寺田寅彦随筆集より―「ジャーナリズム雑感」を紹介します。

寺田寅彦は夏目漱石の弟子だった自然科学者です。随筆集はとても有名で今も読まれていますし、漱石の作品の中にある光圧の実験や首くくりの力学などは寅彦からの情報によるのだそうです。寅彦は優秀な物理学者で、X線回折の実験は英国のブラッグら(ラウエと書いていたのは間違いでした。すみません。5/17日追記)の実験に先んじており、彼の論文のほうがノーベル賞をとったブラッグの発見より時間的には先にでていたが、日本から遠く離れたヨーロッパには論文が届くのが遅れたのだそうです。ノーベル賞を授賞してもおかしくない科学者で、金平糖の形のできかたとか、今日の複雑系物理学のさきがけの実験もやっていた人物です。科学図書館には彼の未完の名著「物理学序説」がおいてあります。http://www.cam.hi-ho.ne.jp/munehiro/science/scilib.html#terada
私が中学生か高校生の時によんだ次の随筆は今も印象にのこっているので紹介しておきます。ジャーナリズム雑感という随筆です。青空文庫に公開されているので読んでみてください。https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2492_10275.html
トップページはこちらです。https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2492.html

新聞報道は、定型に従った報道が多く、殺人事件があったらその定型に従って報道します。「事実の類型化」と寅彦は呼んでいます。これをやるので、一つ一つの事件の差異とか個性というものは顧みられず、結局報道する側も、受け取る側も思考停止して、事件の奥に潜む真実は顧みられないそうです。今でもテレビのニュースをみていると、昭和9年(1934年)の随筆に書いてあるのとそっくりの、事実の類型化という、型(かた)にそった報道があふれているのは残念なことです。今の報道でも、犯人が語る言葉としてよくでてくる、「誰でもよかった」とかいう言葉の報道はその典型かと思われます。犯罪の報道の定型にあわせて事件を報道されても、今後の犯罪抑制には、有害な効果のほうが多いのではと感じています。昔は、三原山で心中した二人が最後に語り会った会話を、そばで記者が速記したように報道する新聞もあったのだそうです。よく似たことは今でも報道にあるようで、メディアリテラシーをつけるにはうってつけの随筆だと思い、紹介することにしました。

2022年4月のNHKスペシャルに対する望月新一先生による「合格発表」が掲載されていました。

先日固定ページで紹介したNHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか? abc予想証明をめぐる数奇な物語」(=完全版(90分)+簡略版(60分))の望月新一先生による講評が先生のブログに掲載されていました。
「2022年4月のNHKスペシャルに対する「合格発表」: 前半はぎりぎり合格、後半は不合格」というタイトルです。最初の段落を引用します。
「2022年4月に放送されたNHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか? abc予想証明をめぐる数奇な物語」(=完全版(90分)+簡略版(60分))を閲覧しました。NHKという看板(やその看板から推測される潤沢な予算)と立派に釣り合う、高精細なCG技術や世界規模の取材ネットワークとは裏腹に、残念ながら、多くの視聴者の誤解を招くような、様々な不正確な内容もありました。誤解や不正確な情報の拡散に歯止めを掛けるためにも、また最も中核的な当事者である私自身の考えに関する明示的な記録・「証言」を残すためにも、番組内の不正確な内容について、この度、ブログ記事という形で補足的な解説を公開し、警鐘を鳴らすことに致しました。」

私はNHKスペシャルの60分版と90分版、どちらも楽しくみさせてもらいました。掛け算と足し算の違いについてわかりやすく説明されていて、なぜ足し算のほうが、掛け算より未知の問題が多いのかの理由を垣間見ることができたように感じました。ただ後半についてはポアンカレの言葉を引用してそれと対照的な考えを望月先生が使っているので数学者でさえ理解が難しい、というようなあいまいな話で終わっていたような気がしました。出演された数学者の方の、私達は今、アインシュタインの一般相対性理論の提唱に匹敵するような革命に立ち会っているのかもしれませんというような内容の発言がとても印象的でした。

