セミナーで聞いた恐ろしい話―肝臓は再生しますから‥‥。

私が学生だったころ、研究者を目指していた私は大学の構内に張られているセミナーのお知らせの張り紙をみて、何回か面白そうな研究室主催の公開セミナーに出席していました。たとえば井川洋二先生(2012年に惜しくもなくなられました。私の口演に対して何度も有益なコメントを頂いたのを覚えています)のセミナーに参加して、細胞成分を「アイワントウェンティファイブ」で標識してという先生の言葉と、その後 先生が何度も繰り返された「アイワントウェンティファイブ」という いいまわしが、初学者の私に妙に印象に残ったのを思い出します。これは放性同位元素のヨウ素125のことで、私も後日、細胞膜表面をI125でラベルしました。今日お話しするのは、このような研究室の公開セミナーの一つに参加した時のことです。その日のセミナーの講師は、私でも知っている当時とても有名な先生だった(お名前は残念ながら思い出せません)ので楽しみに参加しました。そのセミナーの中で、先生は、ヒトの肝臓の酵素活性の測定の話をされていました。そこで耳にした先生の言葉に唖然としたのを覚えています。現在のように手軽にスマホで録音とかができるわけではないので、うろ覚えですが次のような内容の発言をさらっとされたと記憶しています。「(スライドのグラフを示しながら)こちらのコントロールの酵素活性は、病院で開腹手術のときに患者さんの肝臓をちょっと いただいて測定したものです。肝臓は再生しますから‥‥」こんなことが昔は行われていたわけです。たしかにヒトの肝臓は再生するのです。科学者の倫理教育がいきとどいている今日では考えられない行為ですね。ヒトの材料を扱う時の倫理委員会による審査や研究者への倫理教育、インフォームドコンセントの徹底は、こうした行為が二度とおこらないように実施されているわけです。