの伝記(書簡集付き)3600ページ以上からなる書簡集Experimental Researches in Electricityその他の著作、そしてFaraday Diaryの一冊本がダウンロードできます。好きな本を選んで、表示された画面の上部にあるInfoボタンの左側の下矢印のボタンをクリックするとpdf, ePub, Kindle、Plain textなどでのダウンロードボタン(ポップアップ)が現れます。好きな形態を選んでクリックしてダウンロードしてください。この一冊本には1820年から1862年までのFaradayの実験日誌がおさめられており、今回の公開でFaradayの実験ノートは全部ダウンロードできるようになりました。なんと3272ページからなる一冊本です。pdfは200Mバイト以上あるファイルですが、全文検索可能でとても便利です。是非ダウンロードしてご覧ください。

宇宙線をみる霧箱の記事で紹介した以下のサイト(うみほしの部屋)にはファラデーの実験を実験日記を読みながら再現したという、ものすごく面白い記事がいくつも載っています。トップページの検索窓にファラデーと入れて探して読んでみてください。

写真は私が以前ここから購入したFaraday’s Diaryの背表紙の写真です。今でも紙の本は購入できるようで紙の本がほしい人にはおすすめかもしれません。全7巻セットで180 ドルほどの値段がついています。あと以前の記事にあったファラデーも登場する動画のリンクが切れていたのを訂正してありますのでそちらの記事もご覧ください。新しい英語版と日本語版の動画が埋め込んであります。日本語版のほうは画質が悪いようにみえますが皆さんはどうでしょうか?

 

単一細胞のRNA-Seq(scRNA-Seq)の入門動画とBrenner先生の新技術についての金言の紹介です。

科学の発展には新技術の開発が決定的な役割を果たします。このブログでも次世代シークエンサーの威力と題して、DNase-Seq (ディーエヌエース シークと読みます)などを紹介したことがあります。最近のNIH Videocastの番組で、新技術を紹介している優れた講演がありました。大変勉強になる講演で、スマートフォンからハイビジョンテレビ向けまでの様々な解像度で動画をダウンロードできますので、是非 通勤時間などを利用して動画をご覧ください。

これは、今年の7月24日に行われた講演です。Biowulf Seminar: Single Cell Sequencing: Powerful Applications and Practical Considerations(クリックすると動画サイトにとびます)という題で、一細胞のRNA-Seq (single cell RNA-SeqですのでscRNA-Seqと略します)のいろいろな方法と応用およびバイオインフォマティクスによる解析ツールについてやさしく紹介する優れた入門用の講演です。RNA-Seqというのは、細胞や組織の中にどんなRNAがどれほど存在しているかを、次世代シークエンサーを用いて、網羅的に同定する技術です。演者のMichael Kelly博士はsingle cell biologyの有名な実験研究者で、NIHのLinuxクラスター(9万5000個以上のprocesserと30ぺタバイト以上の容量(1ぺタバイは1000テラバイトです)をもつLinux cluster) Biowulfのユーザーでもあります。それでBiowulfセミナーで講演しているようです。内容は2012/2013年頃及したFluidigm C1 platformとSMARTer chemistryによる一個の細胞のRNA-Seqの方法、スループットが飛躍的に向上した2015年のDrop-Seq/InDropsの方法、そして2017/2018年頃から普及してよりハイスループット、低コストとなったsciRNA-Seq/SPLiT-Seq/Seq-Wellの方法などの紹介からはじまって、単一細胞レベルのRNA-Seqを鳥瞰していて、最適の入門講演と思います。 なおsci-RNA-seq (single-cell combinatorial indexing RNA sequencing)というのは、線虫C. elegansの各細胞のRNA-Seqを行った2017年の論文で使われた方法です。オープンアクセスになっていますので興味のある方は是非読んでみてください。新技術の開発がどれほど科学をすすめるかに感動します。

昔 Current Protocols in Molecular Biologyというプロトコル集を買っていました。その綴じ込みにSydney Brenner先生の言葉:
Progress in science depends on new techniques, new discoveries and new ideas, probably in that order. (科学の進歩は、新しい技術の出現、新しい発見、そして新しいアイデアの誕生によってもたらされる―おそらくこの順番で)
が載っていて感銘をうけました。