しかし、望月先生のブログによると、こうした内容が含まれている後半は不合格ということでした。理由も先生が詳しく書かれていますので是非お読みください。NHKスペシャルの製作者の皆さんが、特殊相対性理論と一般相対性理論が提唱された時に、今回のNHKスペシャルのような一般向けの番組をつくったとしたら、やはり大変な困難に見舞われたと思われます。そうしたチャレンジングな課題に挑戦された製作者の皆さんに感謝するとともに、望月先生の「合格」の講評が得られるような新しい番組を、是非見てみたいと期待しております。

一週間分の日替わりリンクなどを掲載しておきます。

元旦から毎日更新の固定ページをつくりました。まだご存知ない方が多いようなので、一週間分の掲載内容をトップページにもまとめておきます。庭の水仙が咲きだしました。

2022/1/8
NHKでシャーロック・ホームズのドラマを毎週みています。オンラインで日本語でシャーロック・ホームズの日本語訳を読めるのはここがよさそうです。https://221b.jp/


2022/1/7
機械学習の教科書の紹介です。 Dive into Deep Learning (Dが二つ続くのでD2Lと省略して紹介されることも多い本です)という教科書で、スタンフォード大、マサチューセッツ工科大、ハーバード大、ケンブリッジ大など世界の300の大学で採用されている教科書だそうです。Jupyter notebookで手を動かしながら学んでいくというスタンスの教科書で評価の高いものだそうです。
https://github.com/d2l-ai/d2l-enのサイトにある、Book Websiteをクリックして開くページで、MXNetやPyTorch, Notebooks,Coursesなどとあるタブの最初のMXNetをクリックするとpdf版がダウンロードできます。Coursesをクリックすると授業のシラバスやスライドなども見られます。最初のほうの日本語訳もできているようでここから見られます
2022/1/6
ものすごい図鑑 NHKのサイト
これは子供だけでなく大人も楽しめるデジタル昆虫図鑑です。
カブトムシ、モンシロチョウ、ハンミョウ、キリギリス、ノコギリクワガタなど、いろんな虫を画面上で回転、拡大、縮小して立体的に観察することができます。複眼の電子顕微鏡写真もあったりして、楽しいサイトです。お子さんと一緒にどうぞ。
2022/1/5
動画編集にはどんなソフトを使っていますか?以前、Scientific Americanという雑誌をパラパラみていたら、DaVinci Resolve  17という動画編集ソフトの広告がでていて、ハリウッドで使われているソフトで、なんと無料で利用できるとありました。Blackmagic Design Pty. Ltd.社の製品ですが最近日本語のリファレンスマニュアルが無料で公開されているのを知りました。チュートリアルとかも充実しているので時間のある方は試してみるのもいいと思います。Windows, Mac-OSX, Linux対応のソフトです。HDビデオの編集程度ならさほど高スペックなコンピュータはいらないもようです。
2022/1/4
Juliaというプログラミング言語が注目を集めています。前もちょっと紹介しましたが、Pythonより早くて使いやすいそうです。Juliaをつかったデータサイエンスの入門書(英語)が以下に公開されています。興味のある方はご覧ください。

Introduction to Datascience: Learn Julia Programming, Math & Datascience from Scratch

2022/1/3
今日は、わかりやすい量子化学計算の解説ページを紹介しておきます。元旦に紹介した「ノーコードではじめる機械学習」の著者である久我涼子さんのホームページで、pythonによるアプリケーション開発などの記事もあってきわめて参考になります。このブログの記事から生まれた本は

ゼロからわかる!! 独習 量子化学計算: 理論からはじめない新しい量子化学計算の本

というKindle本で、これは解りやすい本です(紙の本はありません)。またこちらのページには、tsujimotterさんこと辻順平さんによる、簡単な分子軌道法の入門解説記事があります。

2022/1/2
QDくんの過去ツイまとめ(機械学習、時系列分析、確率・統計に関する有益記事紹介)というtwitterの記事に有益なリンクがまとめられています。日本語字幕付きのハーバード大学コンピュータサイエンス入門講義の動画とか、いろいろありますので参考になります。
2022/1/1
機械学習に興味がある方へ
:プログラミングなしで機械学習が学べるOrange 3というのをご存知ですか?日本語の解説書としては「ノーコードではじめる機械学習」がよさそうです。Kindleなど電子書籍版と紙の本が最近発行されたばかりですが、買ってみる価値があると思います。YouTube動画を見るのも参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=HXjnDIgGDuI 

はやぶさ2 サンプルリターン成功おめでとうございます!

