生命科学の理論について思うこと

昨日はLシステムの本の紹介をしました。植物の形態をうまく説明できるモデルとして有名なモデルです。MathematicaやPython, Javaなどで動かして試してみることができるのでネット検索してみてください。Mathematicaな以下のリンクなどをご覧ください。
https://resources.wolframcloud.com/FunctionRepository/resources/LSystem/

生命科学のモデル、確かに面白いのですが注意しなくてはならないことがあると思います。ある生命現象をうまく記述できる場合には二通りがあると思うのです。一つはその生命現象を支配している分子メカニズム、あるいは物理メカニズムを的確にとらえているので現象の時間的発展(時間スケールをふくめて)を記述できるのみならず、それに対する外部からの搖動にシステムがどう応答するかも予測できるという理論です。これは真に有効な理論です。もう一つは、生命現象をパラメータの調節でうまく記述できるのですが、予測力がないものです。これはたとえて言うと、生命現象を数学の言葉で描写しているだけというものです。生命現象をフランス語で記述しているのがAさんのモデルで、Bさんは英語で記述しているというようなものです。微分方程式を使ってモデルを作っている人の中には、生命現象を微分方程式のパラメータ合わせで記述している(持ち合わせている自分の言葉で生命現象を記述している)だけという人がいるのではないでしょうか。そういうモデルは現象を数学の言葉で描写しているだけですから、類似の現象はうまく記述できますが、予測力はない。そしてそのモデルは、その生命現象を支配している分子メカニズム、物理メカニズムを明らかにするには無力だというものです。生命科学のモデルを作る人は、そういうわなにかからないように注意しなくてはいけないと思っています。