臓器移植(同種、異種移植)と動物福祉について理解するための最高の本がでています。

今日は「異種移植 医療は種の境界を越えられるか」(山内一也著、みすず書房2022)という本を紹介します。https://www.msz.co.jp/book/detail/09528/
本の帯にはこうあります―「動物の臓器を人に移植する。その挑戦は、超急性拒絶反応や未知のウイルス感染症の出現リスクなどの難題に何度も阻まれてきた。新技術の到達点を展望する書。」

この本は、ヒヒの心臓を新生児に移植した手術 (失敗に終わりました)の話からはじまり、同種移植の歴史(ヒトでの心臓移植などの話)、異種移植の話 (ドナー不足を補うなどの目的で、ヒトの心臓のかわりにブタの心臓を移植するなどの例もとりあげられています)、その実施にともなう拒絶反応(ブタの細胞表面の糖鎖にはヒトにはない糖鎖修飾であるα 1,3ガラクトース修飾があるため拒絶反応がおこります)をおこさないブタの作成、ブタのもつウイルスへの対処法の開発、クローンブタの作成と臓器工場として異種生物を使う可能性の話、パーキンソン氏病への治療法としての脳組織移植の実例、などなどしっかりとした解説で、臓器移植についての理解を格段に深めてくれる本となっています。また動物福祉の考え方と現在の科学界の対応についても、とてもわかりやすく解説してあって、以前このブログでも紹介した3Rについても多分一番わかりやすく解説されていると思います。是非読んでもらいたい本で心からお勧めします。Kindle版もありますのでそちらもおすすめです。