本日12/6日早朝、はやぶさ2のサンプル容器の地球帰還ミッションが成功しましたね。おめでとうございます。JAXAの帽子をかぶった子供たちも、大人も真夜中のパブリックビューイングで大感激でした。(下の動画は、今朝の早朝の生中継の録画です。是非ゆっくりご覧になるのをおすすめします。)

初代のはやぶさの時は、NHKの生中継は無かったのですが、今回はアニメの放送の冒頭にニュースで生中継しましたね。でも本家のJAXAの生中継はやはり格が違いました。上の生中継の動画では、サンプル容器の火球がオリオン座のリゲルをかすめ、尾をひいて流れてやがてケンタウルス座のαとβ星の間に消えていくまでの間の様子を、星座名をあげながら詳しく解説してくださったので動画が本当によくわかりました。またどうやってカプセルを見つけるかとかの解説もわかりやすかったですし、国際宇宙ステーションから撮影されたはやぶさ2の本体の動画とかも見せてくださいました。また はやぶさ2本体から切り離されたカプセルが実際離れていく様子を京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡がとらえた写真や動画の解説もこの生中継であったので、はじめてあのごちゃごちゃした写真の見方がわかりました。前の小惑星でのサンプル採取のときも動画でみましたが、JAXAの広報は秀逸ですね。小学生のお子さんでもおうちの人にちょっと解説してもらいながら見れば、内容はほぼ完全に理解できるのではないでしょうか。はやぶさ2をおっかけていた子供たちの将来が楽しみです。今の大学の学生さんもそうですが、子供たちもものすごく優秀です。この優秀な人材が本当に活躍できる社会を作っていくのが私達大人の責任だと思います。

やぶさ2本体のほうは、次の小惑星を目指して航行中とのことで宇宙から見た地球の映像などもこれからみられると期待しています。

下のリンクにあるJAXAのサイトに火球の写真や動画が掲載されているのでご覧ください。動画の2や3にαケンタウリ(地球に一番近い恒星約4.3光年の距離)とβケンタウリの間をとおっていくカプセルが写っています。
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/en/topics/20201206_fireball/

左の写真はJAXAのこのリンクにある今回のカプセルの火球の写真、右の写真は我が家に咲いている水仙の花です。こちらは虫が花に飛行して最接近中の一瞬をとらえています。

日本最古の城址のある町を紹介します。

テレビのニュースで今日は福岡市の近郊にある宇美町(うみまち)町制施行100周年の記念日だと報じていました。記念式典など多くの行事は新型コロナウイルス感染防止のため中止や延期になったそうですが、秋の青空に各小中学校からバルーンリリースで放たれたバルーンが浮かんでいたようです。宇美町といってもあまりご存知ないかもしれませんが、
「日本最古の城址があるのは宇美町です!」

https://www.town.umi.lg.jp/soshiki/12/oonojou.html

四王寺山にある大野城址は1350年前の築城で、中国の万里の長城のように高さ約7mの壁でかこまれた(なんと周囲全長8km)日本最古の城址です。大野城市にあると思っている人が多いですが、ほんの一部が大野城市にかさなっているだけでほぼすべて(80%以上)は宇美町にあります。発掘であきらかになった壁は土→粘土→砂を10cm単位でたたき しめることを繰り返して作られており、コンクリート並みの強度をもつ丈夫な壁で、容易にはくずれない強固な壁です。この壁の中には、米が貯蔵されている倉庫などがあったようで、今でも焼米ヶ原(尾花礎石群)の建物周辺からは1350年前のお米を拾うことがでるそうです。マップは以下にあり、pdfもダウンロードできます。

http://www.town.umi.lg.jp/site/kankousab-site/kanko157.html

この頂上にある毘沙門堂では正月3日に四王寺毘沙門詣りという行事(宇美無形文化財)でにぎわいます。これは毘沙門堂にお金が皿にいっぱいおいてあり、参拝者はそこから好きなだけお賽銭を借りて帰ります。翌年借りた額の倍額のお賽銭をかえすというもので、このお参りをすると一年間お金に不自由しないとされているそうです。