たしかに、放射性同位元素の生物学研究への応用、蛍光抗体法、モノクローナル抗体、レーザー共焦点顕微鏡、GFPなどの発明、PCR、DNAシークエンサー、遺伝子クローニングやゲノム編集技術、原子間力顕微鏡、タンパク質や糖鎖、脂質などの質量分析装置による解析技術、核磁気共鳴や電子スピン共鳴、X線結晶回折による生体分子の立体構造の解明、電子顕微鏡、クライオ電子顕微鏡、超高解像度の光学顕微鏡などなど、さまざまな新技術が生命科学の大発展を引き起こしてきています。Brenner先生が言うように、技術ができたらそれで何を研究できるかと考え、それが新発見を生み出し、新発見が新しいアイデアを生み出し、次の技術も開発される‥といった順に科学は発展しているようにみえます。

Current Protocolsの本は寄贈したので手元になく、 Brenner先生の言葉もうろ覚えではっきりしなかったので、ちょっと出典を探してみました。 Google 検索でSydney Brenner  quotesといれて探すとすぐにみつかって、多くの方がこの言葉をなるほどと思ったことがうかがえます。次にGoogle検索でこの言葉を二重引用符に囲んで”Progress in science depends on new techniques, new discoveries and new ideas, probably in that order.”を検索窓にいれて検索しました。するとなんとBrennerさん自身がこの言葉をどこ喋ったかを思い出せず、自分で探しただした、という記事がヒットしました。その記事によると、Brennerさんにこの言葉を引用したいがどこが出典かという問い合わせがあったのですが、自分でもいつどこで言った言葉か思い出せなかったそうです。そこで Alan Mackayという人のA Dictionary of Scientific Quotationsという本を探すと、この言葉がのっていて、 雑誌Natureの1980年5月5日号より、とあったそうです。さっそくNatureを見たのですが、なんとこの日には雑誌が発行されていないことがわかりました。それで結局わからずじまいだったとのことです。ところが数週間後、積み上げられた論文をいろいろみているとき、手書きの講演原稿が見つかったそうです。それはスイスのバーゼルにある Friedrich Miescher Instituteの10周年記念シンポジュウム(1980年開催)でのBrenner先生の講演の手書き原稿でした。ここでしゃべったんだというのがわかったので、このシンポジュウムについて報道していたNatureの記事を探したところ、1980年6月5日に掲載された記事が見つかって、その中にこの言葉がのっていたそうです。Biology in the 1980s, plus or minus a decadeというタイトルの記事です。ここからpdfがダウンロードできます。

先ほどの本は一か月だけ日にちを間違えていたということでした。講演会でのBrenner先生の手書き原稿にはこの文は以下のように書いてあるそうです。“ I will ask you to mark again that rather typical feature of the development of our subject; how so much progress depends on the interplay of techniques, discoveries and new ideas, probably in that order of decreasing importance.”

以下のサイトにはBrennerさんをはじめ、いろんな科学者の言葉が網羅されていて面白そうです。またそれ以外の面白い記事も多いのでおすすめです。
https://todayinsci.com/B/Brenner_Sydney/BrennerSydney-Quotations.htm
https://todayinsci.com/Quotations/QuotationsIndex.htm

はやぶさ2 二度目のタッチダウン大成功 おめでとうございます!

はやぶさ2が再びタッチダウンとサンプル採取に成功とのニュース、おめでとうございます。
今日はそのニュースでもちきりでした。ストリーミングで管制室の生中継がみられたり、記者会見がみられたり、とてもよい時代ですね。

前回のはやぶさの大気圏突入の時は、テレビはどこのチャンネルでも中継をやっておらず、なんでウーメラ砂漠から生中継がないのかと残念に思ったものです。今回はマスコミも大幅に報道力の強化済みのようで楽しかったです。今この中継をみている子供たちは本当にいい環境でそだっていますね。将来が楽しみです。写真はCAM-Hで撮影したタッチダウン4秒後の画像(画像のクレジット:JAXA) で、以下のページからダウンロードしたものです。
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20190711_PPTD_ImageBulletin/
舞いあがっている岩石片が印象的ですね。

今回はYouTube中継をテレビ(AmazonのfireTVStick)でみました。以前はYouTubeアプリがfireTVstickにあったので、テレビでYouTubeをよく見ていたのですが、しばらくしてGoogleとAmazonが対立して、アプリがfireTVで無効になり、ブラウザでしかYouTubeがみられなくなっていたのです。ChromecastやAndroid TVでamazonのprime videoが見られなかったり、逆にamazonのfire TVでYouTubeがみられなかったりという状態が続いていました。ところが数日前にGoogleとAmazonのYouTubeをめぐる争いが終わり、fireTVstickのYouTubeアプリが久しぶりに復活して使えるようになっていました。そこで、さっそくダウンロードしてはやぶさ2の生中継をテレビでみることができました。パソコン画面よりやはり格段に見やすいのでこれからYouTubeを見るのに活用できそうです。

