夏休みおすすめ本 その2 細胞生物学とLinux入門のブルーバックス、そしてゲノム編集

試験が終わって夏休みを満喫している学生さんも多いかと思います。新学期が始まる前によんでみるとよい本をいくつか紹介しておきます。まず

1) ブルーバックスの「細胞の中の分子生物学 最新・生命科学入門」(森 和俊 著)は、私の大学二年生向けの細胞生物学の講義の参考書に紹介していましたが、とてもわかりやすい本で、生物学専攻でない物理や化学専攻の大学1,2年生におすすめの入門書です。もちろん生命科学関係の学生にもおすすめで、私のラボの院生も読んでとても参考になったといっていました。

2) ブルーバックスでもう一冊のお勧めは、「入門者のLinux 素朴な疑問を解消しながら学ぶ」(奈佐原 顕郎 著)です。こちらも生物学演習の学生さんに薦めていましたが、linux入門には最高の本だと思います。なぜlinuxが必要かというところからはじまって、最後は気象衛星ひまわりの画像をダウンロードして画像をつなげてムービーをつくるところまで勉強できます。私も読みながらコマンドを実行しながら読み進んでいくと、ちゃんとムービーをつくることが出来ました。ubuntuのlinuxを使えばコマンドもすべて本のとおり打ち込めば実行できますので是非お読みください。(2021/09/11追記:九大の皆さんは 九大図書館のサイトからはいれるMaruzen eBook Libraryにこの本が入っています。一日に60ページづつダウンロード可能ですので無料で勉強できるのでおすすめです。)以下の講演会(平成27年度NGSハンズオン講習会)のビデオ、テキストをみれば、biolinuxをvirtualboxでwindowsにインストールして動かし、この本の実習を行えるだけではなく、簡単なバイオ系ソフトをlinuxで動かしてみることもできます(リンクの事前予習資料一覧のpdfから始めてください。インストールの仕方のスライドもリンクにあります。丁寧なスライドですのでだれでもbiolinuxがインストールできます)。biolinuxをインストールするやり方は詳細にこのページのリンクにありますので、そのとおりやれば簡単にできます。ただしハードディスクの空容量は十分確保してからはじめてください。平成27年度の講演会では、シェルスクリプト入門、pythonやperl入門、Rの入門などいろいろな講義が動画とテキスト付で公開されています。私も通勤電車のなかで全部視聴して大変勉強になりました。その後の講習会は段々と上級者向けへ内容がシフトしていますのではじめるなら27年度の講習会からかなと思います。

このブルーバックスをbiolinuxを動かしながら読んでいくときの注意点です。
biolinuxではこの本の285ページのコマンドは作動しません。この本はシエルがbashなのですが、biolinuxはシェルがzshなのが原因です。これはzshがdirectoryの中身を探しにいっていないのでno matchというエラーを返してくるのです。コマンド実行前に、、biolinuxで
setopt nonomatchとうって実行しておくと、285ページのコマンドもbiolinuxで動きます。zshとbashの違いについてはたとえばここに詳しく書かれています。

3) これも分子発生学の講義などで紹介した本ですが、CRISPR-Cas9によるゲノム編集の開発者の一人、さんが書いた本 「CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見」(ジェニファー・ダウドナおよび サミュエル・スターンバーグ著)もおすすめです。ゲノム編集の開発だけでなく、その正しい応用を目指すスタンスが強調されているとてもわかりやすい本です。組織特異的にゲノム編集をするのはどうしたらよいのかなども紹介されていて、ゲノム編集について考えるための必読文献です。Doudnaさんの講演はいっぱいネットにありますがたとえば去年のこの動画などはいかがでしょうか。バクテリアの獲得免疫システムとして働いているCRISPRの概観と、ウイルスがanti CRISPRタンパク質を使ってそれから逃れるといった最新の話題もとりあげられています(2017年の講演)。英語字幕をYouTubeでオンにしたら聞き取りやすいと思います。

もっと新しい講演は以下のものです。

ことし6月のThe Croonian Medal Prize Lectureでの講演です。英国王立協会の由緒ある賞the Croonian Medal and Lecture 2018の受賞講演です。これもYouTubeで字幕オンでみるとよいでしょう。