宇美は宇美八幡宮(神功皇后が応神天皇を生んだところが宇美神宮と日本書紀、古事記に書いてある)で有名です。安産の神様とされていて、妊娠した方のお参り 産後のお礼参りも盛んです。宇美八幡宮には樹齢推定2000年のクスノキがあります(湯蓋の森)。天然記念物と書いた柱がたっていますが、その周りにおかれている石は実は化石の珪化木です!。宇美は昔 炭鉱があったところで、沢山 珪化木がでてきて、それを木のまわりに置いたらしいです。昔は宇美神宮の前には池があり、ちょうど大宰府とおなじような橋がかかっていたと絵図にのこっています。また今の宇美歴史資料館や相撲場あたりも昔は池で、これは放生池という生き物をいつくしむために飼育していた池らしいです。宇美神宮の入り口に鳥居が二つありますが、一番前の鳥居は昭和42年に今の下宇美橋にあった鳥居を、道路の交通量が増えて事故が多くおこったので移設して今の鳥居にしたそうです。宇美八幡では玉せせりとか、流鏑馬もわりに最近まで行われていたようで(昭和40年代まで)、地名に馬場区というのはこの流鏑馬からとられた名前だそうです。宇美八幡宮につたわる宇美町縁起という古文書によるとこのあたりは昔 蚊田の邑(かたの里)と呼ばれていたらしく、香椎宮にいた神功皇后がここを産所に定めたと書かれています。聖母宮(しょうもぐう)にある秘仏(神功皇后像ともいわれている)は25年に一回公開されている秘仏(2018年に公開されましたので、次の公開はずいぶん先ですね)で、室町時代の作とされ朝鮮からわたってきた女神信仰の仏像らしいです。聖母宮は宇美神宮で一番古い建物(300年前建造。だから他の建物はもっと新しい、一時宇美神宮はすたれていたんですね)。軒下にはキリン(想像上の生物の麒麟)、ゾウ、鳳凰、波に乗るウサギ(因幡の白うさぎ?)、翼のある魚などが書かれているのでご覧ください。

宇美は邪馬台国とも関係がある町です。邪馬台国への道のりは、魏志倭人伝によると、

始めて海を1000余里渡ると、対馬国に至る(対馬)
また南に瀚海と呼ばれる海を1000余里渡ると一大国に至る。(壱岐のこと)
また海を1000余里渡ると、末廬国に至る。(松浦のこと。唐津。)
東南に陸行し、500里で伊都国に到着する。(九大のある伊都です。)
東南に100里進むと奴国(なこく)に至る。(これは博多。福岡市)
東へ100里行くと、不彌国(ふみこく)に至る。(これが宇美の可能性があります。)

ここから先は書いてあるとおりに進むと台湾にいったりして邪馬台国の位置は不明となっています。宇美を不彌国(ふみこく)にあてる説は、宇美町にある光正寺古墳が糟屋郡最大の前方後円墳であり発掘で築年代が邪馬台国の時代であることがわかったことから、卑弥呼の時代の最大有力者(不彌国の王?)の墓と考えられているそうです。この発掘成果によって不彌国が宇美だとする説は、がぜん有力な説となっているのです。宇美から南にいけば大宰府にいくわけで、そこが邪馬台国の入り口あるいは邪馬台国そのものと考えるのも自然ではないでしょうか。

写真は我が家に実ったリンゴです。今年は真っ赤に熟しました。とても甘くておいしかったです。秋も深まってきました。

夏のおすすめ本2020―その2 夏目漱石の「明暗」の完結編など

今日は肩のこらない小説などを紹介したいと思います。夏目漱石の本は青空文庫で簡単にダウンロードして読めるのでおすすめですが、未完に終わった最後の小説「明暗」を完結させた小説があります。「続明暗」というタイトルで、私は去年、漱石の「明暗」に続いて読みましたが、とてもうまく完結させてあってうまいハッピーエンドになっていました。

漱石が胃潰瘍で亡くならなかったら、このような完結の仕方になったかもしれないという終わり方でした。この「続明暗」は有名な小説家水村美苗さんの作品で、芸術選奨文部大臣新人賞を受賞しています。去年NHKでやっていた夏目漱石をあつかった100分de名著の番組の中にも、この本が飾ってありました。とても面白い本ですので、是非読まれるのをおすすめします。