糖鎖生物学入門―4 アルマ望遠鏡がとらえた、宇宙に存在する糖

前回は単糖の構造を簡単に紹介しました。炭水化物は一般にCm(H2O)nと表記され、炭素に水がついたような分子という意味で、carbo hydrate (炭・水化物)というのでした。ではm=2でn=2の化合物、C2(H2O)2というのはどんな分子でしょうか。
グリコールアルデヒドという名がついているこの分子は、PubChemでは下図のような構造であると表示されています。 立体構造はこんな感じです。

図の左の構造式をみると、右端にアルデヒド基-CH=Oがあります(註2)。HOCH2-CH=Oいう構造のこの分子は、diose とよばれ (di-は2という意味の接頭語、-oseは糖を示す接尾語ですので、2-carbon sugarとも言われます。二炭糖といいます。註1参照)、体内で重要な代謝産物として働いており、たとえばアセチルCoAに容易に変化することも知られています。
このdioseは実は宇宙に存在しています。その存在を明らかにしたのは、先日ブラックホールの形をとらえた電波望遠鏡システムALMAです。
The Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) は、南米チリのAtacama砂漠に展開している電波望遠鏡群=アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計です。上にリンクを張った日本語での紹介ページのトップの「ALMA望遠鏡にまつわる10のこと」の第4番目に「地球外生命の可能性に迫る」という項目があり、そこにグリコールアルデヒドの分子の絵がのっています。説明文にはアミノ酸のことばかり書かれていますが、グリコールアルデヒドは様々な炭水化物のもとにもなる分子です。
発見された場所はIRAS 16293-2422という地球から400光年はなれた連星系のガスの中で、太陽系タイプの星が誕生している現場と考えられているところです。その暖かいガス(200-300K程度の温度だそうです)の中に初めてグリコールアルデヒドが存在することがALMA電波望遠鏡で検出されたのです(論文はここからダウンロードできました)。以下の動画も参考にしてください。

グリコールアルデヒドは上に述べたように最も簡単な糖 diose (二炭糖)であり、ホルムアルデヒドからはじまるホルモース反応(formose reaction)で、触媒の存在下で様々な単糖やリボースなども合成できる素材となる分子でもあります。ホルムアルデヒド(化学式はHCHOでありこれはC(H2O)とかけます)は宇宙空間に存在することがすでに分かっており、グリコールアルデヒドとホルムアルデヒドがホルモース反応をすると三炭糖(グリセルアルデヒドなど)ができあがり、それをもとに様々な糖が合成できるのです。つまり宇宙に、それも太陽系の形成現場にグリコールアルデヒドが検出できたということは、生物によらない触媒で、こうした糖が形成される可能性を補強する発見であり、生命の礎になる炭水化物分子の発見は、宇宙における生命の起源の研究に大きく貢献するというわけです。

最初の有機化合物の一つとして、簡単に糖ができる、というのはとても興味深い可能性です。生命は糖からできたのかもしれない、つまり、RNAワールド云々をするまえに宇宙に豊富な糖の存在が前提としてあって、糖を中心とするタイプの生命がまず最初にできた(RNAの中にも糖がはいっています)可能性すらでてくるわけです。今まで生命の起源の説明に糖を取り込む試みは少なかったのですが、糖鎖生物学者の多くは、RNAワールドより前の糖の形成にこそ、生命の起源を解くカギがあると確信していると思います。

ALMA望遠鏡の日本語サイトには動画ギャラリーもあり、研究者向けサイトととともに大変わかりやすく望遠鏡の全貌を紹介してくれています。本屋に山積みされていた本『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』もおすすめです。ALMA望遠鏡の建設に日本の科学者たちが決定的な貢献をしているのがよくわかります。

註1:炭素が2つ入ってる糖が二炭糖、3つが三炭糖、4つが四炭糖、5つなら五炭糖、6つなら六炭糖です。英語では、di-が2の接頭辞、tri-が3、tetra-が4、penta-が5、hexa-が6の接頭辞ですから、それぞれdiose, triose, tetrose, pentose, hexoseというう名前となります。pentoseはペントースリン酸サイクルというのを生化学で習った人もいるかもしれません。ヘキソースもよく聞く言葉ではないでしょうか。

