核実験抑止へ導いた猿橋勝子の生涯を描いた長篇小説『翠雨の人』著者インタビュー 伊与原 新(直木賞作家) /【公式】おはよう寺ちゃん 8月13日(水)
https://youtu.be/e_ESEcTYVuI?
直木賞作家の伊与原 新さんの受賞後の最新作、「翠雨の人」を読み終えました。女性科学者の猿橋勝子さんの実話にもとづいた評伝的なフィクションです。私の知っている人が二人、猿橋賞を受賞しているので有名な女性科学者だとは知っていましたが他は全く知らない人でした。この本を読んで、猿橋さんのことがよくわかりました。伊与原さんの文章はとてもよみやすくて ぐんぐん読み進めることが出来る作品です。
子供の頃からマリー・キューリーにあこがれ、最初は医学の道をめざして東京女子医科大学の前身の東京女子医専を受験、合格するも面接での出来事で入学を取りやめて、東邦大学の前身である帝国女子理学専門学校に入学したエピソードには考えさせられました。子供の頃から雨や雪に興味を持っていたので気象学を専攻、三宅泰雄先生をメンターとして気象学、海洋化学の研究に進みます。三宅のもとでの最初の研究は、なんとキューリーの発見したポロニュウムを使った実験でした。戦時中の軍との気象学研究も詳しく紹介されていて戦争と科学についても考えさせられる作品になっています。戦後の大気圏内核実験による第五福竜丸の被曝、原水爆実験による海洋汚染の実態の解明、そして平塚らいてうとの出会いと国際民婦連の世界大会での原水爆実験による汚染についての国際講演、日本での女性科学者の会の立ち上げ、そしてアメリカにでむいての米国物理学者とのセシュウム濃度測定をめぐる道場破りのような快挙など、初めて知ることばかりで感動しました。巻末には参考文献がしっかりあげてあって、その多くは国立国会図書館のデジタルコレクションで読むことができます。
最初にあげた動画は作品について語る伊与原さんの肉声を聞くことができるのでまず聞いてみてください。