水村さんは、小説家でその他にも多くの賞を授賞されています(野間文芸新人賞や読売文学賞)。12才の時から米国で過ごされた方でイエール大学卒業。プリンストン大学で日本文学を教えておられたこともあり、「日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で」という精緻な論説も書かれています。この本は大変評判になり小林秀雄賞を受賞した他、
The Fall of Language in the Age of Englishという題でコロンビア大学出版会から英訳が刊行されています。今は文庫化されているのでこちらも是非お読みください。英語で論文を書くことについて深く考えさせられる本でもあります。松岡正剛さんの千夜千冊にも紹介されています。

以前このブログで紹介したABC予想を解決された望月新一先生のブログでも、日本語と外国語という観点の記事で、水村さんについて触れられておりました。この望月先生のブログの記事は、米軍基地問題や北朝鮮問題、数学の意義についての考察のほか、論文の書き方や英語についての考察が詰まっていて、とても示唆に富む内容ですのでご覧ください。望月先生は古代ギリシャ語、ラテン語、サンスクリットなどを学ばれたそうですが、私達の苦手な定冠詞(英語のthe)や不定冠詞(英語のaとan)についていえば、古代ギリシャ語には不定冠詞はなく、ラテン語や現代ロシア語には定冠詞も不定冠詞もないのだそうです。

コロナ感染拡大にともない公開されている無料で使えるサービスのいろいろ(4/18追記あり)

今日はコロナで外出できなくなっている人のために公開されている、面白そうな無料サービスをいくつか紹介します。

Ohmshaからマンガでわかる免疫学という本その他が無料公開されています。4月19日まで無料公開ということなので急いでご覧ください。(無料公開は終了しています)自然免疫とは何かとか、コロナウイルス感染の報道を理解する上での基礎知識です。(九大の人はMaruzen eBook Libraryにログインしたら読めますし、50ページづつのダウンロードも可能です。)同じサイトに公開されている本には、算数の本とかコスプレ入門とかもあって面白そうです。

英語で書かれた線形代数の教科書Linear Algebra Done Right (Sheldon Axler著、Springer)が演習問題解答やスライドなども含めて無料でダウンロードできます。本はSpringerのコロナ感染拡大にともなう無料公開措置で7月末までここからダウンロードできるそうです。https://link.springer.com/book/10.1007/978-3-319-11080-6 また、スライドやビデオは、ここにあります数学のお好きな方はこの本はおすすめです。物理や化学の人にはこんなのはどうでしょうか。Linear Algebra and Analytic Geometry for Physical Sciences (Giovanni LandiとAlessandro Zampiniの共著。)これもSpringerが公開してくれている本です。もっといろいろな本がコロナ流行にともないSpringerから公開されています。リストは下のほうに載せてある九大の公開しているリンク集からダウンロードできます ( 九大図書館のリンクは今日ー4/18ーみたところ消えていたので下のほうにあるリンクあるいは、こちらをご覧ください。日本語でのアナウンスはここです。リンク集のExcelファイル中に本の名前とダウンロード用urlなどがのっています)。