註2:単糖でアルデヒド基を含むものをaldose(アルドース)、ケト基をふくむものをketose(ケトース)と呼ぶことも覚えておくと良いと思います。glycolaldehydeはaldoseになります。註1とあわせると、aldotetroseとか、ketopentoseというのがどんな物質かがわかると思います。このようにketoseやpentoseに、炭素数を組み合わせた表現もよくみうけます。

Sydney Brenner先生がなくなられました―検索エンジンSemantic Scholarを使ってみよう

分子生物学の開拓者であり、モデル生物C. elegans(線虫シー エレガンス)を世に送Sydeny Brenner先生が先日(4月5日)なくなりました。RIP to a scientific hero.などとtwitterでも惜しむ声が多かったようです。雑誌Natureの追悼記事はこちらにあります。写真はOIST(沖縄科学技術大学院大学)提供のものです。(RIP というのはラテン語のrequiescat in paceの頭文字をとったもので、may he rest in peace, may she rest in peace, may they rest in peaceの意味だそうです。安らかにお眠りくださいという意味ですね。)
Brenner先生は分子生物学の開拓者の一人で、電子顕微鏡のネガティブ染色法の開発者でもあります。突然変異のメカニズムの研究で大きな業績をあげ、それを使ってアミノ酸をコードしている遺伝暗号が3つの塩基の並びからなる(あるいはありそうもないが3の倍数)ことを証明したり、トランスファーRNAの存在を予言、あるいはmRNAの存在をJacobとの共著論文で証明したりしています。これだけでもノーベル賞級の発見ですね。今まで分子生物学で大いに役立ったファージのように使いやすい多細胞生物で、発生や神経の問題を調べるために理想的なモデル生物を探した結果、線虫C. elegansを導入し、プログラムされた細胞死の研究でノーベル賞を授賞されています。私も英国ケンブリッジにいたときに先生のセミナーにでたことがありますが、理論面からの実験への鋭い切り口が印象的なセミナーでした。新しい技術は新しい発見を生むという先生の言葉は特に記憶に残っています。

Brenner先生の自伝的回想のインタビュー(発生生物学者で位置情報の三色旗モデルで有名なLewis Wolpertに語っています)をまとめた、「エレガンスに魅せられて」という本も前に買ってもっていますが、今は中古本でしか入手できないようですね。

YouTubeにはBrenner先生の動画が色々ありますので、適当なのを選んでご覧になるといいと思います。上に載せている動画は2017年に四日間にわたってシンガポールで行われたBrenner先生の講義の動画です。四日分がアップロードされていますのでご覧ください。この講義はIn the Spirit of Science: Lectures by Sydney Brenner on DNA, Worms and Brains という題で、本になっているようです。私はまだ入手していませんが英語が聞き取れない人は買ってみるのも良いと思います。Kindle版は安く入手できるようです。
この動画、まだ最初のあたりしか見ていませんが、 Turingとvon Neumannの話からはじまっています。Brenner先生はSchrodingerのWhat is Life?には全く興味をもてなかったと、上の自叙伝の本で述べていますが、かわりにNeumannの自己増殖オートマトンの理論に深い興味をもたれたようです。このYouTubeの講演でいっている自己増殖オートマトンの本というのは、たぶんノイマンが1948年にHixsonシンポジュウムというシンポジュウムで、THE GENERAL AND LOGICAL THEORY OF AUTOMATAという題で講演した論文で、後に出版されたこの本Theory of Self-Reproducing Automataではないと思います。Hixson symposiumのNeumannの論文は、中央公論社からでた世界の名著66 現代の科学IIに品川嘉也先生の訳で「人工頭脳と自己増殖」という題で邦訳されています。図書館や古本で探して見られると読めると思います。詳しい注釈がついているので翻訳版はおすすめです。英語の論文はここにあります。これはSemantic Scholarという検索エンジンを使って探しました。これは、工学系、生命科学系にかかわらずとても有用な検索エンジンのように思われます。この検索エンジンはマイクロソフトの創設者の一人Paul Allenが設立したAllen Institute for Artificial Intelligenceが作成しているAIベースの検索エンジンです。コンピュータ科学や生命医科学の論文が収録されており、たとえばC. elegans, chondroitin synthaseで検索すると、私達の論文がトップにでてきます。

