ショウジョウバエでヒトのALSを研究する―NIHの講演がわかりやすかったです。

今日はNIH videocastで公開された、ショウジョウバエをモデル生物として使ってヒトのALS(Amyotrophic Lateral Ssclerosis 筋萎縮性側索硬化症 ―きんいしゅくせいそくさくこうかしょう― )の研究をするという講演を紹介します。

WALS: Of Flies and Men – Harnessing the Power of Drosophila to Decipher the Molecular Mechanisms of Neurodegeneration
https://videocast.nih.gov/watch=55028

講演日:Wednesday, March 26, 2025   演者:Daniela Zarnescu, Ph.D.
モデル生物でヒトの病気をどのように研究するかのお手本にもなる講演です。ショウジョウバエについてあまり知らない人むけに、ショウジョウバエとヒトの神経系が結構似ているというスライドもあって参考になります。
RNA結合タンパク質であるTDP-43がALSの患者さんでは凝集体を形成すること、前頭側頭型認知症(FTD)でみられる凝集体の半分はTDP-43からなることなどの話からはじまって、ショウジョウバエにTDP-43の遺伝子を導入してALSと同じような症状がでてくる研究の話から講演がはじまります。今までの彼女のラボの研究と最新の未発表の知見がみどころの講演です。最後の質疑応答の部分も英語での質疑応答のお手本として役立ちます。最近のNIHの動画は質疑応答の画面で質問者と演者がそれぞれ画面の半分をしめるようになっていて聞き取りやすいです。例によって動画とキャプションはダウンロード可能であるのもありがたいですね。
今回はショウジョウバエの話でしたが、モデル生物である線虫C. elegans でもTDP-43やALSの研究は活発にすすめられています。たとえば北海道大学のこちらのプレスリリースなどをご覧ください。
https://life.sci.hokudai.ac.jp/fa/topic/17834
北大プレスリリース:ALS/FTDの原因となる凝集体形成機構を解明~神経細胞の毒となるタンパク質凝集を抑制する薬剤などの研究発展に期待~
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240621_pr.pdf