私は一昨日、下のリンク集にあるサービスで大図書館にログインして使えるサービスAcademic Video Online(授業や自学自習に役立つ質の良いビデオコンテンツを61,000件以上収録している、ストリーミングビデオのデータベースです。2020年6月30日まで特別トライアル)というのを試してみました。いろんな教育関係のビデオがあるのですが、BBCの番組が多いのに気づき、では昔BBCのHorizonという番組でやっていたというドラマLife Storyがないかなと探してみました。ありました!これはDNAの二重らせん構造を解明した科学者たちの競争と研究の様子をかなり忠実にたどった感動のドラマです。昔、数万円でビデオが売られていたのですが高くで買えませんでした。無料トライアルの今ならその番組が英語字幕付きでみられます。契約している大学も多いと思いますので、アクセスできる方は是非ごらんください。舞台はLondonとCambridgeですが、私がいたCambridge大学の研究室は昔Watson, Crickが研究していた旧キャベンディッシュ研究所の隣にありました。ワトソンが音連れたことがあるプレハブもあって、のぞいていたのを覚えています。この番組は Crickによるとかなり忠実に史実をなぞっているとのことで、Watsonの二重らせんという本を読むより、最初このドラマをみるほうが感動が深いのではないかと思いました。ブラッグとロザリンド・フランクリンが、完成した二重らせんモデルを身にやってきて二人で語り合う最後の場面は感動です。(写真はケンブリッジのMRC分子生物学研究所のノーベル賞関係展示にかざってあったWatsonとCrickが作ったDNAの模型です。ドラマにもこの模型が登場します)
この番組はロザリンド・フランクリンの協同研究者で彼女を良く知るAaron Klug(MRC LMBの所長だった方で、ノーベル賞受賞者)も作成に協力しており、実際こんな会話がかわされたのかもしれないと思われます。Klugさんはロザリンドフランクリンは本当に偉大な科学者だったと語っていたそうです。MRC LMBには彼女とKlugさんが研究していたタバコモザイクウイルスの模型が飾ってありました。(下の動画ですがAcademic Video Onlineの動画リンクなので、認証失敗とかの表示がでて絵がでないときは無視してください。ログインできる人はログインして鑑賞してください。同じ動画はDailymotionにもだれかがアップロードされていますが、字幕抜きなので聞き取りにくいかもしれません。Part 1とPart 2にわかれているようです)

Life Story

ブラッグ:模型を前にしてフランクリンにIt looks as if they have got it right.
フランクリン:Yes.
ブラッグ:I’ve given my life to crystallography.I never thought I’d live to see this.
フランクリン: It’s your work too.
ブラッグ:And yours.
フランクリン:And mine.
ブラッグ:I know how you must feel. I’m sorry.
フランクリン:I might have seen it, but I didn’t. I see it now.
ブラッグ:This race, this winning and loosing, it’s not the way I was taught to do science.
フランクリン:It doesn’t matter. モデルをあおぎみて、This is what matters.
Life is the shape it is for a purpose. When you see how things really are, all the hurt and the waste falls away. What’s left is the beauty.

様々な大学の図書館のホームページには、自宅から使える様々な便利なサイトが載っていると思いますが、コロナ感染拡大にともなってさらに新しいサービスが無料で使えるようになっているので是非大学の図書館のホームページを見てください。たとえば九州大学の図書館のニュースページをみると、先日紹介したCambridge University Pressの無料で教科書で読めるサービスへのリンクがでていますし、様々なサービスが無料で使えるようになっているのがわかると思います。九大図書館が新設した「新型コロナウイルス感染症対応 特設ページ」には上のリンク集以外にいろいろ参考になるリンク(ログインしなくても使えるサービスも含む)がありますので学外の方もふめてご参照ください。ログインなしで無料で使えるサービスリストも同じところにでていますので九大以外のかたも是非ニュースページをご覧ください。たとえばこんなのがのっていました(九大図書館のニュースから引用。詳しくは上のリンクを参照してください。)


期間限定の無料アクセスなど(認証不要)

※新型コロナウイルス感染症拡大への対応として、各社のご厚意により提供して頂いております。

Project MUSE
50以上の出版社の電子ジャーナルと電子ブックを無料で提供しています。
出版社及びアクセス可能範囲・期限の一覧
おおむね2020年6月30日まで無料アクセス。

Annual Reviews
全ての電子ジャーナルを無料で提供しています。
2020年4月30日まで無料アクセス。

Royal Society
全ての電子ジャーナルを無料で提供しています。
当面の間、無料アクセス。

雑誌記事索引データベース ざっさくプラス
2020年5月31日まで無償公開。

Springer
教科書などを無料で提供しています。
タイトルリスト
2020年7月31日まで無料アクセス。

ACM Digital Library
2020年6月30日まで無料アクセス。

岡潔に大きな影響をあたえた数学の本―ポアンカレの「科学の価値」など

今日はこの写真(註1)を紹介します。

これは日本の有名な数学者 岡潔があちこちで語り、いろんなところで書き遺しているフランスの数学者エルミートの中年の肖像写真です。エルミートというのは物理学ではエルミート演算子というのでおなじみです。以下は岡潔の曙(講談社現代新書 絶版)という本からの引用ですが、同じ話は現在容易に入手できる「一葉舟」などにものっていますのでご覧ください。私がはじめてこの話を聞いたのは高校生のとき、NHKのラジオFMでやっていた岡潔さんと秋月康夫さんお二人の対談の中でした。テープレコーダーに録音して何度も聞いていたのを思い出します。

