古代ギリシャ天文学者ヒッパルコスの星図の一部が発見されたそうです!

古いギリシャの天文学者ヒッパルコス(紀元前190生ー120ごろ没)の失われた星図(星座観測記録)の一部が発見されたそうです。https://www.nature.com/articles/d41586-022-03296-1
論文はこちらにあります。
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00218286221128289

中世の修道院では、書物をつくるための羊皮紙を使いまわしていました。古い羊皮紙の本の文字を消してその上に新しい本を書き込んでいくわけです。そういう本をpalimpsest パリンプセストと呼びます。今回、エジプトの修道院に保存されていた祈祷書の下にギリシャ語のテキストが発見されました。方法はマルチスペクトルスキャンで、異なる波長の光をあててうかびあがってくる文字を映像のコンピュータ解析で復元するという方法です。これは古代ギリシャの偉大な科学者アルキメデスの著作「方法」を中世の祈祷書のテキストの下から復元した仕事と似ています。学生実習でパリンプセストを解析していたところ、下になにやらギリシャ語があるというのを学生が発見して、本気になって解析を進めた末の大発見だそうです。プトレマイオス(紀元83年頃 – 168年頃)のアルマゲストには星座を構成する星の位置の観測データの表がのっています。これが最古の星の位置の観測データだったのですが、その記録が更新されて、なんと羊皮紙の下に書かれていたのは失われたヒッパルコスの星図の一部だろうという結論になったそうです。星の位置の現在の値とのずれは1°以下で、プトレマイオスのアルマゲストの値より正確だそうです。発見されたかんむり座(かんむりざ、冠座、Corona Borealis)を構成する星の位置を、このブログでも紹介しているStellariumその他で計算して観測された時代を推定したところ、紀元前のヒッパルコスの時代の空の星図とぴったり合うのがわかったようです。大発見ですね。
まだ星図の全文は回収されていないので今後は、修道院にある他の羊皮紙の本を調べるなどしてできる限りすべての本文を回収する計画だそうです。