遺伝暗号の解読をBrenner先生やCrickたちが進めていたとき、モスクワの学会で全く無名の研究者が遺伝暗号の解読の成功を発表しました。その時、彼の発表会場はほとんど空で人がいなかったそうです。遺伝暗号の最初の解読結果が発表されたというのを友人のMatt Meselsonから聞いたCrickは、その無名のアメリカの科学者Marshall Nirenbergにもう一回、1000人以上が集まるシンポジュウムで同じ話をしてくれと依頼したそうです。シンポジュウムのプログラムにNierenbergの名前を手書きで書き加えたものが残っています。その場でNirenbergは二番目の遺伝暗号の解読の成功も発表したそうです。聴衆は電撃を受けたようなショックを感じたそうです。
これは、私がケンブリッジのMRC LMBのWhite先生のラボに入ったその日に、同時にポスドクにやってきたBob Goldsteinさんが書いているBrenner先生から聞いた話のまとめに載っている話です。自分の研究が抜きさられた(scoopedといいます)時のCrickの態度には学ぶべきところが多いです。Brenner先生の話を聞きに行ったときの別れの際にBrenner先生がGoldsteinさんに語った以下の言葉が印象的です。
As Brenner told me by way of parting advice: “Do the best experiments you can, and always tell the truth. That’s all.”

その他、Brenner先生に関する資料のリンクもGoldsteinさんの以下のページにありますのでご覧ください。

https://goldsteinlab.weebly.com/resources.html

 

私の口演動画の紹介を含むページを作っていただきました

以前、分子生物学会・生化学会の合同大会2017でランチョンセミナーをさせていただきました。その動画は以前紹介したようにYouTubeにでていますが、このたび、シュプリンガー・ネイチャーが電子ブックに関するインタビューや動画をまとめたページを作成してくださったと連絡を受けたので紹介しておきます。

「著者、利用者が語るその魅力 ― イーブック体験談」というページです。私の動画紹介だけのページはこちらです。他にもいろいろ面白い動画がありますのでご覧ください。

写真は近所の公園で一昨日撮影した桜です。桜がはらはらと散る光景も目につくようになり、そろそろ散った桜の花びらが道路をおおうようになってきました。

京都大学の動画サイトの紹介です―福岡では桜が本日開花しました

今朝 散歩しているとき、桜の花が開花しているのを見つけて写真にとりました。福岡市近郊での写真ですが、福岡市でも桜が開花したそうです。つくしもずいぶん大きくなっていて、近所の奥さんから どっさりいただいて先週おいしくいただきました。春のはじまりです。

今日は京都大学の動画サイトを紹介します。
京都大学OCW (Open Course Ware) というサイトです。理学部や医学部、医学研究科など京都大学の様々な講義、講演のビデオやシラバスが集められて公開されています。

上のリンクからいろいろ探してごらんになるといいですが、たとえば
聴講コース 臨床研究者のための生物統計学 (AMED生物統計家育成支援事業
聴講コース 臨床研究者のための生物統計学)という医学研究科のコースには、ここをコピペしただけですが以下のような講義のビデオがならんでいます。
宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ」(岩波科学ライブラリーに二冊あります)の著者の佐藤先生や挿絵を描いておられるという奥様の講義もみられますので是非ご覧ください。

第1回 2017年5月25日 なぜランダム化が必要なのか?
(日本語字幕あり)
田中 司朗 特定教授 Video
第2回 2017年7月20日 リスクの指標と治療効果の指標
(日本語字幕あり)
田中 司朗 特定教授 Video
第3回 2017年10月19日 仮説検定とP値の誤解
(日本語字幕あり)
佐藤 俊哉 教授 Video
第4回 2017年12月21日 生存時間解析の基礎
(日本語字幕あり)
米本 直裕 助教 Video
第5回 2018年2月1日 メタアナリシス
(日本語字幕あり)
田中 司朗 特定教授 Video
第6回 2018年5月17日 統計家の行動基準
この臨床試験できますか?

(日本語字幕あり)
佐藤 恵子 特任准教授 Video
第7回 2018年7月12日 データマネジメントとは
(日本語字幕あり)
多田 春江 特定准教授 Video
第8回 2018年10月25日 ランダム化ができないとき
(日本語字幕あり)
佐藤 俊哉 教授 Video
第9回 2018年12月20日 交絡とその調整
(日本語字幕あり)
佐藤 俊哉 教授 Video
第10回 2019年2月21日 回帰モデルと傾向スコア 佐藤 俊哉 教授 Video

そのほか、理学部をみると、細胞内情報発信学という講義が掲載されおり森 和俊 先生(理学研究科教授)の講義がみられます。3年生向けの講義ですが、面白そうです。

その他いろいろ探して各人の興味にあった講義を聴講してみてください。