フランスの数学者アンリ ポアンカレは、微分方程式論やトポロジー、三体問題、ポアンカレ予想、カオス発見のさきがけ、など様々な偉大な業績を残し、さらにポアンカレ変換が相対性理論ででてくることからわかるように、アインシュタインがいなくても特殊相対性理論は彼が発見したであろうといわれる偉大な科学者です。多くの随筆を書いていて、岡潔はそのなかの「科学の価値」(註2)という本を読みその中の以下の言葉が深く印象に残ったと書いています。
「エルミットの語るや、如何なる抽象的概念もなお生けるが如くであった」
エルミートは、ポアンカレの先生です。「科学の価値」という本のなかで、ポアンカレはこんなことを書いています。
「其反対にフェリックス・クライン(Felix Klein) を考えると、彼は函数論の最も抽象的な問題の一つを研究した。即ち一の与えられたリーマン面に、与えられた特異性を有する所の函数が常に存在するかという問題である。さて此有名なドイツの幾何学者は如何にしたであろうか。彼はリーマン面に置換えるに電導率が一定の法則に従って変化するごと如き金属面を以てし、其二つの極を連結するに電池の両極を以てした。かくして彼は電流が之に通じなければならぬ事、其電流の面に分配され方が問題に要求せられた特異性をまさに持つ所の函数を定義する事を述べたのである。もちろん勿論クラインは之を以て彼がただ概観の見取を為したに過ぎないことをよく知って居た。其にもかかわらず彼は之を発表するに躊躇せず、又厳密なる証明でないにせよ、之によって彼は一種感情上確実と思わしめるものを発見したと信じたごと如く思われる。しかるにもし此が論理家であったならば、かような考は嫌悪排斥したであろう、否むしろ排斥するどころか かような考を起すことが無かったであろう。」(田辺元訳 「科学の価値」より引用)この後、ポアンカレはベルトランとエルミートを比較して論じているのですが、この文章に刺激をうけて岡潔や秋月康夫はクライン全集を丸善にいって買って帰ってきてその論文を読んだそうです。以下は岡潔の上記の本からの引用です。
====================================
「エルミットの語るや、如何なる抽象的概念もなお生けるが如くであった」

この言葉も深く私の印象に残った。

これは後の話であるが、私が大学二年(京大数学科)のとき、秋月(康夫、群馬大学学長)は(同じ 科の)一年だった。そのとき丸善へクライン全集が来た。私達は三卷とも買って帰って、ポア ンカレがいった論文だけ読んだ。三十ページほどのごく短いものである。

暫く経つと丸善へエルミット全集が来た。前のはドィツ語だったからまだしもよかったが、 今度はフランス語だから私達は全く読めない。然し各卷の初めにエルミットの肖像がある。それで私達はまた三巻とも買って帰った。その第二巻の巻頭のものは中年のエルミットの読書姿態である。それを見ていると、なんだかポアンカレの言葉がわかって来るような気がする。

秋月はそれを切り抜いて、額に入れて机の上に立てた。それを見て化学二年の、哲学の西田先生の息子の外彦君まで、一人で丸善へ行ってエルミット全集三巻を買って帰って、その肖像 を切り抜いて、机の上に立てた。

頭頂葉に理想を掲げるとは、こうすることである。
======================================最初に載せた写真は、秋月さんが買って帰って切り抜いて額にいれて机の上にたてた、そのエルミート全集第2巻の写真です。岡潔の著作のあちこちで紹介されているエピソードですが、写真をご覧になった方は少ないかと思い、ブログにのせておくことにしました。

下はエルミート全集第1巻の肖像です。「若いころの目はまさしく詩人の目をしている」(一葉舟)と岡潔が書いている写真です。写真はどちらも九州大学図書館からダウンロードしました(注1参照)

註1:この最初の写真は九州大学図書館の貴重図書のページでHermiteといれて検索すると、Hermite全集(Oeuvres de Charles Hermite)がでてくる(フランス語です)、その第二巻がpdfで掲載されているのですが、その最初のpdfにのっています。あるいは画像そのものを見ることもできて、その画像をダウンロードしてもいいです。ブログに載せたのは私が解像度を落としたものですが、オリジナルの高画質版もダウンロードできますので必要な方はダウンロードしてみてください。下の写真の左下のダウンロードボタンを押すと、高解像度、低解像度を選んでダウンロードできます。
註2:ポアンカレの「科学の価値」は、田辺元訳が科学図書館にありますのでダウンロードしてお読みください。

元寇防塁の上で毎日暮らしていました!九大箱崎キャンパスの遺跡が国の史跡指定へ

今日夕方のNHK福岡の放送で、九大跡地の元寇防塁が国の史跡指定へというニュースを放送していました。調べてみると、九州大学が伊都へ移転する前に私達がいた箱崎キャンパス、それも理学部本館から中央図書館、農学部などにわたって元寇防塁跡の石組や溝のあとが点々とみつかっているようです。防塁あとは工学部へものびています。箱崎キャンパスの卒業生の皆さんはこの地図を見ると興味津々でしょう。この地図は九大が昨年発表したこの報告のpdfにある図からとったものです。理学部では理学部会議室の下あたり、ちょうどバーベキューをやれるスペースの周辺に石積み遺構あと(赤い線で表示)や溝状の遺構(青い線で表示)がみつかっているようですね。赤い石積み遺構は図の右上にある赤い点線(地蔵松原公園の元寇防塁遺跡)から農学部、中央図書館、理学部本館へと連続して続いているように見えます。理学部本館にあった私達の研究室は理学部会議室のすぐそばの二階にありましたから、毎日窓から眺めていたあたりに元寇防塁があったわけです。箱崎キャンパスは、昔は海に近かったようで松林の名残の松も点々としていました。去年、筥崎宮が元寇のとき避難してきた史跡を訪れた記事を書きましたが、やはり博多は元寇にまつわる史跡が多いですね。しかしまさか箱崎キャンパスの理学部や中央図書館、防音講義室、システム生命学府棟、農学部あたりに防塁があったとは驚きでした。

下の図は九大の所蔵する蒙古襲来絵詞(模本)の高精細画像です。主人公である竹崎季長(たけざき・すえなが)の活躍を描く絵巻物で18世紀末に発見された原本をかなり早い時期に複製したものと考えられているそうです。絵巻物の「季長、生の松原の石築地の前を通過する」の場面で防塁を通過しているところが描かれています。

はやぶさ2 二度目のタッチダウン大成功 おめでとうございます!

はやぶさ2が再びタッチダウンとサンプル採取に成功とのニュース、おめでとうございます。
今日はそのニュースでもちきりでした。ストリーミングで管制室の生中継がみられたり、記者会見がみられたり、とてもよい時代ですね。

前回のはやぶさの大気圏突入の時は、テレビはどこのチャンネルでも中継をやっておらず、なんでウーメラ砂漠から生中継がないのかと残念に思ったものです。今回はマスコミも大幅に報道力の強化済みのようで楽しかったです。今この中継をみている子供たちは本当にいい環境でそだっていますね。将来が楽しみです。写真はCAM-Hで撮影したタッチダウン4秒後の画像(画像のクレジット:JAXA) で、以下のページからダウンロードしたものです。
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20190711_PPTD_ImageBulletin/
舞いあがっている岩石片が印象的ですね。

今回はYouTube中継をテレビ(AmazonのfireTVStick)でみました。以前はYouTubeアプリがfireTVstickにあったので、テレビでYouTubeをよく見ていたのですが、しばらくしてGoogleとAmazonが対立して、アプリがfireTVで無効になり、ブラウザでしかYouTubeがみられなくなっていたのです。ChromecastやAndroid TVでamazonのprime videoが見られなかったり、逆にamazonのfire TVでYouTubeがみられなかったりという状態が続いていました。ところが数日前にGoogleとAmazonのYouTubeをめぐる争いが終わり、fireTVstickのYouTubeアプリが久しぶりに復活して使えるようになっていました。そこで、さっそくダウンロードしてはやぶさ2の生中継をテレビでみることができました。パソコン画面よりやはり格段に見やすいのでこれからYouTubeを見るのに活用できそうです。